人の気持ちを無視した合理性というものは、現実離れしたゴミ以外の何物でもない。勘違いするな。合理性は人を絶望させるためにあるわけではない! 善き話し方を神から学べ!
「愛であれ、罪であれ……、日人は代々桜に我が身を移すという行為を行ってきました」
水色の十二単を着た女がそうつぶやく。
「瀬織津姫様……」
呆然と、桜雪さゆが口から言葉を漏らす。
彼女は、炎を持った手を止める。
「桜雪、人の気持ちを無視した合理性というものは、現実離れしたゴミ以外の何物でもない。
品性は大事だぞ、常日頃から磨いておけ。
愚か者の定義を今君に教えておこう。
『取り返しのつかない事をする奴』だ!」
ウガヤは人差し指でさゆをビシッと指さす。
「さゆ、神の気配、わたしたちに気づいて手を止めて正解だった。お腹の中の子どもは殺すべきではない。
出産の誉れを君が、いや誰も奪う権利はない。
野生でもそれを狙ってするのは蛇だぞ。親がいない隙に卵丸のみ。
ましてや望まない妊娠ではなく、恋の花が咲いての望んでの出産なのだ。
勘違いするな桜雪。お前は生まれて間もないからそこらへん加減がきかないのも当たり前だ、これから心を成長させればよい。
生き物の気持ち(感情)を徹底排除することこそが一番の非合理だ。
合理性は人を絶望させるためにあるわけではない!
善き話し方を神から学べ!」
「合理性を重視する神、天津日高日子波限建鵜草葺不合命《あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと》。わたしはミケーネのむごい滅亡、アレクサンダー大王の時からの歴史を頭の中に入れて、賢い答えを導き出して行動したつもりです!」
「でも二三枝の顔に笑顔は戻らなかっただろう?
確かにね。人をゲームのユニットとして考えたらお前の方法で最良なんだわ。
ピコピコしてるのに、あれえ、このユニットプレイヤーの言う事聞かないぞ~? じゃあ敵ユニットおびき寄せる贄にでもすっか! はい、ばいばーい、てな。
だが地上で生きているみんなはゲームのユニットではない。喜怒哀楽を持って生きているんだ。
人には、神にも一霊四魂がある。4つの感情がある。
和魂 喜
荒魂 怒
幸魂 哀
奇魂 楽
そこが難しい所なんだわなー。
『話し合いをしてくれない』
『同じ言語で話し合っても全く意思の疎通が出来ない』
こんな相手とどうやって付き合えばいいのか?
もし正義のヒーローなら、
暴力で殴り倒す
相手を悪と見なし、殺す
相手の組織を壊滅させる
という方法がある。
ただ殴って済む、皆殺しにしていいのなら楽だろうな。
自分以外人間じゃない、人に化けている豚だから食べようが自分の勝手と宣言して行動した西洋のある民族は、さっきの君みたいな事よりすごい事――こどもの人肉とか……をして恨みを買ってロシアとペルシャに挟み撃ちで滅ぼされた。
その滅ぶ時のやっこさんの言葉が
『人間語を話す飼育場の豚をどう処分しようが俺の勝手だろうが!』
これが1250年の事だ。ハザール王国っていうんだけどな。
ミケーネも滅ぼした一族全体が奴隷商人種族フェニキア人も他の民族をゲームのユニット扱いをした。だからこそアレクサンダー大王は怒ってティルスを攻め滅ぼしたんだ。
広い視野、世界レベルで考えてるのは良い事だ。君のそこは間違いなく褒められるよ、桜雪」
「はい…………」
桜雪さゆが、拗ねたようにウガヤに返事をする。
「ま、どっちも熱くなり過ぎだ、桜雪に二三枝。
桜雪なんて火柱までだしてるし」
と、ウガヤがさゆの火柱に向かって指を鳴らす。
シュウウウウンシュンシュンシュン。
火柱が嘘のように消えた。
「二三枝お前はかたき討ちに熱中しすぎ」
次は、雪女の二三枝に向かってウガヤはいう。
「で、でも男の天照の一番の息子、光の神ウガヤ様。夫を亡くした妻の気持ちを汲んではいただけませんか…………!」
祈るようなポーズで雪女の二三枝はウガヤに懇願する。
「すまんがそれは100%くんでやる、とまではいいがたいな」
「そんな…………」
はらりと二三枝は涙を流す。