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プロローグ

初作品です。

楽しんでいただけるような作品に頑張ります。

「侯爵家に魔力なしなどいらん。今すぐ出ていけ!」


私を怒鳴る父上と、そんな状況をまるで無視した使用人たちに囲まれて私は、


「わかりました……今までありがとうございました。さようなら」


侯爵家に別れを告げた。


17歳の誕生日、私は家族に捨てられた。

10年前の今日、妹ユーリが生まれたときにはわかっていたこと、それでも家族にいらないと言われて胸が傷んだ。


けれどそれ以上に私は幸福に包まれていた。

「侯爵家の令嬢として生きる定めから解放して下さった父上には、感謝してもしきれませんわ。……もう父上ではなかったわね、気をつけなきゃ」


これからはただのアーシアとして生きていくのだから。


これからの生活に胸を踊らせていると、


『アーシア〜もう行くの?』


子供のように高い可愛い声が届いた。

その声の主はとても綺麗な碧色の鳥、私の友達のバートだ。


私には魔力がない代わりに、特殊なチカラが備わっていた。

それは"スキル"、神のチカラとも呼ばれているものだった。

私の持つスキルは2つ、そのうちの1つが"テレパシー"だ。

私はこのスキルで動物と会話をすることができた。


「えぇもう旅立つわ。私を必要としてくれる国を探す旅に出るのよ」


10年前から少しずつ、侯爵家の人たちに気づかれないように準備を進めてきた。

魔法の使えないものを蔑むこの国に、私の居場所はなかった。

だから、魔力のない私を受け入れてくれる国を探す旅に出ることにしたのだ。


『じゃあ僕も行くよ!アーシアはこの国を出たことがないだろ?僕は世界を旅してるからね!アーシアの役に立てるよ!』


と胸を張るバートに私は思わず笑ってしまった。


「あらバート、旅をしていたなんて知らなかったわ。どうやって毎日私とお話してくれていたのかしら?」


『そ、それは……アーシアと出会う前の話だよ!前は色んな国を回ってたんだ。海だって見たんだぞ!』


それが本当でも嘘でも、私を心配してくれる優しい気持ちに自然と笑みが溢れた。


「それは頼りになるわね。バート、私と一緒に旅してくれる?」


『もちろんだよ!僕はアーシアの友達だからね』


「ありがとう」


こうして元貴族のアーシアは、友達のバートと旅に出たのだった。


―――

――――――

―――――――――

「これで我が侯爵家の汚点がいなくなったな。ユーリの魔力判定まで10年、魔力なしのあいつのせいで我々は蔑まれてきた……王家も我らを見直すだろう」


アーシアを追い出したサザルード侯爵は、実の娘を捨てた罪悪感など感じていないようだった。

娘という認識があったのかすら謎である。


今後の華やかな生活に意識を向けていた公爵のもとに、バタバタという騒がしい足音が聞こえてきた。


「旦那様!今王家から使者が!」


扉を蹴り飛ばす勢いで入室した執事から、侯爵が今まさに求めていた言葉が届けられた。


「とうとうこの時が来たか……恐らくユーリと第2王子の婚約の件だろう。我らを蔑んできた貴族共の驚く顔が想像できるぞ。今すぐユーリを飾り立てろ!急げ」


「畏まりました!」



それから程なくして、侯爵家御一行は陛下の前に跪いていた。


「サザルード侯爵、何故ここに呼ばれたかわかっているのか?」


という陛下の問に対して、


「勿論でございます。ユーリの魔力判定を受け、王家から婚約の申し出があるのは当然のことでございます。ユーリは過去に聖女しか使えなかったと言われる治癒魔法の適性がございますからな」


侯爵は自信満々に答えた。

しかし、陛下は顔に怒りを表し侯爵を怒鳴りつけた。


「馬鹿者が!そんなことのために呼んだのではないわ!お主が何をしたのかわからんのか?!お主がアーシア嬢を追い出したせいで、我が国の神獣バート様が国をお捨てになったのだぞ!」


「?!な、そんな、神獣様がアーシアのために国を捨てるなどありえません!あいつは魔力なしですぞ?我が家の、我が国の汚点でしかなかったではありませんか?!」


「黙れ!今すぐアーシア嬢を連れ戻し神獣様を我が国に戻すのだ。できなければ、サザルード家は取潰す。以上だ」


屋敷に戻った侯爵の顔は憤怒に歪んでいた。


「捨ててもなお私の邪魔をするか……許さん、許さんぞアーシアァァッ!お前を消して神獣を私のものにすれば……私が国王だ。私が私が……ブツブツ」


独り言を盗み聞く存在がいることに、侯爵は気づいていなかった。



バサッ

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