魔法の訓練
翌朝
朝はスッキリと起きることができた。
今日は待ちに待った魔法の訓練の日だった。
昨日はぐっすりと寝て今日という日に備えていた。
早起きはいいものだな。
少し経つと真斗が起きた。
やはり起きる順番は変わらないらしいな。
「おはよう、真斗」
「おはよ、優」
真斗は眠そうにそう言った。
後に聞いたが僕同様、魔法訓練に興奮して夜眠れなかったそうだ。
もう時間なので拓実、恭平を起こして朝食を食べ終え、訓練場に向かった。
訓練場に着くと4人の専属の女の子がいた。
「「「「おはようございます、勇者様」」」」
「「「「おはよう」」」」
挨拶を済ませ、女の子達はそれぞれ専属のもとへと向かう。
僕の専属はクレアさんだ。目が合った、それだけで緊張する。
「おはようございます、クレアさん。今日はよろしくお願いします」
「おはようございます、優様。こちらこそよろしくお願いします」
そう言って微笑んでくれた。無表情とのギャップがあってさらに可愛い、と思った。
「優様⁉︎顔が赤いのですがどうかなされましたか?」
「い、いえ、何でもありません。大丈夫です」
周りを見ると僕を見てニヤニヤしている男3人。僕はそれを無視し、平静を装って話し掛ける。
「今日はどのような訓練を?」
「今日はとりあえず低級、中級の魔法をお教え致します」
「えぇーと、そんな畏まった喋り方ではなく、普通に話しませんか?」
「そんな、勇者様にそんな言葉遣いなど出来ません」
「でも僕等は友達じゃないっけ?」
「ッッ‼︎そ、それもそうですね。次からはそうします。基本この喋り方ですので丁寧になり過ぎない様にします」
「はい、よろしくお願いします」
そう言って微笑むとクレアさんの顔が少し赤くなっている気がする。熱かな?
「クレアさん、熱でもあるのですか?」
クレアさんの額と自分の額を合わせる。少しの沈黙が訪れ、すぐに自分の現状に気付く。
僕とクレアさんはぱっと同時に離れた。
「す、すいません突然」
「い、いえ大丈夫ですよ…」
クレアさんは先ほどよりも赤い顔をして顔を手で覆っている。少し気まずい…
僕達が魔法の訓練を始めたのはそれから一時間後だった。
「魔法には詠唱があり、そしてその魔法をイメージして放つことで初めて魔法が発動されます。慣れてくると詠唱は破棄出来ますが初めはやはり詠唱した方が安全です。では…
《火の精霊よ、我が手に宿れ》
クレアさんの手には小さな炎の球体が浮かび上がる。小さいがこれはれっきとした炎だ。
「これは火の低級魔法【火球】です。炎の大きさは放出した魔法力の大きさに比例します。魔法力の制御に気を付けてやってみて下さい」
よし、やるぞ!
《火の精霊よ、我が手に宿れ》
今度は自分の手にクレアさんと同じような赤い炎が浮かび上がる。
「流石は勇者様ですね。まこと感心致しました。」
「クレアさん、口調口調」
「ご、ごめんなさい。油断するとすぐ…」
慌てるクレアさんも可愛らしい。
そんな感じで訓練していると真斗とミルクさんがやって来た。
「おっす、優。順調か?」
「今ようやく低級魔法を覚えたよ」
「まだそこかよ?俺らは中級入るぞ?」
「僕らは僕らのペースですすめるよ」
「ん、それもそうだな。頑張ろうぜー」
「おう」
一方クレアとミルクでは
「クレアさん、優さんとの訓練はどうですか?」
「はい、物覚えが良くて非常に優秀な方で助かります」
「そうですか…ところで、優さんのことどう思ってるんですか?」
「えぇぇっ‼︎優さんは非常に優しくて、カッコよくて、優しくて…」
「優しい2回入ってますよ」
「と、とにかくいい殿方です」
「も、もしかしてクレアさん優さんに一目惚れとか…?」
「えぇぇ、そ、そうなのでしょうか?
これが一目惚れなのでしょうか?正直、恋愛とは私にはよく分かりません」
「そうですか(ここはあまり深入りしない方がいいですね。なんか焦ったいですが)」
「おーい、ミルク。訓練続けんぞ」
「分かりました、真斗さん。では、また後で」
「はい」
それから何時間も経って、僕達4人は全員中級魔法は覚えられた。魔法習って1日でこれとは上出来だろう。
次はいよいよ上級魔法、精霊級魔法だな。
どんなのがあるんだろうか。
訓練が終わるとアリス王女が待っていた。
「皆さん、1日で中級魔法を使えるようになるとは素晴らしいですわ」
「専属の皆さんが良い証拠ですよ」
「確かにそうだ」
「ボクもそう思うよ」
「一応俺も」
僕達男性陣がそれぞれの専属の方を褒めると
みんな照れたように笑った。
しかし、王女はそんな楽し気な雰囲気を出す僕達に拗ねたように言う。
「私も皆さんと遊びたかったですわ」
一応訓練なんだけどね。
そう言えば、明日は休みだから…
「明日とかはどうですか?」
「そうですわね。確か私もおやすみでしたわ」
「よし、決まりだな」
「何処かに遊びに行く?」
「良ければ、明日私達だけでピクニックでも行きませんか?」
「アリス王女はいいんですか?」
護衛とか絶対居そうだけど
「そんな危険なところでもないので護衛はいらないと思いますし、堅苦しいのは好きではありませんの」
僕等は苦笑いしながら明日の予定について話し合った。