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八刃列伝  作者: 鈴神楽
第二期
15/22

萌える関係

不思議な三角関係の続きです

 霧流家の朝は、毎度の騒動から始まる。

四剣シケン、何でこんな事に成ってるか、説明してくれる?」

 そういったのは、釣り目で、ポニーテールの少女、二華ニカであった。

 それに、ハーフの雰囲気を持った四剣が欠伸をしながらいう。

「説明って、毎度の事で、三華ミカが、俺のベッドに入りこんだだけだろ?」

 悪びれない四剣の横で眠る、二華に良く似た少女、三華の頭を撫でて居ると二華が怒鳴る。

「だから、あたし達は、まだ中学生なのよ、そんな事をしたら駄目だって言ってるでしょ!」

「そんな事ってどんな事だ?」

 意地悪く聞き返す四剣に顔を真赤にして二華が言う。

「えーと、その、男女で一つの布団に入ったら駄目だって……」

「セックスは、してないよ」

 寝ていた筈の三華の声に二華が目付きを鋭くして言う。

「どうして、毎日毎日、こんな事をするの!」

 三華はベッドから降りて言う。

「あちき、四剣と一緒の布団の方が寝やすいんだもん」

「そうか、好きにしろ」

 気楽に言う四剣。

 二華は、一人、拳を握り締めて言う。

「もう、二人とも慎みってもんがない!」

 すると三華は、パジャマのポケットから小学生の頃、三人で一つの布団で寝てた時の写真を取り出して言う。

「いいじゃん、二華だってやっていたんだから」

 二華は、慌ててその写真を奪い取り言う。

「これは、子供の頃の話よ!」

「たった三年前の事じゃないか」

 四剣の言葉に二華が怒鳴る。

「もう三年よ!」

 こんな騒ぎが、霧流家では、毎朝行われていた。



 学校で、大きなため息を吐く二華。

 そんな二華を見て、四剣の姉である、落ち着いた雰囲気を持つ少女、一華イチカが言う。

「四剣の事よね?」

 二華が渋々頷く。

「三華と仲が良いのは、良いんですけど、節度って物が無いんです」

 それを聞いて一華が苦笑する。

「あの二人は、どちらかというと、八子おばあちゃんの影響を受けたみたいだからね」

 眉を顰める二華。

「八子おばあちゃんも困り者です」

 それを聞いて一華が言う。

「お母さんも困っていたけど、八子おばあちゃんには、八子おばあちゃんの思いがあるからね」

「それは、解ってるつもりです」

 悩む二華に一華が少し考えてから言う。

「結局のところ、貴女は、どうしたいの?」

 二華が驚く。

「どうしたいって、どういう意味ですか?」

 一華が真剣な顔で言う。

「詰りよ、四剣と付き合いたいの?」

 それを聞いて二華が顔を真赤にする。

「それは、その……」

 一華は、続ける。

「自分だけを見ていて欲しい? 三華と仲良くして欲しくない?」

 二華は、戸惑いながらも言う。

「そんな事は、考えていませんけど、でも何か違う気がするんです」

 一華は、二華の目を見て言う。

「自分の気持ちは、早くはっきりさせた方が良いわね。そうだ。良い事があるわ」

「良い事?」

 二華が首を傾げる中、一華は、どんどんと話を進めていった。



 数日後の霧流家。

「ちょっと、二華と出かけてくるから、ちゃんと留守番しておいてね」

 一華がそういって、二華と一緒に出かける。

 それを見送りもせず、四剣が新作ゲームに熱中していると三華がやって来ていう。

「四剣、一華お姉ちゃんと二華が何しに行ったか知ってる?」

 四剣が気にもせず言う。

「買い物か、なんかだろう」

 すると三華が眉を顰めて言う。

「でも、二華、物凄くおめかししてたよ」

 その言葉に、四剣の手が止まる。

 そこに三華達の祖母、八子が来て言う。

「二華だったら、分家の人と、簡単なお見合いに行ったわよ」

 それを聞いて立ち上がる四剣。

「そんな話、聞いてねえ!」

 その言葉に八子が手を叩く。

「そういえば、邪魔されるかもしれないからって四剣には、秘密って事にしてあったわね。忘れて」

「忘れられるか!」

 急いで駆け出す四剣。

 そんな四剣を見ながら三華が言う。

「わざとですよね?」

 八子が笑顔で言う。

「一華には、黙っているように言われたけど、やっぱり、教えておかないとフェアじゃないでしょ?」

 三華が頷く。

「そうですよね。あちきも行きます」

 それを聞いて、八子が言う。

「あら、いっそのこと二華が他の男とくっついた方が三華としては、四剣を独占できて良いんじゃない?」

 それに対して三華が笑顔で答える。

「あちきは、四剣と二華と三人で一緒に居たいんです」

 苦笑する八子。

「戸籍の処理が大変そうね」

 三華が舌を出して言う。

「そこら辺の面倒は、二華に頑張ってもらいます」

 そして、四剣の後を追う三華であった。



「はじめまして二華さん」

 大学生の霧流の分家の一つ、霧雫キリシズク十槍ジュッソウが笑顔で花束を差し出す。

「ありがとうございます」

 花束を受け取り、恥ずかしそうにする二華。

「いきなり、こんな変な事を頼んですまなかったわね」

 一華の言葉に十槍が手を横に振る。

「とんでもない、本家の人とこうして会える機会だったら、分家の人間でしたら、何を差し置いてもやってきますよ」

 苦笑する一華を尻目に二華が言う。

「十槍さんは、今は、どんなお仕事をしていらっしゃるのですか?」

 十槍は、笑顔で語る。

「今は、雲集クモツドイ研究室で、新型のエンジンの開発に関わっています。側近で有効な物では、ありませんが、これから宇宙にも出て行く事になった時に役に立つはずです」

 それを聞いて二華も笑顔で言う。

「それは、大変な研究をしていらっしゃるのですね」

 十槍が真剣な顔で言う。

「あんな夢みたいな研究を続けられるのも、八刃が、霧流の本家がバックアップしてくださっているからです。その感謝の念は、忘れたことは、ありません」

 二華は、その真摯な態度に好感を覚えた。

 そんな中、一華が眉を顰める。

「おばあちゃんがばらしたな。二人は、話を続けていて」

 そのまま席を立つ一華。

 二華と十槍は、言われた通りに話を続けていたが、そんな中、十槍が言う。

「何か、お悩みの事でも?」

 慌てる二華。

「顔にでていましたか?」

 苦笑する十槍。

「これでも、二華さんより、長く生きていますからね。何でも相談してください」

 二華は、悩んだが、四剣と三華と自分の事を話した。

「なるほど、確かに普通では、無いですね」

 十槍の言葉に二華が頷く。

「やっぱり、そう思いますか?」

 十槍は、頷いたが、言って来る。

「しかし、恋愛なんて、元々普通じゃないのかもしれませんよ?」

 驚く二華。

「そうなんですか?」

 十槍が頬を掻きながら言う。

「私もそんな偉そうな事を言えた義理じゃないですがね。三華さんや四剣さん達のご両親は、共に異界の人と恋をしていました。それは、普通ですか?」

「普通じゃないですよね?」

 言われて初めて気付いた風な二華に十槍が言う。

「恋をしたら、理屈なんて意味が無いのかもしれません」

「理屈なんて関係ないですか……」

 深く考える二華の手を掴んで言う。

「貴女は、もっと我侭になるべきかもしれません。四剣さんの事が好きなら、好き。相手が三華さんでも関係なく独占したらどうですか?」

「そんな、でも三華も大切な妹ですから悲しませたくないです」

 二華の答えに十槍が言う。

「だったら、諦めるのですか?」

 二華が戸惑う。

「諦めるって……」

 十槍が告げる。

「ここに来たって事は、そういう事ですよね? 三華さんを悲しませたくないから四剣さんの事を諦めて、別の男性と恋をする。それは、代償行為ですよ」

 その言葉に二華が涙を流して頭を下げる。

「御免なさい! あたし、貴方に凄い失礼な事をしていました!」

 十槍が首を横に振って言う。

「良いんですよ。一華さんに全て聞いた上で来たのですから。それより、大切なのは、二華さんが四剣さんを諦められるかですよ」

 その言葉に二華は、四剣との思い出を思い出して言う。

「諦められません……」

 十槍が笑顔で言う。

「それが解っただけでも私がここに来た意味があったと思います」

「お前、二華を泣かせたな!」

 四剣が駆け込んで、十槍の胸倉を掴む。

「四剣、これは、違うの!」

 二華が十槍を庇うと四剣が顔を真赤にして言う。

「俺より、こいつを庇うなんて、まさかもうやっちまったのかよ!」

「いきなりそっちに行くな!」

 力の限り四剣を殴り飛ばす二華。

「御免、三華に足止め食らっちゃって」

 一華が三華をひきずりながらやってくる。

「二華、どうだった? 良い男だったら、あちきにも紹介してね」

 気楽な三華に大きなため息を吐く二華。

「私の役目は、終わったみたいなので」

 一華に一礼して去っていく十槍。

「ごめんなさいね」

 一華も頭を下げる中、四剣が復活して言う。

「待ちやがれ!」

 追いかけようとする四剣を一華が術で拘束する。

 必死に足掻く四剣を見て苦笑する二華を見て四剣が宣言する。

「二華、お前が処女無くても、俺の気持ちは、変わらないぞ! きっと、俺のテクニックで寝取り返してやる!」

「四剣の馬鹿!」

 二華は、顔を真赤にして渾身の一撃を四剣に食らわすのであった。

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