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第十八話「4人目と遭遇しました」

お待たせしました、第十八話です。

攻略対象4人目が満を持して登場です。

 あれから数日。これまでの慌ただしさがまるで嘘のように、穏やかで何事もない日々を過ごせていた。

 そして今日も今日とて、俺とメリアとマルシアは中庭のベンチでいつもと変わらぬランチタイムだ。……ただ1つだけを除いては。


「ん〜。これが噂に聞くルーナ嬢のおにぎりかあ。程よい塩加減で食べやすいのがいいね。更にこれをルーナ嬢が作ったのだと考えて食べたら、美味しさも倍増だ!」


「もう……大袈裟ですわよ、ギース様」


 息をするように嬉しいことを言ってくれるのは、俺の隣に座るギースだ。先日おにぎりを食べさせる約束をした手前断れず、いつもは3人で少し余裕があるくらいのベンチだったのだが、お陰でかなりギチギチ状態だ。

 ……実は武闘大会で倒れそうになったところをギースに支えられて以降、ギースの顔を直視できないでいる。今でこそ男である俺の意識が入り込んでいるものの、元々ルーナは女の子だ。イケメン王子様に間近で顔を覗かれれば、どんな女性でも意識してしまうだろう。ルーナの潜在意識が俺をそうさせている――今はそうやってこの感情を誤魔化しているのだ。


「ところでお嬢様方、部活動には入るのかい?」


 おにぎりを平らげたギースが話題を変えてきた。部活動……そういや、そんな要素もあったな。入るのは強制ではないが、入っておいた方が後々役立つことがあるかもしれない。


「私は園芸部に入るつもりですわ! 中庭や寮の裏庭の庭園を、私の手でレベルアップさせてやりますわ!」


 マルシアがやや興奮気味に答える。確かに彼女の園芸スキルは折り紙つきだ。彼女が手がけた中庭でランチをするのも悪くないだろう。


「私はまだ……色んなところを見て回ってから決めようかと」


「私もまだ決めかねてますわ。せっかくですし、メリアと一緒に見て回ろうかしら」


 俺の言葉にメリアの顔がぱあっと明るくなる。あの一件以降、メリアは良く笑うようになった。そしてその笑顔が眩しいことこの上ない。流石ゲームの主人公を務めているだけはある。


「お前たち、やはりここにいたか」


 俺たちが談笑するなか、そう言って目の前に現れたのはコニーだ。口ぶりから察するに、どうやら俺たちを探していたらしい。


「先ほど部活動の話をしていただろう。ちょうど良い。ルーナにメリア、まだ決まっていないというのなら、魔術研究部に入ってくれ」


「魔術研究部……ですか?」


「ああ。私も先日入ったのだが、どうやら人数が少ないようでな。もう何人か誘ってくれないかと、つい先ほど部長に頼まれていたのだ」


 魔術研究部――闇魔術を極めたい俺にとってはかなり唆られる部活だが、それと同時に妙な引っかかりを覚える。なにか大切なことを忘れているような……。


「わ、私で良ければぜひ入部させてください! ルーナ様も、もちろん入りますよね?!」


 二つ返事で了承したメリアが、屈託のない眼差しで俺を見つめてくる。モヤモヤとした感覚は拭えないが、こうもメリアに見つめられては断るわけにいかないだろう。俺もメリアと共にコニーに入部の意を示した。


 そして迎えた放課後、俺とメリアはコニーの案内で件の魔術研究部へと向かっていた。結局あれから何に引っかかっていたのかを思い出せず、授業もずっと上の空だった。……お陰で教師に注意を喰らったのは言うまでもない。


「着いたぞ2人とも。入ったら部長への挨拶を忘れるなよ」


 考え事をしている間に部室の前に着いていたようだ。慌てて気を取り直し、コニーが開けた扉の奥に見える人影に目を凝らす。

 最初は窓から差し込む逆光でよく見えなかったが、目が慣れると共にその姿を捉える。だがその瞬間、俺の全身に戦慄が走った。


「あ……あ……!」


 なんで今まで忘れてしまっていたのだろう、この男の存在を。ルーナと同じ漆黒の髪色に、まるで睨まれているかのような鋭い目つき。更に俺と同じ公爵家の生まれ。

 俺の目の前で机に両肘をつきながら座るこの男こそ、俺が思うルーナを最悪の破滅エンドへ導く存在、ギュラン・フォードではないか。

 


 この機会に、『月プリ』でルーナがそれぞれのルートで辿り着く破滅エンドを振り返っておこう。

 まずギースは、王族への叛逆行為という理由で国外追放。コニーは、魔物に体を乗っ取られて討伐。ジェイドは、闇魔術を暴走させた末、王都を危険に晒した罪として単独での公開処刑。……今思い返しても震えが止まらない。

 では今目の前にいる男、ギュランの場合はどうなるのか……詳細はこうだ。そのルートでは隣国と一触即発状態となるのだが、その隣国とカトラス家が繋がっているとギュランとメリアが発見。それが公になり家族揃って公開処刑となる。

 プレイしていた当初は両親が処刑されることに何も感じていなかったが、今は違う。今のギルバートとソニアは俺にとって尊敬に値する存在だ。そんな2人まで巻き添えになってしまうなんて、きっと死んでも死に切れないだろう。


 この男との交流は絶対に間違ってはいけないというプレッシャーに押しつぶされそうになる。ギュランは感情表現に乏しく、口数も他3人と比べてもあまりに少ない。それ故に、ゲームでは攻略情報無しで攻略するのはほぼ不可能と言われていた。

 ……だが、これまでの3人とは今のところ上手くやれているし、ゲームで得た知識もまだ頭に残っている。難易度激ムズと評されるギュランだって、上手く攻略してやろうではないか。


 この世界はゲームではなく現実なのは重々承知の上だが――久々にゲーマーの血が騒いできたぞ……!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

第十九話は21日投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
読んでて違和感というか不思議に思ったところがあったので、コメントしますm(_ _"m) "俺が思うルーナを最悪の破滅エンドへ辿り着く存在"←ここ この後の破滅ルート説明の所は"辿り着く"って書き方で問…
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