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復活

私の顔した魔女が泣きだしそうな顔で、唇を噛み締めてる。



「ごめんね……

 アンタ一人に、辛いコト全部押し付けて。苦しかったよね?

 ごめん……」


夢を信じられなかった私。

夢に嫉妬してた私。

夢が欲しかった私。



臆病で狡くて卑怯な私を。

全部魔女が引き受けてくれてたんだ……




「ごめんね。遅くなって。

 助けに来たよ。あなたを」



私はそう言って、同じ顔した魔女を抱きしめた。



魔女の瞳から、溢れる涙は。


私の涙。




すべてのユメを壊したいと願いながら、本当は救いを求めてた。



私が受け止めなきゃいけなかったのは。


そんな私自身。




片手を魔女にかけたまま、ゆっくりと振り返って、ドーラを見る。



「ドーラにも。ごめんね」


私の弱さで振り回しちゃったね。



でも。このエンディングは、ドーラも納得してくれるよね……?





「ドーラ。


 アンタも。



 私だったんだね……」





そう声をかけた私に。


同じく涙目のドーラが。



ゆっくりと、頷いた。




始めから、この世界のコトをわかってたドーラ。


なぜか私のココロを読むことが出来たドーラ。



そして。


無力で役立たずなんだと自分を卑下してたドーラ。




ドーラも。


迷いながら、怖がりながら、へこみながら。


それでもなんとか諦めたくないって足掻いてる……



私だったんだ。






「これでよかったよね?」


魔女の肩を抱きながら、ドーラを見つめる。



「うん。ありがとう」


そう答えてくれるドーラは、ふわりふわりと私達の元にやってきてくれる。



「アンタが居てくれて、本当よかった。

 私たち、意外と無力じゃないんじゃない?」



チラリと横目にドーラを見ると、垂れ目を細くして微笑んでる。




右手に魔女の手を。

左手にドーラの手を。


それぞれ大切に握る。




「さてと。一緒に願おっか?



 すべてのユメの復活を」




私たちが壊してしまったユメたち。



もう一度、強く在ることを祈るから。



それぞれの持ち主の元に帰って……



大きく華開いてね。






強く握りしめた手を。

二人とも、同じ強さで握り返してくれる。




『私たちは、ユメを信じてる。


 そして、強く願う。



 すべてのユメは


 世界に 溢れてる』




3つの声が重なって。



暗い広間を中心に、光が溢れてく。





溢れた光が、至る所に舞い降りて。



そこから、小さな目が吹き出していく。





小さな若葉。

膨らんでいく蕾。

大きく咲き乱れる華。




すべてのユメは、もう一度咲き始める。




今は、まだ土の中に居て、目には見えないユメたちも、いつか花開くことを夢見て眠ってる。





「私たちの種は、まだ土の中かな?」


私がそう尋ねれば、


「枯らさないようにしなきゃね」


と魔女が笑う。


「ゆっくり温めていけばいいんだよね」


そうドーラが口をはさむ。



うん。


大丈夫。



たとえ一度は枯れたって。

また種から見つけるわ。





私たちの華も。


いつか必ず大きく花開く。





「ユメカ。そろそろタイムリミットみたい」


ドーラが少し淋しそうに話す。



「そっか……


 でも。


 私たち、いつも一緒だもんね。



 夢の中でも、アンタたちに会えて、ホント良かったよ。




 ありがとう」



心をこめて。


「ありがとう」を口にした。



でも、魔女は「自分で自分に感謝するなんて、変だよ」とそっぽを向く。


ドーラは「もう迷子になるんじゃないぞ」と偉そうにしてる。



そんな二人の手を、もう一度に握りしめる。



強く。強く。




「またね。今度は仲良く楽しく喋ろうね」


そういう私に、またも二人はなんか文句言ってる。





もっと、二人の声を聞いていたいのに。




だんだんその声は遠くなって……




「ユメカ! もう! 起こしてあげないわよ!? 遅刻したって知らないから」



目覚めた瞬間、目の前に浮かんでたのは鬼の形相……



じゃなくて、お母さんの顔。




ホントに。


夢だったんだ……





時計を見れば、明らかに寝坊レベルの時間で。


感慨に浸る間もなく、私は跳び起きて支度を始めた。





「行ってきますっ!」


慌ただしく家を出て走り始める。



5分も経たないうちに息が切れて、足に限界が来た。



もぉ。夢の中みたいには走れないか。



ちょっとだけ夢を思い出して笑いそうになった時。


「もうへばってんのかよ、ユメカ」



後ろから、そう声をかけてきたのは。


いつも通り朝練に向かう途中のアユムだった。




一瞬、ぼーっとアユムの顔を見つめてしまい、真面目に心配されたりして。



「違うよっ! 何でもないから」


そう。

なんでもない。



いつも通り。

光に満ちたアユムの瞳。



「アユムはまたサッカー?」


そう尋ねれば、「もちろん!」と笑顔が返ってくる。




その笑顔が、眩しくて。

その笑顔が、大好きで。



「いつか。ホントにプロになってね」


そう声をかければ、「おう!ぜってーな」と嬉しそうに笑ってくれる。



「じゃ。先行くぞ」


そう言い残して、振り返りもせず走り出すアユムの背中に向かって。



「信じてるから。私がファン一号ね」


そう呼びかけた。




今まで通り、夢に向かって走ってるアユム。



今頃、カンガルーママは優しい夢を見れてるかな……



階段おばばの掃除はドーラともう一人の私が頑張ってると信じてるよ。



きっと喧嘩は絶えなさそうだけど。







さて……と。




私は私の夢を育てますかぁ。




ねぇ、ドーラ。


魔女も一緒に。




信じてて。ね?









 


【終】

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