第二十話「親友と帰省しました」
お待たせしました、第二十話です。
ここまでお付き合いしてくれている皆様に感謝です。これからも頑張ります。
魔術研究部に入部してからというもの、俺は勉強と部活に追われる、いかにも学生らしい日々を送っていた。転生前の学生時代とは違った充実さに無我夢中になっており、気づけば入学してから1ヶ月がすぎていた。
「カリア、荷物は全部まとめた?」
「はあい! 準備は万全ですよお!」
俺はカリアと共に実家に帰省する準備をしていた。月プリの世界でも、現実世界でいうゴールデンウィークのような休み期間がちょうど同じ時期にある。この時期は学園に残る者も多いが、俺は1週間ほど前に両親から顔を出す旨の手紙を受け取っていたので、こうして帰る準備をしているのだ。誰かを誘おうかとも考えたが、久しぶりに親元でのんびり過ごすのも悪くない――この時の俺はそう思っていた。
ちなみに、ゲームでもこの実家帰省イベントは描かれている。メリアが攻略対象の内1人の実家に共に帰省することで、その攻略対象との距離が近づくという序盤では重要なイベントだ。
ゲーム通りであれば、メリアは誰かの実家に同行するはず。果たして誰の家に行くのか……。
「ではルーナ様、カリア様。本日はよろしくお願いします」
――うん、なんとなくそんな予感はしていた。俺の眼前で白髪の少女が深々と頭を下げた。その少女とはもちろんメリアのことだ。そして……
「では、早速ルーナ様のご実家へレッツゴーですわ!」
何故か当たり前のようにマルシアの姿もあった。俺が今日帰るとどこで聞いたのか、大きめなカバンを携えて泊まる気満々な様子だ。本当にマルシアの行動は予測がつかない。少し釘を刺しておくしよう。
「……マルシア。貴方だけが来るのならまだなんとかなったかもしれませんが、メリアも呼ぶのならば先に話を通しなさないな。馬車の大きさに来客の対応……人数が増えればそれだけ準備するものも変わりますの。今回は元々大きめな馬車だったから大丈夫でしたが……場合によっては対応できなかった可能性もあるということをお忘れなきよう。……良いですわね?」
「も、申し訳ございませんでしたわ……」
何やら思った以上にマルシアの血の気が引いているような気がした。……ちょっと魔力が漏れてしまっていたかな?
故意でなくとも親友に魔術を使ってまで怯えさせるのは不本意極まりない。メリアに頼み、聖属性の魔術で回復してもらった。それでもまだ若干肩を落とすマルシアだったが、これ以上遅くなるのもまずいのでマルシアの背中を押して馬車に乗り込んだ。
学園に来る時はうっかり寝落ちしてしまうほど変わり映えの無い景色ばかりですぐに退屈になってしまっていたが、親友たちと過ごす時間はあっという間だった。
元気がなかったマルシアもいつの間にか本調子に戻っており、馬車の中は実に和気藹々としていた。この時ばかりはつい自身の本分を忘れてしまう。
「みなさあん! もう着きましたよお!」
話に花が咲いてすっかりお喋りに夢中になっており、御者を務めてくれていたカリアが知らせてくれるまで実家に到着したことに気づかないでいた。
それぞれカリアに一言お礼を言いながら馬車を降りる。まだ離れてから1ヶ月しか経っていないというのに、目の前のカトラス邸を見ると心の落ち着きを覚えた。「ここが俺の実家なんだ」と改めて痛感した。
「ルーナ様のご実家へ遊びに来るのは随分久しいですわね。ルーナ様のご両親や使用人の方々にまた会えると思うと、ワクワクが止まりませんわ!」
「これがルーナ様のご実家……凄くご立派ですね……!」
すっかり慣れ親しんだ様子のマルシアと、初めて見る豪邸に立ち尽くすメリア。正反対な反応を見せる2人に思わず頬が緩みそうになる。ずっとこの光景を見ていたかったが、屋敷のみんなを待たせるわけにはいかない。カリアが既に玄関の前で待機していたので、開けるよう指示を出し、3人揃って足を踏み入れる。
「お帰りなさいませ。ルーナ様」
エントランスに入るや否や、通路の左右に並んだ使用人たちが一斉に頭を下げた。俺も「ただいま」と返しながら通路を渡っていく。初めての経験が目白押しなメリアは、珍しく落ち着きが無い様子だった。
使用人たちの列を通り過ぎたところで、今度は男女2人が俺たちを待ち伏せていた。ギルバートとソニアだ。
「ルーナよ、よく帰ってきた。道中無事だったか?」
「お父様、ただいま戻りました。道中は大変楽しく過ごさせてもらいましたわ」
「お帰りなさい、ルーナ。今回はお友達も一緒なのね」
「はい。本来なら事前にお伝えすべきでしたが、マルシアと、学園で出会ったメリアです」
「ギルバート様! ソニア様! お久しゅうございますわ!」
「は、初めまして……! メリア・クエリーと申します……!」
緊張からか、メリアの言動が若干ぎこちないように感じた。これまでは勇敢さや優しさが目立っていたが、こういう可愛い一面もあるのかと少々心が躍った。
「うむ。マルシア君はしばらく見ない内に素敵なご令嬢になったものだ。メリア君もそこまで畏まらなくて良い。ここにいる間、ゆっくりくつろいでくれたまえ。……では、我々は一旦失礼するとしよう」
「そうね、まずは3人水入らずでゆっくり休んでもらいましょう。マルシアちゃん、メリアちゃん。後でルーナが学園でどんな様子なのか、たくさん聞かせてね?」
そう言って2人は去っていった。積もる話もあるとは思うのだが……両親の心遣いには痛み入る。ひとまず俺の部屋に案内し、やや興奮気味のマルシアと緊張がまだとれてない様子のメリアを落ち着かせよう。親友との休暇を楽しむのはそれからでも遅くはないはずだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
第二十一話は27日投稿予定です。




