第十話「同居人追加」
やれやれ、やっと帰ってこれたか。
学園の実習室で神霊の女性、青火姫ことアオの提案を断った後、俺は何とか出口を見つけて校舎を出ると学生寮に帰ってきた。
「ふ~ん。ここがカズトの家なんだ? 中々いい家じゃない」
俺の後ろについてきていたアオが学生寮を見て感心したように言う。
いや、ここは別に俺の家じゃないから。部屋の一つを借りているだけだから。
「え、そうなの?」
そうなんだよ。
どうやら俺はアオにかなり気に入られたようで、学園の実習室からこの学生寮までずっと付きまとわれていた。
俺が学生寮の通路を歩いて自分の部屋の扉を開けると、部屋の中を見たアオが顔をしかめる。
「うわっ、汚な! ちょっとカズト、部屋の掃除くらいしなさいよ」
うるさいな。部屋を汚したのは俺じゃなくて修理、同居人だ。それにこれでもかなり片付いたんだからな。
「え? これで?」
そうだよ。修理の奴がいくら言っても片付けようとしないから俺が一人で部屋の掃除をしたんだよ。
「ふ~ん。大変だね」
それよりいつまで付きまとうつもりなんだ? いくら君が神霊だといってもここは基本的に学園の生徒以外入ってはいけないのだけど。
「固いことを言わないでよ。私と貴方は一心同体なんだから」
一心同体? 一体何を言っているんだ。君を俺の体に宿らせる話だったらもう断ったはずだ。
「……あ~、そのことなんだけど実は私、もうすでにカズトの体に宿っているんだよね~。アハハ……」
………………………………………………ハイ?
俺の体に、君が宿っている?
「う、うん。そう……」
何時宿った?
「実習室で出会った時に。ほら、私達神霊って中々波長が合う人がいなくて、それこそ百年に一人出会うか出会わないかってくらなの。だから私と波長が貴方を見つけた時、嬉しくなってつい勢いで……」
勢いってそんな、本人の断りもなく……。というか百年に出会うか出会わないかって、君は一体何歳……、
「カズト」
………………………!?
さっきまで申し訳なさそうな顔をしていたアオが突然真顔になって俺の名を呼ぶと、全身に凄まじい悪寒が走った。
しまった。どうやら地雷を踏んでしまったようだ。
「カズト? それ以上言ったら……分かるよね?」
分かりました。ご無礼お許しください。青火姫様。アオ様。
「うん。よろしい♪ それじゃあ私、先に休むから部屋の掃除頑張ってね♪」
そう言うとアオの体が青色の炎にと変わり、アオだった青色の炎が俺の体にと入っていった。どうやらアオが俺に宿ったという話は本当のようだ。
……でも確か神霊って、一度人間に宿ったらその宿主が死ぬまで離れられないんじゃなかったっけ?




