第二話「天文帝国」
航宙艦が惑星ミチマサに到着すると、俺は航宙艦港のすぐ隣にある航空艦港へと移動してから航空艦で五時間かけて入学する予定の学園がある大陸にやって来た。
やれやれ、やっとついたか。それにしても……。
「なあ、課題のレポートもうやったか?」
「え? ああ、やったけど見せねーぞ?」
「そんなこと言わずに頼むよ」
「知るか。それぐらい自分でやれって」
「ねえねえ、今度赴任してくる先生の話聞いた?」
「聞いた聞いた。何でも有名な研究所にいた人なんでしょ?」
「いや、そうじゃなくてその先生ってとっても格好いいらしいよ」
「それは知らないけど……」
さっきから街で見かける人って全員学生ばかりだな。だけどそれも仕方がないか。
この学園都市惑星ミチマサは「天文帝国」が支配している惑星の中でも最も学生の育成が盛んな星で、様々な分野の学園が集まっている。星にある建築物の全てが学園の校舎か教育機関の何らかの施設、そして総人口の七割が学生だという徹底ぶりから「学問の星」という異名があるくらいだ。
更に言うならこの星にある全ての学園は、それぞれの分野で天文帝国に知れ渡っている一流校ばかりで、この星で学生生活を送るというのはある種のステータスとなっている。
……うん。本当によく合格したよな、俺。受験勉強を頑張って本当によかった。合格通知が家にきた時は涙が出るくらい嬉しかったな。
そしてさっきから俺が言っている「天文帝国」というのはこの国の名前で、千年くらい前に宇宙に進出して今では銀河系で一番勢力がある国だったりする。
天文帝国の「天文」とは天紋、つまり夜空の星々のこと。天文帝国という名前は「夜空に浮かぶ星々の全てを領土とする帝国」という意味で付けられたらしい。
……本当、よくもここまで強気な名前を付けたなと思う。まあでも、銀河系の四分の三を支配をしているのだからあながち虚勢でもないか……ん?
『本日未明。惑星エンセイに「悪霊獣」の群れが出現しましたが、惑星エンセイの領主である雲井・雷甲・光政・五光月様が自ら機甲鎧部隊を率いて撃退したため、幸いにも都市部の被害は軽微でした』
ふと見ると街道に設置されている大型掲示板が別の星で起こった事件を報道していて、大型掲示板の画面には立体化した影のような黒の巨人の群れと鋼鉄の装甲を身に纏った機械仕掛けの巨人の部隊が戦っている映像が映っていた。