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第二十一話「不思議な本に遭遇しました」

お待たせしました、第二十一話です。

今回からちょっと長めの連休編です。

「美味しいですわああ!」


「これがルーナ様の料理の師匠が作る味……!」

 

 あの後なんとか興奮と緊張が取れた2人を連れ、俺たちは食堂で昼食を食べていた。作ってくれたのは、カトラス家料理長であるダンだ。

 いつも一緒にランチを食べているが、こうしてテーブルを挟んでの食事はなんだか新鮮だ。


「……ええ。相変わらず、心が温かくなる料理ね。ありがとうダン、とても美味しいわ」


「お褒めに預かり光栄です。ルーナ様が帰ってくると聞いて腕によりをかけたつもりでしたが……ご友人方の口にも合ったようで何よりですよ!」


 そう言ってニカッと笑うダンを見て、俺も思わず笑顔になる。

 ルーナに転生したあの日――ダンの料理を食べたあの時から、俺の脱破滅の計画は本格的に始まったのだ。俺の起源とも言えるダンの料理を褒められるのは、なんだか誇らしい気分だった。

 そんな過去に思いを馳せていたのが伝わったのか、ダンも思い出話をメリアとマルシアにも話し出した。


「いやあ……ルーナ様が私のシチューを食べて涙を流したあの日のことは、今でも昨日のことのように思い出せますなあ……」


「ルーナ様はあの日から、まるで魂が入れ替わったかのように変わりましたよねえ……」


 ダンの回想に激しく頷いて同調するカリア。実際カリアの”魂が入れ替わった”発言は本当にその通りなので、俺は愛想笑いをするしかなかった。


「まあ! ルーナ様にそんな過去があったのですね!」


「涙を流すルーナ様なんて想像できませんね……幼少期のルーナ様がどんな感じだったのか気になってきました!」


「ちょ……メリア!」


「はっはっはっ! ではここらで1つ、ルーナ様の思い出話を語り尽くそうではありませんか! 例えば――」


 メリアの発言を皮切りに、気づけばダンとカリアによる俺の幼少期暴露大会が始まった。豚の生姜焼きで両親を驚かせたこと、剣を振れなかったのが悔しくて必死に筋トレしていたこと……よくもまあ話が尽きないものだ。

 メリアとマルシアも料理そっちのけで話に夢中になっていた。……かくいう俺も顔から火が出るような恥ずかしさでせっかくの料理を全く堪能できなかったが。




「つ、疲れたあ……」


 昼食後、メリアとマルシアは屋敷内を見て回りたいとのことだったのでカリアを案内役に任命し、俺は1人図書室の机に突っ伏していた。結局あの暴露大会は耐え切れなくなった俺が制止するまで続いていたのだ。俺のプライバシーは一体いずこへ消え去ったのやら。

 束の間の1人時間を謳歌していたが、昼食後ということもありすっかり睡魔に襲われそうになっていた。だが睡魔に抗う必要もないので、このまま一眠りしてしまおう……と瞼を閉じかけたその時だった。


「ギャアアア!」


「痛っ!」


 クロウが大きな声で鳴きながら俺の頭を突いてきた。俺を起こそうとしてくれたのか――いや待て、俺はいつクロウを召喚した?寝ぼけて召喚したとは到底考えにくいが……。


 俺が起きたのを確認するとクロウは羽ばたき始め、少し進むと俺の方に振り向いてきた。どうやら俺を案内したいようだ。まだ眠気の残る感覚を掻き消すために両頬を軽く叩き、クロウの後を追った。

 度々振り返りながら案内を続けるクロウを追いかけ続けること数十秒。遂にクロウが目的地に辿り着いたようだ。最初は入り口付近の机にいたが、気づけば1番奥の棚にまで来ていた。この辺は確か、魔術に関する蔵書が並ぶ場所だ。

 クロウはその場に留まりながら嘴を器用に使って一冊の本を取り出そうとしていた。その本のタイトルは『魔術の相性と基本について』。俺が魔術の勉強をしていた時、1番初め辺りに読んだ本だ。この本の内容は目に焼き付くほど読んだので今更読む必要も無いと思うが……。

 上手く本を取り出したクロウがその本を嘴に咥え、俺の目の前に持ってくる。クロウの意図はさっぱり分からないがひとまず受け取っておこう。そう思って本に手を触れた瞬間だった。


「……ん?」


 微かにだがその本に違和感を覚えた。これは――魔力の流れか?俺の体から僅かに、本へ魔力が流れていくのを感じる。最初に手に取った時感じなかったのは、俺の魔力が弱かったからだろうか。

 一定の魔力を持つ者にしか反応しない――そう考えれば、それを気づかせるためにクロウが指示なく飛び出してきたのも合点がいく。そしてそんな条件下でしか見ることのできないとなると、もしかしたら”アレ”があってもおかしくはない。


「一か八か……やってみるか」


 1つの仮説を立てた俺は、本に思い切り魔力を流し込んでみた。すると、茶色だった本の表紙が墨で塗りつぶされるかのように変化し、真っ黒な表紙となった。本のタイトルも変わっており、『闇魔術極意書』となっていた。


「……やっぱりだ!」


 ゲームの終盤、とあるイベントでメリアは『聖魔術極意書』というアイテムを入手することで、上級の更に上である『特級』の聖属性魔術を扱えるようになる。ギースやコニー、ギュランもゲーム終盤で手に入る各属性の極意書を使うことでその属性に合った特級魔術を扱えるようになる。

 特級の技はどれも強力なものばかりで、上手く扱えれば攻略を優位にできる。特にコニールートでは、魔物と化したルーナへの対抗策として重宝される。


 だがゲームをプレイしている最中、俺はずっと思っていた。ゲームには登場しないだけで、実は闇魔術の極意書もあるのではないかと。実はルーナにも救われる道があったのではないかと。各属性の極意書がありながら闇魔術だけ無いなんていうのはありえないはずだと。


 そんな俺の仮説が今目の前に現実として現れたのだ。もはや言語化できない程の喜びに、思わず「よっしゃああああ!」と叫んでしまった。これがあれば、何があっても己の身を守ることが出来るだろう。クロウも俺の喜びが伝わったのか、バタバタと羽を羽ばたかせて飛び回っていた。

 なんでカトラス家の図書室にこの本があったのかが少し気になったが、それは後から考えても遅くはないだろう。とにかく逸る気持ちを抑えきれない俺は、早速机に極意書を置いて表紙を開いた。その刹那だった。


「……え?」


「……ギャ?」


 気づけば俺とクロウは、辺り一面の真っ暗闇に包まれてしまっていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

次回は30日投稿予定です。

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