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第十一話「魔術で対決しました」

お待たせしました、第十一話です。

いよいよ2人目の攻略対象が登場です。

 『コニー・デューク』。確かゲームの初登場は魔術の実技講習で、メリアが持つ聖属性の魔術に興味を持って近づいたのがきっかけだ。まあ、今回興味を持たれたのはメリアでなく俺だった訳だが。


「ルーナ・カトラス。君が使ったという闇魔術の話は聞いている。だが、魔力を放出しただけで卒倒した者がいたという俄かには信じがたい情報も耳にしているのも確かだ。噂では、魔力や魔術が私よりも上回っていると言う者もいるそうだ。3属性の魔術を操ることができるこの私を、だ」


 やはりコニーは闇魔術がきっかけで俺に話しかけてきた。となると、この後の流れはゲームではこうだったはずだ。


「……それで、私とコニー様、どちらが魔術の扱いに長けているかこの場で決めようということかしら?」


「そうだ。君は話が早くて助かる。では、ルールを決めようか」


 コニーが定めたルールはこうだ。俺とコニー、それぞれが自身が扱える最高の魔術を的に向かって放つ。ちなみに的は魔術耐性が高い鎧なので、ちょっとやそっとの魔術では傷一つつかない。お互いが魔術を放ったあと、クラス全員の投票で勝敗を決める。――うん、ゲームと同じ流れだな。ちなみに、ゲームではメリアの放った聖属性魔術の光にみんなが魅了され、満場一致でメリアの勝ちだった。ならば、ここは俺も完全勝利を目指そうではないか。


 先攻はコニー。コニーは火、風、水の3属性魔術を操る。3属性に適性を持つ存在も、聖属性や闇属性に匹敵する希少さだ。

 コニーが意識を集中させて小さな竜巻を出現させ、そこに火と水の魔術を纏わせる。そしてコニーが手を振りかざすと、竜巻に乗った火と水の魔術が螺旋を描きながら的に直撃した。壊すまではいかなかったようだが、的の鎧はその衝撃の大きさに激しく揺れ動いた。見た目が美しいのも見事だが、どれか1属性でもバランスが崩れれば為すことは難しいだろう。その精密さに感嘆する。魔術を見た生徒たちから、大きな拍手の嵐がコニーに贈られる。


 さて、次は俺の番だ。俺は魔力量こそ自信はあるが、精密さでいえば彼に軍配が上がるだろう。それに、闇魔術はお世辞にも美しいとは言い難い。なので、ここはシンプルに高火力の魔術を披露しよう。そこに派手さも加えれば見栄えも加わるはずだ。……だが、1つ懸念点もある。この懸念を払拭すべく、担当教員に問いかけた。


「先生。あの鎧、壊してしまっても問題は無いのでしょうか?」


 この質問にコニーが食い気味に反応した。


「おいおい、この私ですら傷一つつけられなかった鎧だぞ? それを壊す? 冗談を言うのは――」


 そこまで言ったところで教員がコニーを制する。その後で、俺の質問に回答してくれた。


「壊すこと自体は問題ありません。ですが、この鎧は王族直属の魔術師ですら壊せる者はごく少数。それほど高い魔術耐性を持っているのです」


「壊しても良いことが分かれば問題ありませんわ。ありがとうございます、先生」


 さて、許可も取れたことだし出し惜しみは無しだ。俺が扱える中でも、最高火力の魔術をお見せしよう。

 的の前に立つと、俺は両手を上空に掲げて魔力を集中させる。集中させた魔力は、禍々しいオーラを放ちながら球状に広がっていく。人一人入りそうなくらいにまで大きくなったところで、両手を振り下ろして魔力の塊を鎧に投げつける。闇魔術の上位技「カオスボール」だ。威力は絶大だが、魔力をたくさん込めなければいけない分隙も大きく、弾速も遅いためあまり実戦向きではない。だが、こういう場には誂え向きと言える技だろう。

 やがてカオスボールが的を捉えると、大きな音と共に鎧が木っ端微塵に砕け散った。あまりにも現実離れしすぎていたためか、クラスメイトたちはその光景をただ呆然と見ていた。

 しばらくの間静寂が続いたので、(あれ、もしかしてやりすぎたか?)と考えたが、その考えは大きく湧き上がる歓声により杞憂に終わった。


「本当にあの鎧を破壊するなんて! なんて威力なのかしら!」


「良いものを見させてもらったよ! 闇魔術って凄いんだな!」


 あちこちから飛び交う称賛に、思わず照れ臭くなってしまう。興奮しきった様子のマルシアが「流石はルーナ様ですわあ!」と勢いよく俺に抱きついてくる。メリアも微笑みながら大きな拍手を贈ってくれている。教員も本当に壊せると思っていなかったのか、空いた口が塞がらないでいる。この様子なら、もう勝負は決まったようなものだろう。そう思ってコニーを見やると、彼は口をガクガクと震わせていた。


「あ、ありえない……。あの鎧に傷をつけるどころか、粉々にしてしまうなんて……」


 未だ信じられないと言わんばかりのコニー。愕然と落ちる彼の肩にギースがポンと手を置く。


「言っただろう?彼女は一味違うってね。コニーの実力も確かだけど、ルーナ嬢の魔術も本物だ。パーティの件も、これで合点がいっただろう?」


「……ああ。たった今、それを痛感したよ」


 するとコニーは俺の視線に気づいた様子で、静かに歩み寄り、深々と頭を下げた。


「……私の完敗だ。あんな魔術を見せられてはぐうの音も出ない。己の力を過信して君を疑ってしまったこと、心より謝罪しよう。ギースが君に夢中になっている理由が、少し分かった気がするよ」


 そう言うと、コニーは下げていた頭を上げる。その表情には、先ほどまでの冷たさは一切なく、むしろ暖かさすら感じられた。ゲームでも、この表情はいわゆるギャップ萌えとしてファンから人気だった。かく言う俺も、男なのに少しドキドキしてしまっている。

 こうして俺は、無事コニーの疑いを晴らすことに成功した。ギースみたいに恋愛フラグは立たなかった(立つ方が困る)が、彼とは魔術を磨き合う良き友人となれそうだ。


 これで一件落着とも思えたが、俺の使用した魔術がまた一波乱起きる要因になるとは、この時の俺は知る由もなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

第十二話は28日投稿予定です。

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