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永遠のイージス  作者: フルマイナス
6/13

6話「火口に咲く花」

よろしくお願いします!

 登場人物

 霞勝(かがち) (とおる)(17)

 天童(てんどう) 一葉(かずは)(17)

 中田(なかた) 蒼海(そうみ)(17)

 神田(かんだ) 海生(みお)(17)

 三嶋(みしま) 緋炉鬼(ひろき)(17)

 阿国(おくに) 優花里(ゆかり)(17)

 天童(てんどう) 美波(みなみ)(39)

 天童(てんどう) 剣司(けんじ)(16)


 武田

 女子A

 女子B


○神崎町・山(夜)

 薪割りの音がしている

 三嶋 緋炉鬼(17)、薪を割っている


三嶋「(町を見て)ん?」


 髪が靡いて斧を強く握る三嶋


○オープニング


○天童家・全景(深夜)


○同・リビング(深夜)

 霞勝透(17)・天童一葉(17)、天童美波(39)と向かい合って椅子に座っている

 天童剣司(16)、ソファに座っている


美波「何があったの?」

一葉「お母さん、あのね──」

美波「あなたは黙ってなさい」


 一葉、シュンとなる


透「一葉が、田坂っていう女に捕まったんです。助け

 出しましたが、その後とんでもなく強い骸霊と遭遇

 しまして・・・」

美波「使ったのね?」

透「(真剣な目で)はい」


 美波、透を真剣な目で見ている


美波「・・・ありがとね、透君」

透「怒らないんですか?」

美波「あなたは私が止めても、一葉を使う為だからって言って無駄かなって」

透「・・・けど、あいつのことが気になります!大神

 器みたいなことをしてきて・・・何か知りません

 か?」

美波「(顎に手を当て)新手かしら。こっちで調べとく

 わ」

透「分かりました」

一葉「ねぇ」


 透・美波、声のした方を見る


一葉「さっきから何の話してるの?」

美波「あ、ごめんね。透君、一葉には話したの?」

透「あまり詳しくはしてないすね」

美波「(一葉を見て)一葉、説明する前に聞くけど、これからあなたが目にしていくのは、常識じゃ考えられないことばかりで、あなたにも害が及ぶのよ?透君でも守りきれない事があるかもしれない、それでも、こっちの世界に来たい?」


 一葉、俯いて考えている


一葉「(顔を上げ)うん!」

美波「・・・まず、神器は、所持者に人並外れた身体

 能力と特別な力を与える、その特別な力っていうの

 が──」


 透、手のひらで黒紫の霧からダガーを生成する


美波の声「透君が持ってる「女王」だったり」

美波「剣司が持ってる「下獄」」

天童「草刈りとか便利だよ?人の首刎ねるにも最適だ

 けど」

美波「この2人以外にも何人もいるの」

透「そういえば最近、水を操る「海王」っていう奴に

 会った」

美波「え?」

一葉「誰なの?」

透「中田蒼海だ。青っぽい黒髪の奴いたろ?」

一葉「(心配そうな顔で)・・・あの人も、なの──」

美波「「海王」・・・いい味方になってくれるわ。確

 か、昔は仲間だったはずだから」

一葉「何で、私に黙・・・あ」

透「ああ、そういうことだ」

一葉「(美波を見て)他にも、いるの?」

透「学校の保健室の安藤先生が居る、味方だ。お前が

 いじめられてたって話も安藤先生から聞いた」

一葉「・・・ねぇ、味方が居るって事は敵もいるって

 事だよね?」

透「ああ、遠峰っていう奴だ」


 透、一葉を見て目を見張る

 一葉、涙目になっている


透「(一葉の涙を拭いながら)どうした?殴られた所が

 痛むか?」

一葉「(涙を拭いながら)違う、違うの」

透「(手を離し)なら、どうした?」

一葉「私を守るっていうのは敵から守るって事な

 の?」

透「・・・そうだ」

一葉「(透の服を掴み)大丈夫だよね!?透、死なない

 よね!?」


 一葉、涙が溢れている


透「・・・「死なない約束」は出来ない」

一葉「嫌だ!私の事なんか放っておいていいから、自

 分を守って!」

透「それも出来ない約束だ」

一葉「(立ち上がり)何で!?そもそも、何で私が狙わ

 れるの!?」

美波「一葉、私たちを信じて?必ず守るから」


 一葉、後ずさりしていく


一葉「私、何もしてないのに!何も持ってないの

 に!」


 一葉、ソファの位置まで後ずさりしていく


天童「ずっと一緒に居るから仲がいいって思われてる

 んだ」

一葉「えっ?」

透「そういう事なんだ。だから、しばらく距離をお

 く」

一葉「え?・・・嫌だ・・・嫌だよ!」


 一葉、涙目になっている


透「お前の為なんだ、一葉」

一葉「嫌だ!」

透「(立ち上がって一葉を見て)俺は、お前を守るって

 んなら何でもやるぞ!」

一葉「(涙を拭いながら)嫌だ・・・嫌だよ・・・離れ

 たくない」


 一葉、崩れ落ち顔を覆って泣いている


透「・・・」


 透、ドアに手をかける


美波「ダメよ、透君」

透「(立ち止まり)・・・何でです?一葉が狙われるの

 は、俺が近くにいるからでしょ?」

美波「一葉を守る為に何でもしてくれるのは嬉しい

 わ。けど、もう手遅れなのよ」

透「(振り向き)え?」

天童「・・・もう敵にバレてるって事です、それに

 ──」


 天童、立ち上がり一葉の横に立つ


天童「(透を見て)今、姉ちゃんから離れれば姉ちゃん

 を見殺しにするようなもんですよ?」


 一葉、すすり泣いている


透「・・・クソ」


 透、一葉に歩み寄る

 一葉、顔を覆って泣いている


透「(一葉の前に腰を下ろし)すまなかった、一葉」

一葉「私の為だって言ってたけど、ホントはお母さん

 から頼まれて嫌々してるんじゃないの!?」

美波「一葉!」

透「良いんです、一葉の言う通り頼まれたからやって

 たみたいなところはあったんです」

一葉「ホラァ!あなたの本心じゃないもの!!誰も私の事なんて・・・!!透なんて大嫌い!!」


 一葉、立ち上がり部屋を出ていこうとしている

 透、一葉の腕を掴む


一葉「(抵抗しながら)離して!」

透「最後まで聞け!」


 一葉、抵抗をやめる


透「お前が田坂に殴られた時は心底頭にきた!」


 一葉、透を見る


透「本能で思った。守らなきゃって。ここで守らなけ

 れば一生後悔する!そして、その思いをこれからず

 っと抱いてお前を守っていく!」

一葉「(俯き)・・・なら、離れないで?」

一葉「(透に抱きつき)・・・そばにいて!それが私の

 救いなの・・・・・・透が居なくなったら、苦しく

 て死んじゃう」

透「ああ」


 透、一葉を抱きしめる


美波の声「透君」

透「(美波を見て)はい」

美波「(立ち上がりテーブルに手をついて)あなたのや

 るべき事は一葉の傍にいて一葉を守る事。出来

 る?」

透「言われなくても」

天童「聞けてよかった・・・さて、もうこんな時間だ

 しご飯食べましょ♪」

透「あ、いえ、お構いなく」

天童「ダメ、あと泊まっていきなさい」

透「いえ、ホントに──」

美波「遠慮しないで。剣司、お風呂入ってきなさい。

 ご飯作っとくから」

天童「分かった」

美波「透君はご飯食べた後に入って」

透「(胸の前で手を小さく振り)い、いえ。ホントに

 ──」


 一葉、透の袖を掴んでいる


透「ん?」

一葉「(俯き)・・・泊まっていって?私の傍にいるん

 でしょ?」


 一葉、俯いて顔が赤くなっている


美波M「(一葉を見ながら)いい人見つけたわね、一葉」


○同・全景(深夜)


美波の声「さ、手伝って」

透の声「分かりました」


○同・全景(朝)

 明るくなってきている


○同・一葉の部屋(朝)

 透、ベッドで体を起こしている


透「・・・ネム、え〜っと、昨日は確か──」


 × × ×

(フラッシュ)

 美波、真っ赤な顔で酒を飲みながら笑っている

 透・一葉、顔がひきつっている


透の声「美波さんのせいで2時間ぐらいしか寝てない

 ぞ」


 × × ×


透「そういえば、今日部活だったな・・・起きるか」


 透、立とうと右手を床につく

 柔らかい物に触った音


透「ん?」


 透、右手を見ると寝ている一葉の胸に触っている


透「・・・」

一葉「(目を擦りながら)う、ん・・・あ、おはよう。

 今日って──」


 一葉、視線を胸に移すと胸を触られている


一葉「・・・」


 一葉、顔がみるみる赤くなっていく


透「いや、ちが──」

一葉「(透を殴りながら)キャーーー!」


○同・リビング(朝)


美波「(ドアを開け)おはよ〜、あれ?」


 透・一葉、朝ごはんを食べている


美波「(椅子に座りながら)今日部活?」

透「はい」

美波「頬どうしたの?」


 透、頬が赤くなっている


透「(白米を1口食べ)そばにいすぎました」

美波「ふ〜ん」


○同・玄関(朝)


一葉「(手を振り)いってきまーす!」

美波「はーい、いってらっしゃーい、透君もね〜」

透「(ペコりと頭を下げ)お世話になりました」


○神崎町・住宅街(朝)

 透・一葉、歩いていく


一葉「なんで胸触ってたの!?」

透「こっちのセリフだ、何で同じ布団で寝てんだ」

一葉「だって1枚しかないんだもん!」


○天童家・玄関(朝)

 美波、ドアを閉める


天童「昨日、嘘ついただろ」

美波「(鍵を閉め)仕方ないでしょ」

天童「本当は敵にはバレてないのに何でだ?」

美波「一葉には、今の幸せを生きて欲しい、その為に

 は透君が必要なのよ」

天童「負ける前提で話してるっぽいから言っとくが、

 負ける気なんて、毛頭無いからな」


 天童、去っていく


美波「・・・私もよ」


○神崎高校・空手場・全景(昼)


空手部員の声「ありがとうございましたー!」


 一葉、空手場から出ていく透を見ている


武田「気になる?」

一葉「え?」

武田「あいつ、部室で着替えないんだよ」

一葉「何でですか?」

武田「さあな、見に行こうとしたら、バレて次の日の

 練習、全員ボコボコにされたんだよ。一葉ちゃんな

 ら、見てもいいかもね」

一葉「・・・」


○同・教室(昼)

 透、立ってコーラを飲んでいる


透「フー、あちー」


 透、汗を拭いている

 一葉、廊下から透を覗き込むように見ている


一葉M「何で部室で着替えないんだろ?」


 透、道着を脱ぐ


一葉M「(口を手で覆い)あ──」


 透、身体中に無数の傷がある


一葉「・・・透」


 透、びっくりして振り向く


透「え?」

一葉「その傷って──」

透「ん?これ?昔の傷だ」

一葉「え?」

透「昨日、橋に現れた鎧っぽい奴いたろ?あそこまで

 強くはないが、あんなやつらと戦ってんだ」


 一葉、シュンとなっている


透「・・・一葉、これはまだお前と知り合う前のもの

 だ。お前が気に病むことはない」

一葉「(自身の服を強く握り)・・・あまり、無茶はし

 ないでね?」

透「分かってる」

一葉「じゃ、じゃあ、廊下で待ってるね」


 一葉、教室を出ていく


透「(コーラを飲み)ぷはぁ、うめ〜」


○同・玄関(昼)

 透・一葉、校舎から出てくる


一葉「そういえば、前私に料理教えるって言ってなか

 った?」

透「ああ、そんな事言った様な気がするなぁ」

一葉「なら、明日どうかな?部活も無いでしょ?」

透「ああ、いいぞ。俺ん家に来い、分かるか?」

一葉「うん、分かるよ」


 透、立ち止まる


一葉「(立ち止まって透を見て)・・・どうしたの?」


 一葉、透がみている方向を見ると、阿国 優花里(17)が女子A・女子Bに壁に追いやられている


女子A「おい、いい加減にしろよ2年」

女子B「ちょっと、成績残してるからってよ」

透「(ため息をつき)・・・行くぞ」

一葉「え、助けてあげないの?」

透「そんな義理はねぇ」

一葉「助けてあげて、私と同じ思いはさせたくないか

 ら!」

透「(立ち止まり)・・・ったく、しょうがねぇな」


 透、歩き出す

 女子A・女子B、急に態度が変わり逃げ出している


透「(立ち止まり)ん?」


 優花里、振り向いて角に向かって話している


透「・・・」


 角から三嶋が出てくる


透「(三嶋を見て)・・・あ」


 優花里、透に気づき去っていき、三嶋も後に続いている


一葉「(透に駆け寄り)今の誰?」

透「女の方は知らないが、男の方は三嶋緋炉鬼だ、確

 か同じクラスだったはず」

一葉「私、初めて見たけど」

透「あまり学校に来ないからな、あいつ」

一葉「ふ〜ん」

透「(歩き出し)早く帰ろうぜ」

一葉「うん」


○神崎町・住宅街(昼)

 透・一葉、歩いている


一葉「私、あの子知ってる気がするんだよな〜」

透「さっきの小さい奴?」

一葉「うん、前どこかで会ったような気が・・・」

透「気のせいだろ」

一葉「う〜ん」

一葉「でも隣に居た男の人、背高くてかっこよかった

 な〜」

透「そうか?」

一葉「あ、でも、透の方がかっこいいよ!」

透「ほう、それはそれは、嬉しい限りだ」

一葉「透は、あの女の子どう思った?」

透「・・・暗いやつだな〜って思った」

一葉「でも、三嶋君?と話してた時は笑顔だった

 よ?」

透「あいつにだけは心開いてるんだろ、どっかの誰か

 さんみたいに」

一葉「(立ち止まり)私は他にも友達居ます!」

透「(立ち止まり)お前俺の他に友達居たの?」


 一葉、透をポカポカ殴っている


透「アハハ、冗談だって。・・・けど、なんか残念だ

 なァ」

一葉「(殴るのを止め)え?」

透「(一葉に顔を近づけ)お前の笑った顔を他の男に見

 られてるって思うとな」

一葉「(頬が赤くなり)・・・へ?」

透「(顔を離し)・・・冗談だ、昨日見たドラマで言っ

 てたから言ってみただけ」


 透、歩き出す


一葉「(小声で)透にしか見せない顔もあるんだよ?」

透「なんか言った?」

一葉「何も言ってない!」


 一葉、透の横に並ぶ


透「・・・明日、何すんの?」

一葉「え?・・・あ!明日ね!そうだね〜、何教えて

 もらおうかな〜」

透「何でもいいぞ、どうせ1日暇だし」

一葉「なら〜」

一葉「(振り向き)全部教えて!」

透「は?」

一葉「だから、全部教えて!」

透「は?」

一葉「料理、裁縫、あとは〜」

透「おい、待て。要求が多いぞ」

一葉「いいじゃん!どうせ暇なんでしょ?」

透「(ため息をつき)・・・分かったよ」


 一葉、スキップで去っていく


透「あいつ、自分の命が危ないって自覚あんのか?」


○同・神楽寺・全景(深夜)

 爆発が起こる

 境内が燃えている


○神楽寺・境内(深夜)

 炎の中心に三嶋・優花里が立っている


優花里「・・・」

三嶋「行くぞ、人が集まってくる」


 三嶋、歩いていく


優花里「(町を見ながら)全部、燃やしてあげるね」


 三嶋、炎の中を歩いていると目の前の炎が消される


三嶋「ん?」

中田蒼海(17)「(階段を登りながら)よぉ、探したぜ」


 中田、階段を登りきり、水を集め三叉槍を手に取る


三嶋「「海王」か」

中田「そして、お前は「炎斧」か?」


 三嶋、炎から背丈程ある斧を作り、手に取って床に突き刺す


三嶋「下がってろ」


 優花里、数歩下がる

 中田・三嶋、戦闘開始


○霞勝家・透の部屋(深夜)


透「(跳ね起きて)ん?」


○神楽寺・本堂(深夜)

 中田・三嶋、天井を突き破って飛び降りてくる


三嶋M「優花里、お前はもう帰っていい。あとは俺が

 やる」


○同・境内(夜)

 優花里、燃える神楽寺を見ている


優花里M「分かった、気をつけてね」


 階段を降りていく優花里


○同・本堂(夜)


中田「(隙間から優花里を見ながら)なるほど、時間稼

 ぎか」

三嶋「派手に暴れてはあいつが危ないからな」

中田「(三叉槍で自身の肩に乗せ)なら、こっからは本

 気だよな?」

三嶋「ああ」


 中田・三嶋、戦闘開始


○同・階段下(深夜)

 優花里、階段を降りているが止まる

 透、立っている


透「(優花里を見て)お前、一葉と昔会ってるらしい

 な」

優花里「へぇ〜、一葉覚えててくれたんだ?嬉しい」

透「何者だ、お前」

優花里「燃やしたいだけ・・・全部」


 優花里の左手に炎が現れ剣を作っていく

 優花里、剣を手に取る


透「(黒紫の霧から槍を作って手に取り)・・・上等」


 透・優花里、戦闘開始


○同・本堂(深夜)

 中田・三嶋、戦っている


○同・全景(深夜)

 本堂が大爆発する


○同・階段下(深夜)

 透、倒れている優花里に槍を向けている


透「(本堂を見て)ん?」

透M「もう1人居んのか?」

優花里「(本堂を見て)・・・ヒロ!」

透「(優花里を見て)お前、何を持ってる?」

優花里「ヒロ!」

透「答えろ!」


 中田・三嶋、降ってくる


透・優花里「!?」

中田「(起き上がり)チィ!」

三嶋「(起き上がり)くっ!」


 中田・三嶋、己の武器を構える


透「(割って入り)よせ、蒼海!引くぞ!」


 消防車のサイレンが聞こえている


中田「・・・チッ!」


 中田、三叉槍を水に戻し透に担がれて走り去る

 三嶋、優花里を抱え走り去る


○同・霞勝家・全景(朝)

 インターホンが鳴る


○同・玄関(朝)

 ドアが開く


一葉「(笑顔で)おはよう!」

透「(目を擦りながら)早くね?」

一葉「教えてほしい事、沢山あるんだもん!」

透「分かった分かった、上がれ」


○同・居間(朝)

 透・一葉、入ってくる


一葉「わぁ〜、キレイにしてる〜」

透「俺しか居ないからな」

一葉「こんなに広い家住んでて寂しくない?」

透「全然」


 インターホンが鳴る


透「ん?・・・ちょっと待ってろ」

一葉「うん」


 透、出ていく


一葉「(棚を見ながら)凄いトロフィーの数・・・

 ん?」


 一葉、霞勝永治の名を見つける


一葉「透の・・・お父さん?」

透の声「おい」

一葉「(驚いた様子で)うわぁ!」


 一葉、振り向く


透「こっち来い」

神田海生(17)「(顔を出し)やっほー」

一葉「え?・・・なんで?」


○同・和室(朝)

 透、ドアを開け一葉・海生と共に入ってくる


海生「そうちゃん!」


 海生、寝ている中田に駆け寄る


透「寝てるだけだ、すぐに起きる」

一葉「何で、居るの?」

透「色々あってな。ま、ゆっくり寝かせてやってく

 れ」

海生「心配かけてんじゃないわよ、バカ」

透「・・・一葉、買い出し行くぞ」

一葉「え?」

透「今日、メシ作るんだろ?」

一葉「あ!そうだったね!」


 一葉、出ていく


透「海生ちゃん、留守番頼めるか?」

海生「(透を見て)え、いいの?私達、ほとんど初対面

 でしょ?」

透「そいつの友達なら信用出来る」

海生「・・・分かったわ」

透「じゃ、よろしく」


 透、出ていく


海生「(中田の手を握り)・・・温かい」


○スーパー(昼)

 透、カートを押している

 一葉、透と共に歩いている


一葉「(透を見ながら)あと、何買うの?」

透「えっと〜、砂糖だな。確かもう無いはずだ。あ、

 醤油きれてるんだった」

一葉「じゃあ、私持ってくる!」

透「ああ、頼む」


 一葉、走り出すがすぐに足を止める


一葉「透!これ欲しい!」


 一葉、お菓子を持っている


透「(冷ややかな目で)・・・」

一葉「ダメ?」

透「自分で買え」

一葉「実は、財布忘れちゃって──」

透「・・・今度返せよ」

一葉「うん!ありがとう!」


 一葉、お菓子をカートに入れる


透「早く砂糖と醤油持ってこい。俺はここにいるか

 ら」

一葉「うん!」


 一葉、走っていく


透「(カートに肘をつき)・・・」

一葉「(棚を見ながら)・・・あ!あった!」

一葉「(人にぶつかり)あ、すみません」


 優花里、一葉を見ている


一葉「・・・あ」

優花里「(か細い声で)一葉?」

一葉「え?」

優花里「一葉でしょ?私、覚えてる?」

一葉「・・・あっ!ユカちゃん?ユカちゃんだよ

 ね?」

優花里「久しぶりだね」

一葉「ホント!久しぶり〜!どこに居たの?」

優花里「お父さんの仕事の影響で海外に居たの」

一葉「いつ帰ってきたの?」

優花里「高校に入る時に」

一葉「神崎高校に?」

優花里「うん」

一葉「あ、今透と買い物来てるんだ」

優花里「え?」

一葉「(振り向いて大声で)透ー!」

透「(歩いてきて)なんだ〜」

一葉「(優花里を見て)ホラ!」


 優花里、居なくなっている


一葉「(辺りを見渡しながら)・・・あれ?」

透「何してんだ?行くぞ」

一葉「・・・う、うん」


 砂糖と醤油を手に取り歩いていく一葉


○霞勝家・玄関(昼)


透「(ドアを開け)ただいま〜」


○同・廊下(昼)


透「(歩きながら)一葉、先に台所で用意しててくれ」

一葉「分かった」


 一葉、居間に入っていく


○同・和室(昼)


透「(ドアを開け)海生ちゃん、蒼海起きた?」


 海生、寝ている

 中田、起きている


中田「よぉ」

透「大丈夫か?」

中田「ああ、絶好調だ」

透「なら、海生ちゃん起こして居間に来い、飯作って

 やる」

中田「おう、すまんな」


○同・台所(昼)


透「という訳で、パスタを作ります!」

一葉「うん!」

透「とりあえずそのダサいエプロン外せ。ない方がマ

 シ」

一葉「え?」


 透・一葉、時々慌ただしくも、微笑ましく調理している


○同・居間(昼)

 机に料理が盛られた皿を置かれる

 中田、座っている


中田「なんだこれ?」

透「野菜たっぷりクリームパスタだ」

中田「お前が作ったのか?」

透「(座りながら)一葉も作ってたぞ、ミスってたけ

 ど」

一葉「難しいんだもん!」

中田「ミスる要素ある?」

透「それじゃあ──」

透・一葉・中田・海生「(手を合わせ)いただきまー

 す!」


 透ら、食べ進めている


一葉「そういえば、さっきスーパーでユカちゃんと会

 ったんだ」


 一葉、1口食べる


透「ユカ?誰だそれ?」

一葉「ほら、昨日学校でいじめられてた子いたじゃん」

透「ああ、あいつか・・・あ!」

一葉「どうしたの?」

透「(中田を見て)昨日俺と戦ってた女いたろ!あいつ

 も保持者だ、火を使ってた!」

中田「俺と戦ってた奴は「炎斧」を持ってたぞ」

海生「え?それってありえないんじゃない?」

中田「確かに」

一葉「何の話?」

透「神器は唯一無二の存在で、俺以外に霧、蒼海以外

 に水を操れる奴は居ないってこと」

一葉「へぇ〜」

透「どうする?」

中田「緋炉鬼は俺がやる、やっと尻尾掴んだんだ」

透「ずっと追ってたのか?」

中田「もしかしたら、新手かもと思ってな」

透「なら、俺は優花里だな」

一葉「待って!友達なんだよ?」

透「ダメだ、あいつは敵だ」

一葉「違う!私の友達なの!信じて!」

透「なら、一緒に来い。友達と証明してみろ」

一葉「・・・分かった!」

透「出来なかったら優花里を殺す、いいか?」


 一葉、不安な顔になっていく

 暗転


○神崎町・全景(夜)


○同・千羽橋(夜)

 車が行き交っている

 三嶋・優花里、歩いているが三嶋が立ち止まる


優花里「(振り向き)どうしたの?」


 優花里、前を見ている三嶋につられて前を見ると透・一葉が立っている


一葉「ユカちゃん!聞きたい事があるの!」


 三嶋、後ろを見ると中田・海生、立っている


一葉「私達、友達だよね?」

優花里「・・・いいえ」

一葉「えっ・・・」

優花里「私に友達は居ない、いらない。居るのはヒロ

 だけ」

透「・・・無理そうだな」


 三嶋、透に向かって歩き出す


中田の声「おい」


 三嶋、立ち止まって振り向く


中田「お前の相手は俺だ・・・来い」


 中田・三嶋、橋を飛び降りる


海生「透君!お願いね!」


 海生、飛び降りる


一葉「(優花里に近づきながら)お願い、友達が居ない

 なんて言わないで?」

優花里「なんで?友達なんて所詮赤の他人、けどヒロ

 は違う、私の家族。血は繋がっていなくとも、私の

 父親より優しく接してくれた」

一葉「私と透もそうだよ?誰も信じれなくなった時期

 があった。けど透が助けてくれた、視野を広げてく

 れた」

優花里「(拳を強く握り)一緒にしないで・・・私の味

 方は──」


○同・川(夜)


三嶋「俺だけだ」

中田「(三叉槍を構え)なるほど、誰も信用しないって

 か」

三嶋「あいつは、昔色々あってな」

海生「そうちゃん。もしかしてだけど、あの人、心臓

 が止まってる」

中田「は?何の話だ?」

三嶋「止まってるんじゃない、無いんだ」


 三嶋、服を破る


中田・海生「!?」


 三嶋の左胸に縫い目がある


海生「移植・・・?」


○同・千羽橋(夜)


優花里「私が事故にあった時にヒロが心臓をくれた、

 だから、私もヒロと同じことが出来る」


○同・川(夜)


三嶋「そして、俺は神器で自分を延命させた、代償と

 して。あと2年か3年だがな」

中田「それでいいのか?」

三嶋「構わん」

中田「・・・」


 中田、槍を水に戻している


優花里の声「私の為に命をくれた」


○同・橋(夜)


優花里「その人が居れば私は生きていられる」


 優花里の足元に炎が発生している


透「一葉」

一葉「ダメ!やめて、ユカちゃん!」

優花里「好きな人の為に死ねない人間なんて、大嫌

 い」


 優花里、炎から剣を手に取り一葉に襲いかかるが透に槍で防がれる


一葉「透!」

透「下がれ、ここからは俺の仕事だ」

優花里「仕事?・・・人を守る事を仕事にしか思えな

 い人となんて、仲良く出来ないわよ!」


 優花里、剣を透に突き刺す


優花里「!なんで、避けなかったの?」

透「避ければ一葉が死ぬ。それに、こうやってお前の

 動きを止められた」


 透、優花里を槍で突くも止める

 一葉、透の前に手を広げて立っている

 優花里、尻もちをついて困惑している


一葉「お願い!私の友達なの!」

透「どけ、そいつは敵だ!」

一葉「(首を横に降り)違う!お願い・・・透」


 透、一葉越しに優花里を見る


優花里「私は、私は、ヒロだけ居ればそれでいい!」

透「お言葉だが、お前を友達と思ってる一葉が、今お

 前の為に命を投げ出そうとしたぞ?」

優花里「!?・・・私は騙されない!私の話を聞いて

 やったんでしょ!?」


 一葉、優花里に向かって駆け出し、優花里を抱き締める


優花里「!」

一葉「透も、私の為に命を投げ出してくれた事がある

 の。だからお願い、私を信じて?」

優花里「・・・」

三嶋の声「優花里」


 優花里、振り向く

 三嶋、歩いてくる


三嶋「(立ち止まり)その嬢ちゃんを信じてやれ。こい

 つらは、お前を助けてくれる。血の繋がった家族な

 んかより、血の繋がってない友の方が、いい時もあ

 る」


 優花里、声を上げて泣き出す

 暗転


○神崎高校・全景(朝)


○同・教室(朝)

 一葉、机に座って勉強している


優花里の声「一葉」

一葉「(優花里を見て)あ、ユカちゃん!」

優花里「私、制服似合ってる?着るの久しぶりで」

一葉「うん!すっごい似合ってるよ!」


 透・三嶋、廊下から見ている


三嶋「すまねぇな、俺から言っても聞く奴じゃないん

 だ」

透「一葉に言ってくれ、俺は何もしてない」


 優花里、笑顔で話している


三嶋「・・・」


○エンディング


○神崎高校・屋上(昼)

 中田・三嶋、柵に寄りかかっている


三嶋「なんで俺が優花里の恋人と分かった瞬間、武器

 を捨てたんだ?」

中田「好きな人の為に何でもやるってところが似てて

 な」

三嶋「誰に?」

中田「「女王」に」

三嶋「「女王」か」

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