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童話短編など

命の揺りかご

作者: 楓麗

一度でも顔を上げてみれば


どこまでも続く大空が広がる


時間によって様々な顔を見せる


大空の中を駆け巡る命の息吹


希望の風に吹かれてたくさんの雲の群れが


大空の彼方へ渡っていく






少し顔を下げてみれば


今度はどこまでも続く大海原が


眼前に広がる


大空と同じように


時間によって様々な顔を見せる大海原の中を


泳ぎ回る命の灯火


限られた空間の中でも


たくさんの命が懸命に輝きを放っていく






水に包まれた母なるこの星で


今でもたくさんの命が絶えず生まれ変わっている


全ての始まりは母なる海の中から


たくさんの産声と共に


溢れ返った命は大海の外を夢見る






海から地上へ生活の場を移した者たち


念願の光を浴びて


様々な生き物たちが変貌を遂げていく


大地を駆ける者


大空を飛び回る者


時には大海に戻る者


さらには動くことをやめた者




そして、その中に叡智を獲得する者が現れる




私たちはほんの短い時間の中で


目まぐるしく成長し


進化を遂げていく


生きるためのすべを見出し


知恵を身に付け


自ら何かを生み出していくことを知る


いずれ知識は力となって文明を築き


仲間と共に寄り添い合って生きることを選ぶ






しかし、私たちは時に破壊することも覚え


罪を犯し


命を奪い合い


他の仲間たちの血肉を糧とする






進化の軌跡


星が歩む時間の中で


私たちの築き上げた歴史は


ほんの一部に過ぎない


そんな私たちは次にこの星の外を夢見る


海から大地へ


大地から空へ


空から宇宙へ……


私たちの夢は終わりを知らない






でもこれが私たち生き物が


生まれながらにして埋め込まれた記憶


抗えない生存の歴史を積み重ね


つちかわれてきた衝動


この星に生まれ落ちた者たちが持つ宿命なのだろうか……






私たちは星にとってとても小さな存在だから


母なる星の全貌を見ることは叶わない






だけど、この命の揺り篭を越えた先からなら


きっとそれも叶うはず


今まで生きてきた星の全貌を目にし


見た者すべてがきっと心を奪われることになるだろう






そして、無性に故郷が恋しくなり


帰りたいと思うことになるだろう






それはきっと


この子たちも同じこと……







「おめでとうございます。元気な双子の赤ちゃんですよ」

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