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第十話「また驚かせてみました」

お待たせしました、第十話です。

節目となる十話目ですね。これからも頑張ります。

「ふう……」


 昼休み開始のチャイムが鳴ると共に、俺は深く息を吐いた。久しぶりに座学の授業を受けたのもあるだろうが、休憩時間となる度にメリアとマルシアの2人から、ギースとの間に何があったのかと質問責めにあった(といっても、そのほとんどがマルシアからであったが)。そのお陰で、まだ午前が終わったばかりだというのに疲労困憊になった俺は、座席から一歩も動けないでいた。そんな俺に、またマルシアとメリアが向かってくる。また質問責めに遭うのかと戦慄したが、この予想は良い意味で裏切られた。


「ルーナ様、学園の中庭で一緒にお昼にしませんか? ルーナ様にも食べてもらいたくて張り切ってお昼を用意していたら、想定よりも多く作りすぎしまいましたの……」


 と、マルシアは頬を赤らめながら恥ずかしげな表情で微笑む。もちろん断る理由など微塵もない。友人とランチなんて、最高の青春体験ではないか。早速承諾の意を示そうとするが、そこにメリアも入ってくる。


「私も、良かったらお2人に食べてほしいと思って……お菓子を焼いてきました! 一緒にいかがでしょうか」


 その言葉に俺の心臓が跳ね上がった。メリアは幼い頃からお菓子作りを得意としており、ゲームではそれで攻略対象たちの胃袋を掴んでいたのだ。どんなものか一度でも食べてみたいとは思っていたが、まさかこんな早くその機会が訪れるとは。


「2人とも、早く行きますわよ! 昼休憩の時間が無くなってしまいますわ……!」


 こうしてはいられない。さっきまでの疲労はどこへやら、俺は勢いよく立ち上がると2人を連れて中庭へ向かった。


 昼休憩の時間になると、学園の中庭は学生寮の裏庭と並ぶ程の人気スポットになる。それだけに人もかなり多いが、俺たちはなんとかベンチの確保に成功した。さあ、お待ちかねの弁当お披露目タイムだ。

 まずはマルシアが持参していた包みを開く。そこにはバスケットの中にこれでもかとギッシリ詰められたサンドイッチが入っていた。俺が今朝食べた簡易的なものとは違い、新鮮な野菜たちがたくさん挟まれている。マルシアの家、セーン侯爵家の領地は農業が盛んであり、マルシアもその影響で自ら栽培をしている程だ。彼女の育てた野菜を俺も何度か料理に使用したが、いつも使う野菜とは一線を画している。今回のサンドイッチも期待できそうだ。

 次はメリアが、持ってきていた籠から被せ布を外す。中にはマフィンやクッキーといった焼き菓子が、綺麗に敷き詰められていた。焼き菓子たちの香ばしい匂いが鼻腔をくすぐり、食べる前から涎が出そうだ。

 今すぐにでも2人の料理を食べたいところだが、その2人は今、俺の持つバスケットに視線を注いでいる。俺がどんなものを持ってきているのか、気になって仕方ないといったところだろう。こんなこともあろうかと、今回は俺もとびきりのものを用意している。特に俺の料理を食べたことのないメリアは驚嘆すること間違い無しだろう。どんな反応が返ってくるか楽しみが止まらない俺は、ニヤつきが止まらないままバスケットの蓋を開ける。


「これは……白米でしょうか?」


「それにしても、不思議な形でまとめられていますね……」


 2人の困惑も無理はない。俺が今回用意したのは『おにぎり』だ。傍から見れば、ただ白米を固めただけにしか見えないだろう。それに、この世界は米よりもパンの方が広く流通しているらしい。米を見ること自体そう多くはないはずだ。通りすがる人も(何それ……)と言わんばかりの表情で見つめてくるが、ここは気づかない振りをしておこう。

 気になって仕方ないという様子の2人に、俺はおにぎりを手渡す。おにぎりを手に取った2人はしばらくそれを眺め、やがてゆっくりと口に運んだ。不安と期待に満ちたこの表情……初めて両親に料理を食べさせた時を思い出すなあ。

 2人はおにぎりを一口含み、ゆっくり噛み締める。そして、噛み締める度に2人の目が大きく開いていく。――やはりこの瞬間はいつ見ても心が満たされるな。


「美味しいです……! ほんのり効いた塩味が食欲を唆ります」


「食材1つだけでこんなに美味しいものが作れるなんて! 勉強になりますわ!」


 2人には好評だったようで何よりだ。今回は時間があまり無くて出来なかったが、今度食べさせる時は具材も入れてみよう。またその時の反応が楽しみだ。

 そこからはそれぞれが用意したものを食べ、昼休憩終わりのチャイムがなるまで和気藹々とした時間を過ごせた。やはり学園生活はこうでなくちゃ。


 さて、午後からは実技講習だ。魔術や剣術の練習をする他、実戦形式で遠征することもある。因みに今日は魔術の講習だ。

 初日ということもあり、今回は各々の実力を図る目的で的当て訓練を行うようだ。担当教員によれば、自身が扱える最高の魔術を的に向けて放てばOKとのこと。とはいえ、俺は魔術関連で目立ってしまったばかりだ。またここで目立ってしまっては何が起こるか分かったものではない。波風立てずに済ませるにはどのような魔術を使えば良いか思考を巡らせていると、背後から声をかけられた。


「君が、ルーナ・カトラスだな」


 明らかに男性の声だが、ギースとは声色が違う。冷たく突き刺さるようなこの声は……。


「ええ、いかにも。そういう貴方は……コニー様ですね?」


「ほう、既に私のことをご存知でしたか。自己紹介の手間が省けましたね」


 知っているも何も、俺はこの男を9年以上前から知っている。ルーナと同じ公爵家の生まれにして、高い魔術適性を持ち主。そして、ギースとは幼馴染みという関係。すらっと伸びる身長に、凍てついてしまいそうな細い眼差しという風貌に違わぬどぎつい性格の持ち主である彼こそ、月プリに登場する攻略対象の1人――コニー・デュークその人なのだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

第十一話は25日投稿予定です。

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