査定報告書 概要
今回は物語の前日譚のようなものというか、物語の起点になる部分ですね。
― ある朝のことだった。
師匠であるノイマス・ベンダーから告げられたのは到底承服しかねるものだった。
「ロゼッタ、お前に内々の頼みがあるのだが、良いか?」
「それはオールストン伯爵家にも知らせることができないものですか?」
「この件は可能な限り秘匿されることが望ましいとのことだからな。」
「それで用件というのは?」
「これは、グレス王国枢密院からの密封書に書かれていたことだが、ロゼッタも知っている通り、王国には2人の王子がいる。当然ながら王太子選定に際しては王位選定の定めによって公平な査定を行わなければならない。この査定にあっては査定者は地位的に公平であり、査定評価の絶対性の担保と王太子候補に気付かれずにそれらを遂行する能力が求められる。そこで、枢密院で決議されたのが殿下と同じく来年度入学予定の魔導師学園生徒にその任を負わすということだった。そこからは担当者の選出なのだが、当然これらの条件であればオールストン伯爵家の右に出る者はいないだろうということで、ロゼッタに白羽の矢が立ったということだ。」
(それは、確かに、公にはできないことね...)
「それ、私に拒否権ありますか?」
枢密院からの依頼とはすなわち貴族にとっては命令と同義、ここで断れば次の改選で席を失いかねない。
「ほぼないとみていいだうな。」
そうあっけなく言う師匠に、ロゼッタは面倒なことを言われたものだと、ただただ諦観するしかなかった。