第十六話「起動」
「力を貸してくれって……カズト、ようやくその気になってくれたの!?」
俺の言葉にアオが感激した表情を浮かべる。って! 抱きつくなって!
し、仕方がないだろ。ここで何もしないと皆が危険なんだから。それよりもアオ、頼むぞ。
「任せて♪ それじゃあカズト、目を閉じて力を抜いて。今から私の力を貴方の魂に送り込むからそれを拒まないで」
分かった。こうか? ………………!?
アオの言葉に従って体の力を抜くと、その途端に身体に変化が起こり、様々な感覚が俺を襲った。
体の奥底に火がついたかのように熱くなり、吹き出た熱気が身体全身を、細胞の一つ一つまで包み込む。
心臓が爆発したかのように鼓動が早くなって、身体中に血液が高速で駆け巡り、骨や肉が音をたてて密度をあげていく。
神経に電流が走って脳細胞が一つ残らず覚醒をする。
自分がアオのZINによって内側から変わり、人間の身体から「侍」という全く別の生物の身体へとなっていくのが感覚で理解できた。
「……!? お、おい、カズト? お前、その身体……?」
今の俺の身体は青いZINの光に包まれていて、それにいち早く気づいた修理が驚いた顔で俺を見る。だが今は説明をしている時間はない。
修理。俺、ちょっと行ってくる。
「え? 行くって、どこに……?」
「カズト、今の貴方の身体は侍の身体になっていて、全ての能力が強化されているの。最初は戸惑うかもだけど、まずはゆっくりと手足を動かし……」
行くぞ。
アオの言葉を途中で遮り、俺は床を強くけると格納庫の奥へと向かって走り出した。
流石は侍の身体というべきか、走り出してわずか数秒で目的の御手型機甲鎧の所まで辿り着くと、そのまま機甲鎧の側にあった階段を使わず大きくジャンプして機甲鎧の胸の部分にある操縦席に入った。
操縦席に入って胸部装甲を閉めると、まずは機体情報を確認。
御手型機甲鎧「鋼士」……一つ前の世代の機体か。
武装は両腕部に高振動刀剣「コガラスマル」が一振りずつに、展開式機関砲「タネガシマ」が一門ずつ。ただし機関砲に装填されているのは模擬弾だけで、実際に使える武装は刀剣だけか。
……ん? 今、機体の下半身に反応が……。
「カズト? さっきから随分手慣れているけど、もしかして前にも機甲鎧に乗ったことがあるの?」
俺が機甲鎧のコンピューターを操作しているとアオが不思議そうな顔をして聞いてくる。
今はそんなこと話している場合じゃないだろ。それより絶対操作能力を使ってこの機体を動かすから、力を貸してくれ。
「うん。分かった。最初は私が能力を使って貴方と機体を一つにするから」
……頼む。
身体にアオのZINが流れ込んできたのを確認すると、俺は目を閉じて意識を集中した。
俺の身体からZINが機甲鎧へと流れていくのが分かる。
俺の意識がZINにのって機甲鎧の機体を巡回して、機甲鎧が俺のもう一つの身体になっていくのが実感できる。
「カズト、もういいよ」
アオに言われて目を開くと、視界に映ったのは操縦席の内部ではなかった。今俺が見ているのは高い視点、機甲鎧の目から見ている格納庫の中だった。
「これでこの機体は貴方のもの。貴方の思い通りに動くよ」
そうか、分かったよ。
……義父さん、ゴメン。約束、破るよ。
俺は小さく呟くと機甲鎧を動かした。




