第八話「アオ」
修理と花山先生と別れた後、やることのなかった俺は、とりあえずこの学園の校舎を見て回ることにした。
この学園は生徒が授業を受ける学舎と、機甲鎧整備の実習をする実習棟の二つに別れていて、今俺がいるのは実習棟の方だった。
それにしても本当に広いな、ここ。整備の実習用の機甲鎧がいくつも置いてあるとはいえ、学舎の二倍以上広く造ることないだろう? ……というかここどこだ?
学園探索を初めて十分で見事なまでに迷子になった俺。
出口を探して実習棟をさ迷っていると、扉が開いた部屋を見つけた。何だあれ? 教師が鍵をかけ忘れたのか?
気になって部屋の中を見てみると、部屋の中はとても広くて奥には巨大な一つの人影が見えた。
……あれは機甲鎧か?
どうやらこの部屋は機甲鎧整備の実習室のようで、機甲鎧の周りには整備用の機材が置かれていて、俺は気がつけば機甲鎧の手前まで歩み寄っていた。
機甲鎧。強大な力をもって悪霊獣と戦って市民を護る鋼鉄の侍の半身。
十年前に俺を悪霊獣から助けてくれた義父さんも侍で、初めて会った時は機甲鎧に乗っていた。
『本当は侍になって実際に機甲鎧に乗りたかったんだけど、それが出来ないから整備士の道を選んだってわけ』
何故か以前修理が言った言葉を思い出した。
修理は、アイツは本当は機甲鎧に乗りたくて、でも乗れないから少しでも機甲鎧に触れられる整備士になろうとこの学園に来た。でも俺は……。
『お前も機甲鎧に興味があるからこの学園に入学したんだろ?』
いや、違う。違うんだよ修理。
俺は別に機甲鎧にはそれほど興味はないんだ。俺はただ……、
「ねぇ貴方、機甲鎧に乗らないの?」
………!?
突然聞こえてきた声に振り向けばそこには一人の女性が俺を見ていた。
背は俺よりも少し低くて、歳は俺と同じか少し下くらいか?
青の着物を着崩している青い髪が特徴的な女性。
一体誰だ? この学園の生徒じゃないよね?
「私? 私はアオ。よろしくね」
俺が聞くと青の着物の女性、アオを笑顔を浮かべて名乗ってくれた。
……って、アオ? それが君の名前?
「そだよ。それで貴方の名前は?」
俺? 俺は……日善カズトだ。
「カズトか。いい名前だね。それでカズトはあの機甲鎧に乗らないの? さっきからずっと見ていたから乗りたいんじゃないの?」
い、いや。俺は別に……その、乗れないし……。
「え? 何で?」
俺の言葉が理解できないとばかりに首を傾げるアオ。
何でってそれは……、
「だってカズト、『侍』でしょ?」
……っ!?




