第一話「推しに転生しました」
初めての執筆なので拙い部分があるかとは思いますが、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです!
※保険のため、R-15指定にしています
何の変哲もない、平凡な人生。俺、佐倉浩二郎28歳のプロフィールはその一言で片付く。 高校まではずっと地元に残り、何となく選んだ大学を出て、ブラックでもホワイトでもない会社で働いている。裕福でもなければ、特別貧乏というわけでもない。仕事して、ゲームして、休みの日は惰眠を貪る、平々凡々な毎日。きっとこの先もそんな感じの人生を歩むのだろう。
(ああ……早く帰ってゲームの続きしてえなあ……)
出勤前の朝。これから仕事だというのに昨日買ったばかりのゲームの事ばかりを考えていた。楽しすぎて深夜の1時までプレイしてしまったことに後悔しつつも、頭の中はゲームのことでいっぱいだ。神がかったキャラデザに時間を忘れるほど夢中になれるシナリオ……やはり新作ゲームの攻略をしている時は自然と心が踊る。
だが、どうも頭が働かない。ボーッとする感じがする。やはり夜更かしは良くない。1つのことを考えるので精一杯だ。何とか眠気を覚まそうと、寝ぼけ眼をこすりながら横断歩道をフラッと渡ろうとしたその時――。
プアアアアアアアア!
つんざくような車のクラクションに思わず目が開く。お陰で今まで感じていた眠気はどこかへ吹き飛んだ。全く、こんな朝早くから迷惑かけてるのはどこのどいつだよ。誰が何に鳴らしてるのか、迷惑野郎の顔でも拝んでやろうと辺りを見回す――。
「…………は?」
トラックが俺の目の前に迫っていた。朝からクラクションを鳴らされる迷惑野郎とは、間違いなく俺のことだった。どうやら俺は、信号が赤になった事に気づかないまま、横断歩道に足を踏み入れてしまっていたらしい。
(嘘だろおい。これってもしかしなくても死んじゃうやつじゃん。それにしてもトラックとか、最近流行りの異世界転生みたいな死に方しちゃうの俺。あのゲームもクリアしてないしまだ彼女もいたこともないし……てかめちゃくちゃ思考回るな。これが走馬灯ってやつか?)
なんてくだらないことを考えていたが、気づいた時にはもう、全身に走る衝撃と共に体が宙に放り投げられていた。どれくらい飛ばされたのか分からないが、地面に叩きつけられるまで数秒はあったからかなりの距離を飛んだだろう。
周りにいた人たちが駆け寄ってくるのが見えた。電話で救急車を呼ぶ者、必死に俺に声をかけ続ける者、みんな俺を生かそうと必死になってくれている。こんなに誰かに親切にされたのはいつ以来だったかな……。
だんだん周りの声が遠くなっていく。視界も焦点が合わなくなっていき、最初は不快だった痛みすら感じなくなっていく。まだ死にたくないと意識を保とうするが、血が大量に流れ出たせいでその気力すらも奪われていく。どうやらここまでのようだ。薄れゆく意識の中で、最期の思考を巡らせる。
(もし生まれ変われるのなら、俺は――)
そこで佐倉浩二郎(28)の人生は、幕を閉じたのであった。
小鳥のさえずり。優しく照らす日光。とても穏やか気分で俺は目を覚ました。久しぶりの快眠で気分は最高だ。今日は最高のゲーム日和になりそうだ。
……いや待て、確か俺はトラックに轢かれて死んだはずでは?それとも一命を取り留めたのか?もし助かったとなると、今俺がいるのは病院と考えるのが普通だ。だが明らかに様子が違う。1人で過ごすには広すぎる部屋。ゴロゴロ転がり回っても落ちる心配の無さそうなベッド。細かい刺繍が施された絨毯に、天井から吊るされた煌びやかなシャンデリア。これが病室であるわけが無い。ましてや1人部屋などもっての外だ。状況を確認する為にはまずベッドから降りなければ。そう思いベッドから足を降ろす。
「……届かねえ」
ベッドから降ろした足が床に着かない。何故だ。今までこんなことは無かったのに。
その他にも、自分の体にいくつもの異変が起きていることに気づいた。長い髪の毛。スベスベな肌。前と比べたら明らかに高すぎる声。お世辞にも筋肉があるとは思えない細身な手足。これで疑いが確信へと変わった。俺は、間違い無く女になっている。足が床に着かないということは、おそらく年齢もかなり低いだろう。
「待て……まだ慌てるな俺……」
そう、確認せずにはいられない。まだ女になったと認めたくない。俺が男であると確信できるアレが、男が男であると証拠づけられるアレが、まだ付いている可能性だってゼロでは無いはずだ。そう思った俺は恐る恐る自分の股間へ手を伸ばす。
………………無い。
やはり無かった。男の象徴たるアレが。俺が男であると示すことができる象徴であるはずのアレが。これでもう、俺が女になったという証拠が出揃ってしまった。
「マジかよ……」
あまりの情報量の多さと現実味の無さに打ちひしがれそうになった。これから俺は女として生きていかねばならない。正直上手くやれる自信はないが、動かないことには何も始まらないだろう。まずは自分がどういう状況に置かれているのかを確認しなければ。
重い体をなんとか動かし、俺はベッドから飛び降りる。まずは外の様子でも見てみようと窓に向かって歩き出すが、やけに目線が低くて歩きにくいし、これでは窓から景色を見るのも難しい。何か上がれる物は無いかと辺りを見回すと、クローゼットの前に置かれていた全身鏡に映る自分と目が合った。
「……ええええええええええ!!」
見間違いではないかと何度も目を擦る。だが見間違いではない。見間違うはずがない。
高級そうな純白の寝間着、黒く輝くストレートロングの髪の毛、まるで吸い込まれそうな漆黒の瞳。今鏡に写っているのは、俺が生前までプレイしていた乙女ゲーム『月と魔法のプリンセス』通称『月プリ』の悪役令嬢にして俺の最推し――
ルーナ・カトラスの幼少期の姿そのものだった。
投稿は、ストックのある内は3日間隔で行います(無くなったらその時報告します)ので、次回は29日を予定しています。
今後ともよろしくお願いします!




