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居眠りの最中に告白されて、しかもOKだした男がいるらしい。そう、俺だよ……

作者: 新


 駅のシンボル像の前で、俺はある女の子の到着を待っていた。 そんな俺の恰好だが、黒いジャケットに白いTシャツ、そしてジーパンという無難なファッション。普段はあまり着ない服だから少しむず痒い。


スマホを見て暇を潰していた俺は液晶に映る10時の文字に、そろそろかな、とあたりを見渡した。


すると、肩をポンポンと叩かれ、振り向くととびっきりの笑顔の美人さんがいた。


「お待たせ、真二くん」


「……あぁ」


無愛想を通り越し、無表情でそう返す。その様子に、俺の『彼女』である谷町薫はクスリと笑いをこぼし、俺と腕を組んできた。柔らかい。いい匂いする。


……ハッ。危ない、トリップしかけたぜ。だが、俺の仏頂面は微動だにしていないからバレては無いはずだ。


「相変わらずのポーカーフェイス……カッコいいよ、真二くん」



うっとりとした表情で俺の顔を見つめてくる谷町にドキリとするが……



「……あぁ」


とそっけない返事になってしまう。



――あぁ、なぜ俺はこんな返事しか返せないんだ。

というか、なんでこんな事になったんだっけ……?








まず知って欲しいのは、俺には悪い癖があるということだ。


――その癖とは、目を開けながら眠ってしまうという、とても変わった癖だ。


自室のベッドで寝ている時は普通なのだが、いかんせん居眠りをしているとどうしてもその状態になっているらしい(妹談)


ついでに言うと、半覚醒状態でもあるため、一種のトランス状態にも近いようで、話しかけられると適当な返事を返すらしい(妹談)


我ながらヤベーやつじゃん、俺。





さて、その日俺は屋上で昼ご飯を食べていた。とても天気が良く、気温も丁度いいポカポカ日和。春の気持ちいい風が通り抜ける屋上のベンチでどうやら居眠りをしてしまったらしい。


ご飯食べた後は眠くなるよな。

しかも前日に夜更かしをしたためそれも重なっていた。



「……ーい。おーい、起きろー」


「……んっ。寝てたか」



そんな声と同時に俺は肩を揺すられているのに気付き目覚めた。目の前にいたのは俺のクラスメイトの松岡竜志だった。通称まっちゃん。そのまっちゃんが何やらニヤニヤしながら俺の顔を見ていた。


……一体なんぞや。



頭にはてなマークを浮かべ首を傾げたが、授業開始を知らせるチャイムにハッとした。早く行かないと授業に遅れてしまう。


「おいおいおいおい、マジか真二〜」


「うぉっ。……授業遅れるぞ。つーか、いきなり肩組むなよ」


そう言いながらまっちゃんは肩をガシッと組んでくる。

このちょっと不良ぽい見た目をしているまっちゃんだが、とてもフレンドリーなのだ。……悪く言うとウザい。


そのまっちゃんだが、やはり俺の顔を見てニヤニヤしている。一体なんなんだろう。


「トボケんなよ〜……あの美人谷町に告白されて、しかもオッケー出してたのを俺は録画してたぞこのやろっ」


そう言いながらまっちゃんは俺に絡んでくる。


はて? 告白?一体なんの話だ。


俺が訝しげな顔をまっちゃんに向けると、まっちゃんはスマホの画面を俺に見せながら、タップした。どうやら動画のようだ。



『あの……梶田くん。隣、座ってもいいかな……?』

『……あぁ』

『ありがとう! ……えっとね、わたし、その、梶田くん――真二くんに伝えたい事があるの!』

『……あぁ』

『――い、一年の頃から好きでした! 私と付き合ってください!』

『……わかった』

『えっ! ……ほ、ほんとに?うそじゃないよね? 嘘だったら泣くよ?』

『うそ……じゃ……ない』

『やったぁ! じゃ、じゃあ放課後にまた二人で喋ろうね! 』


そう言いながら去って行く谷町と、眠り続けている俺。


「…………」


そこで動画は終わった。




「これでお前も彼女持ちじゃ〜ん」


なんて暢気なまっちゃんの声が聞こえてくるが、俺は呆然として立ち尽くす。




…………なにこれ?







放課後になり、ホームルームが終わると俺は鞄を手に席を立つ。


結局あのあと授業は遅刻したのだ。プチフリーズした俺を見てまっちゃんは俺から事情を聞き出し、その後転がりながら爆笑された。その制裁(鉄拳)に時間を食われてしまったのだ。教師に怒られ、クラスメイトには苦笑された。恥ずかしい。


その時のことを思い出し、ため息を吐いて椅子を立つと……


「真二くん! 今から帰るんだよね? 一緒するね」


「……構わない」


急に谷町に話しかけられてビックリしたが、持ち前の無表情と口下手が発動。一緒に帰ることを了承したが、まあいいか。できればあの告白のことについて色々話したかった。


そのまま谷町と俺は一緒に教室を出ていった。なんだか背後の教室がざわざわしている気がするが、気のせいだろう。





どうしよう。さっきから谷町の距離感が……すごい近い。


「告白、オッケーしてくれてありがとう。本当に嬉しくて、授業中もずっとドキドキしてたの……真二くんは?」


「……俺もだ」


俺みたいな陰キャに美人な谷町が告白なんて、間違いであって欲しい。そんな不安でドキドキはしていた。


「っ♡」


だが、俺の同意を聞いた谷町は目に見えて嬉しそうにはにかみ、俺の手を握ってきた。


「!?」


軽くパニックになるが、無表情は貫く。それが俺である。

だが、心臓が……ヤバい。さっきから谷町が近いせいで、俺のハートがブレイクしそうだった(無表情)

なんで女の子はこんなにいい匂いがするんだ。緊張で手汗が気になる。(早口)


当たり前だが、俺は谷町とは初めて一緒に帰る。


道中、俺と別れないところを見ると家の方向は一緒なんだろうか。そんなことを考えながら、握られている手から出来るだけ意識を逸らしていると、谷町がこちらを向いた。


「真二くん、さ。明日は土曜日だけど……暇だったりする?」


ふむ。正直に言おう。


「暇だな」


そう、暇なのである。これと言った趣味は無いし、部活にも入ってないから休日はダラダラするだけだ。そういえば谷町はバレー部だった気がするが、大丈夫なのか。


「そっか! よかったらさ、明日デート……しない?」


「……あぁ」


「やった!」


……あ?え? ……やべ、パニクった。デートって言葉で一瞬思考が止まって、普通に了承しちゃったよ。


谷町に視線を向けると、満面の笑顔をしていた。可愛い。あとさらに手をギュッとされて心臓が(ry



……まあいいか。未だにこんな美人な子に告白されたのが非現実に感じているが、とても幸せなことなのだ。陰キャの俺に神様が機会を与えてくれたんだろう(適当)


そう思う事にした。


さて。そろそろ俺の心臓は限界が近い。いつまで俺は手をにぎにぎされているのだろうか? 谷町は俺を悶死させたいのだろうか?


なんて考えていると


「あっ……! 明日は○○駅のシンボル像の前に10時に集合ね! ……頑張っておめかししてくるから、楽しみにしててね! それじゃ、私はこっちだからまたね!」


そう言って谷町は俺の手を名残惜しそうに放し、笑顔で手を振ってくれた。俺も腕を上げて軽く手を振った。



あ、告白のこと言えなかったな……。




…………ていうか明日着て行く服見繕わなきゃ!!!(パニック)

続きはpvとかが多かったら書きます

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