第四話「同居人」
一階にあるエレベーターに乗って六階に上がると、部屋の番号を確認しながら通路を歩く。
寮生が出払っていてここまで誰とも会わなかったが、通路は綺麗に掃除されている上に壁に絵まで飾ってあって、学生寮というよりもまるで旅館みたいだった。
さて五号室は一体どこだろうか? この部屋は七号室だからその隣は六号室で……ああ、あった五号室。
ガチャリ。
受付の女性から受け取った鍵で扉を開く。
俺と相部屋になる同居人は一体どんな人なんだろうか? 仲良くできればいいんだけ……ど……。
………。
……………。
…………………ナンダコレ?
扉を開けて部屋の中を見てみると、いたる所に服やら雑誌やらゴミやらが足の踏み場もないくらいに散らかっている光景が広がり、俺は思わず固まってしまった。
これってもしかしなくても同居人の仕業だよね? 一週間前から来ているって聞いたけどもう完全に部屋を私物化してやがる。
「あれ? お前、俺の部屋の前で何をやってるんだ?」
部屋の惨状にしばらく呆然としていると、いつの間にか後ろに茶髪の俺と同い年くらいの男が立っていた。
……今、俺の部屋って言った?
「ああ、そうだぜ。それでお前は誰だ?」
そうかお前がこの部屋を……。
俺は日善カズト。今日からこの部屋で暮らすことになる君の同居人だ。
「へぇ、そうなのか。俺は花山修理。修理って呼んでくれ。まあ、少し散らかっているけど入れよ」
少し? この部屋の散らかり具合が少し?
色々言いたいことがあるのだがとりあえず部屋の中に入ると、修理は自分の寝台に手に持っていた荷物を置いた。
「いやー、丁度買い物に行っていてな。今日お前が来ると分かっていたら歓迎の菓子でも買ってきたんだけどな」
修理が寝台に置いたのは、自分の手で組み立てる機甲鎧の模型の箱だった。
……機甲鎧が好きなのか?
「あったり前だろ。俺、機甲鎧を近くで見たいから必死で勉強してこの学園に入学したんだぜ? ……まあ、補欠合格だったけどな。本当は侍になって実際に機甲鎧に乗りたかったんだけど、それが出来ないから整備士の道を選んだってわけ」
侍は世襲制だが、全ての侍が侍の親から生まれたという訳ではない。親が平民の子だとしても「ある条件」さえ満たしていれば侍となることができる。
とても珍しいことだが、平民出身の人間が上位の侍の私設軍に入隊して侍となり、そこで出世を繰り返して自分の領地の星を手に入れたという実話もある。
それにしても侍になる理由が機甲鎧に乗るためとは……。修理は本当に機甲鎧が好きなんだな。
「まあな。だって格好いいだろ機甲鎧って。お前も機甲鎧に興味があるからこの学園に入学したんだろ?」
……………………………………………………ああ、そうだな。
「ん? 急に暗くなってどうしたんだ? まあいいや、これからよろしくな」
こちらこそよろしく。
……もし俺が整備士の学園に入学したと、侍や機甲鎧に関わることを選んだと知ったら、義父さんはなんて言うのだろうな?