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対決


昨日の夢に大好きなバンドのヴォーカルが出てきたんだと、嬉しそうに語る友達。



ただの夢なのに。

馬鹿じゃないの?


そう蔑んだ。



……羨ましかったくせに。





将来は看護婦さんになりたいんだと話した妹。


どうせすぐ違うものになりたいって意見を変えるんだろ。


始めから小馬鹿にして。

ちっとも応援なんてしてあげなかった。



自分には、そんな夢さえ描けなかったのに。






あ。


でも。



ほら。



アユムは?


夢を追い掛けてるアユムが大好きで。


私はそんなアユムを応援してた。



そうだよ……



「そういえば。あの男の子。あの子の夢も……消えてもらえてよかったでしょ? 感謝しなさいよ?」


違うっ!!

夢を忘れたアユムなんて、アユムじゃないみたいだったもの。



アユムの顔を思い出して、なんとか意志を保つ。



なのに。





「あなたにとっては邪魔だったものねぇ? あんな夢のせいで、あなたが彼に入り込む隙なんてなかったもの。

 そんな夢よりも私を見てよって。あなた、本当はそう思ってたわよね?」




あ……



あぁ……




どんどん。


崩れてく。





そうだ。


そうだった。






私は……夢を信じちゃいなかった。


夢を持ってもなかったし、夢を応援することもなかった。





そうだよ……



最初にドーラから話を聞いた時。



すべてのユメが消え去るなら、それはそれでいいんじゃないかって。



そう思ったのも、私だ……






私、何偉そうにユメを取り返すだとか、ユメを守るだとか、言ってたんだろう。





私なんて


始めから


ユメを


持ってなかった


っていうのに……





魔女が嬉しそうに笑ってる。




あぁ。でも。



私には守れないよ……



ごめん。


ごめん。


ごめん。


ごめん……








「ユメカっ!! ダメだよっ。そんな言葉に惑わされないでっ!?」



あれ……?



遠くで、声が聞こえる。




「一緒にココまで来てくれたじゃないかっ!? 一緒にユメを守るって、約束したじゃないかっ!?」




ダレ……?


何言ってんの?




「ユメカ!? ユメカ!?

 諦めないって。信じるって。約束したじゃないか!!」





うっすらと。



涙目のカンガルーもどきの顔が浮かぶ。



それから。


光をなくしたアユムの顔も。



嬉しそうに微笑んでくれた階段おばばの顔も。





そして。




真っ白なゴマフアザラシの顔も。








「ドーラ……?」


名前を呟くと、ドーラは垂れ目から涙を流しながら。

「バカユメカ……」

そう声を漏らした。




ぼやけてた頭ん中が、はっきりしていく。



崩れてかけた世界が戻っていく。




「ごめんね。ドーラ」



もう。大丈夫。


ドーラとの約束は。

ちゃんと覚えてるから。





はっきりと戻ってきた意識。



ついさっきまでニヤリと笑ってた魔女が悔しそうな顔をしてる。



「ごめんね? アンタの思い通りにならなくて」


今度は私がニヤリと笑ってやった。



「ご期待に添えずで悪いけど。私夢を大切に思ってるから。

 現実にないコトだっていいじゃない? 叶わないかもしれない。それでも追い掛けてみたっていいじゃない? 時には抱く夢が変わることだって悪くないよ」



うん。


そうだよ。



今は、自分の中にユメが見つからなくても。


いつかユメを見つけられるって、信じてる。



一度なくしてしまったとしても。


また見つけられるって、信じてる。





「私も。ユメを持ってるわ」



気付けば、簡単なコトだったのに。



「この世界自体、私の夢の中だったんだものね、ドーラ?」


横で浮いてるドーラがにっこりと微笑んで、私の言葉に同意してくれる。




それから。




「もう一つ。気付いたコトがあるわ」



そう言って、私は魔女に近付いていった。




ズカズカと近付いていく私に、魔女は恐怖するように後ずさってく。


「イヤっ! 来ないで!」



そう言われて止まるわけにはいかないんだ。


「私も、もう逃げないから。アンタも観念しなよ」



さっき。

ドーラの顔が浮かんだ時。


全部、気付いた。




どうして私のユメに魔女が現れたのか。


どうして私だけがユメを守れるコトになってたのか。



どうして魔女が私のココロの奥にしまい込んだ闇を見つけ出せてたのか。




気付いた時に、全部繋がったんだ……





壁にもたれるまで追い詰められた魔女の制止を押さえて。


私は彼女の真っ黒なフードを掴み、思い切り引っ張った。





現れた魔女の素顔は。





私と同じ瓜二つの顔。





「アンタも、私だったんだね……」




そう。


彼女は私自身。




私の弱さと醜さが作り上げた、もう一人の私。




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