5話「英雄でさえ落す神剣」
よろしくお願いします!
登場人物
霞勝 透(17)
天童 一葉(17)
中田 蒼海(17)
天童 剣司(16)
佐久間 恋夜(17)
遠峰 龍一郎(39)
骸霊
骸霊の群れ
特異骸霊
男A
女A
田坂
峯本
加藤
山瀬
武田
空手部員
レスリングA
レスリングB
アナウンサー
不良達
金髪の男
傷だらけの腕の男
○オープニング
○神崎町・霞勝家・全景(朝)
○霞勝家・居間(朝)
霞勝透(17)、パンを食べながらテレビを見ている
アナウンサー「次のニュースです。昨夜、神崎町神崎
港のコンテナ区にて、30人以上が惨殺された事件が
起きました、警察は現場を調べていますが犯人は不
明、犯行に使用された凶器は鋭利な刃物のようなも
の、との事です」
透「(パンを頬張り)・・・ふ〜ん」
アナウンサーの声「警察は引き続き捜査を続け、付近
の住人には注意喚起を──」
透「(時計を見て)あ、やべ遅れる」
立ち上がる透
○神崎町・住宅街・全景(朝)
一葉の声「今朝のニュース見た?」
透の声「港のやつ?」
一葉の声「そう、ひどい事件だよね」
透の声「そうだな」
一葉の声「最近、事件とか多くない?」
透の声「そうだな」
一葉の声「もう、ちゃんと聞いてるの?」
透の声「聞いてる聞いてる」
○同・住宅街(朝)
天童一葉(17)、歩いている
一葉「(頬を膨らませ)なら、私が何の話してるか覚え
てるの?」
透「(歩きながら)人が死んでお前が他人の心配ばかり
して気が滅入ってる事は覚えてる」
一葉「(歩きながら)だって何人も死んでるんだよ?犯
人も捕まってないし」
透「俺らが心配したところで解決しねぇよ、ああいう
のは警察の仕事だ」
一葉「そうだけど・・・・」
透「人の事ばかり考えてると自分の事を疎かにする
ぞ?」
一葉「人の事、心配しちゃいけないの?」
透「あまり肩入れすんなよって事だ、人の心配が出来
るってことは、自分に少し余裕が出来たってことで
俺も嬉しいが、し過ぎると自分に害が及ぶ事があ
る」
一葉、立ち止まる
一葉「(少し俯き)でも──」
透「学校に遅れるぞ?」
シュンとなり再び歩き出す一葉
○神崎高校・教室(昼)
ザワザワしている
透・一葉、席で昼食をとっている
透「一葉、さっきから気になってたけど指どうし
た?」
一葉、指に絆創膏を貼っている
一葉「(指を見ながら)これ?授業で裁縫してる時に怪
我しちゃって」
一葉、ご飯を1口食べる
透「怪我しすぎじゃね?」
一葉「裁縫は苦手で」
透「何作ってたんだ?」
一葉「自由課題だったんだけど」
一葉、カバンからお守り入れを出す
一葉「(透に見せ)これ」
透「お守り入れ?これくらい簡単に出来ないと将来嫁
の貰い手がいなくなるぞ?」
一葉「(照れた顔でボソボソと)私は、透に貰って欲し
いんだけど」
透「何か言った?」
一葉「い、いや、なんでもない。透は、出来るの?裁
縫」
透「母さんから教えてもらったからな」
透、焼き豚パンを1口食べるとポケットから家の鍵を取り出す
透「これとかな」
一葉「(透から鍵を受け取り)すごーい!これ手縫い?」
透「うん」
一葉「フフ、なんだか女子みたいだね!」
透「そして、女子のお前より上手いぞ、ハハハ」
一葉「ひどい!で、でも、流石に料理とかは出来ない
でしょ?私はお母さんが居ない時に作ってるもん
ね!剣司から美味いって言われたもんね!」
一葉、ドヤ顔をしている
透「それは家族だから言ってるんじゃないの?」
一葉「(頬が染まり)ち、違うもん!笑顔で美味しいっ
て言ってくれるもん!」
透「その後お茶がぶ飲みしてなかった?」
一葉「(手を縦に振りながら)もう!ちゃんと美味い
ー!」
透「へぇ〜、ところで、俺が料理出来るのかと聞いて
たな?」
一葉「し、しないでしょ!?私の料理が家族の忖度あ
りの美味さだとしても、しないよりはマシだも
ん!」
透「今自分が下手って認めたろ」
一葉「(そっぽを向け)フン!」
透「(ため息をつき)美波さんが俺ん家に来た日、肉じ
ゃがを持って帰ったろ?あれ作ったの俺」
一葉「う、うそぉ!あの肉じゃが、透が作ったの?」
透「味はどうだった?」
一葉「う、美味かった、です」
透「ハハハ、俺は競争本能が強くてね、テレビで見た
料理も俺ならもっと上手く作れると思って料理する
んだ」
一葉「(机に顔を伏せ)裁縫もダメ、料理もダメ、女の
子としての自信無くした」
透「ハハハ、女性の髪の結い方だって分かるぞ?」
一葉「ウ〜、何でも出来るじゃ〜ん。出来ない事って
ないの〜?」
透「それは難しいな〜、殆ど母さんから教えてもらっ
たから」
一葉「羨ましい〜、お母さん忙しいからそんな時間な
いし」
透「なら、今度教えてやろうか?」
一葉「ホント?絶対だよ!?」
透「ああ、約束は守る」
透、パンを1口食べる
一葉「あ、今日から部活再開するんだよね?」
透「そうだ、遅れるなよ?」
一葉「うん!」
○月無高校・全景(昼)
○同・屋上(昼)
天童剣司(16)、椅子に座ってホットドッグを1口頬張る
ドアが開く
田坂の声「先輩を呼び出すなんていい度胸してるわ
ね?」
田坂、ドアを閉め歩き出す
天童「(立ち上がり)俺の準備待ちだったんだろ?」
田坂「(立ち止まり)何の準備してたの?」
天童「霞勝を倒す為の奥の手を作ってたんだ」
田坂「何よそれ?」
天童「本番でのお楽しみだ」
天童、へへと笑っている
田坂「私も助っ人を用意したわ」
ドアが開く
天童、ドアを見る
レスリングA・レスリングB、入ってくる
天童「あいつらか?」
田坂「ええ、ウチのレスリング部よ」
天童「・・・分かった。そっちは何か考えてるの
か?」
田坂「こっちも人数集めてるわ、霞勝は空手部って聞
いてるからね。高架橋下に呼び出す予定よ」
天童「分かった。決行は今夜、高架橋下で霞勝をボコ
ボコにすればいい、出来なかったら俺を呼べ、その2
人と奥の手を持って助太刀に行く、いいか?」
田坂「・・・分かったわ」
天童「じゃ、よろしくな、先輩」
天童、屋上を去っていく
ドアが閉まる
田坂「(レスリングA・レスリングBを見て)今夜までに
あいつを殺して」
レスリングA・レスリングB、頷き屋上を去っていく
田坂「(町を見ながら)覚悟して、天童一葉。あなたの
幸せは」
田坂、金網を強く握る
× × ×
(フラッシュ)
一葉、笑顔で昼食をとっている
田坂の声「私が許さない」
× × ×
○同・空手場・全景(夕)
透の声「つー訳で色々あったが今日から──」
○同・空手場(夕)
透「部活再開だァ!」
空手部員「ウォス!」
透「気合い入れろォ!」
空手部員「オォス!」
透「それと紹介しておく!今日からマネージャーとして入ることになった──」
一葉「天童一葉です。よろしくお願いします!」
一葉、頭を下げる
空手部員「女子だー!」
空手部員、歓喜の声をあげている
山瀬「カワイイー!」
武田「彼氏いますかー!?」
一葉、苦笑いしている
透「うるせぇ!とっとと練習始めろ!大会近ぇぞ!」
空手部員「オス!」
たくさんの部員が大きな声を出しながら練習している
一葉、壁際に立っている
山瀬の声「一葉ちゃん!水とって!」
一葉「は、はい!」
山瀬「(水を飲み)フー、ありがとう!」
武田「(壁に寄りかかり)一葉ちゃんって言ったっけ?
彼氏とかっているのー?」
一葉「い、いや、居ないです」
山瀬「へぇー、可愛いのにもったいねぇな〜」
一葉、照れている
山瀬、水を飲んでいる
武田「どう?この後、ご飯行かない?」
山瀬「やめとけ、霞勝に殺されるぞ」
武田「あ、そうだったな。ラブラブだもんな〜」
一葉、顔が真っ赤になっている
山瀬「霞勝め、手ぇ出すの早いな〜」
武田「あいつ、今まで何人からも告白されてたけど、
全部断ってるよな?」
山瀬「そうそう、その霞勝が唯一、心を許してるのが
この一葉ちゃんって訳だ」
武田「あの霞勝が?」
山瀬「そうそう、だから付き合ってるっていう噂がた
ってるらしいぞ?」
一葉、耳まで紅潮している
一葉「(照れながら)つ、付き合ってません!」
一葉「(頬が染まり、小声で)ま、まだ」
武田・山瀬「(一葉を見ながら)・・・」
武田「カワイイ〜!やっぱりこの後ご飯行かない?」
山瀬「その後霞勝に殺されるのは確実だがな」
一葉「(照れながら)あ、あの!練習、しなくていいん
ですか?」
山瀬「真面目だね〜、ま、俺たち居なくても勝てるも
んな?」
武田「確かに。団体戦も霞勝を先鋒に持っていったら
ごぼう抜きするもんな」
一葉「そ、そんなに強いんですか?透って」
山瀬「未だ負け無しだよ」
武田「それにウチの学校は半年に1回、他校と交流試合
をするんだがそこでも負けてない」
山瀬「今まで2回やって1回目がムエタイ、2回目がボ
クシングだったけどワンパンしてたな」
山瀬「(腕を組み)どうやったらあそこまで強くなれる
のかね〜、でもあいつ、勝っても喜ぶとかしないよ
な」
武田「確かに」
透「お前ら!練習しろ!」
武田・山瀬「すみません!」
武田「(手を振り)じゃ、またね」
一葉、苦笑いで手を振っている
武田・山瀬、練習に戻っていく
透「(歩いてきながら)ったく!」
透、一葉の横に座りため息をつく
一葉、透の横に座る
一葉「練習しないの?」
透「ちょっと、休憩。で、何話してたんだ?」
一葉「透の話を聞いてたよ」
透「俺?」
一葉「うん。大会でも交流試合でも負けなかったって
言ってたよ」
透「ああ。そういえば、負けてないな」
一葉「大会でもそうなんでしょ?楽しみだな〜」
透「その前に交流試合がある。大会はその後だ」
一葉「いつあるの?」
透「1ヶ月ぐらい先だ、大会はその後の夏休みにあ
る」
一葉「大会直前に試合していいの?」
透「大丈夫大丈夫、相手も合意の上だから。それにこ
っちは大会直前だが向こうは違うからな、確か次の
相手は八極拳だったっけ?」
一葉「自信あるの?」
透「当然」
山瀬「霞勝、イチャイチャしてないで練習しろ!」
空手部員、笑っている
一葉、照れている
透「うるせぇ!弱いテメーらとは違ぇんだよ!」
山瀬「なんだとォ!?」
武田「だったら勝負してみろぉ!・・・乱稽古で!」
山瀬「タイマンじゃないんかい」
透「いいぜ!テメーら全員ゲロ吐かせてやる!」
一葉「きたなーい」
透「おっと、失敬。お詫びに俺がどれほど強いかを見
せよう」
一葉「(クスクス笑い)うん!」
透、歩いていく
透「気合い入れろー!」
空手部員の声「オーーーー!」
○神崎町・住宅街(夕)
一葉「(歩きながら、興奮気味に)凄かったね!強いな
んてものじゃないよ!20人ぐらいいたのに1人で倒
しちゃうなんて!」
透「(歩きながら)あんなの、ただの練習だ」
× × ×
(フラッシュ)
○神崎高校・空手場(夕)
透、夕日が差し込む中、倒れている空手部員の中心に立っている
一葉の声「それでも凄いよ!前の学校でもそんな人居
なかったよ!」
× × ×
透「フッ、努力の賜物って奴だな」
一葉「凄い!努力だけであそこまで強くなれるって透
も真面目だね!」
透「まあな」
一葉「(笑顔で)うん!」
透、立ち止まる
一葉「(振り返り)どうしたの?」
透「(暗い様子で)・・・一葉、今日はここまでだ」
一葉「え?」
透「今日は母さんの病院に行くんだ」
一葉「・・・なら一緒に──」
透「やめてた方がいい、母さんは──」
一葉、首を傾げている
一葉「(心配そうな顔で)どうしたの?」
透「母さんは・・・癇癪持ちなんだ。だから、お前が
嫌な気持ちになるかもしれない」
一葉「私は、構わ──」
透「(一葉に手を伸ばし)ダーメ」
一葉「(デコピンされ)うわ」
透「じゃあな、また明日」
透、走り出す
一葉「(寂しそうに)・・・う、うん、また明日ね」
透、走って角を曲がる
一葉、シュンとなっているが決意を固めた顔で透を追いかけ角を曲がる
一葉「あ、あれ?」
一葉、辺りを見回している
透「(電柱の上から一葉を見ながら)すまねぇな、一
葉」
○同・ビル群・全景(夜)
○同・ビル群(夜)
透、歩いている
前から田坂が歩いてくる
田坂「(透の前で立ち止まり)ねえ、ちょっとツラ貸し
なよ」
透「誰、おばはん」
田坂「失礼ね!」
○同・路地(夜)
天童、振り返る
レスリングA・レスリングB、立っている
天童「だろうな」
歩き出す天童
○同・高架橋・全景(夜)
車が走っている
○同・高架橋下(夜)
透・田坂・加藤、立っている
透「(頭を掻きながら)用はなんだ?俺も暇じゃねぇん
だ」
田坂「私、名前が田坂って言うんだけど〜」
透「田坂?そんな知り合いはいないぞ」
田坂「けど私は知ってるんだ〜。だって、私が一葉を
いじめたんだよ〜?」
透「お前か、一葉を転校に追いやったのは」
田坂「一葉にはちょっとお仕置きが必要だったからさ〜。私の彼氏に手ェ出した報いだよ」
透「用件だけ話せ、これ以上一葉に何する気だ?」
田坂「知り合いから聞いたんだけど、あいつさ、あんたを慕ってるんだって?」
透「さあ、どうだろうな」
田坂「誤魔化しても無駄だよ。ネタは上がってんだ」
田坂、指を鳴らすと周りから不良達が集まってくる
透、、周りを見渡す
田坂「一葉はあなたにだけは心を開いてるって聞いて
る。ならあなたが居なくなればあの子の幸せを奪え
る!」
透「寄せ集めのクズ共が」
田坂「(ニヤリと笑い)・・・やれ!」
不良達、透に襲いかかる
透、不良達を蹴散らし勝利
田坂「な、なに!」
透「弱ェ」
透、不良を放り投げ田坂に歩き始める
田坂「くっ!なら、こんなのはどうかしら!?」
一葉の声「ちょっと離してください!」
透、歩みを止める
一葉、峯本に無理やり連れてこられナイフを向けられている
透「一葉!」
一葉「透!」
田坂「(一葉に近づき)久しぶりね〜?このビッチ
が!!」
一葉「た、田坂先輩!?」
田坂、一葉をビンタする
透、拳を強く握りしめている
田坂「私の名前を気安く呼ぶんじゃねぇ!ビッチが!
一葉、俯いている
田坂「(透を見て)さぁ、どうする?」
透、上着を脱ぐ
透「(目が赤く光り)やる事は変わらん、全員ぶっ飛ば
して一葉を助ける!」
田坂「ハハ、ハハハ、アーハッハッハッハ!この状況
でどうやって助ける気ィ!?王子様〜」
田坂、高笑いを上げている
一葉、泣きそうな顔で俯いている
透の声「一葉?」
一葉、顔を上げる
透「絶対に助ける。俺を信じるか?」
一葉「う、うん!」
田坂「(一葉をビンタし)イチャイチャしてんじゃねぇ
よ!ちょっと強えだけの男と毎晩ヤってる女が
よ!」
一葉、田坂を睨みつける
田坂「何よ?文句でもあんの?」
一葉「・・・」
田坂「調子乗ってんじゃねェ!!」
田坂、一葉に膝蹴りをし、膝をつかせる
一葉「ぐっ!」
田坂「(振り返り)さあ早く──」
透、いなくなっている
田坂「えっ?」
透の声「おい」
田坂、声のした方を見ると透の足元に峯本・加藤が倒れている
田坂「は、はァ!?」
田坂、ナイフを出す
透「一歩でも、動いてみろ。関節全部へし折る」
田坂「くっ!やれるもんなら、やってみろ!」
田坂、ナイフを振り下ろすと右手の全ての指が反対に曲がる
田坂「えっ?」
透「次は、手首・腕・肩っていくか」
田坂「あ、ああ、ああ!」
田坂、尻もちをつく
透「(田坂を睨みつけ)一葉に手ェあげた事、後悔し
ろ」
田坂、怯えている
天童の声「いけませんよ、先輩」
透「ん?」
天童、歩いてくる
峯本「(這いつくばりながら)お、お前──」
天童、峯本を蹴る
田坂「(歩きながら)人を殺したりなんかしたら捕まり
ますよ?」
一葉「剣司!」
天童「よぉ、姉ちゃん」
透「・・・弟」
田坂「ちょうどよかった!あいつらは!?」
天童「あいつら?誰の話だ?」
田坂「・・・は?2人預けたでしょ!?」
天童「ああ、あの2人か!」
天童「(ニヤつきながら)路地に転がってたぞ?誰かに
やられたんだろうな〜」
田坂「・・・は?ねぇ、ちょっと何言ってんのよ、私
たち仲間でしょ!?」
田坂、天童の足にしがみついている
天童「お前らと手を組んだおぼえはねェな!」
天童、田坂を振り払う
透「どういう事だ?」
天童「こいつらと手を組んでたふりをしてただけです
よ、愛しい姉貴をいじめた奴らに味方するはずがな
いでしょ?」
透「なるほど」
天童「先輩の命を狙ってるって言ったら簡単に騙せま
したよ」
透「俺には話してくれてもよかったんじゃねえの
か?」
天童「先輩がどれだけ姉ちゃんを大事に思ってるかこ
の目で見たかったんですよ」
透「・・・分かったか?」
天童「ええ、バッチリ」
田坂、ナイフを拾う
田坂「(天童に向かって走りながら)クソがぁ!」
一葉「(大声で)剣司!」
天童、振り向いて左手でナイフを受け止め田坂の首に右手を向けている
天童「惜しい、もう少しで首が飛んたのに」
田坂「何ィ!?」
天童の右手が光り輝き始める
田坂「!?」
透「ん?」
天童の右手からハルパーが出てきて田坂の喉の寸前で止まっている
透「ほう」
一葉「(透を見て)え?・・・え!?」
田坂「何よ、これ──」
天童「先輩、俺は隠したりしませんよ?」
天童、田坂を突き飛ばす
一葉「(透の服を掴み)ね、ねぇ!これ、どういう
事!」
透「落ち着け、事態が収まったら説明する」
一葉「今説明してよ!」
透「(ため息をつき)・・・神器っていうものがあって
な?それは持ち主に身体能力の向上だったり色々な
恩恵をくれる」
天童「俺は「下獄」ですよ。母さんに教えてもらった
本に書いてあった「逆転の器」を使って「万薬」の
逆、「下獄」を獲得したんですよ」
透「人を生かす事の逆か。なるほど、そういうことも
出来るな」
一葉「ねぇ!透、一体何の話なの!」
透「また詳しく説明してやる、今は待て」
田坂「うるさい!」
透・一葉、田坂を見ると息が荒くなっている
田坂「(怯えながら)殺される──」
透「誰に?」
田坂「死にたくない、死にたくない!」
透「流石に殺したりはしねぇぞ?」
天童「(自分の肩をハルパーで叩きながら)俺は殺す気
満々ですがねェ」
田坂「私には無理だったのよぉ!」
透「おい──」
田坂、頭を抱え奇声をあげている
天童「・・・イカれてるな」
田坂、奇声を上げていると頭に槍が刺さり首ごと壁に刺さる
透・一葉・天童「!?」
田坂、まだ笑っているが徐々に声が消えていき笑顔のまま死後硬直する
一葉「は・・・あ、あ、キャーーーーーーー!」
透・天童、田坂の首に近づく
天童「槍?ですかね」
透「・・・そのようだな」
透、背筋に悪寒が走る
天童「・・・先輩」
透「・・・分かってる」
透、ゆっくり振り向く
特異骸霊、ポツンと立っている
天童「なんすか、あれ」
透「骸霊?・・・のようだな」
天童「母さんの話だともっと弱そうって聞いてたんす
けどね」
透「ああ、だがあいつは・・・・強いぞ」
特異骸霊、力を示すように周囲に闇を放っている
峯本・加藤、逃げ出す
透「よせ!動くな!」
特異骸霊、2本の槍を投げ、峯本・加藤を瞬時に串刺しにする
天童、ハルパーを構える
透「よせ、剣司!構えるな!」
天童「俺だって構えたくて構えてるんじゃありません
よ!」
特異骸霊「・・・」
天童「あいつがそうさせてるんです」
天童、手が震えている
天童「どうするんですか?先輩」
透「(ボーッして)・・・」
天童「先輩!」
透「(ハッとなり)・・・一葉を逃がす!」
天童「は?」
透「連れて行け、俺が時間を稼ぐ!」
天童「いや、2人でやれば──」
透「ダメだ、倒せるかも分からん相手だ。なら片方が
時間を稼ぎ片方が一葉を逃がす!」
一葉「え?」
天童「分かって言ってるんですか!?」
透、特異骸霊を見ている
天童「あいつは時間を稼ぐだけでも・・・!」
透「この場に俺以外に一葉を守れる奴が居るか!!」
透、体から黒紫の霧を出し剣と槍に変え手に取る
透、一葉を見ると怯えている
透「・・・怖いんだろ?」
一葉「(涙を我慢しながら)全然・・・怖く・・・ない
よ?」
透「俺の前では強がるなと言ったろ?・・・剣司、頼
むぞ」
天童「・・・分かりました」
天童、一葉を抱える
一葉「ちょ、ちょっと!」
天童「(透を見ながら)先輩、死なないでくださいよ、
あんたが死んだら姉ちゃんも死ぬって覚えててくだ
さい」
天童、立ち去る
一葉「(手を伸ばし)透ー!」
一葉・天童、遠ざかっていく
透「・・・そんな事は俺が1番分かってるよ」
特異骸霊、槍を構える
透「けど、体の底から負けたくねぇって言ってるんだ
ァァ!!!」
透・特異骸霊、ぶつかり合い、特異骸霊の攻撃を避けるのに精一杯の透、場所を変えようと高架橋に沿って走り出す。高架橋の側壁をつたい、ビルの壁をつたい、被害を出しながらも特異骸霊の攻撃を躱す
○神崎町・住宅街(夜)
天童、一葉を抱え走っている
一葉「ダメ!剣司!下ろして!透が!」
天童「ダメだ!もし先輩がやられたら狙われるのは姉
ちゃんかもしれねェんだ!」
一葉「でも──」
天童「でもじゃねぇ!!」
一葉「・・・」
天童「俺と先輩にとって姉ちゃんは・・・!!」
天童、一葉を下ろし瞬時にハルパーを手に持ち、骸霊の剣を受け止める
一葉「剣司!」
天童「問題ねェ・・・オラァ!」
天童、ハルパーを振るい骸霊を消滅させる
天童「行くぞ、姉ちゃん!」
天童「(遠くを見て)チッ!しつけぇな!」
一葉、振り向くと骸霊の群れが一葉・天童に向かってきている
天童「(一葉の前に立ち)姉ちゃん、合図したら走って
くれ」
一葉「(怯えるように)・・・無理、出来ない。まだ混
乱してるのに──」
天童「事情なら後で先輩と母さんも含めて話すから。
頼む、走ってくれ」
一葉「(泣きそうな顔で)透ぅ・・・」
天童「走れ!姉ちゃん守る為に命賭けてる男がいんだ
ァ!」
一葉「剣司・・・」
天童「走れぇ!」
天童、骸霊の群れに立ち向かう
骸霊の群れ、天童へ向け走り出す
天童「(ハルパーを構え)うおおおおおおお!!」
一葉「剣司!」
骸霊の群れ、飛んできた大量の槍に当たり全滅する
天童「(立ち止まり)!?何が──」
一葉・天童、振り向くと男が歩いてくる
○同・河原・全景(夜)
金属音が連続して鳴り響いている
○同・河原(夜)
透・特異骸霊、川に降り立つ
透、怪我をしていて息が荒くなっている
特異骸霊、平然と立っている
透「・・・こいつ──」
特異骸霊、透に襲いかかる
透「く!」
透、特異骸霊の攻撃を受け流し対岸までぶっ飛ばし大きな水しぶきがあがっている
透「どうだ──」
水しぶきが治まっていく
特異骸霊、立っている
透「・・・マジかよ」
特異骸霊「・・・」
特異骸霊、手を横に伸ばす
透「何をする気だ?」
特異骸霊、黒いスパークを放つ槍を手にすると槍が巨大化している
透「・・・マジかよ」
特異骸霊、ボソボソと喋り槍を投擲しようとする
透、黒紫から王笏を手にする
透「クイーン・スセプター!!」
透、地面に王笏を突き刺し前面に巨大な霧を出現させ巨大な盾に変える
特異骸霊、巨大な槍を透に投げる
槍と盾が相殺され大きく爆発する
透「(爆風で飛ばされ)うおぉ!」
特異骸霊、爆風で吹き飛ばされ、大きな水しぶきが上がっている
人々が寄ってきて騒いでいる
男A「なんだなんだ?」
女A「爆発?」
透、草むらに倒れている
透「(立ち上がり)ク、クッソ・・・!!」
特異骸霊、黒いスパークを放つ槍を持っている
透「もう1発!?」
透、慌てて王笏を手にする
特異骸霊、槍を構えたまま動きを止める
透「ん?」
特異骸霊、槍を消し、去っていく
透「(王笏を消し)クソ・・・」
一葉の声「透〜!」
透「(振り向き)ん?」
一葉・天童・中田蒼海(17)、走って来ている
透「無事だったか!」
一葉「(透に抱きつき)透〜!」
透「(少しよろめき)おっとっと」
一葉、すすり泣いている
一葉「心配したんだから〜」
透「すまんすまん」
透、一葉の頭をポンポンと叩く
中田「大丈夫か?」
透「なんとかな、お前は?」
中田「バイトから帰ってたら一葉ちゃんと、この兄ち
ゃんが居たんだ」
天童「助けてくれました」
透「そうか、すまねぇな蒼海」
中田「いいんだ、気にするな」
人々が騒いでいる
透ら、声のする方向を見ている
透「人が集まってきたな、逃げるか」
中田「おう」
走り去っていく透・一葉・中田・天童
○エンディング
○古城・全景(深夜)
○古城・城門(深夜)
特異骸霊、着地し歩き出す
○古城・大広間(深夜)
特異骸霊、ドアを開け入ってくる
佐久間恋夜(17)「(机に座りながら)よぉ、帰ってきた
な」
佐久間「(机から降り)つーか、いいのかよ。早々に切
り札出しちまって」
遠峰龍一郎(39)、椅子に座っている
佐久間の声「親父」
遠峰「・・・構わん、遅かれ早かれ戦う事となる、そ
れにこいつはただの糧、あのお方が復活するまでの
な」
佐久間「・・・そうかい、なら、俺の出番が来たら呼
んでくれ」
佐久間、歩き出す
遠峰「恋夜、しっかり見張ってるんだろうな?」
佐久間「もちろんだ」
遠峰「あの2人は?」
恋夜、ドアの前で止まる
× × ×
(フラッシュ)
金髪の男・傷だらけの腕の男、喧嘩している
佐久間の声「片方は喧嘩三昧、もう片方もそれに付き
合ってる」
× × ×
遠峰「分かった」
佐久間、ドアを開け、大広間を出ていき、ドアが閉まる
読んでいただきありがとうございます!