第十二話「神鳴寺機甲鎧戦術教導院」
「おーい、カズト。何怖い顔しているんだよ?」
アオと話していると修理が料理をのせた盆を持ってやって来た。
別に何でもないよ。
「何でもないってことはないだろう? さっきから難しい顔をしてブツブツ独り言を言ってたじゃないか? 見てて不気味だったぞ」
「や~い。不気味不気味♪」
修理の後ろで宙に浮かんだアオがふざけたように言う。当然彼女の言葉と姿は修理には認識できていない。
黙れアオ。誰のせいだと思っているんだ。
「何か悩みでもあるのか? 俺でよかったら相談にのるぜ」
俺の隣の席に座って修理が聞いてくる。
悩みか……。そうだな、実は俺の同居人が部屋を散らかして、また床から足の踏み場が消滅してしまったんだ。このままだと虫がわいて出そうなんだがどうしたらいいと思う?
「うんうん。あの汚ない部屋は私もないと思うわ。それにいつもカズトが片付けているのに修理ってば散らかして……カズトかわいそ~」
俺の言葉にアオが何度も深く頷く。やっぱりあの汚ない部屋は神霊もイヤだよな。
「やっ!? そ、それは……あのくらい大したことないだろ?」
ほほう。あの部屋の惨状を大したことないとな?
というかこの前、花山先生が近いうちに俺達の部屋の様子を見に来るって言っていたぞ。
「げっ!? 理華が!? マジかよ!?」
マジだ。お前は何ともないと思っていても、花山先生があの部屋を見たら多分絶対怒ると思うのだが?
「え~と、それは……あっ! 俺まで昼飯食っていなかったんだ! カズトもまだ昼飯途中だろ! 早く食っとけよ」
「話をそらした?」
そうだな、アオ。露骨に話をそらしやがったな、コイツ。
「いやいや、話なんかそらしてねぇって。午後からは俺達が待ち望んでいた授業なんだから、しっかり飯を食って力つけないとな」
昼飯を急いで食べながら反論する修理だが……俺達が待ち望んでいた授業?
「おいおい。忘れたのか? 今日の午後の授業は『神鳴寺機甲鎧戦術教導院』での機甲鎧の整備実習だぜ?」
……ああ、そういえば。




