HAMBURGER BLUES第12 話 失われた三人目と、カーキ色の約束
HAMBURGER BLUES第12 話
失われた三人目と、カーキ色の約束
⸻
朝
WAGYU BURGER
⸻
雨だった
珍しく
ベラの空が静かだった
⸻
ザァァァァァ……
⸻
古代テクノブルース
小音量
【MIDNIGHT ENGINE BLUES】
低いギターだけが流れている
⸻
カラン……
⸻
客A
「ダブルチーズ二つ!!」
客B
「税金が高ぇぇぇ!!」
客C
「昨日飲み過ぎたァァァ!!」
⸻
beem
「肉は逃げないィィィ!!」
Walker
「でも客は帰るゥゥゥ!!」
bads
「ねぇ」
「今日の前髪どう?」
Walker
「今じゃねぇぇぇぇ!!」
cool
静かにポテトを揚げている
⸻
しかし
昨日とは違った
⸻
店の奥
黒いパーカーの少年
noah
静かに座っていた
⸻
誰も
昨日の続きを
話そうとしなかった
⸻
Walker
耐えきれなくなる
⸻
「無理だァァァァァ!!!」
⸻
全員
「?」
⸻
Walker
「昨日の続き話せェェェェ!!!」
⸻
beem
「仕事しろ」
⸻
Walker
「死人出てたんだぞォォォ!!!」
⸻
bads
「そうよ!!」
⸻
cool
静かに笑う
⸻
「まぁ」
⸻
「昔話ですよぉ」
⸻
Walker
「その昔話をしろ!!」
⸻
静寂
⸻
雨音だけ
⸻
ザァァァァァ……
⸻
cool
ゆっくり
フライヤーを止める
⸻
ジュゥ……
⸻
「……」
⸻
「昔」
⸻
「三人だったんです」
⸻
全員
静かになる
⸻
cool
「beemさん」
⸻
「俺」
⸻
「そして」
⸻
「RUST」
⸻
空気が変わる
⸻
Walker
「……」
⸻
「ラス……ト?」
⸻
bads
「聞いたことない」
⸻
noah
顔を上げる
⸻
beem
肉を焼き続ける
⸻
ジュゥゥゥ……
⸻
cool
「カーキ色のバイク」
⸻
「古いエンジン」
⸻
「酒しか飲まない」
⸻
「女にモテない」
⸻
「でも」
⸻
「宇宙一優しい馬鹿でした」
⸻
Walker
「……」
⸻
「何やってた人?」
⸻
cool
笑う
⸻
「泥棒ですねぇ」
⸻
全員
「は?」
⸻
cool
「正確には」
⸻
「銀河最高の食材泥棒」
⸻
Walker
「何だそれェェェ!!!」
⸻
beem
「盗んでねぇ」
⸻
初めて口を開く
⸻
「奪い返してた」
⸻
静寂
⸻
noah
「……」
⸻
「白銀農場」
⸻
全員
止まる
⸻
cool
ゆっくり振り返る
⸻
「……」
⸻
「その名前」
⸻
「どこで聞いたんですか」
⸻
noah
静かに答える
⸻
「覚えてます」
⸻
「雨の日でした」
⸻
「カーキ色のバイクを乗った人が」
⸻
「泣いてました」
⸻
完全な沈黙
⸻
Walker
「待て待て待て」
⸻
「五歳の記憶だろ?」
⸻
noah
「はい」
⸻
「でも」
⸻
「忘れたことありません」
⸻
beem
静かに火を弱める
⸻
ジュ……
⸻
beem
「……」
⸻
「RUSTは」
⸻
「死んだ」
⸻
Walker
「……」
⸻
beem
「八年前」
⸻
「白銀農場で」
⸻
雨音
⸻
ザァァァァァ……
⸻
bads
珍しく
静かだった
⸻
cool
マルガリータを一口飲む
⸻
「最後の日」
⸻
「三人で約束したんですよ」
⸻
Walker
「約束?」
⸻
cool
笑う
⸻
「どんな世界になっても」
⸻
「腹減った奴には」
⸻
「飯を食わせようって」
⸻
beem
黙っている
⸻
cool
「そして」
⸻
「誰も独りにしないって」
⸻
noah
小さく呟く
⸻
「……覚えてる」
⸻
全員
「?」
⸻
noah
「カーキ色の人」
⸻
「最後に」
⸻
「もし俺がいなくなったら」
⸻
「黒いバイクの馬鹿を頼む」
⸻
「って」
⸻
静寂
⸻
Walker
「え……」
⸻
bads
「何それ……」
⸻
cool
グラスを落としそうになる
⸻
beem
初めて
手を止める
⸻
ジュゥ……
⸻
完全な沈黙
⸻
そして
次の瞬間
⸻
カランカラン!!!
⸻
客
「オイィィィ!!!」
「ベーコンチーズ五個ォォォ!!!」
⸻
全員
「うるせぇぇぇぇぇぇ!!!!」
⸻
空気が壊れる
⸻
Walker
「いや待てェェェ!!!」
⸻
「今すげぇ話してたろォォォ!!!」
⸻
bads
「タイミング最悪!!」
⸻
cool
笑う
⸻
「これが」
⸻
「WAGYU BURGERですからねぇ」
⸻
beem
再び肉を焼く
⸻
ジュゥゥゥゥ……
⸻
noah
静かに立ち上がる
⸻
「……」
⸻
「僕」
⸻
「働けます」
⸻
Walker
「え?」
⸻
noah
「皿洗いも」
⸻
「掃除も」
⸻
「肉の温度管理も」
⸻
「全部できます」
⸻
beem
振り返らない
⸻
「……」
⸻
「カーキ色の馬鹿が」
⸻
「そう言ったなら」
⸻
静寂
⸻
beem
小さく笑う
⸻
「明日から来い」
⸻
Walker
「採用早ぇぇぇぇ!!!」
⸻
bads
「履歴書は!?」
⸻
cool
「面接は?」
⸻
beem
「知らん」
⸻
「縁ってやつだ」
⸻
noah
初めて
ほんの少しだけ
笑った
⸻
雨は
まだ降っていた
⸻
そして
誰も知らない
RUSTという男の物語が
ゆっくりと
再び動き始めていた
⸻
続く
第13話
白銀農場の亡霊と、伝説のベーコン職人 RUST




