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狭魔の鬼 ~俺の意識を乗っ取る絶壁美少女は、世界最強の呪物で無双する~  作者: MASAO
第1話

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反転鏡面 1.

 

 日差しが暖かい。


「……? またか」


 最近、僕は目覚める場所がまちまちだ。 見覚えのない景色、見覚えのない街。そんなことが多々あるのだ。 今日は……隣町の駅前にある、公園のベンチのようだ。


「よかった……」


 知っている場所でホッとした。 僕はゆっくりと体を起こし、眩しい青空を仰ぐ。


「やっぱり夢遊病なのかな……。一度、病院に行った方がいいかも」


 また記憶がない……何でこんな事になったんだろう?


――て、夢遊病で隣町のベンチって、僕の体はどんだけアクティブなんだよ……


 昨夜バイトの後、僕はどうしたんだ?


 ズキリと額の右側、古傷のあたりが刺すような痛みを発した。


……痛たぁ。


 片頭痛ってヤツかな? 


 それとも、こめかみの上の傷痕そのものが痛んだのか? この古傷は赤ちゃんの時からあったそうだ。どこかに強くぶつけて怪我でもしたのだろうか?


 再び僕は夕べの行動に思いを巡らせた。


 分からない。


 もう、こんな事が起き始めてから今回で4度目だ……


 今は初夏の五月後半。昼間は暖かいけれど、夜はそれなりに冷え込む。 今は冬服の学生服を着ているのでギリギリセーフ……とはいえ、夜風にさらされれば体は冷え切っている。


「風邪を引くのは嫌だな」


 こんなベンチで寝ていた所為か、とても体のあちこちが痛いな……きっと体が縮こまって寝ていたに違いない。


「……それにしても、何でこんなに筋肉痛になってんだろ?」


 何だか、激しい運動でもした翌日みたいだ……運動は苦手だけどね。


 そんな疑問をよそに、ポケットからスマホを取り出した。


 あぁ、またやってしまった。寮母(施設長)の荻原さんに申し訳ない。 また無断外泊だ。


「きっと心配してるだろうな……」


 僕は両親の顔を知らない。物心付いた時から施設で生活をしていたから、荻原さんは僕にとって母親代わりのような人だ。 画面の文字がよく見えない。メガネをしていないことに気が付いた。 いつもこういう時は、制服の内ポケットに仕舞い込んである。 ……あった。


「連絡しなきゃ!」


 僕は急いでメガネを掛けると、荻原さんに連絡を入れた。 コール音は鳴らず、即座に繋がった。


狭間信也はざま しんや!! また無断外泊して何やってんの!』


 荻原詩織おぎわら しおりさんが電話の向こうで怒鳴っていた。当然だよね……。


「すみません! すみません荻原さん。すぐに帰ってから学校に行きます!」


 僕は電話越しに頭を下げながら必死に謝罪した。


『信也君。今どこにいるの? 夕べはバイト先で何かあったの? この間もそうだけど、最近無断外泊が多いわよ。大丈夫?』


 先程とは打って変わって、優しい声色で尋ねてきた。 元々この人は優しいお母さんみたいな人だから、本来はこういう話し方をするのだ。 いつもの様に僕が悪いのだ。ごめんなさい。


「だ、大丈夫です。隣町の駅前です。直ぐに帰ります!」


 僕は言うと急いで電話切った。 微かに電話の向こうで荻原さんが何か言ったような気がしたけど、よく聞こえなかった。 いや、怖くて切ってしまったのが本音だ。


 僕はスマホの時計を見た。


「うわ、もう授業始まってるよ……困ったな最近、遅刻が多い……はぁ」


 重たい溜息が漏れた。17歳の思春期に、施設育ちという境遇も相まって”夢遊病”とか、最悪だよ。それどころか最近では、頭の中で高飛車な女の声がするような気がして怖い。幻聴まで聞こえ始めたらおしまいだ。


 僕は所持品の確認を軽く済ませると、駅の改札へと向かった。こんな時間に制服でウロウロしていると補導されてしまいそうだ……。いや、それよりも夜中に公園のベンチで寝てるなんて酔っぱらいみたいなことを続けていたら、いつかは警察のお世話になってしまう。


 荻原さんに、もう隠しきれない……。僕はあんまり、みんなに心配させたくないから内緒にしていたけど、相談した方がいいかもしれない。きっと境遇と合わせて同情されそうで嫌なんだけど、背に腹は代えられない。


 そんな憂鬱を抱えながら、僕は滑り込んできた電車に乗り込んだ。




   ♢   ♢   ♢




 学校へは三時限目の途中から入ることが出来た。なんとか午後の授業も終わり、帰宅しようと席を立った時だ。


「信也、最近どうしたの?」


 声を掛けてきたのは、隣のクラスの美咲ちゃんだった。島村美咲しまむら みさき。僕と同じ施設出身で、幼なじみと言えばそうなるが、どちらかと言うと姉弟のような感じが近い。


「何で? 僕は大丈夫だよ」


「そうかな……。何か変だよ」


 心配そうに美咲ちゃんが僕の顔を覗き込む。無断外泊の多さを言っているのかな?


「ははは、今日も荻原さんに怒られちゃったよ。あんまり続けるとバイト出来なくなっちゃうかも」


「当然よね。……ねえ信也、もしかして彼女でも出来たの?」


 あまりにも唐突な問いに、僕は腰から砕け落ちそうになるのを堪えた。


「ぼ、僕に彼女ぉ?! そんなことある訳ないよ!」


 僕は吹き出しそうになりながら、慌てて否定した。美咲ちゃんはショートカットの似合う、少しボーイッシュで元気な女の子だ。僕の目から見てもなかなか”かわいい”部類に入ると思っている。だから、あんまり近寄らないようにしていた。男子諸君のやっかみがあってはいけないし、中には女子の恨みを買うこともあるかもしれないからだ。


 僕たちの関係は本当にお姉ちゃんと弟のようなもので、小さい時から僕はワンパクな美咲ちゃんの後ろを付いて行くような子供だった。いや、むしろ美咲ちゃんに引っ張り回されたが正しいかもしれない。


「そうなのかなぁ? 怪しいぃなぁ……」


 ジト目で疑惑の視線を向けてくる美咲ちゃん。


「何でそう思うの?」


「え? だって、もう信也だって17歳だし、バイト先でも浮いた話でもあるんじゃないかと思って……。あ! 分かった。バイトの先輩で綺麗なお姉さんとかいるんでしょ」


「へ?? そんなことある訳ないじゃないか。それに水木さんは綺麗だから競争率が高いんだよ。僕みたいに色白でヒョロイ体型の男なんて興味ないよ」


キリッ!


 僕はクイっと中指でメガネを軽く上げた。


「あははははは! 何でそんなドヤ顔で言うの! ウケる、信也」


 なんて、美咲ちゃんは楽しそうに笑った。


 僕は、こう言うやり取りは結構好きだったりする。


モゾリ……


(ふん、不愉快ですわね)


 ?はて……今、僕の中で何かが動いた?

 

 何だか妙に高飛車な女の声が聞こえたような……いや、聞こえない! 聞こえないですよそんな声! 僕の頭はおかしくありません! 僕は正常です!


 僕は大丈夫。僕はおかしくない……たぶん。


 あんまり深く考えると、どんどん「記憶の無い」自分への恐怖心と自身への「信用の無さ」が増幅する様で不安になる……正直言うと怖い。


「? どうしたの信也。急に青ざめた顔して? もしかして図星だった」


「そ、そ、そんな事ないよ!」


「やっぱり怪しいなぁ……好きなんだ水木さんの事」


「もう! 違うってば」


 そんな風に美咲ちゃんにイジられながら、二人で教室を出た。昔から、こんな感じの関係を僕は「悪くない」と思っている。でも、一緒に帰るのは周りからの視線が痛い。恨まれなければいいけどね。波風立てないのが僕の心情なんだ。


 うむ。平和が一番だ!


 僕は声の事は考えない事にした。



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