Regret
短編創作BLです
もう1編視点を変えたものがあるので、これをさきに読んでからもう片方を読んでもらえると更に楽しめると思います
視点:上城 辰冴
篠宮 康
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高3の春だった
「卒業したら、終わりにしよ」
悲しげな背中が印象的で
「うん」
突然だったのに
知ってたかのような返事が出る
もう戻れない
だから
2人は戻そうとした
こんなこと、今の世の中で許されるはずがないことくらい
馬鹿な俺達でもわかってたんだ
そのまま、今まで通りの関係は続いた
そして卒業式
2人は終わるまで一言も交わさなかった
“卒業生、退場”
俺は何も考えなかった
考えてはいけないと思った
特に涙も出なかった
2人は別々の道を歩んでいく
もう会うこともない
このまま終わり
そう思っていた
「辰冴」
その声に反応して振り向く
手が頬に触れた
「じゃあね」
康は優しく微笑んだ
何で
お前がそんな見たことない顔をするから
…
何度目かの春
「ねぇ、別れよ?」
もう何回目だろう
話があると送られた時点で察しはついていた
「わかった」
毎回言葉を考えるのも面倒になって
理由も別に気にならなかった
「ずっと、どうでもよかったんでしょ、もう、耐えられない」
涙を堪えているのか言葉が詰まる
顔を見れない
「そんなことないよ」
嘘じゃない
どちらかといえば好きだった
いつもそう
「嘘つき」
そう言って彼女は出て行った
(今回上手くいってると思ったんだけどな)
気付けばもう社会人で、あと何年かすれば30歳というところだった
時は早い
それなりに恋愛もした
しかし毎回すぐに終わってしまう
今回は割と長く続いていた
(やっぱ俺向いてねぇや)
…腹減った
コンビニでも行くか
窓を見てみると、外はよく晴れていた
財布を取り出し、靴を履いて、鍵を閉める
「こんにちはー」
「こんちゃ」
他の住人とすれ違う
いつもと変わらない日常だ
(あ、まだポスト見てねぇ)
集合ポストから自分の部屋番号を探す
(どうせ何もねぇけど)
いつものように扉を開ける
そこには、1通の小綺麗な封筒が入っていた
(何これ)
“上城辰冴様”
勢いのある整った字
(誰?)
開いて差出人の名を探す
“拝啓 春分の候”
“皆様におかれましては…”
“この度、私たちは”
「ッ!!」
その瞬間部屋へ向かって走り出した
考えるより先に体が動いていた
急いでドアと鍵を閉める
「ハァ、ハァ…」
呼吸が整わない
見覚えのある字だと思った
何で、急に
“御出席 御欠席”
考える間もなかった
ペンを探す
俺は“御欠席”の文字を消した
…
約3ヶ月後、その日はやってきた
もう少しで着いてしまう
自分でも何故来たのかわからない
何故呼ばれたのかもわからない
ただ行かなければいけない気がした
会うのはあの日以来だ
俺は同窓会も行かなかった(都合が悪かったから)
招待状以外では何のやり取りもしていない
本当に自分が行ってもいいのか、不安になった
しかし、ここまで来てしまっては帰る訳にもいかない
もう行くしかない
(どんな顔すればいいんだよ)
できれば会いたくなかった
遠くから見て、終わったらすぐ帰ろう
そう決めた
…
式は思ってたより居心地がよく
不思議と嬉しくなった
人の幸せを喜べる人間になったようだ
康も知らないうちに大人になっていた
背格好も前とは違う
あの日から止まっていた記憶が塗り替えられる
もうこれで本当に終わり、と
今日来たのは自分のためだった
ずっとどこかでつっかえていたものが取れた気がする
誓いのキスを見ながら、自分が何を思い出していたのかもどうでもよくなった
お互いに笑い合う新郎新婦を見て
本当に綺麗な笑顔だと心から感じた
ふざけてる時のアホ面も
ツンとしたしかめっ面も
たまにする照れ笑いも
最後に見た優しい顔も
全部大好きで、ずっと忘れられなかった
でも、もう大丈夫だと
やっと胸を張って言えるよ
“おめでとう”
心の中で呟いた
…
「…本日はありがとうございました」
式が終わる
康は長々とした挨拶を読み終えた
ちゃんと真面目な話もできるようになったんだ、と少しおかしくなった
このまま早く帰ろう
そう思っていた
話しに行くか悩んでいたが
向こうも今の友人や関わりがある
(1番は何話せばいいかわからねぇからだけど)
急ぎ足で会場を後にし、エントランスまで向かう
その時だった
「辰冴!」
後ろから声が響く
その声に俺は立ち止まった
俺のことを呼ぶのは1人しかいない
「…康」
康は走って俺のところまで来た
「…えーと、久しぶり」
少し引きつった笑顔で話を切り出した
困った時によくする笑い方
自分から来たくせに…
やっぱり変わってない、懐かしさを覚えた
「久しぶりw元気だった?」
「まぁ…そりゃね、ここじゃあれだし向こう行かね?」
そう言って連れて行かれたのは、椅子がいくつか置いてある小さなラウンジだった
2人で腰掛ける
もう会うのも何年振りなのに
不思議と気まずさはなかった
むしろ何年も経っているからなのかもしれない
「結婚おめでとう」
先に口を開いたのは俺だった
「おう、サンキュ」
照れたように笑う
左の薬指にはさっき交換した指輪がついている
「お前は?彼女いんの?」
「前までいたけど別れたw」
「ふーん…」
康はバツが悪そうな顔をした
「いやーでもまさか康が結婚するとはねwビックリした」
驚いたのはそれだけが理由ではないけど
「……今日、何で来てくれたの」
声のトーンが変わる
思いつめてたのは俺だけじゃなかったんだと、今気が付いた
「それは…」
「こーちゃん?」
走ってきた様子でこちらを覗いたのは、ウェディングドレスを着た新婦だった
「もーすごい探した…あっ、すみませんお邪魔しちゃって!どなたですか?」
こっちに気付いてなかったらしい
「上城です」
「もしかして、上城辰冴さん?」
「えっ、あ、はい」
突然名前を呼ばれたことに驚いた
「すみません、いきなりビックリしましたよね…あの、招待状出す時、こいつには出したいって珍しくこーちゃんが言ってたから名前覚えちゃって」
「おまっ、バカ余計なこと言うな」
まさかそんなことがあったなんて
驚くと共に嬉しくなった
「高校時代の親友って…」
“親友”本当はそんな仲じゃない
でも俺には充分過ぎる称号だった
あの康がそんな風に言ってくれたことが、ただ嬉しかった
「康とは、仲良くさせてもらってました」
立ち上がって、前を向く
「素直じゃないし、わがままだけど、本当はすごく優しいし、いい奴です」
「ずっと、最高の親友でした」
そして深くお辞儀をした
「結婚おめでとうございます、末永くお幸せに」
俺ができる精一杯の祝辞
どうかこのまま永遠に
康はどんな顔をしていたのだろう
「ありがとうございます!」
新婦は嬉しそうに笑った
笑顔の似合う明るい人だ
「あっ、写真撮らなきゃいけないから早く来てね?」
「わかったよ」
「それじゃあ上城さん、さようなら!」
彼女はまた走っていった
「じゃあ、俺もそろそろ帰るね」
康に背を向ける
「辰冴」
腕を引き寄せられ体が自然と振り向いた
…駄目だよ
俺の手が、康の唇をそっと塞いだ
「じゃあね」
何で、あの時にしてくれなかったの
俺達は終わらせたんだ
綺麗さっぱり、何もかも
もう縛られることはない
俺は振り向かずにラウンジを後にした
これでやっと、戻れたよ
読んでいただきありがとうございました!
いつもはもっと幸せな話を書いています笑
康くん視点の方もよかったら読んでいってください!
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