2話「光闇混じれば月光なり」
セリフが多めで大変読みづらいかと思われますがよろしくお願いします
登場人物
霞勝 永治(17)
鳴音 鼓滝(15)(17)
天童 美波(17)
安藤 沙良(17)
遠峰 龍一郎(15)(17)
畑山
鼓滝(母)
女子生徒A
男子生徒A
男子生徒B
暗転
鼓滝M「あれ?······私、どうなったんだっけ?」
美波の声「なんだったのかしら?」
霞勝の声「俺の話の途中で倒れたしな」
鼓滝M「あ、そうだ······倒れたんだっけ」
霞勝の声「誤魔化したつもりだったが、まさか誤魔化
した話題で倒れるとは」
鼓滝M「え?······誤魔化した?」
美波の声「次からは誤魔化せないわね〜」
霞勝の声「······何も知らない人に俺の両親は神器を持
ってる能力者に殺されたって言っても分かんねーだ
ろうし」
○霞勝家・居間(夜)
鳴音鼓滝(17)、飛び起きる
霞勝永治(17)・天童美波(17)「!?」
鼓滝、激しく呼吸している
霞勝「鼓滝?」
霞勝、鼓滝の肩を叩く
鼓滝、霞勝を見る
鼓滝「······あ、永治君」
鼓滝、呼吸が落ち着く
霞勝「(ホッとして)気がついたか、良かった」
○車内
鼓滝、窓の外を眺めている
鼓滝、霞勝の笑顔を思い出す
鼓滝M「(涙を流し)ごめんなさい······永治君。私は
──」
暗転
鼓滝の声「大罪人です」
○オープニング
○鳴音家・全景(早朝)
スズメが鳴いている
○同・鼓滝の部屋(早朝)
鼓滝、ベッドで寝ている
鼓滝、汗をかいて苦しんでいる
○(回想)神崎町・工場(夜)
遠峰龍一郎(15)、ニヤァと笑いながら鼓滝(15)に剣を向けている
鼓滝、苦しんでいる
鼓滝の体から黒紫の霧が出てくる
黒紫の霧は数本の触手へと姿を変えていく
龍一郎「!?」
鼓滝「(大声で)うあああああああああ!」
(回想終わり)
目覚ましが鳴る
鼓滝、目を開ける
鼓滝「ハア、ハア、ハア」
鼓滝、目覚ましを止めてベッドに座る
鼓滝、深呼吸して落ち着きを取り戻す
鼓滝、立ち上がり部屋を出ていく
○同・玄関外(早朝)
ドアが開く
鼓滝、室内に振り向く
鼓滝「行ってきます」
鼓滝の母「(手を振り)行ってらっしゃい」
鼓滝、ドアを閉めて歩き出す
門扉を開ける鼓滝
○神崎町(早朝)
鼓滝、門扉を閉める
霞勝の声「朝6時に起きてるってのは本当らしいな」
鼓滝「(横を見て)永治君!」
霞勝、壁に寄りかかっている
霞勝「(手を挙げ)よ!」
鼓滝「(口に手を当て)え、永治君!?な、なん
で!?」
霞勝「(壁から離れ)お前が心配だったから来たんだ」
鼓滝「で、でも朝は苦手だって──」
霞勝「友達の為なら、早起きなんて苦じゃないさ」
鼓滝「(少し微笑み)······あ、ありがとう」
霞勝「(微笑み)さ、今日はゆっくり学校に行ける
ぞ?」
鼓滝「······うん」
霞勝・鼓滝、歩き出す
鼓滝、不安な表情をしている
霞勝「(鼓滝の顔を覗き込み)調子悪いのか?」
鼓滝「(顔を逸らし)い、いや、なんでもない」
霞勝、立ち止まる
鼓滝、立ち止まる
霞勝、鼓滝をじーっと見つめている
霞勝「ホントか?」
鼓滝「(耳に髪をかけながら)き、昨日の疲れが少し残
ってるのかな」
霞勝「(鼓滝の前に立ち)······おい、無理するなよ?」
鼓滝、無言で頷く
霞勝、歩き出す
鼓滝、歩き出す
鼓滝、俯いて、霞勝に見えないように涙を堪えている
遠ざかっていく霞勝・鼓滝
○神崎高校・屋上(昼)
鼓滝・安藤沙良(17)、並んで座っている
鼓滝・沙良、弁当を膝に置いている
沙良「(鼓滝を見て)え!?それ、ホンマなん!?」
鼓滝「(悲しそうに)······うん」
沙良「永治の両親をあんたが守りきれず、永治は両親
が神器の能力者に殺されたと思っている、っちゅー
ことやろ?」
鼓滝「(頷き)私が弱かったから、死んじゃったの、私
のせいで──」
沙良「でも、アンタ、その時神器使いこなせてなかっ
たやろ?」
鼓滝「そうだけど、それでも」
× × ×
(フラッシュ)
霞勝の両親が死んでいる
× × ×
沙良「······アンタは全力を尽くしたやんか、永治は許
してくれると思うで?」
鼓滝「······沙良」
沙良、鼓滝を見る
鼓滝の膝に涙が落ちる
鼓滝「······私、永治君に嫌われたくないよ──」
○同・屋上の入口・中(昼)
ドアが少し開いている
美波、神妙な顔をしている
○同・屋上(昼)
鼓滝、すすり泣いている
沙良、鼓滝の背中をさする
沙良「鼓滝、ウチを見て?」
鼓滝、両手を外す
鼓滝「(沙良を見て)······え?」
沙良「(優しい表情で)恋っちゅーのはよう分からんも
んでな?」
○同・全景(昼)
沙良の声「どんな理由があろうと、どんな因縁があろ
うと──」
○同・教室(昼)
霞勝、談笑している
沙良「絶対に好きな人を──」
○同・屋上(昼)
鼓滝、涙を流している
沙良「絶対に嫌いにさせへんのやで?」
鼓滝「沙良──」
沙良「(立ち上がり)どんな事があっても永治はあんた
の事を絶対に嫌いになったりせえへん!!」
沙良、自身の胸を叩く
沙良「ウチが保証したる!!」
鼓滝「(泣きながら)······沙良、ありがとう」
鼓滝、沙良に抱きつく
沙良「泣かんといてやぁ、子供じゃあるまいしー」
ドアが開く
美波の声「お取り込み中のところ、悪いんだけど〜」
鼓滝・沙良、声のした方を見る
鼓滝「!」
美波、ドアを閉めている
鼓滝「美波さん!」
鼓滝、涙を拭う
美波、鼓滝・沙良の方へ歩いていく
美波「(心配そうな顔で鼓滝を見て)大丈夫だった?昨
日」
鼓滝「(美波を見て)はい、しっかり眠れました」
美波「(微笑み)良かった」
沙良「(美波を見て)アンタ誰や?」
美波、立ち止まる
美波「(沙良を見て)私は天童美波、永治の友達よ、あ
なたは?」
沙良「(胸に手を当て)ウチは安藤沙良、鼓滝の親友
や」
沙良、腕を組む
沙良「(美波を見て)でなんや、永治は渡さないって言
いに来たんか?」
美波「(沙良を見て)そんな訳ないでしょう?私は鼓滝
さんを応援してるのよ?」
美波、真剣な顔になる
美波「それよりさっきの話聞いちゃったんだけど······
本当なの?」
鼓滝、座っている
鼓滝、無言で頷く
美波「あなたも持ってるのね、神器」
沙良、腕を組んでいる
沙良「あなたも?」
鼓滝「あなたもって······」
鼓滝、前のめりになる
鼓滝「(驚いた顔で)え、それって!?」
沙良の声「アンタも持っとんのかい、神器」
美波「ええ、持ってるわ」
沙良「(美波を睨み)······何を持っとんねん」
沙良、ポケットに手を伸ばす
沙良「(真剣な顔で)場合によっては······」
美波「喧嘩っ早いわね、私が持ってるのは「万薬」
よ、医者よ医者」
沙良「(ポケットから手を出し)敵ではなさそうやな」
鼓滝「(驚きながら)美波さんもだったなんて──」
美波「(少し笑いながら)意外だった?」
鼓滝「(戸惑いながら)は、はい」
美波「(鼓滝・沙良を指差し)あなた達は何を持ってる
の?」
沙良、1歩前に出る
沙良「(自身を指差し)ウチは「屍術師」、代価を払う
代わりに死んだ人間を生き返らせたり、そいつが生
前何を見とったのかが分かる。ちなみにさっき取り
出そうとしたのは──」
沙良、ポケットから本を取り出す
沙良「(片手で本を持ち)これや」
美波「(本を見て)魔女の本ね」
沙良「(ニヤケながら)そうやで〜、これでもウチは
「歴代最強の魔女」って言われてるんやで?」
美波「見た目によらず頭いいのね」
沙良「バカにしとんのか、ワレ」
沙良、本をポケットにしまう
美波「鼓滝さん?あなたの番よ」
鼓滝、神妙な顔をしている
沙良「(鼓滝の横に座り)この子のは聞かない方が身の
ためやと思うで?」
美波「私は構わないわよ?1番の化け物知ってるから」
沙良「あのな〜、おたく状況が──」
鼓滝「いいの、沙良、美波さんなら話してもいいと思
うから」
沙良「······鼓滝がええならええわ」
鼓滝、立ち上がり、目を瞑る
美波「?」
鼓滝の足元が黒く侵食されていく
美波「!?」
鼓滝の体から黒紫の霧が出てくる
美波「······これって──」
黒紫の霧が触手を形成していく
鼓滝「(目を開け)······これが、私の力」
鼓滝、触手を剣や槍など多彩な武器に形を変えていく
鼓滝「······私はこれが嫌い」
美波、鼓滝を見ている
美波「(少し間が空き)······なるほど、「女王」ね」
沙良「(少し笑いながら)どうや?びっくりしたやろ」
美波「ええ、びっくり」
○同・教室(昼)
霞勝、何かに気づき真剣な顔になる
畑山「どうした?」
霞勝「トイレ行ってくる」
霞勝、席を立ち教室を出る
○同・屋上(昼)
沙良、立ち上がる
沙良「(鼓滝の周りを歩きながら)「女王」はウチらが
持ってるモンとはレベルも格も何から何まで違う、
強さも計り知れんモンでウチが思うにあの「雷神」
と互角やと思うで〜?」
美波「······それは違うわね」
沙良の声「え?」
美波「私は「雷神」を知ってるけど、言葉では言い表
せないくらい強い、特に今の能力者は初代「雷神」
能力者に次いで、いや匹敵するぐらい強い、私達が
束になってかかっても傷1つつける事さえ難しいでし
ょうね」
沙良「(ヒューと口を吹き)えらく「雷神」を買っとる
んやな〜、まるで友達みたいやわ〜」
沙良、座る
鼓滝「あの、もしかして今の能力者って──」
○同・廊下(昼)
霞勝、廊下を歩いている
美波の声「······永治よ」
○同・屋上(昼)
鼓滝「(顔が真っ青になり)!?」
沙良「(立ち上がり)嘘やろ!?」
鼓滝「な、なんで永治君が──」
沙良「「雷神」は代々一つの家系が引き継いでいるは
ず······あいつの苗字は霞勝やったな、まさか霞勝家
が?」
鼓滝、触手を霧に変え体に戻す
鼓滝「あ、あの、この事は永治君には教えないでくだ
さい!」
美波「何で?能力者同士話が合うでしょ?」
鼓滝「そういう問題じゃないんです!」
美波、首を傾げる
沙良「(鼓滝を見て)ウチから話そうか?」
鼓滝、無言で頷く
沙良「(美波を見て)······鼓滝は2年前、「極焔」を持っ
とる遠峰龍一郎に襲われたんや」
美波M「遠峰······確か、永治がずっと戦ってるって言っ
てたわね」
美波「なんで鼓滝さんが襲われたの?」
沙良「アンタも聞いたことあるやろ?「雷神」と「極
焔」の神界戦争──」
美波の声「ええ、まあ、少しは」
○(回想)戦場(昼)
爆音
過去の「雷神」能力者と過去の「極焔」能力者が戦っている
次々と能力者が死んでいく
沙良の声「今はもう殆どの神器が消滅して、戦争って
言える程の戦いでは無くなってきとる。まあ、それ
でも10人ぐらいは生き残っとるらしいがな」
(回想終わり)
○神崎高校・屋上(昼)
美波「確か、「女王」は「雷神」側だったわね」
沙良「そうや、で、遠峰は負ける事を悟って、「雷
神」の仲間を殺し、勢力を削る為鼓滝を襲ったん
や」
○(回想)神崎町・工場(夜)
鼓滝、闇を発生させている
龍一郎、剣を握っている
ぶつかり合う2人
爆発
(回想終わり)
○神崎高校・全景(昼)
沙良の声「結果は鼓滝の勝ち──」
○同・屋上(昼)
沙良「やけど──」
沙良、俯く
美波「(首を傾げ)けど?」
沙良「(悲しい表情で)たまたま通りかかった一般人が
死んでもうたんや」
美波「(真剣な顔で)2年前って言ったわよね?場所は?」
沙良「ここから見える──」
沙良、工場を指さす
沙良「あの工場や」
美波「それって!?」
沙良「死んだ一般人は永治の両親やった」
美波「そんな──」
鼓滝「ごめんなさい」
鼓滝、膝から崩れ落ちる
鼓滝「(泣きながら)······私のせいなんです」
沙良「(鼓滝に寄り添い)あんたは悪ない、あんたは守
ろうとしたやんか」
美波「どういう意味?」
沙良「鼓滝は永治の両親を守ろうとしたんや、けどあ
と一歩のところで──」
× × ×
(フラッシュ)
鼓滝、手を伸ばしている
霞勝の父・霞勝の母、炎に飲み込まれる
× × ×
美波「······救えなかったのね」
沙良「頼む、美波」
沙良、美波を見る
沙良「鼓滝は悪くない、けど自分の両親の死に関与し
てるって分かったら──」
美波「分かった」
鼓滝「私、永治君に嫌われたくありません!私······永
治君に嫌われたら何をしでかすか、自分でも」
○同・屋上の入口・中(昼)
鼓滝の声「分かりません!」
霞勝、ドアノブにかけようとした手が止まる
霞勝「ん?」
霞勝「(少しドアを開け)美波?」
霞勝「(鼓滝・沙良を見て)鼓滝と昨日鼓滝と騒いでた女子もいるな······何か」
○同・屋上(昼)
霞勝M「めっちゃ気まずい」
鼓滝、すすり泣いている
美波「(鼓滝に歩み寄り)鼓滝さん、大丈夫よ、永治は
あなたを嫌いになったりしないわ、ちゃんと事情を
話せば──」
鼓滝、頭を上げる
鼓滝「(大声で)そんな確証どこにあるんですか!!自
分の両親を殺したような人を嫌いにならないわけな
いじゃないですか!!」
霞勝、目つきが変わる
ドアが蹴破られる
蹴破られたドア、落下防止用の柵に当たる
美波「(振り向き)なに!?」
沙良、蹴破られたドアを見ている
沙良「ドアが······蹴破られた?」
霞勝、外に出てくる
鼓滝・美波・沙良「!?」
鼓滝「(怯えながら)永治······君」
霞勝、目を怒らせ鼓滝らに近づく
空が雲で覆われる
○同・教室(昼)
生徒達が窓から空を見ている
生徒達、ザワザワしている
畑山「急に曇ってきたな〜」
女子生徒A「雨降りそうだね〜」
男子生徒A「俺今日傘持ってきてねぇ〜」
○同・屋上(昼)
霞勝、立ち止まり鼓滝らを見ている
霞勝「鼓滝······今の話······本当か?」
美波「永治、聞いて、鼓滝さんは──」
霞勝「(美波を睨み)俺は鼓滝に聞いてんだよ」
美波、萎縮する
霞勝「(鼓滝を見て)鼓滝、どうなんだ?」
沙良「永治!落ち着き!鼓滝は──」
霞勝「(大声で)俺ァ鼓滝に聞いてるっつてんだ!!」
雷が運動場に落ちる
○同・教室(昼)
生徒達、自分の頭を押さえる
生徒達「うわぁ!」
畑山「あっぶねぇ!」
男子生徒B「運動場に落ちたぞ!」
○同・屋上(昼)
霞勝の周りにスパークが発生している
霞勝、鼓滝を睨んでいる
鼓滝「(怯えた表情で)あ······あの······わ······私──」
霞勝「(大声で)答えろ!!」
鼓滝「(怯えた表情で)私は······私は──」
鼓滝、泣き出す
霞勝「······」
霞勝、スパークを収め、室内に歩き出す
鼓滝の声「永治君!」
霞勝、立ち止まる
鼓滝、座って俯いている
鼓滝「(震える声で)私を······嫌いにならないで」
鼓滝、顔を上げる
霞勝「······」
霞勝、顔を背き立ち去る
階段を下りる音
鼓滝「(美波・沙良を見て)嘘つき!」
沙良「(鼓滝に寄り添い)美波!永治を追って!」
美波「分かった!」
美波、霞勝を追う
沙良「鼓滝、大丈夫よ!今度ゆっくり話そ?永治なら
きっと分かってくれるから!」
鼓滝「分かってくれるはずない!もう嫌われて······誰
の顔も見たくない!」
沙良、鼓滝を抱き寄せる
鼓滝、沙良の腕に埋もれて泣いている
○同・廊下(昼)
美波「(走りながら)ハァ、ハァ、ハァ」
美波、角を曲がり歩いている霞勝を見つける
美波の声「永治!」
美波、霞勝の前に出る
美波「永治、待って、止まって!」
霞勝「どけよ」
霞勝、美波を脇に退ける
美波「(霞勝の前に出て)待って!話を聞いて!」
霞勝「(気だるそうに)どけっつってんだろ」
霞勝、より強く美波を脇に退ける
美波「(尻もちをつき)痛っ!」
霞勝、遠ざかっていく
美波、腹を立てた顔をする
美波、霞勝の前に出る
霞勝「おい、どけって──」
美波、霞勝をビンタする
霞勝、美波を見る
美波「(涙を堪えながら)あの子の事何にも知らない
で!!」
霞勝「······」
美波「あの子がどれだけ苦しんでると思ってる
の!?」
○同・屋上(昼)
沙良、鼓滝を慰めている
鼓滝、涙を拭っている
美波の声「(大声で)あの子はあなたの事が好きで好き
で、だからこそ苦しんでるのに!」
○同・廊下(昼)
生徒達、霞勝・美波を見ている
ザワザワしている
美波の声「(大声で)あなたは鼓滝の話も聞かずに鼓滝
を突き放して!」
美波、涙が溢れている
美波「(大声で)あの子とあなたがくっつかないと私が
諦めた意味がないのよ!!」
霞勝「······」
美波、階段を指さす
美波「行きなさい!」
霞勝、指さした方向を見る
美波「自分で話聞いて謝ってきなさい!」
霞勝「(カバンを背負い直し)······るせぇよ」
霞勝、立ち去っていく
美波、すすり泣きながら涙を拭う
○同・玄関(昼)
霞勝、靴紐を結んでいる
畑山の声「いいのか?」
霞勝、声のした方向を見ると畑山が立っている
霞勝、再び靴紐を結ぶ
霞勝「······何が?」
畑山「自分で気づけよ」
畑山、立ち去る
霞勝、靴紐を結ぶのをやめる
霞勝「······」
○同・屋上(夕)
霞勝、上がってくる
霞勝、辺りを見回す
霞勝「······」
霞勝、帰ろうとする
鼓滝の声「嫌いにならないで」
霞勝、立ち止まる
× × ×
(フラッシュ)
鼓滝「(震える声で)私を······嫌いにならないで」
× × ×
霞勝「······」
× × ×
(フラッシュ)
美波「あの子はあなたの事が好きで好きで、だからこ
そ苦しんでるのに!」
× × ×
霞勝「俺だって──」
霞勝、立ち去る
○神崎町(夜)
鼓滝、暗い顔をして歩いている
龍一郎の声「辛そうだな」
鼓滝、塀の上に座る龍一郎を見つける
鼓滝「ほっといて」
龍一郎「そいつは無理な相談だ」
龍一郎、塀から飛び降りる
龍一郎「もう少し、辛くなってもらおうか」
龍一郎、右手を鼓滝に向ける
鼓滝、暗い顔をしている
龍一郎、ニヤァと笑う
暗転
○霞勝家・全景(夜)
○同・台所(夜)
霞勝、食器を洗っている
インターホンが鳴る
○同・玄関(夜)
霞勝「はい」
美波の声「私、開けて」
霞勝「何の用だ?」
美波の声「開けて」
霞勝「用件を言え」
美波の声「(大声で)早く開けなさい!」
霞勝「······」
霞勝、ドアを開ける
美波、涙を堪えている
霞勝「······何の用だ?」
美波「貴方、鼓滝の所に行ってないでしょ」
霞勝「ああ」
美波「何で行かないの!?」
霞勝「(面倒くさそうに)行っても居なかったんだよ」
美波「(大声で)それだけで!?たったそれだけで諦め
るの!?鼓滝が好きなんじゃないの!?あなたの鼓
滝が好きな気持ちはそれっぽっちなの!?惚れた女なら死
ぬまで追い続けなさい!!」
美波、涙が溢れている
美波、涙を拭う
霞勝「······俺だってあいつが好きだ、けどあいつは俺
の両親を殺した、そんな女を好きになっていいの
か?」
美波「鼓滝は殺してないわ、誰1人として」
霞勝「は?」
美波「ここから先は鼓滝に聞きなさい」
霞勝「······」
美波「ほら、早く行きなさい」
美波、振り向き歩き出す
霞勝「美波」
美波「(振り向き)ん?」
霞勝「······お前、前俺に言ったよな?」
× × ×
(フラッシュ)
美波「このまま壁作ってる気?」
× × ×
美波「言ったわね」
× × ×
(フラッシュ)
霞勝、真っ暗な空間で1人佇んでいる
周りに壁がある
霞勝の声「俺は壁作って誰も近づけたくないのに
──」
霞勝、振り向く
霞勝の声「鼓滝だけは──」
鼓滝、笑顔で立っている
霞勝の声「壁なんて無かったみたいにいつの間にか入
ってきてるんだ」
霞勝・鼓滝、見つめ合っている
× × ×
霞勝、俯いている
美波「それは──」
× × ×
(フラッシュ)
鼓滝、背中を向けている
美波の声「あなたが──」
壁にヒビが入る
鼓滝、振り向く
美波の声「あの子に対してだけは──」
壁が崩壊する
鼓滝、崩壊した壁の先に霞勝を見つける
美波の声「自分で壁を壊してるからよ」
鼓滝、笑顔で霞勝の元へ走り出す
霞勝、鼓滝を抱きしめる
抱きしめた瞬間、真っ暗な空間から地平線まで続く花畑に変わる
霞勝・鼓滝、額を合わせ笑い合う
× × ×
霞勝「やっぱり、そうなのか」
美波「ええ、絶対にそうよ」
霞勝、美波を見る
霞勝「ありがとう、美波。俺やっぱりあいつが好き
だ」
霞勝、上着を着る
霞勝「今から鼓滝の家に行って事情を聞いてみる」
美波「家知ってるの?」
霞勝、門扉へ向かう
霞勝「1回行ったことがあるんだ」
門扉が開く
沙良、息切れして膝に手をついている
美波「沙良!何してるの?」
沙良「鼓滝······知らへん?」
霞勝「今から家に行くところだが?」
沙良「(顔を上げ)家に電話しても居らへん!」
霞勝「なに?」
沙良「今日の事で心配やったから電話したら鼓滝のお
母さんに鼓滝はおらんって言われたんや!」
霞勝、美波を見る
霞勝、頷く
美波、頷く
沙良、息切れしている
美波の声「沙良!」
美波、門扉に向かって歩いている
美波「鼓滝を探しに行くわよ!」
沙良「言うと思ったで!」
美波「(霞勝を指さし)永治、あなたは工場をお願い!
多分、そこにいる。けど確証がないから私達は別の
ところから探す!場所分かる?」
霞勝「聞くまでもないだろ」
美波「じゃあお願い!」
霞勝、走り出す
美波「沙良、行くわよ!」
沙良「おう!」
美波・沙良、霞勝と逆方向に走り出す
霞勝、走っている
○神崎高校・運動場(夜)
美波「鼓滝ー!」
沙良「どこやー!おんなら返事せー!」
美波「くっ!ここもいないわね!向こうを探しまし
ょ!」
美波・沙良、走り出す
○神崎町(夜)
霞勝、走っている
携帯が鳴る
霞勝、立ち止まり携帯に出る
霞勝「誰だ?」
遠峰の声「俺だよ」
霞勝「テメー!このタイミングでテメーから電話って
事は──」
遠峰の声「はっ、察しがいいな、分かったならお前の
両親が殺された場所に来い」
電話が切れる
霞勝「くそ!」
霞勝、走り出す
○同・工場(夜)
遠峰、電話を切る
遠峰「(振り向き)来るってよ」
鼓滝、椅子に縛られている
遠峰「(歩きながら)永治は親のこと知ってんのか?」
鼓滝「(俯き)······私を殺して」
遠峰、鼓滝の横で立ち止まる
遠峰「さっきからずっとそれだな〜」
鼓滝「······私を殺して」
遠峰「(鼓滝を見下しながら)死ぬほど辛いよなぁ、好
きな男の両親を殺しちまったんだからなぁ、まあ、
お前には──」
遠峰「(耳元で)もっと苦しんでもらうからな」
遠峰、高笑いしている
鼓滝M「(暗い顔で)······そうだ、私には、死でさえ、軽
すぎる。なら、このまま、永治君からの助けを待つ
······?」
× × ×
(フラッシュ)
霞勝、血塗れで死んでいる
× × ×
鼓滝M「(涙が溢れ)嫌だ、また私のせいで誰か死んじゃ
う······永治君が死ぬ事になる──」
遠峰、周囲を見張っている
鼓滝M「そうだ······死ねばいいんだ······私が──」
鼓滝、体から黒紫の霧を吹き出す
遠峰「(振り向き)!?」
鼓滝を縛っていた縄が切れていく
鼓滝、立ち上がる
鼓滝「(上を見て)私を殺して!「女王」!!」
黒紫の霧が剣を形取る
剣が天井へと刺さっていく
遠峰「何をする気だ!?」
天井が瓦礫となり鼓滝に向かって落ちてくる
鼓滝M「ごめんね、永治君、ワガママな私を許して」
鼓滝、目を閉じる
暗転
○同(夜)
霞勝、走りながら工場の崩落を目の当たりにする
霞勝「鼓滝ィ!」
○同・工場(夜)
鼓滝、目を開く
瓦礫が鼓滝の周りに落ちている
鼓滝、遠峰に目をやる
遠峰、自分の剣を握っている
遠峰「(鼓滝を睨みながら)死なせねぇぞ」
鼓滝「······邪魔」
太い触手が飛んでくる
遠峰「(受け流し)オラァ!」
黒い大きい剣が飛んでくる
剣が遠峰の腹に刺さる
遠峰「ぐお!」
遠峰、壁まで吹き飛ばされる
遠峰の腹に剣が刺さっている
遠峰「ぐ!」
鼓滝「(遠峰を見て)もう死ぬの邪魔するなよ?」
鼓滝、天井を見る
鼓滝「あれくらいあれば人間なんて簡単に下敷きにな
るよね?」
鼓滝、剣を霧で形成し上に向ける
鼓滝「あなたを好きでよかった」
剣が天井に突き刺さり崩れ始める
鼓滝「さよなら、永治君」
瓦礫が鼓滝の目前に迫る
ドアを突き破り槍が飛んでくる
鼓滝「!?」
槍が瓦礫に命中し瓦礫が粉砕される
パラパラ細かい瓦礫が降っている
遠峰「(腹を押さえながら)やっと来たか」
鼓滝、ドアを見ると砂煙の中に人影が見える
砂煙が晴れると霞勝が立っている
鼓滝「!?」
霞勝「絶対に死なせねぇぞ、鼓滝」
鼓滝「······永治君」
霞勝「まさか、「女王」だったとは夢にも思わなかっ
たが──」
鼓滝の霧が体に吸い込まれるように消えていく
霞勝、立ち止まる
霞勝「お前には聞きたい事が山ほどあるんだ」
鼓滝「(怯えながら)な、なに?」
霞勝「お前、俺の親を殺したのか?」
鼓滝「(怯えながら)い、いや─」
× × ×
(フラッシュ)
霞勝「(大声で)答えろ!!」
× × ×
鼓滝「(怯えながら)わ、私は──」
霞勝の声「ゆっくりでいい」
鼓滝「え?」
霞勝「(微笑み)もう怒ったりしない、ゆっくり話して
くれていい」
鼓滝「う、うん!」
遠峰M「(鼓滝を見ながら)······さっきまでの凶暴な鼓滝
が、居ない」
遠峰、霞勝を見る
霞勝、微笑んでいる
遠峰M「こいつの影響か、今の鼓滝は、まるで──」
鼓滝、頬を赤く染め時折涙を流しながら身振り手振りで話している
遠峰M「好きな人を前にして緊張している、1人の女
だ」
霞勝「······そういう事か、お前守ろうとしてくれたん
だな」
鼓滝「う、うん、けど守れなかった」
鼓滝、泣きながら涙を拭う
霞勝「いいんだ、お前は俺の両親を守ろうとしてくれ
た、それだけで十分だ」
鼓滝、泣き続けている
霞勝「すまなかった」
霞勝「(頭を下げ)お前の話も聞かずに突き放してしま
った」
鼓滝「私こそ·····ごめんなさい」
剣が飛んでくる
霞勝の右肩に剣が刺さる
霞勝「ぐあ!」
霞勝、壁に飛ばされ身動きが取れなくなる
鼓滝「永治君!」
霞勝「(肩を押さえながら)クソ!」
遠峰「ざまあねぇなぁ!霞勝!」
霞勝「くっ!」
遠峰「テメーさえ殺せれば俺の勝ちだぁ!」
遠峰、剣を握る
遠峰、自分を覆っている影に気づく
遠峰「(振り向き)ん?」
鼓滝、巨大な霧を発生させている
遠峰「!?」
鼓滝「私の旦那さんに手を出さないで!!」
霧が大量の剣へと変わっていく
大量の剣が遠峰に向かっていく
遠峰「(剣を避けながら)く!」
霞勝、大量の剣が遠峰を追い詰めていく様を見ている
霞勝「これが······「女王」か」
遠峰、押され始める
遠峰「くっ!こうなったら!テメーの旦那も道連れだ
ぁ!」
遠峰、霞勝に剣を投げる
剣、霞勝に向かっていく
鼓滝「ダメ!」
霞勝、左腕で身構える
霞勝の前に黒紫の霧が発生し剣を防ぐ
霞勝、鼓滝を見る
鼓滝、右手を向けている
霞勝「鼓滝!」
鼓滝の後ろに龍一郎が飛び上がっている
龍一郎「クソがァ!」
龍一郎、剣をふりかぶる
鼓滝「!?」
雷が走る
右腕が宙を舞っている
霞勝、鼓滝を正面から受け止め鼓滝越しに龍一郎を剣もろとも雷で吹き飛ばす
霞勝、右腕がちぎれている
龍一郎「な、なに──」
龍一郎、窓を破り工場の外に放り出される
龍一郎「く、くそ──」
龍一郎、その場から立ち去る
鼓滝「(慌てながら)大変!病院行かなきゃ!」
霞勝「ああ······そうだな」
鼓滝、スカートを破る
鼓滝、破ったスカートを霞勝の右肩に巻き付けている
霞勝「(鼓滝を見ながら)······」
崩れた天井から月光が霞勝・鼓滝を照らしている
鼓滝「(スカートを巻き付け)これで一応の処置は出来
た!」
霞勝「(鼓滝を見ながら)······」
鼓滝「(自信なさげに)······と思う」
霞勝、鼓滝をじーっと見ている
鼓滝「(頬が赤くなり)······な、なに?」
鼓滝、髪を耳にかける
霞勝、左腕で鼓滝を覆うように抱きしめる
鼓滝「!」
霞勝「俺の隣にずっと居てくれないか?友達ではなく
恋人として」
鼓滝、霞勝の胸に顔を埋めている
鼓滝「(顔を赤くして微笑み)······はい、いつまでも」
鼓滝、霞勝を強く抱き締める
鼓滝、霞勝の顔を見る
鼓滝「病院行こ?」
霞勝「フッ、そうだな」
○同・工場外(夜)
霞勝、鼓滝の肩を借りながら出てくる
美波・沙良、待っていたかのように立っている
美波「(腕を組み)もう心配いらないわね」
霞勝「ああ、お前のおかげだよ」
沙良「はよ、病院行かな!死んでまうで!」
鼓滝「うん!」
月が出ている
沙良の声「何、嬉しそうにしてんねん」
鼓滝の声「な〜にも〜」
美波の声「愛しの旦那様の為に早く行きましょ?」
鼓滝の声「うん!」
○エンディング
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