第十四話「練習の成果が出ました」
お待たせしました、第十四話です。
いよいよ武闘大会本編です。
会場となる広間に辿り着くと、地鳴りにも似た歓声が俺を含めた出場者全員を包み込んでいた。あまりの迫力に気後れしそうにもなるが、今の俺は覚悟が違う。こんなことで怯みはしない。
出場者は俺を含めて16名(学園は二年制で、一学年8クラスある)。到着は俺で最後だったようだ。
「お、ルーナじゃねえか。怖気ついて来ねえかと思ってたが、ここまで来る度胸くらいはあるみてえだな。頼りの魔術の鍛錬はちゃんとしてきたんだろうな?」
俺の姿を見るなり、先に着いていたジェイドが因縁をかけてきた。まあ1週間前の俺の様子を見ていれば、それも無理はないだろう。だが、言われっぱなしは性に合わない。
「あらあら、怖いですわジェイド様。見るからにか弱そうな乙女に、そんな威張らなくてもよろしいのですよ?それにジェイド様こそ、剣の修行ばかりで魔術への対策を疎かにしているなんてこと……流石に無いですわよねえ?」
「……ふん。ここに出場するような奴が、か弱いわけがないだろ。もちろん、お前を倒す策は用意してある。当たった時は覚悟しておくんだな」
闘う前から壮絶な舌戦を繰り広げていたが、それは大会の進行役を務める教員の声によって遮られた。
「只今より、武闘大会の開催をここに宣言する! ルールは、魔術や剣術などの己の持つ力全てを用いて闘い、相手が舞台より外に着くか、降参を宣言させることで勝利となる! トーナメント形式で試合を行なっていき、決勝戦で勝利した生徒とそのクラス全員に特別な報酬を授与する! なお、トーナメントの組み合わせは、公平性を期すためくじ引きで決める! 1人ずつ前へ来てくじを引きたまえ!」
説明が終わると、くじ箱を持った教員が前に出てくる。俺を含め参加者たちが次々とくじを引いていき、俺は1試合目、ジェイドは8試合目となった。つまり、運命か否か、ジェイドと当たるのは決勝戦となる。改めてジェイドを見やると、ジェイドもコチラを見て不敵な笑みを浮かべている。「決勝まで来れるものなら来てみな」と言わんばかりの顔つきに、俺の闘志はますます燃え上がった。
さて、早速1試合目。俺の相手は2年5組の男子生徒だ。自分の背丈よりも遥かに長い槍を携えている。槍は近接武器の中でも圧倒的なリーチ力を誇るため、正直やりにくい相手だが、勝てないわけではない。
相手が槍を構えたのを見て俺も臨戦態勢を取ろうとしたが、ふと観客席で大きな何かが揺らめいているのに気がついた。その正体の方に目線を移すと、『ルーナ様がんばれ!』と大々的に書かれた横断幕が掲げられていた。もしかしなくても、これはマルシアの仕業だろう。横断幕の中央付近を持ちながら、大きな声で叫んでいるのが舞台からでも丸分かりだ。横断幕の左右はそれぞれ、メリアとコニーが支えていた。……コニーの目が若干虚ろになっていたような気もしたが、応援してくれているのは間違いないだろう。
目線を相手に戻し、俺も臨戦態勢を取る。そして、審判の掛け声を合図に、試合が始まった。
合図と共に、相手は低い姿勢から一気に間合いを詰めんと突っ込んでくる。やはり魔術をメインに扱う者にとっては、懐に入られるのが致命的となる。ならばどうすれば良いか、答えは単純明快だ。相手を近寄らせなければ良い。
即座に俺は指を鳴らしてクロウを召喚させる。クロウは召喚された勢いそのまま、相手の目前まで飛びかかる。いきなり得体の知れない何かが目の前を掠めれば、それを見ない人はいないだろう。
クロウを目眩しに使う戦術は、特訓の際にマルシアがアドバイスをくれた。曰く、「息を合わせて闘うルーナ様とクロウちゃん……きっと絵になりますわ!」とのこと。全く戦術的な理由では無かったが、かなり理にかなっていた。
ひたすら自らの周りを飛び回るクロウへの対処に気を取られた相手が足を止めている。今が絶好のチャンスだ。一気に魔力を集中させ、両の手の平をバチンと打ちつける。
すると、俺の足下から影のようなものが地を這うように伸びていき、相手の足下にできた影まで着いた瞬間、無数の黒い腕が相手の四肢を掴んで動きを封じ込む。闇魔術の中級技『シャドーバインド』だ。発動まではやや時間が掛かるが、一度捉えればどんな力自慢でも逃げ出すのは困難だ。僅かながら腕から放たれる冷気も、徐々に相手から力を奪っていく。
シャドーバインドに捕まった相手はなんとか逃れまいと必死にもがいている。想定ではここで降参をもらえると思っていたが……意外としぶといようだ。ならばもう少し付き合ってあげよう。俺はパーティの時に使った『デモンオーラ』を発動させ、ゆっくりと相手に近づいていく。
流石の相手もオーラの圧力に勝てないと判断したのか、俺が3歩ほど近づいた時点審判に降参を宣言した。かくして、俺の1回戦勝利が決まったのであった。
ちなみに、俺は大会に出るにあたって、なるべく相手に傷をつけないような立ち回りを心がけている。万が一に備えて一線級の治癒術師たちが控えているのは知っているが、だからといって自らの手で相手を傷つけるのは心苦しいからだ。
続く2回戦目。1年7組の拳術使いと対戦したが、これもクロウを用いた戦術で難なく勝利。準決勝となる3回戦目の相手は2年2組の双剣使い。これまで見せてきたクロウをやけに警戒していたが、それ故に動きがかなり鈍かったので、シンプルな魔術の物量攻めで場外に追い出して勝利。これで俺の決勝戦進出が決定し、観客からもかつてない程の歓声が沸き起こった。
一方ジェイドも、自慢の剣技で相手に何もさせないワンサイドゲームで、トントン拍子で決勝戦に駒を進めてきた。圧倒的な魔術か、それとも壮絶な剣技か。対照的な強さを持つ2人という好カードに、観客のボルテージも上がりまくっていた。
ジェイドを相手にこれまでの小手先はきっと通用しないだろう。だが、今まで培ってきた努力の成果を発揮するにはちょうど良い機会だ。
わざわざ見に駆けつけてくれた両親。この1週間特訓に付き合ってくれた友達。そして何よりルーナとしてこれまで生きてきた俺自身を裏切らないためにも――この勝負、負けられない!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
第十五話は9日投稿予定です。




