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第十二話「スイーツに釣られてしまいました」

お待たせしました、第十二話です。

また新たな波乱の予感……?!

 あれから一夜明けた昼休み。再び中庭のベンチを確保できた俺たち3人は、メリアが持参したマフィンを頬張っていた。


「……え? 武闘大会?」


「ええ! 今日から1週間後、各クラスから代表で1人選出して、魔術や武術の総合的な強さを模擬戦形式で行うようですわ! トーナメント形式で勝ち上がり、優勝した生徒とそのクラスには特別な報酬が授与されるらしいですわ!」


 マルシアが鼻を荒げながら俺に説明してくれた。――武闘大会か。確かに、ゲームでも入学式後の大きいイベントはこれだったな。メリアが代表に選出されて、順当に勝ち上がった決勝戦で……アイツと出会うはずだ。となると、俺が出るのはなるべく避けたいところだ。


「あら、それは素敵ね。私たちのクラスには魔術に関してはトップクラスのコニー様がいますし、何より魔術と剣術、両方の素質を兼ね備えたギース様もいらっしゃいますもの。そのどちらかが出場なされれば優勝の可能性はありそうですわね」


「あら? 私はてっきりルーナ様が出られるものとばかり思ってましたわ」


「私もルーナ様が出場されるものとばかり……」


「私は魔術を扱えても剣術や体術のようなものはからっきしですのよ? 私が出場しても……」


 さも俺が出るのが当然みたいな表情をするマルシアとメリアに否定を入れようとしたその瞬間、俺たちに大きな影が覆い被さった。


「おいおい、聞き捨てならねえなあ。3組からはあんたが武闘大会に出るってのか?」


 お世辞にも貴族の生まれとは思えない話し方と共に現れたのは、俺と同じ公爵家であるスミス公爵家の息子、『ジェイド・スミス』だ。スミス家は多大なる武勲により公爵という地位に登り詰めた貴族。その才はジェイドにも色濃く引き継がれており、特に剣術の腕は折り紙つきらしい。

 そして、メリアが武闘大会で出会う”アイツ”とはジェイドのこと。つまり、今目の前に仁王立ちしているジェイドも、ゲームの攻略対象の1人なのだ。

 俺たちを見下ろすようにしながら、ジェイドは言葉を続ける。


「3組にはコニーとギースがいるからな。そのどっちかが出れば或いはとも思ったが……あんたが出るってんなら、俺たち2組の優勝は決まったようなもんだな」


 ジェイドはそう言って俺を見下すように睨みつける。悔しいが、ジェイドの言っていることは正しい。多人数での戦闘ならばまだしも、魔術と剣術の1対1となれば圧倒的に剣術が強いだろう。何より、ルーナは身体能力が他人よりもかなり低い。ここは大人しく引き下がるしかないと、そう思った矢先だった。


「ジェイド様! これ以上のルーナ様への侮辱は、この私が許しませんわ!」


 マルシアが勢いよくベンチから立ち上がると、腰に手を当てながらジェイドを睨み返す。2人には圧倒的な体格差があるが、威圧感だけでいえばマルシアも負けてはいなかった。


「ルーナ様はあのコニー様さえ傷をつけられなかった鎧を、傷をつけるどころか木っ端微塵にしてみせましたのよ? ルーナ様の魔術にかかれば、貴方なんてコテンパンですわ!」


 ……ちょっと待てマルシアよ。コテンパンは流石に言いすぎではないか?俺のことを庇ってくれているのは十分伝わるが、これではジェイドの神経を逆撫でているも同然だ。


「コテンパンたあ随分言ってくれるじゃねえか。……いいぜ。そこまで言うなら武闘大会で俺と勝負といこうじゃねえか。逃げんのは無しだぜ?」


「当然ですわ! 貴方こそ、ルーナ様の絶大な魔術に恐れをなして逃げても知りませんわよ……?」


 こうして、俺の預かり知らぬところで、俺の武闘大会参加が決定してしまった。……本当になんてことをしてくれたんだ、マルシア・セーンよ。

 ……いや待て、まだこの件はギース含めたクラスメイトにはまだ知られていない。きっとこの後、クラスで話し合いをして代表者を決めることだろう。その時にギースやコニーが出場の意を示してくれればジェイドも――


「おや、今度の武闘大会にはルーナ嬢が出るのかい? 僕も賛成だな」


 まさかのまさか。いつの間にかギースが俺たちの背後に立っていた。ギースの神出鬼没さには毎度のことながら驚かされる。


「えーっと……ギース様? なぜこちらに?」


「いやなに、中庭でルーナ嬢らしき生徒が珍妙な食べ物を持っていたと耳にしてね。ぜひ食べたいと思ってここに来てみたら、面白そうな話をしているのが聞こえたというわけさ」


 珍妙……というと、昨日みんなで食べたおにぎりのことだろうか。残念ながら今日は3人で先に食べてしまったが。正直にそのことを伝えると、ギースは「じゃあ今度は僕の分も多めに作ってくれるかい?」とウインクしながら返してきた。その時は二つ返事で了承したが……これってよく考えればギースも一緒にランチを食べることになるのでは?恐るべし、ギースの話術。


「ほお? ギース程のやつがそこまで言うってんなら、期待できそうだな! 魔術頼りのお嬢様がどこまで通用するのか、楽しみにしているぜ!」


 そう言って高笑いしながら去っていくジェイド。その背中を、逃げ場をなくした俺は呆然と見つめるしかなかった。それを見かねた3人が俺を励ましてくる。


「大丈夫さルーナ嬢。君の魔術を持ってすれば、ジェイドにだって勝てるよ」


「その通りです! ルーナ様ならきっと……!」


「ええ! 必ず優勝して、私たちに学園のスイーツビュッフェ1週間貸切の権利をプレゼントしてくれますわ!」


「……学園の……スイーツ……ビュッフェ……?」


 学園内にあるスイーツビュッフェ。あまりの人気にすぐ在庫が無くなるため、ゲームでも1ヶ月に一度、特定の日にしか買えない激レアアイテム。卒業までに一度食べられれば僥倖と思っていた逸品を、1週間クラスで貸切だと……?特別な報酬とは聞いていたが、なんて最高な報酬なのだろう。これは何がなんでも優勝して、スイーツを堪能せねば。

 さっきまでの憂鬱はどこかへ吹っ飛び、かつてないほどやる気に満ち溢れた俺はみんなに向かい宣言した。


「ご心配なさらず。私、ルーナ・カトラスが必ずや、スイーツビュッフェの権利を獲得すると約束いたしますわ!」


 こうしてそこから1週間、その場にいた3人とコニーを交えての猛特訓の日々が始まったのであった――!

最後まで読んでいただきありがとうございます。

第十三話は3月3日投稿予定です。

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