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八刃列伝  作者: 鈴神楽
第一期
9/22

不思議な三角関係

ちょっと変わった三角関係のお話です

 霧流家の広大な庭に無数のペットが蔓延る本家宅。

「ハジメ義姉さん、おはようございます」

 頭を下げるのは、人を結びつける雰囲気を持つ女性、現在の霧流の長、霧流七華ナナカ

 それに答えるのは、清楚って言葉が良く似合う女性、七華の兄、一刃カズバの妻、霧流ハジメである。

「七華さん、おはようございます。ところで、夫をみませんでしたか?」

 七華の顔が引きつる。

「また消えたんですか?」

 ハジメが溜息を吐く。

「それでは、また聖地巡りにでも行ったのですね」

 遠い目をするハジメに頭を下げる七華。

「本当に駄目な兄ですいません」

 そんな母親達の会話を聞きながら、ハーフな雰囲気を持つ中学生の少年が言う。

「一刃叔父さんの今度のお土産、何だろうな」

 七華の息子で、次期長、四剣シケンの言葉に、その前に座るポニーテールをした吊り目の少女が断言する。

「あのろくでなしが買って来るもんなんてろくな物は、無い!」

 そんな、一刃の娘、二華ニカの言葉に、そっくりだがツインテールで垂れ目の少女、三華ミカが答える。

「そんな事は、無いよ。可愛い物も多いよ」

「だからそんな、物を自分の趣味で買って来る父親の気持ちが解らないって言ってるの!」

 二華の言葉に四剣が笑顔で答える。

「馬鹿だな、あれは、萌キャラグッズでな、オタクには、人気が高いんだぞ」

 机を叩く二華。

「そんなオタクを父親に持った娘の気持ちも、考えろ!」

 三華は、首を傾げる。

「あちきは、平気だけどな」

 脱力する二華を七華が慰める。

「安心しなさい、貴女のセンスが標準だから」

「不思議なもんだな、私達の息子の四剣の方が、性格的に一刃義兄さんに似ている」

 何処か異国風な男性、七華の夫、霧流ブンがしみじみという。

「元々は、どちらの要素も持ってるのよ。それが育っていく中で、開花していったのが今の性格なのよ」

 霧流の裏のドン、七華達の母親、八子ハチコが締める。

 そんな霧流家の朝食だったが、実は、一刃の他にも欠員が居る。

「義父の異界への出稼ぎは、まだ長いのですか?」

 ブンの言葉に八子が頷く。

「もう慣れましたよ。ハジメさんも、ブンさんみたいに、真面目に一箇所に居る旦那なんて、珍しいのですから、ある程度は、諦めなさい」

 苦笑して頷くハジメ。

「解っています。それより、一華イチカさんは、ワンさんの帰郷に付き合ってるんですか?」

 長女の事に七華が頷く。

「そう、このままだと、あの子、あっちの世界で暮らす事になるかもね」

「女と言うのは、そういうものです。婿に来てくれたブンさんが特別なんです」

 八子の言葉にブンが頬をかく。

「私は、継ぐ家もありませんでしたから。それに今は、幸せです。可愛い子供にも恵まれてましたから」

「嬉しい、貴方!」

 抱きつく七華。

「そのまま、三人目も作ったら?」

 八子の言葉に慌てて離れる七華であった。



 四剣達は、当然の様に八刃が経営している八刃学園に通っていた。

 そして、昼休みに四剣と三華が話していた。

「七華叔母さんとブン叔父さんって仲良いよね?」

 三華の言葉に四剣が返す。

「ハジメ叔母さんと一刃叔父さんだって、二人一緒の時は、ラブラブだろう」

「うん。あちき達もあんな風になれたら良いね」

 笑顔で言う三華に顔を近づける四剣。

「ああ、愛してるよ」

 三華が目を瞑って顔を接近させるが、二人の間に割り込む二華。

「あんた達、学校で何をやってるの!」

 四剣があっさり答える。

「愛情確認のキスだよ。何か問題があったか?」

 三華も不思議そうな顔をすると二華が怒鳴る。

「中学生が学校でそんな事をしたらいけないでしょうが!」

「でも、八子お祖母ちゃんは、あちき達の年頃の頃は、六牙お祖父ちゃんやりまくりだって言ってた。それに、早く曾孫を見せろって」

 三華の答えに二華が拳を握り締める。

「本気で節操無い人なんだから! とにかく、学校で不純異性交遊は、禁止!」

「それなら大丈夫だ」

 四剣の笑顔の答えに二華が聞き返す。

「何を根拠にそんな事を言うのよ?」

 四剣は、三華を抱きしめて言う。

「俺の三華への思いは、純粋だからな」

「嬉しい」

 二人が再び顔を近づけるので、手を間に入れる二華。

「馬鹿な事を言っていない。だいたい、四剣、あんた前にあたしの事を、あ……愛してるって言ってなかった?」

 顔を真赤にする二華に四剣が頷く。

「もちろん、二華の事を愛してるのは、間違いない事実。二華の為だったら、百爪ビャクソウ様にも喧嘩を売れるよ」

 この世界で、間違いなく最強の存在、百爪を引き合いに出されて二華が嬉しそうにしながらそっぽを向く。

「馬鹿な事を言ってるんじゃないわよ」

 そこに三華が入ってくる。

「あちきの為にも戦ってくれるよね!」

 自信たっぷりの顔の質問に四剣があっさり頷く。

「当然だろう。なんで三華の為にする事に躊躇が必要なんだい?」

 二華が机を粉砕する。

「何それ! あんたにとっては、二人とも同じだって言いたいの!」

 四剣が真面目な顔をして答える。

「そうだ、俺は、二人とも大好きだ!」

 二華は、四剣の襟首を掴み、怒気を込めて言う。

「あんたね、あたしと三華が双子だからって堂々と二股宣言してるんじゃないわよ!」

 四剣が眉をひそめる。

「それは、勘違いだ。二人が双子だからとか、従姉妹だからとかは、関係ない。一緒に生活をして、それぞれの好きな所があって、どっちも好きになった。それだけだ」

「そういうのを優柔不断って言うの!」

 二華が怒鳴ると四剣が真面目な顔をして反論する。

「それも勘違いだ。俺は、断言できる。二人を一生愛し続けると!」

 大きく深呼吸をして少し落ち着かせてから二華が言う。

「四剣、日本の憲法では、重婚は、犯罪って知ってる?」

 その言葉に三華が手をあげる。

「それだったら大丈夫。あちきは、認知さえしてもらえれば愛人でも構わないから。正妻の座は、真面目な二華の物だよ」

「理解ある恋人で助かる」

 四剣に言われて嬉しそうに微笑む三華。

 そんな二人を見て二華が背中を向ける。

「だったら二人で好きにすれば!」

 そのまま駆けだそうとする二華の手首を四剣が掴む。

「無理しても駄目だぞ。二華が俺の事を好きな事くらい知ってるんだからな」

 二華は、慌てふためき言う。

「何を根拠にそんな事を言うの!」

「態度でバレバレだよ」

 あっさり答える三華を睨む二華。

「それじゃあ、聞くが、お前は、俺の事を好きじゃないのか?」

 四剣に正面から真面目な顔で質問され、思わず顔を背ける二華。

「……そんな事をいきなり言われても答えられない」

 四剣は、そんな二華を抱きしめて言う。

「馬鹿、お前の気持ちは、知ってるよ。素直に成れないそんなお前も大好きだ」

 顔を真赤にする二華だったが、搾り出すように言う。

「それでも、二人ともって言うのは、おかしいよ」

 それを聞いて三華が悲しそうな顔をする。

「それって二華は、あちきの事を嫌いで仲間外れにしたいって事?」

 慌てて手を横に振る二華。

「そういう訳じゃ無いわよ。でも、やっぱり……」

 二華の濁した言葉を察知して四剣が答える。

「独占したいって、そんな我侭な二華も好きだな。でも、素直で可愛い三華も好きなんだ。どっちを選べって言われて、どちらかを悲しませるなんて俺には、出来ない。少しだけ我慢してくれないか?」

 真剣な問い掛けに二華が戸惑う。

 そこに担任の豆田マメタ瞳子トウコが入ってきて言う。

「二華、騙されるなよ、そいつは、美味しい所だけ取ろうとしてる、卑怯な男だ。あたしも何度、そんな男に騙された事か」

 未だに独身の瞳子の言葉に正気に戻る二華。

「そうよ! 何であたし達が四剣の為に我慢しないといけないのよ!」

「もう少しで、納得させられたのに」

 邪な顔を見せる四剣に頷く三華。

「万が一にも四剣を独占されるくらいなら、共用した方が、いろんな意味で便利なのに」

 実は、霧流家の権力を狙っている三華の本音に引く二華。

 そんな三人を見て瞳子が言う。

「恋愛事は、勝負だから諦めろ。それじゃあ、授業を開始するから席に着け!」

 普通に戻っていく四剣と三華。

 一人、身内の邪さと腹黒さに二華が崩れ落ちるのであった。

いわゆる漫画のタッチの逆のお話です。

性別が逆だと成立しかねない所が面白いですね。

この三人の恋愛は、続くのでしょうか?

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