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第19話
「行く?」
「…え、まじ?」
「ここまで来たんだからさ」
ヒロは険しい顔を浮かべながらも、後を追おうと催促してきた。
追ってどうするんだ?
危険な場所には立ち寄らないでください!とでも言うのか?
ヒロはこの場所で「見た」と言った。
“幽霊”を。
人間の数倍もある、——怪物を。
「さっきの話の続きだけど」
「…うん」
「あの時は怖くて逃げ出したんだよね。死ぬと思ったから」
「そんなにデカかったわけ??」
「…デカいっていうか、見たことがない化け物だったんだ…。あんなものが存在するなんて…」
ヒロが“見た”のは、人でも動物でもないもの。
それがおよそ「生物」とは思えないような、異形な姿をしたものだそうだった。
顔が大きく、口は耳のそばまで裂けていた。
よだれを垂らし、長細い手を地面の上まで生やして、尖った歯を先生に向けながら目を見開いていた。
顔に“一つだけ”ついた目を。
言っていることはなんとなくわかった。
「幽霊」ってのは大体そんなもんだ。
俺は知っていた。
ヤツらの「姿」を。
——「正体」を。