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第五話「出立の時が来ました」

お待たせしました、第五話です。

いよいよ物語が動きだします…!

 慌てふためいていた両親もなんとか落ち着きを取り戻し、食事の席に着く。俺が合図を送ると、カリアが料理を持ってきてテーブルに並べていく。さあ、豚の生姜焼きを前に、2人はどんな反応を見せてくれるだろうか。


「これは……ステーキか?」


「それにしては、肉に厚みが無いみたいだけど……」


「それにこの香り……いつものソースでは無いみたいだ」


 初めて見る料理に興味半ば、不安半ばといった感じだろうか。なんとも言えない表情で2人は俺を見つめてくる。中々に良いリアクションだ。もう少し楽しみたいところだが、本番はここではない。ここは早く食べてもらわねば。


「さ、お父様、お母様。せっかく作った料理が冷めてしまいますわ。温かいうちにお召し上がりくださいっ!」


 満面の笑みでこう言われれば、娘好きな2人は食べないという選択肢は無くなるだろう。やがて2人の顔は不安から覚悟に変わり、肉を口へと運んだ。


「「……!!」」


 肉を一口食べ終えるや否や、2人はライスをかき込んだ。余程美味しかったのか、2人はしばらく無言のまま食べ進めていた。

 正直なところ、日本の一般的な家庭料理がこの世界の人々、ましてや上流階級の人々の口に合うかどうか。不安が無かったと言えば嘘になる。だが、その不安は杞憂に終わったようだ。2人の反応を見れば誰だって分かる。

 6〜7割程食べ終えたタイミングで、ギルバートがようやく口を開く。


「この料理、肉は豚だね?硬すぎず柔らかすぎず、程よい歯応えだ」


「それにこのソース!甘さの中に仄かに広がる辛味……ねえカリア?一体何を使ったの?」


 それを聞いた俺は待ってましたと言わんばかりに懐からその答えとなるものを取り出す。


「今回使わせていただいたのは生姜です。生姜は豚肉に含まれる栄養を引き出すだけでなく、生姜自体にも血行促進や疲労回復の効果がございます。今回はお仕事で疲れも相当溜まっているかと存じますので、この食材が適しているかと」


「この歳で他人に気を遣えるようになるなんて……。こんな聡明な娘を持てて、母としてこれ以上の喜びはありません」


「ああ。この1ヶ月で、まるで人が変わったかのように見違えていたとはな。我々はルーナをまだ子供だと決めつけて少々甘やかしすぎていたのかもしれぬな……」


 『人が変わったよう』という言葉に内心肝を冷やしたが、どうやら作戦は上手くいったようだ。子の成長は親にとって最上の喜び。きっとどの世界線でも、それは変わらないだろう。そう確信した俺は、進言するよう言葉を紡いだ。


「お褒めの言葉をいただき、誠に光栄です。ですが、これだけ満足する訳にはいきません。将来に備える為に学ぶべきことは山のようにございます。カトラス家の娘としてどこへ行っても恥ずかしくない自慢の娘でありたいのです。ですので、これからはお父様とお母様からも学びを得たい所存です。どうか、ご助力をお願いいたします」


 こうして、父からはこの世界の情勢やコミュニケーションスキルを。母からは一から宮廷作法を教えてもらえるよう取りつけることに成功した。

 

 その日以降から、本格的に脱破滅計画が進み始めた。まずは家の書庫で魔術に関する書物をかき集め、基礎的な部分を全て頭に叩き込んだ。この世界の魔術は火、風、土、水の基本属性があり、大抵は1人1属性の適性を持っている(どうやら稀に2属性以上の適性持ちが生まれるらしい)。これらの属性はそれぞれ4すくみの相性も存在する。更にこれら4つに加え、聖属性と闇属性という適性持ちが極めて稀な2つも加わる。ゲームの主人公、メアリーはこの聖属性の適性持ちだ。かつて聖属性適性を持つ者が迫り来る魔物の軍勢を撃ち払い、民衆を危機から救うという伝承があることから、この世界のヒーロー的存在となるのだ。

 さて、斯くいうルーナはどの魔術適性があるかというと……なんとビックリ闇属性なのだ。闇属性の魔術は中級以上の魔物が扱うものという偏見が強く、これに適性のある者が一定以上の地位に就く事例はほとんどない。

 これに劣等感を抱いたルーナは、このことをひた隠して魔術の研鑽を怠った結果、魔物に付け入る隙を与えてしまい体を乗っ取られてしまうルートがある。それをメアリーと結ばれた攻略対象が力を合わせて討伐するのだ。このルートを回避する為には、闇属性魔術の練度を高めて魔物を返り討ちできるようにならねばならない。まあいざという時の為に戦う術が欲しいというのも理由だが。幸いにも、ルーナは魔術適性が高いようで魔力も多い。参考書を少し読むだけで、初歩的な魔術はすぐに扱えた。


 更に生存確率を上げるべく、俺はカトラス家に所属する騎士団に頼み込んで剣術を学ぶことにした……のだが、どうやらルーナは人より筋力量に乏しく、剣を振るうのでやっとだった。諦めまいと筋トレに励みもしたが、一向に成果が出る気配は無かった。どうやら体質的な問題のようだ。これはどうしようもない。

 一方で意外な才能を見せたのがカリアである。元々身体能力が高かったのか見る見るうちに体捌きが向上し、3年経った頃には騎士たちとも互角以上の闘いができるまでに成長した。

 こうして、来たる日に備えてあれこれやっている内にあっという間に時は流れ――



 

「どう?カリア。制服、似合ってるかしら?」


「はい!とってもお似合いですう!あまりの神々しさに直視できないですう!」


「ふふ、褒めすぎよカリア。……さて、行きましょうか!」


 転生してから9年後、もうじき15歳になるまで成長を遂げた俺は、ゲームの舞台となる学園に向かうべく王都へ出立した――!

最後までお読みいただきありがとうございます!

第六話は10日投稿予定です。

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