第四十話「二段攻撃」
『………』
ゴォウ!
俺が神器の弓矢を構えたのを見て、海賊の御手型機甲鎧は速度を更に上げて、機体の軌道も複雑にしてきた。
右に飛んだかと思えば体勢を変えないまま左に飛び、直進してきたかと思えば後ろに退避してから上空に飛ぶ。
あまりにもデタラメな軌道の高速移動でこちらを撹乱してくる敵の機甲鎧。
御手型機甲鎧の海賊、本当に何者なんだ? いくら機甲鎧の操縦者はZINで身体能力と耐久力を上げることができると言っても、あんなメチャクチャな動きをしたらもたないぞ?
「カズト! 右!」
ガガガガッ! ドガン!
右側に回り込んできた海賊の御手型機甲鎧が機関砲を発射してくる。弓矢を構えていたので大きく動けなかった俺は、それを避けきれず右肩と右足に被弾してしまった。
くうっ! 機体の損傷は大きくないけどかなり揺れるな。頭をぶつけたぞ。
「カズト。無理に狙いをつける必要はないから。視界にあの機甲鎧がはいったらすぐに射って。あとは私がなんとかするから」
分かった。任せるぞ、アオ。
弓矢を構えた体勢のまま敵の攻撃による被害をできるだけ最小限に抑えて射撃の機会を待つ。敵は相変わらず高速で動き回っているが、こうしていれば射撃の機会も………っ! 今だ!
バシュ!
海賊の機甲鎧が視界の端に映った瞬間、俺は神器の矢を放った。矢は海賊の機甲鎧がいる方向とは全く違う方向に飛んでいくが、それでも俺達には、アオには十分だった。
「弾けなさい!」
バァン!
アオの言葉を合図に矢が爆発して無数の光の帯が生まれ、光の帯が海賊の機甲鎧に向かっていく。以前、神鳴寺機甲鎧戦術教導院で悪霊獣の群れと戦った時にアオが使った必殺の一撃だ。
光の帯はまるで生きているかのように海賊の機甲鎧を追っていくが、海賊の機甲鎧は高速で飛び回って光の帯を回避し、そのうち時間が経つごとに一本、また一本と光の帯が消えていった。
なんていう回避能力だよ。悪霊獣の群れを一撃で葬った攻撃もあの海賊の機甲鎧には通用しないか。………でもな。
「それも予測済みなのよ! カズト!」
ああっ!
ブゥン!
最後の光の帯が消えようとした瞬間、俺は左手に持っていた神器の弓を投げつけた。そしてその次の瞬間……、
「今度こそ! 弾けなさい!」
バァン!
アオの言葉に弓が弾けて無数の光の帯となり、光の帯の群れは丁度回避運動をとっていた海賊の機甲鎧の正面から襲いかかる。よし! タイミングも角度も完璧! これなら当たる!
事実、海賊の機甲鎧は光の帯の群れに気づいても回避が間に合いそうもなく、その時通信回線から海賊の機甲鎧からのと思われる若い男の声が聞こえてきた。
『うわっ!? これはマズ……』
ズバババッ!
通信回線から男の声が聞こえてきた直後に、俺が放った光の帯の群れは海賊の機甲鎧を包み込んだ。




