〜今日は2月14日バレンタインデイ〜
エミ「待ちに待ったこの日、今年こそはあの人に…川崎先輩にチョコを渡す」
洗面台の鏡に映った自分を見てエミは誓った。
去年は渡そうと必死に川崎先輩を探したエミであったが、
他の女子に囲まれて、照れくさそうにチョコを受け取っている先輩の姿を見た時
劣等感と手作りチョコである恥ずかしさに怯え、それを隠すように、
そっと…カバンの中に戻したのである。
エミは家で持ち帰ったチョコをソファで食べながら、カカオの苦さを感じていた。
しかし、今年こそは、今年こそは先輩にチョコを渡し想いを告げる…
そう決心したエミは授業中ずっと、なんと言ってチョコを渡そうか考えていた。
去年から少しずつ考えてきたセリフも、今になって恥ずかしい言葉のように感じてきて、再び堂々巡りに陥ったのである。
先生の話も聞かずに何か上手いこと働いて奇跡が起きることを願っていた。
そんなことを思う中、授業はまだ終わらない。
感覚的にはもう終わっても良いはずなのにまだ25分も残っている。
また一分また一分過ぎるたびに、エミの鼓動は上がっていく、
早く来て欲しかったこの時間を、今には来て欲しくないと願うくらいに苦しく…
胸は鳴り続けている。
キーンコーンカーンコーン(チャイムの音)
昼休みになった。
エミは急いでカバンを手に持ち、友達とのお弁当の誘いも断り
先輩がいつもいる場所へ向かった。
廊下でカバンを持って走っていることを他の生徒に疑問に思われながら
先輩のいる場所へむかった。
エミ「今はチョコを渡すこと以外、恥ずかしいことなんてない!」
高鳴る想いをおさえつけ、走った。
エミ「先輩いた………」
幸運なことに今年はまだ誰も先輩の元へ女子は来ていない。
先輩と目が合った。
先輩に近づきながら、少し切れた息を整え、カバンに手を入れた。
「あの、先輩 いつもお世話になってます…これどうぞ」
自分が考えていたセリフでは無かった
川崎「あ、ありがとう!嬉しいよ!食べていいか?」
エミ「はい!」
が、チョコは渡せた。
その喜びを噛み締めながら想いを告げるタイミングを待っていた。
エミ「あ、あの…」
川崎「お、すごく おいs…」
先輩が言葉を言い終わる前に、後ろから大きな声がした
恵「サッキー!!はい!サッキーが好きなタイプのチョコ買ってきたよ」
川崎「めぐちゃん、ありがとう!(食べていいか聞かず食べる)
うっま!!美味しいよ!」
恵「もちろん!ザッキーの事はよく知ってるんだから」
川崎「まだ高校の俺しか知らないだろ、
まぁ去年のバレンタインから付き合ってるから長いかw」
エミ「お二人とも凄いラブラブですねぇw」
恵「そーおー?w」
川崎「おいやめろって…//」
エミ「www」
エミは笑顔を浮かべながらカバンを強く握った。
エミ「それじゃ、お邪魔なので教室へ戻りますね」
二人を背にして教室へ戻る
不思議と悲しくは無かった。
去年、渡せなかった自分が悪い。
そう言い聞かせながら、断ったお弁当のお誘いのことを考えていた。
(家に帰宅)
母「おかえりー、先輩はどうだった?」
エミ「え、あ…。 うっま!!美味しいよ!って言ってくれたよ」
母「良かったわねぇ〜、幼稚園からずっと好きだった人だもんねぇ、青春だわぁ
そうだ、あなたがいっぱい繰り返しチョコ作ったせいで
冷蔵庫にまだいっぱいあるの、お肉とか入らないから食べちゃって」
エミ「ほんとだ、食べよ…」
先輩のために試行錯誤を重ねて作ったチョコを口に入れた。
とても美味しくできていた。とても甘く口溶けも良い。
エミ「先輩にも。これ食べてもらえたんだ」
この一言に
涙がこぼれた。
エミ「なんか、しょっぱい…」