第六話「ZIN」
「……によってもたらされた超エネルギー『ZIN』を導入することで当時の天文帝国にあった技術的問題点は全て解決されて、科学技術は一気に飛躍的な成長を遂げました」
花山先生の挨拶の後、俺達生徒は生徒同士の自己紹介を終えてから早速初授業を受けていた。
授業の内容は天文帝国で使用されているエネルギー「ZIN」についての講習だ。
ZINとは「大光源」と呼ばれる銀河の中心から放出されているエネルギーことで、天文帝国は今から千年以上昔に「とある存在」からこのエネルギーと利用法を教えられたという。その当時はまだ一つの惑星の小国家にすぎなかった天文帝国は、ZINを導入することで驚異的な技術進化を遂げるとわずか数年で惑星の覇権を握り、惑星を統一国家にしてから宇宙にと進出したのだ。
「ZINは様々な特徴を持つ優れたエネルギーでありますが、その中で一番の特徴は『あらゆる物質に保存することができる』ということです」
黒板に「一番の特徴」という文字を書きながら花山先生が授業を続ける。
「保存する物質によって保存できるエネルギー量と時間は異なりますが、ZINはあらゆる物質に保存することができてこれは生物の体であっても例外ではありません。そして生物の体、人体にZINを宿らせた場合その人間にはある副作用が発生します」
花山先生は「ZINを人体に宿らせた場合の副作用」と黒板に書くと一旦言葉を切った。
「ZINを人体に宿らせた場合、その人間は体内にZINがある間、身体能力と知覚能力が大幅に上がり、更に『絶対操作能力』という超能力が使用できます。この絶対操作能力は手に触れた物質に体内のZINと自分の意思を送り込むことにより対象を自分の思うまま操れる能力で、この能力を使えば初めて乗る乗り物でも自由に操縦することができます」
ZINを宿らせた人間は、身体能力と知覚能力が強化される上に、絶対操作能力というどんな乗り物でも乗れる超能力まで使える文字通りの超人となれる。しかし全ての人間がそんな超人になれるのかと聞かれたら答えは否だ。
「しかし人間の体は基本的にZINの保存に向いておらず、『例外』を除いて人体が保存できるZINの量はごく僅かで、それも十分程度で自然消滅します。そして『例外』、常人が保存できる百倍以上のZINを長時間体内に保存できる人間こそが侍様なのです」
花山先生が黒板に「侍のZIN保存量、常人の百倍以上」と書いて話をしめくくる。
つまり侍とは、体内に宿らせたZINと絶対操作能力を使って機甲鎧という人型の兵器を操り悪霊獣と戦う兵士のことなのだ。そしてそれができる者は出身が何であれ侍として迎えられる。
しかし体内に保存できるZINの量は才能、体質的な問題で、天文帝国でも「ZINの保存量を増やす研究」は行われているのだが、いまだに目立った成果は発表されていない。
そのため天文帝国の侍達は、大量のZINを体内に保存できる人材を見つけては積極的に自分達の軍隊、あるいは血族に引き入れようとしているのだった。