4話「青い海と白い砂浜」
よろしくお願いします
登場人物
霞勝 透(17)
天童 一葉(17)
天童 美波(39)
安藤 沙良(39)
中田 蒼海(10)(17)
神田 海生(10)(17)
佐久間 恋夜(17)
骸霊A
骸霊B
骸霊の群れ
特異骸霊
空手部顧問
女教師A
作業員A
大男
峯本
加藤
男A
男B
○オープニング
○霞勝家・全景(夜)
○同・台所(夜)
霞勝透(17)、晩飯を食べているとインターホンが鳴る
○同・玄関(夜)
透、ドアを開けると天童美波(39)がレジ袋を持って立っている
美波「こんばんは〜」
透「あ、こんばんは」
美波「娘が世話になったそうで」
透「誰?」
美波「私は天童美波、一葉の母親よ」
透「あ、一葉の・・・どうかしたんですか?」
美波「昨日の一葉の事でお礼を言いたくて」
透「い、いや、いいんですよ。礼なんて」
美波「いやいや、お礼ぐらいさせて」
透「あ、え、じゃあ・・・中入ります?」
美波「あら、いいの?なら、お言葉に甘えて」
家に入る美波
○同・居間(夜)
菓子が置かれていて、茶碗から湯気が出ている
透・美波、座っている
美波「昨日は一葉がお世話になったみたいで」
美波、頭を下げる
透「いえいえ、そんなに大したことは」
美波「(頭を上げ)いえ、礼を言わせてちょうだい。あ
の子は私や弟の剣司の前でも涙を見せない子だった
から」
透「我慢強い子だ」
× × ×
(フラッシュ)
一葉、透の胸でシャツを掴み号泣している
透の声「よく泣いてましたよ」
× × ×
美波「(口に手を当て)フフ、信頼されてるわね」
透「ええ、ありがたいことに」
透、茶を飲む
美波「あなたは一葉を信頼してるの?」
透「信頼はしてます、それだけです」
美波「はっきり言うのね」
透「それ以外ありませんので」
美波「・・・ところであなた、この家に1人で住んでる
の?」
透「(湯呑みを置き)元は親の家です、親父は俺が産まれ
てすぐに死んで、母さんは入院してて、実質一人暮
らしです」
美波「大変ね〜、ご飯はちゃんと食べてるの?」
透「はい、バッチリ」
美波「ホントに?部活してるならたくさん食べないと
筋肉つかないわよ?」
透「部活をしてるって言いましたっけ?」
美波「一葉から聞いたわよ?」
透「あ〜、なるほど」
美波「これ作ってきたんだけど──」
美波、レジ袋からサバの煮付けを出す
美波「あげるわ、夕飯で余っちゃって」
透「(頭を下げ)ありがとうございます・・・なんだ
か、懐かしい感じがします」
美波「鼓滝から教わったからね」
透「ん?知ってるんですか?母さんを」
美波「知ってるわ、学生時代からの友達だもの」
透「なら・・・母さんの秘密も?」
美波「ええ、知ってるわ、神器でしょ?」
透「という事はこれも?」
透、黒紫の霧を体から出す
美波「・・・知ってるわ、「女王」ね、けど鼓滝の時
よりも強力ね、素質があるのかしら」
透「(霧を体に戻し)さあ、その辺は知りません
が・・・・・・あなたも持ってるんですか?」
美波「ええ、私は「万薬」」
美波、ポケットから小瓶を取り出す
美波「これは「擬似生命」って言ってこの黄色い水を
治療したい所にかけるとみるみる回復するわ、でも
これ、最近出来たばかりでこの1つしかないのよ
ね〜」
透「一葉は知ってるんですか?」
美波「いいえ、知らないわ。余計な物背負わせるわけ
にはいかないから」
美波、小瓶をポケットになおす
透「俺も知らせない方がいいですよね?」
美波「ええ、信頼されてるとはいえ、こんなもの見せ
たらぶっ倒れるでしょうね」
透「でしょうね」
美波「今はまだ知らせる必要は無いわ」
透「まだ?」
美波「ええ、まだ」
透「・・・沙良先生はあなたと友達って言ってまし
た。あの人も持ってるんですか?」
美波「沙良は「屍術師」、私は生きてる人が専門だけ
ど沙良は死んでる人が専門」
× × ×
(フラッシュ)
安藤沙良(39)、ポケットに手を入れ不敵に笑いながら立っている
美波の声「人を生き返らせたり出来るんじゃないかし
ら?」
透の声「完全に魔女っすね」
× × ×
美波「でしょ?私もそう思ったわ、沙良って関西弁で
口も悪いし顔も怖いし態度も悪いし私服もダサいわ
よね〜」
透「いやそこまで言ってないし」
美波「あ、でも旦那はイケメンよね」
透「もう遅いっすよ、ていうか先生を褒めてないし」
美波「(茶を飲み)ハァ、美味しい」
透「(茶を飲み)・・・俺の家族だけだと思ってまし
た」
美波「まだ何人もいるわよ、10人くらいかしら」
美波、菓子を食べている
透「もしかして一葉を守ってほしいというのは──」
美波「これから大きな戦いが起こる、だから1番強いあなたに守ってほしいの」
透「・・・天童さんが思ってるほど、俺は強くありま
せん、そんな大きな戦いで、一葉をこれから守れる
自信は無いんです」
美波「大丈夫、あなたは強いわ、鼓滝より、そして永
治より」
透「!・・・親父はどんな人でしたか?母さんに聞い
ても教えてくれなくて」
美波「困った人がいたら周りの事なんてお構い無しに
助けに入る、あとどんな犠牲を出してでもその人を
守りきる、まるで王に忠誠を誓った騎士
ね。ま、王じゃなくて女王だけど」
透「騎士・・・ですか」
美波「ええ、そしてとても強い。けどあなたと違って
もうちょっと恋愛に興味があったわね」
透「俺は、そういうの分からなくて」
美波「いつか分かるわ、永治の気持ちが」
透「・・・」
美波「(時計を見て)・・・さて、そろそろおいとまし
ましょうか」
美波、立ち上がる
○同・玄関(夜)
美波「(肉じゃがを抱え)いいの?こんなに貰っちゃっ
て」
透「いいんです、お返しと思ってください」
美波「あら悪いわね〜、ならお言葉に甘えて」
美波、振り返りドアに手をかける
美波「透君──」
透「はい?」
美波「一葉をお願いね、私と剣司じゃ守りきれないか
ら」
透「・・・」
美波、ドアを開ける
透「俺は──」
美波「ん?」
透「頑張ってみます」
美波「あなたぐらいよ、突然守ってって言われて了解するのは」
透「ええ、それか親父ぐらいか」
美波「フフ、そうね。・・・一葉をお願いね」
透「分かりました、天童さん」
美波「さっきから思ってたけどそんなに固くなくてい
いのよ、下の名前でいいわ」
透「分かりました・・・美波さん」
美波「うん、じゃあね!」
美波、ドアを閉める
透「・・・」
○神崎町・住宅街(深夜)
骸霊A、走っていると三叉槍が突き刺さり、消滅していく
男、三叉槍に近づくと液体に変わり男の足に消えていき、男も立ち去る
○霞勝家・透の部屋(早朝)
朝日が差し込んでいる
透、あくびしながら歩いている
天童一葉(17)「(後ろから歩いてきて)透ー!」
一葉、透の横に来る
透「おはよ〜、一葉〜」
一葉「(笑顔で)おはよ!」
透「今朝は早起きだな〜、まだ7時だぞ?」
一葉「昨日午後の授業行ってなかったから、勉強しと
こかなって」
透「真面目だな〜、そんなに真面目にならなくても卒
業は出来るぞ〜?」
一葉「将来お母さんの病院を継ぐ為に、良い大学に行
きたいの!」
透「親孝行だな」
一葉「透は将来の夢無いの?」
透「・・・そうだな、自由気ままに余生を過ごすよ」
一葉「それおじいちゃんとかが言うセリフだよ」
透・一葉、笑い合っている
一葉「そういえばなんでこんな朝早いの?」
透「ん、特に理由はない。たまたま早く起きたから早
く来ただけ」
一葉「ふ〜ん」
○神崎高校・教室(早朝)
一葉、自分の席で勉強している
透、自分の席で一葉を見ながら座っている
一葉「(ノートに書きながら)・・・」
透、一葉をじーっと見ている
一葉、透をチラチラ見ながらノートをとっている
一葉「(透を見て)ど、どうかしたの?」
透「いや、何も無い」
透、一葉をじーっと見ている
一葉「(頬が染まり)べ、勉強しなくていいの?」
透「うん、授業聞いてたら分かるから」
一葉「羨ましい〜」
透「だろ」
一葉「でも昨日そもそも授業出てないよね?」
透「・・・」
透、勉強している
一葉、口に手を当て微笑している
ドアが開く
佐久間の声「あれ?何してんの?」
透「ん?」
佐久間恋夜(17)、歩いてくる
透「よぉ、恋夜。久しぶりだな、シャバの空気はどう
だ?」
佐久間「うるせ」
透、笑っている
佐久間「(透・一葉の前で止まり)転校生?」
一葉「は、はい」
佐久間「俺は佐久間恋夜だ、よろしく」
一葉「は、はい、よろしくお願いします」
佐久間「(透を見て)・・・お前の友達の割に行儀いい
な」
透「何言ってんだ、類は友を呼ぶって言うだろ?」
佐久間「遅刻をしなくなったら、言うんだな」
透「喧嘩しなくなったら、言うんだな」
一葉「え?」
透「(佐久間を指さし)こいつ他校と喧嘩して2週間停学
くらってたんだよ」
佐久間「ああ、もちろん勝ったがな、けど今日から復
帰だ」
一葉「へ、へぇー」
透「でも、なんでお前こんな朝早く学校に居るんだ?
今日から真面目になんのか?」
佐久間「なれたら苦労しねェよ。担任に早く来いって
言われてるんだよ」
透「なるほど」
佐久間「(振り返り)じゃあな、遅くなると怒られちま
う」
透「おう」
教室を去る佐久間
○同・廊下(朝)
佐久間、歩きながら電話をかける
佐久間「確認した、どうする?・・・分かった」
遠ざかっていく佐久間
○同・教室(昼)
一葉、昼食を食べている
一葉「(前を向いて)屋上で食べないの?」
透、パンを食べている
透「お前1人で食ってたら昨日みたいに絡まれてお前が
困るだろ?」
一葉「だから一緒に食べてくれるの?」
透「うむ」
透、パンを1口食べる
一葉「(頬を染め)・・・ありがとう」
透「気にするな」
一葉「・・・覚えてない?私たち、昔こうやってご飯
食べたんだよ?」
透「学校案内の時にもそんな事言ってたな、昔会って
るのか?俺たち」
一葉「うん、会ってるよ。透は私の初めての友達だ
よ!」
透「それはそれは、嬉しい限りだ」
一葉「うん!」
透「・・・だがすまない、憶えてないんだ」
一葉「い、いいの、いつか思い出してくれたらいいか
ら」
透「・・・そうか」
一葉「ところで──」
透「ん?」
一葉「昨日の夜、お母さんが家に来たでしょ?何話し
たの?」
透「大した話はしてない、お前の事で礼を言われたく
らいだ」
一葉「あ、そのこと・・・あれ恥ずかしかった」
一葉、1口食べる
透「そうか?その割に号泣した後にスヤスヤ寝てたじ
ゃないか?」
○(回想)天童家・一葉の部屋(夜)
一葉、ベッドに寝転がり枕に顔をうずめ足をジタバタさせている
一葉の声「あの後家帰った後に恥ずかし過ぎて部屋に
籠ってたんだよ!?」
美波の声「(笑いながら)一葉〜、大丈夫〜?」
(回想終わり)
○神崎高校・教室(昼)
透「フフ、良い寝顔だったぞ〜?」
一葉「(頬が染まり)もう!・・・ヘンタイ」
透、笑っている
空手部顧問「(ドアを開け)霞勝!ちょっと来い!」
透「なんだよ、ちょっと待ってろ」
一葉「うん」
一葉、透を目で追っている
透、教室を去る
一葉、シュンとなる
○同・職員室(昼)
透「犯人やっと捕まったんすか」
空手部顧問「ああ、だから明後日から部活再開だ、新
しく入ったマネージャーにも伝えててくれ」
透「犯人、誰だったんですか?」
空手部顧問「隣町の学生だ、ストレスが溜まってたん
だと」
透「学生が通り魔っすか、誰に刺されるか分かったも
んじゃないすね」
空手部顧問「ホントだよ、全く。人の命をなんだと思
ってるんだ」
透「・・・マネージャーに伝えときます」
空手部顧問「おう、頼むぞ」
○神崎町・住宅街(夕)
夕日が差し込んでいる
透・一葉、歩いている
一葉「それでね、最近この辺りで水道管の破裂が頻繁
に起こってるってお母さんが言ってた」
透「今の時期にしては珍しいな」
一葉「でしょ?お母さんもそう言ってた」
透「ああ、そうだ、一葉・・・!」
透、足を止める
一葉「(振り返り)どうしたの?」
透「・・・いや、なんでもない」
一葉「?」
透、一葉を家まで送り届ける
一葉「(手を振りながら)じゃあね、また明日」
透「ああ」
ドアが閉まると走り出す透
○同・港・全景(夜)
所々明かりがついている
悲鳴があがる
○同・港(夜)
海が荒れている
骸霊B、死体を食べている中、自身に影が落ちたことに気づき振り向く
透「(骸霊Bの後ろに立ち)死ね」
透、骸霊Bの首を持っている剣で飛ばし、消滅させる
透「(死体を見て)・・・すまねぇ、安らかに眠ってく
れ」
死体が爆発する
男、歩いてくる
透「ん?」
透、立ち上がる
中田の声「あれ、おかしいな、ここにいたんだがな」
中田蒼海(17)、影から出てくる
透「誰だ?」
中田「(立ち止まり)ただの通りすがり」
透「(海を見て)これは・・・かすかに力を感じていた
が、お前の仕業か?」
中田「ああ、そうだ。俺は中田蒼海、神崎高校2年3
組、そして・・・「海王」の能力者だ」
透「!、同じ学校に居たとは驚きだ」
中田「そうだろ?で、お前は?」
透「俺は霞勝透、神崎高校2年4組、「女王」だ」
中田「「女王」か・・・ところで、俺が追ってた奴は
お前が殺したのか?あの、黒い鎧着たやつ」
透「ああ、俺が殺した」
中田「目的は一緒、て事は俺たち仲間か?」
透「ああ」
中田「なら教えてくれ、こいつは何だ?」
透「詳しい事は明日話す、今は──」
透、中田の後ろを指さし、中田が振り向くと骸霊の群れがこちらを睨んでいる
中田「おっと」
中田、透と並ぶ
透「今夜は大量だな」
透、体から黒紫の霧を出す
中田「(海水を三叉槍に変えて手にし)ああ、行くぜ」
透・中田、戦闘開始し、骸霊の群れに勝利
○神崎高校・全景(朝)
○同・玄関(朝)
透、靴を下駄箱に入れている
ガヤガヤしている
中田の声「あ」
透「(声のした方を向き)・・・あ」
透・中田「(見合って)あ」
○同・廊下(朝)
透「お前を学校で見るのは今日が初めてな気がするん
だが」
中田「今まで接点なかったからな」
透「それでも隣のクラスならどこかで会った事ぐらい
あるだろ」
中田「それが無いんだな〜」
透「・・・そうかよ、ところでお前いつから持ってる
んだ?」
中田「(窓の外を眺め)さあな、いつの間にか持ってた
よ」
透「・・・そうか」
中田「お前はどうなんだ?」
透「話すと長くなるぞ?」
中田「なら、やめておく、長話は嫌いでね」
透、ほくそ笑む
中田の声「けど──」
中田「(透を見て)あのバケモンの話は好きだなぁ」
透「・・・屋上来い、ここじゃ目立つ」
中田「おう」
○同・屋上(朝)
透「──つー訳だ」
中田「簡単に言うと遠峰っていう奴と揉めてる訳だ
な?」
透「まあ、そういう事だ」
中田「昨日の奴らも?」
透「あいつらは骸霊と言われてる、雑兵みたいなもん
だ」
× × ×
(フラッシュ)
骸霊の群れ、剣や槍を持って立っている
透の声「あいつらは人を殺して自分達と同じ姿に作り
かえ、また人を襲わせる、強さは元の人によってそ
れぞれだ」
× × ×
中田「なるほどな、なんで人を狙うんだ?」
透「簡単だ、欲を満たす為、あと遠峰の命令に従うよ
うに作られてるから遠峰が襲わせてるんだろ」
中田「なら、遠峰を倒せば一件落着だろ」
透「それが、どこいるか分かんねーんだよな〜」
中田「そうだよな〜、分かってたらその場所叩くよ
な〜」
透「あ、ところで最近起こってる水道管の破裂、もし
かしてお前?」
中田「ああ、オレオレ、あいつらに襲われた時にな。
普段から水を持ち歩いてる訳じゃないから、仕方な
く破裂させた」
透「仕方なく・・・」
ドアが開く
一葉「あ、透!」
一葉、走ってくる
透「よぉ、一葉」
一葉「(立ち止まり)ねぇ!・・・あ」
透「ん?ああ、一葉。友達の中田蒼海だ」
中田「一葉?ああ、転校生だな、天童っつったか?」
一葉「(怯えながら)こ、こんにちは」
透「一葉、怯えなくていい、こいつは信頼していい」
中田、ニカッと笑う
一葉「う、うん」
透「・・・で、用はなんだ?」
一葉「犯人捕まったんでしょ?部活再開しないの?」
透「あ、言ってなかった。明日から再開だ」
一葉「もう、言っておいてよ〜、初日から遅刻なんて
したら印象悪いじゃん」
透「(笑いながら)すまんすまん」
一葉「でも捕まって良かった〜、これで1人でも安心し
て帰れるね」
透「え?一緒に帰るけど?」
一葉「え?」
透「だって危ねーじゃん、空手部8時くらいまでやるん
だぞ?そこから1人で帰るってなると危ないだろ?」
一葉「(頬が染まり)・・・そ、そうだね」
一葉、モジモジしている
中田、ふと気づく
中田「透、購買行ってくる」
透「ああ、分かった」
中田、ドアを開け、去る
一葉、透に話し続けている
ドアが閉まる
○同・廊下(朝)
中田、歩いている
中田M「あれ完全に好きだよなぁ」
女子、走ってくる
海生の声「そうちゃ〜ん!」
神田海生(17)、中田の背中を叩こうとするも避けられる
海生「(倒れて)うわあ!」
中田「まだまだよのぉ、海生。フォッフォッフォ」
海生「(中田を指さし)もう!次こそは当ててやるんだ
からね!」
中田「お前じゃ、俺に指1つ触れることさえ叶わん」
中田・海生、言い合っている
女教師A「(海生の頭を小突き)こら、神田さん!」
海生「イタ!なんですか、先生!」
海生、振り向く
女教師A「いつになったら黒染めしてくるんですか?
もうずっと言ってますよね!」
海生「だからこれ地毛なんですよ!」
女教師A「生まれた時から白髪な訳ないでしょ!」
中田「まあまあ先生、こいつには俺から言っときます
ので」
女教師A「(去りながら)毎回そう言ってるわ!全く!」
女教師A、遠ざかっていく
中田・海生、反対方向に歩き出す
海生「仕方ないじゃん、私だってなりたくてなった訳
じゃないのに」
中田「1人が違うと皆が文句言うからだろ」
海生「そうだけどさ〜、染めてる訳じゃないのに〜」
中田「いいじゃねぇか、どうせ話したって分かんねぇ
んだから」
海生「もう、分かってくれるのはそうちゃんだけだ
よ〜」
中田「(海生の頭に手を乗せ)ああ、俺だけが分かって
る」
海生「うん!」
遠ざかっていく中田・海生
○同・教室(夕)
透「一葉、俺今日空手場の掃除してから帰るから先帰
っててくれ、一緒に帰るとは言ったけども」
一葉「私も手伝うよ、一応マネージャーなんだから」
透「いや、かなり遅くなりそうだから先帰っててく
れ」
一葉「う〜、分かった。1人で帰ってやるからね!」
透「ふぅ〜ん、あの人通りの少ない夜道を1人で歩いて
帰れるんだ〜」
一葉「うっ・・・少し・・・不安です」
透、笑っている
一葉「(溢れそうな涙を我慢しながら)笑うなぁ!」
透「泣くほど?」
一葉、涙を拭いながら頷く
透、ポケットから防犯ブザーを出す
透「こいつを普段から持ち歩いてろ」
一葉「(涙を拭いながら)へ?」
透「怖くなったらこれを押せ、音がバカでかく鳴るよ
うに改造してるからあの住宅街で鳴れば近所に分か
る、いいな?」
一葉「(防犯ブザーを受け取り)今どきブザーって古く
ない?」
透「防犯ブザーは1番の防犯アイテムだぞ?」
一葉「いや、そうだけど」
透「文句を言うな。さ、俺は空手場に行ってるから
な」
透、立ち上がり歩き出す
一葉、透の服を掴む
一葉「(上目遣いで涙目で)終わるまで待ってるじゃ、
ダメなの?」
透「・・・その手があったな」
一葉「ホント?」
透「ただし、俺の目の届く場所に居ろ」
一葉「(笑顔で)うん!でも待ってるだけだと暇だから
手伝うよ!」
透「そうか、なら頼むよ」
一葉「(笑顔で)うん!」
教室を去る透・一葉
○神崎町・住宅街(夜)
天童剣司(16)、歩いている
田坂の声「おい1年」
天童「(振り向き)・・・何だ?」
田坂・峯本・加藤、立っている
峯本「お前口の利き方どうにかしろや!」
天童「(睨みながら)何だゴラ、文句あんのか?テメー
らが姉貴を転校にまで追い込んだ事、忘れてねぇか
らな」
天童「(大声で)今度は病院じゃすまねぇぞ、墓場にで
も入ってもらおうか!!」
峯本・加藤、たじろぐ
田坂「まあまあ落ち着いて、今日はそのお姉ちゃんに
ついて話があるのよ」
天童「(田坂を睨み)何の話だ?」
田坂「実はねアンタのお姉ちゃん、最近変な輩につき
まとわれてるのよ?」
天童「それは・・・・誰がつきまとってんだ?」
田坂「霞勝透っていう同じクラスの男よ」
天童「ほー、ならそいつは殺さなきゃいけねーな〜」
田坂「でしょ?だから手を組まない?」
天童「テメーらと手を組む気はねェ、霞勝を殺せれば
十分だ」
田坂「でも共通の敵でしょ?」
天童「なら、アンタが霞勝を狙う理由は?」
田坂「私は罪を償いたいの」
天童、疑いの目で睨む
天童「・・・いいだろう、準備が出来たらこっちから
知らせる」
田坂「分かったわ」
天童、去っていく
峯本「おい、いいのか」
加藤「あいつが俺たちに簡単に味方するとは思えねぇ
ぞ」
田坂「大丈夫よ、いざとなったら別の手を用意してる
わ」
加藤「別の手?」
田坂「ええ、いざとなったら3人とも・・・ね?」
○同・住宅街(夜)
一葉「(歩きながら)すっかり遅くなっちゃったね〜」
透「(歩きながら)お前がバケツひっくり返さなきゃも
っと早く終わったんだけどな〜」
一葉「うっ、ご、ごめんなさい」
2人の男女、透・一葉の前を通り過ぎる
透「ん?あれは──」
中田・海生、歩いている
一葉「・・・あれって──」
透「蒼海だ」
中田「(透に気づき)ん?おぉ、透、一葉ちゃん」
一葉、歩いてきている透の後ろに隠れながら歩いてきている
海生「誰?・・・てか後ろの人にめっちゃ警戒されて
んだけど」
透・一葉、中田・海生の所まで歩いてくる
透「こちらさんは?」
海生「私は神田海生、そうちゃんの友達」
透「そうちゃん?随分とかわいい名前で呼ばれてん
な」
中田「だろ?昔からの付き合いだからな、正直やめて
ほしい」
海生「で──」
海生、透の後ろを覗き込む
一葉「(怯えるように)ヒッ──」
一葉、透の背中でブレザーを掴み背中に顔を埋める
海生「そんなに怯えなくてもいいじゃない」
透「一葉は人見知りなんだ」
透、一葉を右腕で覆い懐に寄せる
透「まあ、勘弁してやってくれ、人に慣れるには時間
が必要なんだ」
一葉、顔が真っ赤になっている
中田M「お前が勘弁してやれ」
透「でお前、何してるんだ?」
中田「ゲーセンに寄ってた」
海生「見てこれ!いっぱい取れたんだよ!」
海生、お菓子がたくさん入った袋を透に見せる
透「お、おう」
海生「(一葉にお菓子を差し出し)いる?」
一葉、恐る恐る手を伸ばすもグイグイ来る海生に少し怯えている
透「一葉?大丈夫だ、俺を信じろ」
透、一葉の頭を2回軽く叩く
一葉、海生からお菓子を貰う
海生「ありがと!一葉ちゃん!」
一葉「う、うん」
中田、一葉を見ている
一葉「(服を引っ張り)透、私お腹空いた」
透「ん?ああ、そうだな。何か食いに行くか」
一葉「うん!」
透「(中田・海生を見て)一緒行くか?」
中田「是非ご一緒させてもらおう。腹減ってんだ」
海生「じゃあ、私も〜」
○同・商店街・ラーメン屋(夜)
海生、麺を啜っている
海生「おいし〜!」
透「だろ〜、前々から目をつけてたんだが、遠いんだ
よな〜、家から」
中田「お前ん家、どの辺なの?」
透「学校から10分〜15分行ったところだ、まあまあデ
カいから分かりやすいぞ」
中田「へぇ〜、金持ちか?」
透「いや、親父の金が有り余ってるだけ」
中田「親父は居ないのか?」
透「産まれる前に死んだ」
一葉「(俯き)・・・」
中田「・・・すまん」
透「いやいいんだ、親父と話した事なんてほとんど無
いからな、思い出なんて皆無に等しい」
中田「奇遇だな、俺ん家も親は居ない」
中田、麺を啜る
透「さ、辛気臭い話はやめて早く食べよう、麺が伸び
る」
中田「おう」
一葉「・・・」
透、スープを飲み干す
透「ふー、美味かった〜、ごっそさん」
中田「あ〜、美味かった」
○同・商店街(夜)
店主の声「毎度〜」
透ら、店から出てくる
透「さ、帰るか」
中田「そうだな」
海生「じゃあね〜」
透「お〜う」
海生「一葉ちゃんも、じゃあね〜」
一葉「(小さく手を振りながら)じゃ、じゃあね」
透・一葉、中田・海生と別れる
○同・住宅街(夜)
透「一葉、海生が苦手か?」
一葉「う、うん、少し」
透「やっぱり、まだ思い出すか?」
一葉、無言で頷く
透「ま、ゆっくり慣れていけばいいさ、俺の友達なら
信頼出来るだろ?」
一葉「うん」
遠ざかっていく透・一葉
中田・海生、歩いている
海生「一葉ちゃん?って言ったっけ?あの子」
中田「ああ」
海生「あの子、何かあったの?凄い避けられてた気が
するんだけど」
中田「初めて会った時、お前程じゃないが俺も避けら
れたぞ。昔嫌な事でもあったんだろ」
海生「・・・透君?も能力者なんでしょ?」
中田「そうだ」
海生「・・・神器持ってる人もその周りの人も呪われ
るのかな」
中田「それでも足掻くしかねぇんだ・・・溺れねェよ
うにな」
遠ざかっていく中田・海生
○同・港・コンテナ区(夜)
悲鳴が上がる
作業員A「(走りながら)ハァ、ハァ、ハァ!」
死体が槍ごとコンテナに刺さっている
作業員A「(腕を押さえながら)ハァ、ハァ・・・・・・クソ!」
死体が串刺しにされている
特異骸霊、歩いてきて投げた槍が作業員Aの足にかすり槍が壁に刺さる
作業員A、コケる
作業員A「(後ずさりしながら)な、なんなんだ!」
特異骸霊、作業員Aに近づく
作業員A「た、助けてくれー!」
特異骸霊、槍を作業員Aに突き刺す
作業員Aの声「ぐぁ!」
至る所に死体が転がってたり血が飛び散っている
佐久間・男A・男B、遠くから見ている
佐久間「もう使えそうだな」
大男「・・・」
男A「あんな奴いらねぇだろ、俺たちだけで十分だ」
佐久間「味方は多い方がいいだろ」
男B「戦略的に言えば間違いねぇ」
佐久間「行くぞ、親父に報告だ」
去っていく佐久間ら
○エンディング
× × ×
(フラッシュ)
中田蒼海(10)、真剣な顔をしている
神田海生(10)、泣いている
× × ×
見て頂きありがとうございました!