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永遠のイージス  作者: フルマイナス
12/13

12話「復讐の別れ道」

遅くなりました!よろしくお願いします!

 登場人物

 霞勝(かがち) (とおる)(8)(17)

 天童(てんどう) 一葉(かずは)(17)

 中田(なかた) 蒼海(そうみ)(17)

 阿国(おくに) 優花里(ゆかり)(17)

 天童(てんどう) 美波(みなみ)(39)

 天童(てんどう) 剣司(けんじ)(16)

 八坂(やさか) 夜宵(やよい)(8)(17)

 佐久間(さくま) 恋夜(れんや)(8)(17)

 獅堂(しどう) 皇大郎(こうたろう)(17)

 土方(ひじかた) 侍楼(じろう)(47)


 山瀬

 佐伯

 田坂

 警官達


○天童家・全景(夜)


○同・リビング(夜)

 天童一葉(7)、椅子に座っている

 置き手紙に仕事で遅くなる、ごめんと書かれている


一葉「・・・」


○オープニング


○神崎高校・教室(昼)


阿国優花里(17)「ねえ、透」


 霞勝透(17)、ノートを書いている


透「ん?どうした?優花里」

優花里「今夜、空いてる?」

透「なんで?」


 天童一葉(17)、廊下から覗いている


一葉M「ユカちゃん、何してるんだろ?何か話してる

 けど」

一葉「(歩き出し)ねえ、ユカ・・・」

優花里「今夜付き合って?」

一葉「(立ち止まり)え?」

一葉M「(廊下に戻り)え?なんで?ユカちゃん?まさ

 か、透が好きなの?・・・やめて、とらないで、私

 の、透・・・!!」


 一葉、涙ぐんでいる


透「ああ、いいぞ」

一葉M「な、なんでOKするの?私は、透と付き合って

 る訳じゃないけど、それでも・・・それでも、透が

 好きなのに!!」

一葉M「私じゃ、ダメなの?」

中田蒼海(17)「(裏声で)ユカちゃん、緋炉鬼君がいるん

 だよ?そっちの方がいいの?燃えるの?「炎斧」だ

 けに?」

一葉「って!何してるの!?」

中田「いや、気を紛らわせようと」

一葉「しなくていい!あっち行って!」


 一葉、透を見ている


優花里「何時まで暇?」

透「今夜はずっと暇だな」


 一葉、透・優花里を見ている


中田「気になるなら、聞いてみたら?」


 一葉、歩いている


中田「おっ!・・・恋する乙女は行動力あるね〜」

優花里「ならずっと付き合ってもらうわよ」


 一葉、歩いている


透「いいぞ」


 一葉、透に抱きつく


透「ん?」

優花里「あら」

透「一葉、どうした?」


 一葉、肩が震えている


透「泣いてるのか?何かされたか?」


 透、廊下を睨んでいる

 生徒達、ギョッとなり、立ち去っていく


中田「(手を挙げ)神に誓って、俺は何もしてません」

透「(背中を擦りながら)一葉?」

一葉「・・・」

透「・・・仕方ねえ。優花里、放課後また来てくれ。

 そこで話をしよう」

優花里「分かった・・・けど」

透「(立ち上がろうとし)一葉、行くぞ。何があったか

 教えてくれ」

一葉「・・・らないでェ」

透「なんて?」

一葉「(嗚咽しながら)透を、とらないでェ」

優花里「え?」

一葉「私の、大切な人なのォ」

優花里「え?」

一葉「私に生き方を教えてくれた、大切な人なのォ

 ・・・」

優花里「一葉、ちょっとこっち来て」

一葉「(腕に力を入れて)嫌だァ!離れたくない!」

透「(首が締まりながら)く、苦しい」

優花里「一葉、違うのよ。誤解よ」

一葉「(手を離し)え?」

透「(首を触りながら)ゲホッ!ゲホッ!」


 透、首を触りながら優花里に連れられる一葉を見ている


中田「おっぱいの感触?」


 中田を殴っている透


○同・トイレ(昼)


一葉「(涙を拭いながら)え?誕生日?」

優花里「そう。明日、ヒロが誕生日なの。そのプレゼ

 ント選びに、透に付き合ってもらおうと思ってただ

 け」

一葉「じゃ、じゃあ、透を、とらない?」

優花里「当たり前でしょ、私そんな尻軽じゃないわ

 よ。ヒロもいるのに」

一葉「(頭を下げ)ご、ごめん!ユカちゃん!変な勘違

 いしちゃって!!」

優花里「いいわよ、気にしないで」

一葉「(首を横に振り)ううん!ホントにごめん!!」

優花里M「(一葉を擦りながら)フー、世話が焼ける」


○神崎町・住宅街(夕)

 カラスが鳴いている


一葉「(歩きながら)ハァ、恥ずかしいことしちゃった。

 絶対重いって思われてるよね・・・今度、謝ろ」


○同・ビル街(夕)

 透、歩いている

 優花里、警官に止められている


優花里「いやだから、高校生ですって!」

警官A「嘘を言うな!どう見ても中学生だろ!」

優花里「いやだから、前からこの身長です!」

警官A「学生証無いんでしょ?」

優花里「たまたま無いんです!」

透「優花里、どうした?」

優花里「ちょうど良かった、説明して!」

透「説明?なにを?」

警官A「君、この子の知り合い?」

透「そうすけど」

優花里「透!説明して!私の事!」

透「あ〜、なるほど。阿国優花里17歳。神崎高校2年3

 組5番。身長が小さいのは胸にしか栄養が──」


 透、殴られ倒れている


優花里「そこまで言わんでいい」

透「すみませんでした」

優花里「(警官を見て)まだ何か?」

警官A「い、いいえ!お手数かけました!」


 パトカー、走り去っていく

 透・優花里、歩いている


透「(頬を押さえながら)痛てぇな〜。殴るこたァなか

 ったんじゃねえの?」

優花里「あんたがバカだから悪いのよ」

透「で?プレゼントって何買うんだ?とっとと決めて

 くれ、俺は眠い」

優花里「何言ってんの?あなたも選ぶのよ」

透「え〜?あいつの好きなものなんて分かんねえよ。

 お前の方が知ってんだろ?」

優花里「なら、聞いてみたら?」

透「そんな野暮なことするかよ」

優花里「なら自分で考えなさい」


 遠ざかっていく透・優花里


○同・宝石店(夜)

 透・優花里、品物を見ている

 透、目が輝く優花里を冷たい目で見ている


優花里「(透に気づき)か、買うわけないでしょ〜」


○同・ゲーセン(夜)

 優花里、クレーンゲームをしている

 アームがぬいぐるみを掴んで上昇しているがぬいぐるみを落とす


優花里「なんでよー!」


 透、黒紫の霧を触手に変え、クレーンゲームの中に入れ、ぬいぐるみを取る


優花里「(ぬいぐるみを取り)便利ね」

透「だろ」


○同・住宅街(夜)

 透、両手に荷物を持って歩いている


透「ったく。これなら緋炉鬼も呼んでくればよかった

 じゃねえか」

優花里「(歩きながら)そういうわけにもいかないでし

 ょ?」

透「代わりに腕が千切れそうなんだけど。要らねえも

 んばっか買いやがって」

優花里「いいじゃない、セールしてたから」

透「そんなんだから緋炉鬼が」

優花里「何か言った?」

透「・・・いいや、無粋な輩が集まってきてるって言

 ったんだよ」


 透、立ち止まる


優花里「(振り向き)あらホント」


 骸霊A・骸霊B、立っている


優花里「私に任せてみる?」

透「(振り向き)いや、俺もやろう。緋炉鬼にどやされ

 る」


 透、荷物を置く


優花里「遠慮しなくていいのよ?負けはしないから」


 優花里、炎の剣を右手に持つ


透「へぇ?俺にものの数秒で負けた奴が言うじゃねえ

 か」


 透、体から黒紫の霧を出し、槍に変え左手に持つ

 走り出す骸霊A・骸霊B


○天童家・全景(朝)


○同・リビング(朝)


一葉「(ドアを開け)おはよ〜」

天童美波(39)「おはよ〜。一葉、今日ね、夜空けとき

 なさい」

一葉「え?なんで?」

美波「秘密」


 首を傾げている一葉


○神崎高校・空手場(朝)


一葉「(ドアを開け)おはようございま〜す」

山瀬「おざーす!姉御ォ!」

一葉「姉御だなんて、やめてよ。透は?」

山瀬「急用が出来たって言って朝練だけやって帰っ

 た」

一葉「あ、そうなんだ」

山瀬「なんだ?気になる?」

一葉「い、いや」

山瀬「隠すなって〜。いいぜ、行ってこいよ。顧問に

 は言っとくから」

一葉「で、でも」

山瀬「気になってミスされたら仕事が増える、行って

 こい」

一葉「い、いや、ホントに!大丈夫だから!」

山瀬「・・・そうか、なら今日もよろしくな。マネー

 ジャー」

一葉「う、うん」


○天童家・リビング(昼)

 天童美波(39)、椅子に座って本を読んでいる


一葉の声「ただいま〜」

美波「おかえり〜。お昼ごはんどうする?」

一葉の声「もう食べた」

美波「シャワーは?」

一葉の声「あとで入る」

美波「は〜い」


 美波、立ち上がり電話をかける


美波「ねえ、何かあったの?」

透の声「何がすか?」


○霞勝家・全景(昼)


美波の声「一葉が様子おかしいんだけど」


○同・台所(昼)

 シンクに調理用具が散らかっている


透「一葉ですか?今日会ってませんよ?」

美波の声「部活じゃなかったの?」

透「いえ、ケーキ作ってたので」

美波の声「もう作ってるの?」

透「喜んでもらいたいので」

美波の声「ありがと、分かったわ。それじゃあ今夜よ

 ろしくね」

透「一葉を家から出しときゃいいんですよね?」

美波の声「そうそう。よろしくね」

透「そんじゃ、もう一仕事か」


○天童家・リビング(昼)

 美波、電話を切る


天童剣司(16)「買い出しに行ってくる」

美波「分かったわ」


○同・一葉の部屋(昼)

 一葉、ベッドにうつ伏せになっている


一葉「なんで、なんで、透居ないの?・・・会いたい

 よ、透」


 ドアをノックする音


一葉「・・・」

美波の声「一葉?」

一葉「・・・なに?」

美波の声「大丈夫なの?」

一葉「うん、大丈夫」

美波「そう」

一葉「・・・」

美波「少し出かけてくるわね、鍵はキッチンに置いて

 あるから」

一葉「・・・うん」


 枕に顔を埋める一葉


 × × ×

(フラッシュ)

○同・リビング(夜)

 一葉(7)、椅子に座り、暗い顔をしている


 × × ×


○霞勝家・居間(夕)

 インターホンが鳴る


 透「ん?」


○同・玄関(夕)

 透、ドアを開ける

 警官達、立っている


佐伯「霞勝透、だな?」

透「そうだが?」

佐伯「(バッジをかざし)警視庁の佐伯だ」

透「何の御用で?」

佐伯「話がある。一緒に来てもらおう」

透「ここで言え」

佐伯「ダメだ、署まで来てもらう!」


 佐伯、透の手を掴む

 透、警官達を倒していく


佐伯「お前!公務執行妨害だぞ!」

透「無実の人間無理やり捕まえようとしたら、そりゃ

 そうなるぜ。用件を言え、何の用だ?」

佐伯「(腹を押えながら)くっ!」

佐伯「(立ち上がり)君を逮捕するという訳では無い、

 警視総監の命令だ」

透「警視総監・・・?」

佐伯「思い当たる節があるんじゃないか?」

透「・・・」


○神崎町・ビル街(夜)

 パトカーが走っている


透「・・・」

佐伯「総監は、命を狙われている。何か知っている

 か?」

透「・・・心当たりは」

佐伯「あの人は、何かを得るには何かを犠牲にしなけ

 ればならないと考えている」

透「・・・」

佐伯「ただ、得ようとしたものより、犠牲にしたもの

 が多い、多すぎるんだ」

透「俺が呼ばれたのは、敵も俺自身だからだ」

佐伯「なに?」

透「その敵が、ある人を大事に想い、俺と同じことを

 考えた。だが俺には止めてくれた人がいた。そし

 て、その人は敵を止められなかったから、俺が止め

 る」

佐伯「・・・すまない、一回り年下の人間に国を守る

 トップの命を任せることになる。我々もすまなかっ

 た、少々手荒すぎたな」

透「意外と歳いってるんだな」

佐伯「これでもアラサーだ」


○警視庁・全景(夜)

 パトカーが警視庁へ入っていく


○天童家・一葉の部屋(夜)

 一葉、寝ている


美波「(一葉を揺らしながら)一葉・・・一葉!」

一葉「(目を擦りながら)ん・・・お母さん?」

美波「どうしたの?昼寝なんてらしくない」

一葉「(ベッドから出て)いや、大丈夫」


 一葉、歩いていく


美波「(一葉の手を取り)大丈夫じゃないでしょ?目赤

 いわよ」

一葉「・・・最近、透に避けられてる気がして、怖い

 の。他人に取られるのが怖くて、思わず抱きついた

 りして。だから、嫌われたんじゃないかって」

美波「(一葉を抱きしめ)まあ。でもね、一葉。それ

 は、事情があるのよ。避けてるんじゃなくて、そ、

 その、なんというか」

一葉「また、秘密なの?」

美波「(ため息をつき)・・・ごめん、透君」

一葉「え?」

美波「実はね、今日、あなたの誕生日でしょ?」

一葉「え?・・・誕・・・生・・・・日?」

美波「そう。一葉、私達が祝ってこなかったばっかり

 に自分の誕生日忘れちゃってたんだよね?ごめんね

 ・・・今年こそ、今年こそは思ってたんだけど。け

 ど、今年はちゃんと祝えるよ」

一葉「ホ、ホント?」

美波「(頷き)うん。祝わせて」

一葉「うん・・・うん。ありがとう!」


○同・警視総監の部屋(夜)

 ノックの音が鳴る


土方の声「入れ」

佐伯「(入ってきて)失礼します、霞勝透を連れてきまし

 た」


 透、入ってくる

 ドアが閉まる


土方侍楼(47)「よく来てくれた、霞勝透君」


 土方、椅子に座っている


透「会うのは、初めてだな」

土方「ああ、名前だけは知っていたがね。空手の有段

 者らしいじゃないか」

透「まあな」

土方「夜宵は、元気かね?」

透「(缶を開け)元気にやってるよ、神崎に転校してきたぞ。あんたの差し金か?」


 透、ジュースを飲んでいる


土方「いや?恐らく、養父の仕業だろう」

透「中学では別々だった。そこで京都にでも送られた

 か?あの不自然な京都弁は後天性だな」

土方「恐らく。「送られた」というより、「戻った」

 の方が適切だろうな。私も京都府民だからな」

透「・・・なんで夜宵を養子に出した?」

土方「国を守る為だ。それが私の使命だ」

透「夜宵はアンタが襲撃されることを知ってた。とい

 うことは、夜宵に教えたのは向こうと繋がってる人

 間、まさかと思うが」

土方「夜宵は、遠峰という男に引き取られた」

透「くっ・・・やっぱりか」

土方「知ってるだろ?遠峰龍一郎、あの男に脅され

 た。国か、娘か。私は、国を選んだ」

透「(缶を握りつぶし)自分の娘より、こんな国を選ん

 だのか?」

土方「この国の人口を知っているかね?1億2500万人

 だそうだ。この国に住まう民と我が娘・・・迷った

 よ、何よりも」

透「この国の連中は、俺の大切な人を傷つけた、2度も

 だ。そんな奴らを選んだあんたを許せるかと聞かれ

 たら、あんたが何をしても、許さねえ」

土方「・・・」

透「遠峰という男が何者か知ってるのか?」

土方「神器だろ?知っている。だから、夜宵を君のい

 る学校へ送った」

透「送った?」

土方「そうだ。夜宵には悪かったが、それしか方法が

 なかった」


○(回想)校庭(昼)

 八坂夜宵(8)、泣いている


透(8)「泣かないで〜。ほ、ほら、もう居なくなったか

 ら」

佐久間恋夜(8)「ケッ!ダセー奴らだ!」


 夜宵、泣いている


透「お、おい恋夜。どうにかしろよ!」

佐久間「そんなこと言ったって分かるか!!」


 夜宵、泣いている

 透・恋夜、オロオロしている


佐久間「(夜宵を抱きしめ)も、もう、だ、大丈夫だか

 ら、な、泣かないで?」

夜宵「(泣き止み)・・・う、うん」

透「おぉ!」


(回想おわり)


○警視庁・警視総監の部屋(夜)


透(17)「わざと、やったのか?」

土方「・・・そうだ」


 机を殴り壊す透


○同・廊下(夜)

 佐伯、警官達を抑えている


佐伯「総監の命令を忘れたか?誰も入れるなと言われ

 たはずだ」

警官「しかし!」

佐伯「命令を守れ」


○同・警視総監の部屋(夜)


土方「(机を見ながら)恐ろしいな、能力者は」

透「このクズが!!娘だろうが!!」

土方「そうだ。そうやって守ろうとした。この方法し

 かなかったんだ。既に遠峰の手に渡っていた娘を守

 るには」

透「(拳を強く握り)テメー・・・自分が何言ってるの

 か分かってんのかよ。娘を守る為にいじめただぁ?

 こんな国、とっとと滅ぼせばいいだろうが!」

土方「そんな軽く決断できれば苦労はせん!君はまだ

 若い!だからそんなことが言える!」

透「・・・なら、あいつを取り返そうとはしなかった

 のか?」

土方「もちろん、迎えに行った。だが、夜宵は遠峰に

 デタラメを吹き込まれ、私を敵と思っている」

透「なんだと?」

土方「(頭を下げ)頼む、娘を取り返したい。大事な娘

 なんだ」

透「・・・それは、俺にはできん。あんたの宿命だ」

土方「私は、どうすればいい・・・?」

透「・・・もうすぐ、ここに1人の男が来る。そいつ

 は、俺自身だ。だが、俺みたいに理性があると思わ

 ない方がいい。あいつは止まらんぞ」


 透、ドアへ向かう


土方「もし」


 透、立ち止まる


土方「(夜景を見ながら)私が夜宵を、止められなかっ

 たら、夜宵を頼む」

透「・・・俺ばっかりに期待するんじゃねえよ」


 透、ドアを開け出ていく


土方「すまない透君。君は、死んでくれ」


○警視庁前(夜)

 透、出てくる


夜宵の声「透君!」


 八坂夜宵(17)、走ってきている


透「ああ、夜宵」

夜宵「お父さんは?大丈夫やった?」

透「ああ、大丈夫だ。警告はしてきた。それと、俺に

 嘘をついてないか?」

夜宵「嘘?するはずないやん!」

透「・・・分かった。疑って悪かった」

夜宵「ええよ。・・・恋夜は?」

透「あいつが殺したい理由も分かる気がする。あんな

 親父なら俺でも腹が立つ」

夜宵「やめてよ、やめてよ!ウチを守ろうとせんかっ

 たあんな父親でも、たった1人の家族なんどす!!」

透「だが」

夜宵「ええねん!ウチは復讐なんて望んでない!!」

透「(拳を握りしめ)・・・なんで、なんで許せ

 る・・・?あいつは、お前を1度捨てた。迎えに行っ

 たと言っても1度捨てたことに変わりはない。なんで

 ──」


 × × ×

(フラッシュ)

○霞勝家・玄関(夜)

 霞勝永治(30)、出ていく

 透(8)、見送っている

 ドアが閉まる


透の声「なんで許せる・・・?」


 × × ×


○警視庁前(夜)


透「(大声で)自分を捨てた親を!!」

夜宵「それは、守りたいものがあったからやない?」

透「!?」

夜宵「例え誰かに恨まれても、守りたいものの為な

 ら、平気でそれを受け入れる。それが、ウチのお父

 さんにもあるんやと思う」

透「(拳を開き)・・・分かった」

夜宵「でも、恋夜は──」

透「恋夜(あいつ)は俺が止める。必ず、お前の、俺達の

 もとに連れ帰る。だから、待っててくれ」

夜宵「・・・うん、待っとるで。透君」


 透、歩いていく


夜宵「1つ、言いたいことあるんや!」


 透、立ち止まる


夜宵「ウチの親が誰か聞いたやろ?」

透「ああ」

夜宵「恋夜の親とおんなじ男なんどす」


 拳を強く握り歩いていく透


○天童家・全景(夜)

 インターホンが鳴る


美波の声「一葉、出て〜」


○同・廊下(夜)


一葉「は〜い」


○同・玄関(夜)

 一葉、ドアを開けると透が立っている


一葉「透?」

透「よっ!」


 一葉、少し喜んだ後に俯く


透「おい、どうした?」

一葉「透・・・透なの?」

透「逆に誰だと思う?」

一葉「(涙ぐみ)どこに行ってたの?部活でも見てない

 から、心配で──」

透「ちょ、ちょっと、買い物にな。お前こそどうし

 た?最近変だって周りから聞いてるぞ?」

一葉「ううん、なんでもないの。ちょっと心配性なだ

 け」

透「そっか。なんかあるなら言えよ?」

一葉「あと──」

透「ん?」

一葉「昨日、急に、その・・・」

透「(首を傾げ)どうした?」

一葉「(服を掴んで)そ、その・・・急に、抱きついち

 ゃって、ごめん」


 一葉、頭を下げている


透「ずっと、考えてたのか?」

一葉「うん。ごめん」

透「まあ、驚きはしたし、俺に、その、お前があんな

 事した理由は分からんが、なにかあったんだろ?話

 してくれるか?」

一葉「(震える声で)・・・ごめんなさい、話せない」

透「・・・無理をするなよ。俺も、お前が大切なんだ」


 一葉、涙がポロポロ落ちている


一葉M「ダメ!泣いたら、また透に心配かけちゃう!

 お願い!止まって!」

透「あ、やべ」

一葉「(顔を上げ)え?」

透「(一葉を見ながら)・・・バカヤロウ」

一葉「(涙を拭いながら)え?・・・あ、ああ。泣いて、

 泣いてなんか・・・!!」

透「(一葉を抱きしめ)泣くのは、悪いことじゃない。

 負けることじゃない。特に俺の前では、思いっきり

 泣いていいんだ。そう言ったろ?」

一葉「・・・ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい!

 また、心配かけちゃう!!」

透「いい。もっと、心配させてくれ」


 一葉、透の服を掴み、大声で泣いている


透「来てくれ。話したいことがあるんだ」


 透、一葉を抱えて歩いていく


美波M「(透を見ながら)似てる」


○神崎町・神楽山(夜)

 一葉、目を覚ます

 透、一葉を抱えて歩いている


一葉「あれ、透?」

透「起きたか、もう少しで着く」

一葉「(透を見て)え?どこに行くの?」

透「(立ち止まり)ここだ」


 風が吹き一葉の髪が靡いている


一葉「(驚き)キャ!」

透「(一葉を降ろし)ホラ」


 流れ星が見えている


一葉「(空を見て)うわあ!キレイ!」

透「周りからお前が変だと聞いて、何か出来ることは

 ねえかって思ってたんだ」

一葉「(透を見て)ありがとう!」


○同・全景(夜)


一葉の声「こんな場所、あったんだ」


○同・神楽山(夜)


透「俺のお気に入りの場所だ」


 一葉、笑顔で夜空を見ている


透「少しは泣き止んだか?なら・・・」


 一葉、透を見る


透「(箱を差し出し)これ」

一葉「(箱を受け取って開け)こ、これって──」

透「優花里と一緒に買い物に行った時に買ったんだ。

 というより、買わされたんだがな。お前を1番に理解

 しようと思っていたが、どうやら優花里に負けたよ

 うだ。それは、最近流行りのネックレスだそうだ。

 「これは心、これに入ってるものは大事なもの」っ

 て意味らしい。ついでに」


○(回想)同・住宅街(夜)


優花里「(ネックレスを差し出し)はいこれ」

透「なんだよ」

優花里「あなたの霧、これに入れて一葉に万が一があ

 った時、居場所が分かるようにしときなさい」

透「防犯ブザーがあるぞ」

優花里「古いわよ、ジジイ」


(回想終わり)


○同・神楽山(夜)


透「そのネックレスに俺の霧を入れといた。何かあっ

 た時は、それを頼りにお前のもとに行く。着けてみ

 ろ」

一葉「う、うん」


 一葉、ネックレスをつけようとしている


一葉「あ、あれ?よいしょ・・・あれ?」

透「どうした?」

一葉「そ、その、したことないから、出来なくて」

透「貸せ」

一葉「う、うん」

透「髪上げろ」


 透、ネックレスを一葉の首につける


透「よし、いいぞ」

一葉「(髪を下ろし)ありがとう!・・・に、似合って

 る?」

透「ああ、よく似合ってる、見てみろ」


 透、黒紫の霧を出して、鏡に変える


一葉「(鏡を見ながら)うわあ・・・・キレイ」

透「ああ、流石は俺の女王だ」


 一葉、頬が染まっている


一葉「(透を見て)でも、どうして、こん──」


 透、優しく微笑んでいる


一葉「・・・また、行っちゃうの?」

透「・・・ああ。その話をしようと思ってたんだ」


 一葉、胸の前で手を握る


透「(座り込み)前、話した恋夜っているだろ?あいつ

 が、俺の友達の親を殺そうとしてるんだ」

一葉「・・・」

透「俺はそれを止めなきゃならん。いや、止めたい。

 恋夜は敵である以前に親友だ。たった1人の親友なん

 だ」

一葉「大丈夫・・・だよね?」

透「(首を横に振り)もしかしたら、帰ってこれないか

 もしれん」

一葉「そんな事言わないで!絶対、帰ってきて!ま

 だ、教えて欲しいこと、いっぱいあるんだか

 ら!!」

透「おいおい、今日は確かに一葉の誕生日だが、欲深

 いぞ」

一葉「え、あ、ごめん・・・もしかして、このネック

 レス──」

透「そうだ。それとこれが、俺の誕生日プレゼント

 だ」


 風が吹き、透の服と一葉の髪が靡いている


一葉「(髪を耳の後ろにやり)・・・ありがとう」

透「俺は死ぬかもしれん、もし死んだらこれを渡せる

 者がいなくなる」

一葉「・・・」

透「恋夜は強敵だ。恋夜は、俺と同じ思考を持ち、同じ事をする。違ったのは、周りだった」


○(回想)高架橋下(夜)

 透、田坂を睨んでいる


透の声「昔の俺なら、何の躊躇いもなく槍を手に取っ

 た。「ムカついた」、それだけの理由で自分の心を

 満たそうとした」


(回想終わり)


○神崎町・神楽山(夜)


透「けど、お前や夜宵がいたから、俺は踏みとどまれ

 た。そんな人が周りにいなかった恋夜を夜宵は止め

 ようとした。でも止められなかった、だから俺が止

 める」

一葉「(俯いて)・・・」

透「(一葉の肩にポンッと手を置き)必ず、間に合わせ

 る。今日の12時までに恋夜を叩き直して夜宵のもと

 に返す。それまで、待っててくれないか?ケーキも

 作ってるんだ。それを取りに必ず帰ってくる」

一葉「(透を見て笑顔で)・・・うん。待ってるよ」


○下水道(夜)

 骸霊達、騒いでいる


獅堂皇大郎(17)「ホントにやんのか?」

佐久間恋夜(17)「当たり前だろ」

獅堂「お前、最近生き生きしてるな」

佐久間「そうか?まあ、やる気が滾ってるのは間違い

 ないが」

獅堂「そんなに夜宵を傷つけたあの男が憎いなら、も

 っと別にいるんじゃねえか?」

佐久間「後々、全員ぶっ殺してやるさ。夜宵を傷つけ

 た奴も、俺の邪魔をする奴も」

獅堂「(歩き出し)ま、頑張れよ。生き残っても死んで

 も夜宵にどやされるのは目に見えてるがな」


 獅堂、歩いていく


○(回想)神崎町・公園(夜)

 桜が散っている

 佐久間、散っている桜の下を歩いている


佐久間「(立ち止まり)何の用だ?」

フードの女「親父からの命令。やり残すな」

佐久間「お前はどうだ?賛成か?」

フードの女「もちろん。スッキリするからね」

佐久間「それをあいつは知ってんのか?」

フードの女「知ってるだろうね」

佐久間「なら、来るか?」

フードの女「いや、遠慮するよ。犯罪者にはなりたく

 ないからね」


(回想終わり)


○下水道(夜)


佐久間「さあ、おっぱじめようぜ」


 佐久間、骸霊の大群が騒ぐ中、不敵に笑いながら歩いていく


○エンディング

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