11話「家族と恋人」
よろしくお願いします!
登場人物
霞勝 透(17)
天童 一葉(17)
中田 蒼海(17)
神田 海生(17)
三嶋 緋炉鬼(17)
阿国 優花里(17)
安藤 沙良(39)
安藤 燈馬(41)
安藤 高彦(7)
賀陽魅 誠志郎(17)
老人
店員
男子
男A
女子B
○顎龍岳(朝)
T「京都・顎龍岳」
賀陽魅誠志郎(17)、胡座をかいて昇る朝日を見ていると老人が歩いてくる
老人「誠志郎、手紙が届いておるぞ」
賀陽魅「・・・なんて?」
老人「(鷹の足から手紙をとり)力を貸せ、だそうじ
ゃ」
賀陽魅「・・・分かった」
老人「行くのか?」
賀陽魅「(立ち上がり)行かなきゃ、一生後悔する」
歩いていく賀陽魅
○オープニング
○スーパー(昼)
阿国優花里(17)、メモを見ながらカートを押している
三嶋緋炉鬼(17)「(歩きながら)また安物かよ」
優花里「仕方ないでしょ。お金無いんだから、節約し
なきゃ」
三嶋「ブランドのバッグ買ってお金無いんだから、節
約しなきゃ」
優花里「(三嶋を見て)もう、ごめんって言ってるじゃ
ん!」
三嶋「食べ物の恨みは恐ろしいぞ。いい加減、腹減っ
て死にそうだ」
優花里「こ、今度焼肉行こ?それなら、割引券いっぱ
い持ってるから」
三嶋「(優花里を見ながら)・・・ホントだろうな」
優花里「ホントだって!」
三嶋、足に衝撃が走る
三嶋「(下を見て)ん?」
優花里、下を見ると安藤高彦(7)が転んでいる
三嶋「何してんだ?ガキ」
優花里「あ、高彦君。何してるの?」
安藤燈馬(41)「(走ってきて)すいません!目を離した隙
に!ほら、謝りなさい!」
安藤「(三嶋を指さし)お兄ちゃん!」
三嶋「人に指を指すな」
安藤「(優花里を指さし)と、お兄ちゃんの奥さん!」
優花里「(頬に手を当て)まあ、奥さんだなんて、あり
がと」
燈馬「ん?知り合い、ですか?」
三嶋「まあ、少しな」
燈馬「どういった知り合いですか?」
三嶋「あんたの妻の知り合いだ」
燈馬「あ〜、沙良の。ということは、神崎高校の生
徒?」
三嶋「ああ、そうだ」
燈馬「(三嶋を見ながら)・・・」
三嶋「なんだ?」
安藤沙良(39)「(歩きながら)燈馬〜。おっ!緋炉鬼に優
花里や〜ん!よう会うな〜」
三嶋「ああ、そうだな」
沙良「なん話しよん?」
三嶋「いや、大したことは無い」
燈馬「どこかで会いましたか?」
三嶋「ん?いや、覚えがない」
燈馬「そ、そうですか」
沙良「あれ?知っとるはずやろ」
燈馬「なんで?」
沙良、燈馬に耳打ちしている
燈馬「あ!そうだ!どこかで会ったと思ったんだ!」
沙良「そうや。忘れるとはヒドイわ〜」
燈馬「そうか、それはすまなかった」
沙良「今日はこっちで買い物なんやな。いつもは高い
所行っとるやん」
優花里「今月厳しくて」
三嶋「お前のせいでな」
優花里「もう、しつこい!そんなに言うなら、バイト
してよ!」
三嶋「家を守るという重要な仕事が」
優花里「それただのクソニート!」
沙良「緋炉鬼〜、アンタまだバイトしてないん?お金
無くなるで?」
三嶋「町からの援助金があんだろ、あれ使え」
優花里「先月無くなりました!」
三嶋「(優花里を見ながら)・・・」
優花里「な、なに?」
三嶋「(ポケットから金を出す)ホラ」
優花里「え!?どうしたの!?このお金!」
三嶋「お前が使い込むだろうから少しくすねておい
た」
優花里「私の財布勝手に見たの!?」
三嶋「見たが?」
優花里「じゃ、じゃあ、あの写真は?」
三嶋「写真?何の?」
優花里M「ヒロの寝顔というレア中のレアの写真、見
られてないなら、いいや」
三嶋、男とぶつかり、振り向くと賀陽魅が三嶋を見ている
三嶋、賀陽魅を殴る
三嶋「!」
賀陽魅、三嶋のパンチを防いでいる
賀陽魅「(防ぎ)いきなりなんだ?」
優花里「ヒロ!」
沙良「アンタ、なんしよん!?」
三嶋「こいつは敵だ」
賀陽魅「あ?何の話だ?」
沙良「緋炉鬼!手を引っ込めりぃ!」
優花里「ヒロ!」
三嶋、手を引っ込める
賀陽魅「ったく。そんなに肩痛かったかよ」
三嶋、賀陽魅を睨み、手を握りしめている
優花里「(頭を下げ)すみません!」
賀陽魅「(優花里を見て)いえ、そんなに・・・
は!?」
優花里、首を傾げる
賀陽魅「(優花里を見て)こ、これは」
優花里「え?」
賀陽魅「(優花里の手を取り)こんなに美しい方を見る
のは久しぶりだ。どうでしょう?今夜、ディナーで
も」
優花里「あ、ごめんなさい。私、彼がいて」
優花里、三嶋を指さす
賀陽魅「では、こちらの彼から承諾を得られればいい
んですね?」
三嶋、拳を握りしめる
優花里「(小声で)ヒロ!」
賀陽魅「やめてください、私は暴力は嫌いなんです。
暴力以外の解決方法はありませんか?」
三嶋「ねェよ」
賀陽魅「そこをなんとか」
三嶋「無ェっつったら、無ェ!」
優花里「・・・という訳なので、すみません」
優花里、頭を下げる
三嶋「(沙良を指さし)こっちならいいぞ」
沙良「なんでやねん!」
賀陽魅「(沙良を見て)年上はちょっと」
沙良「バカにしとんのか、ワレ!あったまきたわ、デ
ィナー行ってやろうやないかい!」
燈馬「うちの女房はアラフォーだが美人だぞ〜!」
安藤「そうだそうだ〜!あらふぉー?だけど美人だ
ぞ〜!」
賀陽魅「では、ご一緒に!」
沙良「おう!」
沙良・賀陽魅、歩いていく
優花里「(燈馬を見て)いいんですか?奥さん」
燈馬「いいんですよ。今更、嫉妬なんてしません、私
の妻ですから」
優花里「は〜、そんなセリフ言われたい」
優花里、三嶋を見ている
三嶋「・・・言わねえぞ」
○レストラン(夜)
沙良・賀陽魅、椅子に座っている
沙良「ええの?こんな高そうな場所」
賀陽魅「ええ、構いません。お金はたくさんありま
す。あ、申し遅れました、私、賀陽魅誠志郎といい
ます」
沙良「安藤沙良、教師やっとります」
賀陽魅「奇遇ですね、私も教師を目指してるんで
す!」
沙良「科目は何を?」
賀陽魅「体育です。昔から運動が得意なもので」
沙良「ウチは保健を担当しとります。少し似てるとこ
ろではあるな、ハハハ」
賀陽魅「ハハ、そうですね」
沙良「見たところ学生やな、学校はどこなん?」
賀陽魅「少し事情がありまして、学校には行ってませ
ん」
沙良「話せない事情?」
賀陽魅「ええ」
沙良「ご出身は?」
賀陽魅「生まれはこっちですが、育ちは京都の顎龍岳
です」
沙良「え!?世界遺産の!?」
賀陽魅「はい、麓の村で」
沙良「やっぱり、綺麗なん?」
賀陽魅「はい。と言っても、私は毎日のように見てま
すから、もう見慣れました」
沙良「やっぱり、地元の人はそうなんやな〜。羨まし
いわ〜」
賀陽魅「1度、見に行ってみます?」
沙良「是非!子供と仕事で忙しくて!」
賀陽魅「分かります。したい事があっても、何かが障
害となり出来ないことってありますよね」
沙良「もう大変!ウチ、高彦っていう7歳の子がおるん
やけど、甘えん坊でな〜。未だに一緒に寝とるで」
賀陽魅「・・・可愛いですね〜。あなたも美しいが」
沙良「あら、嬉しい事言うてくれはりますな〜。優花
里を口説きよった癖に〜」
賀陽魅「彼女も美人ですが、私はあなたの方が好みで
す」
沙良「あら?年上は好みじゃないんとちゃうかっ
た?」
賀陽魅「フフ、ジョークですよ」
沙良「そんだけ紳士やと、周りがほっとかないとちゃ
うん?」
賀陽魅「女性には運が無くて。先程もフラれました
し」
沙良「優花里はしょうがないで〜。なんせ、隣にいる
のがあの男やからな〜」
賀陽魅「よほど信頼しあっているんですね」
沙良「それで、戻ってきたのは、どうして?」
賀陽魅「戦友に、力を貸せと言われまして、私、これ
でも傭兵をやってましてね」
沙良「傭兵とはエラい物騒な事やっとるな〜。教師に
なるんやないん?」
賀陽魅「なりますよ、今まで人をたくさん殺してきま
したからね、逆の事をやってみようと思ったんで
す。殺すのではなく、生かし、育てる事を」
沙良「いいことや」
店員「お待たせしました。海鮮のパスタにトリュフと
ホワイトソースを添えて、でございます」
店員、料理をテーブルに置く
沙良「あら、美味そうやわ〜」
沙良、フォークをとる
賀陽魅「私は、この町に戦いに来ました」
沙良「(手を止め)何を、持っとるん?」
賀陽魅「じきに分かります。貴方より強いのは確かで
す」
沙良「なら、なんで動かへんの?窓際の席を選んだの
は狙撃させやすい為やないの?それとも景色がいい
から?」
賀陽魅「殺す気なら、スーパーで会った時にやってま
したよ。こうして、呑気に食事を食べているのは、
三嶋緋炉鬼に邪魔されたのもありますが、貴方のよ
うな美女と食卓を囲むのも悪くないと思ったからで
す」
沙良「・・・」
賀陽魅「貴方と戦うつもりはない。だが、これ以上、
手を出すなら、私は貴方を殺さなければならない。
そして、貴方の大事な息子も」
沙良「(顔が険しくなり)・・・なら、ウチは尚更戦い
から身を引く訳にはあかん。大事なものを守る為
に」
賀陽魅「・・・そうですか」
賀陽魅「(立ち上がり)では、今度は戦場で」
沙良「ああ」
賀陽魅、歩いていく
賀陽魅「(立ち止まり)あ、そうそう。私は、阿国優花
里を攫います」
沙良「(料理を食べ)ん〜!美味しいわ〜!」
賀陽魅、歩いていく
三嶋の声「俺に気づいてたか?」
三嶋、沙良の後ろに背中合わせで座っている
沙良「気づいとったな。時々、目線がウチの後ろにい
っとったからな」
三嶋「気づいてたが、無視したのはここでの戦闘を避
ける為か、しかも2対1だしな」
沙良「お互いに手を出せない事を利用してアンタにふ
っかけたようやな」
三嶋「そうみたいだな、このフロア全焼させるところ
だった」
沙良「うん、今日はありがと。ウチが出しとくわ」
三嶋「どうも」
立ち上がり、歩いていく三嶋
○神崎高校・全景(朝)
○同・廊下(朝)
三嶋、歩いている
三嶋「ん?」
中田蒼海(17)「(走りながら)あ、緋炉鬼!」
三嶋「なんだ?」
中田「助けてくれ!このままじゃ、魂食われる!」
三嶋「は?」
海生の声「そうちゃーん!」
中田「やべ!」
中田、三嶋の後ろに隠れる
神田海生(17)「(立ち止まり)そうちゃん!出てきなさ
い!何もしないから!」
中田「さっきまで心肺停止させる気だったやつの言葉
を誰が信じるか!」
海生「そんな事しないから!今出てきたら許してやり
ます!」
中田「・・・」
海生「もう!緋炉鬼君、そこどいて!」
三嶋「自分の彼氏ぐらい自分で捕まえろ」
中田「誰が彼氏だ!」
海生「(顔を赤らめ)そ、そうよ!か、彼氏なんかじゃ
ない!ただの、その、友達よ!そう、友達!勘違い
しないでよね!と、とにかく、どいてったら!」
中田「(小声で)どいたら、海の底に沈めてやるから
な、鎮火させてやるからな」
海生「も〜!・・・どいたら、焼肉奢ってあげる!」
三嶋、中田を掴み、前に突き出す
三嶋「奢れよ」
海生「もっちろ〜ん!ありがと♡」
海生「(中田を引きずりながら)ほら行くよ!」
中田「(海生に引きずられながら)テメー!マジで殺す!溺死させてやっからなー!」
手を振って振り返って歩きだす三嶋
○同・教室(昼)
ガヤガヤしている
ドアが開く
沙良「(入ってきて)三嶋緋炉鬼おらへん?」
男子「いませんよー」
沙良「帰ってきたら、保健室に来るよう言っといてく
れへん?」
男子「分かりましたー」
○同・廊下(昼)
沙良「(教室から出てきて)ったく!どこ行っとんね
ん、あの赤毛!あ、ウチもか」
○同・全景(夕)
○同・校舎裏(夕)
三嶋、歩いている
女子Bの声「付き合ってください!」
三嶋「ん?」
三嶋、角から覗き込む
女子B、霞勝透(17)に頭を下げている
透「あ〜、俺そういうの分かんねぇんだ。人を好きに
なるっていうのか?」
女子B「そ、そう」
透「すまな・・・」
女子B「(振り向いて走り出し)ごめんなさい!」
女子B、壁にもたれかかっている三嶋の横を走っていき、三嶋は角から覗き込む
透「ハァ」
三嶋「断るのがつらいか?」
透「ん?いや、そういうわけじゃ・・・ただ」
三嶋「ただ?」
透「(歩きながら)好きってなんなんだろうなって」
三嶋「・・・病気らしいな。ま、頑張れよ」
透「(三嶋の横を通り過ぎ)ああ」
透、歩いていく
優花里の声「ヒロ」
三嶋「なんだ?」
○スーパー(夕)
優花里「夕飯、何がいい?」
三嶋の声「お前、なんでそこにいる?」
優花里「晩御飯のおかず買わないといけないから」
三嶋の声「そんなこたァ分かってる。 学校はどうし
た?お前、今日は蒼海と海生とゲーセン行くって言
ってなかったか?」
優花里「急用が出来たって言って、蒼海君引きずって
先帰っちゃった」
○神崎高校・校門(夕)
三嶋「まずい」
優花里の声「え?で、晩御飯何するの?」
三嶋「待て、今すぐ学校に来い」
優花里の声「え?なんで?晩御飯は?」
三嶋「コンビニで済ませる。いいから、学校に来い。
俺もそっちに行く」
優花里の声「う、うん。分かった」
走り出す三嶋
○スーパー(夕)
優花里「もう、急になによ!」
賀陽魅の声「失礼」
優花里「(振り向き)え?」
微笑んでいる賀陽魅
○神崎町・商店街(夜)
三嶋、走っている
○同・旧地下鉄(夜)
優花里「(歩きながら)こんな所に連れてきて、なんの
用?」
優花里「(振り向き)まさか、私を倒す気?」
優花里、右手に炎の剣を出す
賀陽魅「女性と戦うのは好きじゃないので。少し待っ
てください。じきに来る」
優花里「ヒロのこと?ヒロなら、呼んだらすぐにくる
わよ」
賀陽魅「いえ、その人ではありません。来るかもわか
りませんが、俺の事を知り、俺が何をするか予想出
来たならここに来るでしょう」
沙良の声「なるほど、緋炉鬼をお待ちかねと思うとっ
たが──」
沙良「(歩きながら)待っとったのはウチの方かいな」
優花里「沙良さん」
賀陽魅「ええ、貴方に忠告がてらこの2人の死に様を見
ていただきたいと思いましてね」
沙良「2人?」
賀陽魅「しかし、今は来そうにありませんね」
賀陽魅「(優花里を見て)彼女を苦しめてれば、少しは
急ぎますかねェ」
賀陽魅、左手が虹色に輝き、剣が出てくる
優花里「・・・ねえ、こんな言葉知ってる?」
賀陽魅「どういう、言葉ですか?」
優花里「(剣を構え)美しい花には棘がある」
賀陽魅「(剣を構え)ではその花、空へ散らしてみせま
しょう」
優花里・賀陽魅、剣を交え、優花里が徐々に押され始め、剣で防ぐも壁まで飛ばされる
優花里「(右肩から血が吹き出し)くっ!」
賀陽魅「(歩きながら)先程の威勢はどうしました?」
賀陽魅「(剣を優花里に向け)あなたは分かっていた、
三嶋緋炉鬼が私に敵わないことを。あなたは分かっ
ていた、あなたが私に敵わないことを。だから、せ
めて三嶋緋炉鬼が来るまで踏ん張り、2対1で私を倒
そうと。しかし、無理でしたね。あなた達が想い合
うより、私が大切な人を想う気持ちの方が強い」
賀陽魅、剣を振り上げる
沙良「(走ってきて)優花里!」
賀陽魅「じゃあな、薔薇もどき」
賀陽魅、剣を振り下ろす
優花里「ヒロ」
賀陽魅、剣を叩きつけると砂煙が起こり、晴れると優花里がいなくなっている
賀陽魅「!」
三嶋の声「おい、四流剣士」
賀陽魅、振り向くと三嶋が優花里を片手で抱えている
賀陽魅「どうやって・・・?」
三嶋「自分の頭で考えろ、そんなんだから女1人まとも
に殺せねえんだよ」
賀陽魅、眉間に皺が寄る
優花里「バカ、もう少し早く来てよ」
三嶋「お前の事だ。多少時間がかかっても、少しはも
ってくれると思ってた、礼はいいぞ」
三嶋、優花里を強く抱きしめる
優花里「信頼してくれてありがとう。けど、私も信じ
てた」
三嶋「そうじゃないと困る。せっかく助けたんだ、何
か奢ってもらわんとな」
優花里「・・・じゃあ、焼肉奢ってあげる」
三嶋「(ニヤリと笑い)・・・毎度」
優花里「それじゃあ、私は少し寝てるね」
三嶋「ああ、おやすみ」
三嶋、優花里の額にキスし、眠った優花里を地面にソッと置く
三嶋「さて、お前さっき、2対1でないとお前に敵わな
いと言ってたな?」
賀陽魅「ええ、なぜならあなた達は」
賀陽魅「(胸を指さし)ここが弱すぎる」
三嶋、炎を出し、斧を形成し手に取ると三嶋の周りの地面が溶けている
賀陽魅「心臓を移植したと聞きました。片方が眠って
いれば、もう片方に力が流れ込むと?」
三嶋「だったら、どうした?」
賀陽魅「なるほど。だが、あなた達は選択を間違え
た」
三嶋「2対1じゃねえとお前に敵わないって言いてえん
だろ?あいにく、お前なんざァ俺1人で事足りる。そ
れに、俺の大事なモンを傷つけたテメーを、俺1人で
ぶっ殺さねえと気が済まねえんでな!」
三嶋の火の勢いが増していく
賀陽魅「(剣を構え)・・・我が名は「番神」、この剣にかけて、お前の炎、打ち消してみせよう!」
賀陽魅「(走り出し)うおおおおおお!!」
三嶋・賀陽魅、互角に戦い、三嶋が賀陽魅を打ち上げ、天井を突き破る
三嶋「沙良!優花里を頼む!」
三嶋、天井の穴から抜け出していく
沙良「ったく!派手にやりすぎや!」
沙良「(優花里に駆け寄り)ええ男を持ったで、ホンマ
に」
眠る優花里を抱える沙良
○同・地下鉄(夜)
金属音が鳴り響いている
賀陽魅「(吹き飛ばされ)ぐあ!」
賀陽魅、壁に叩きつけられ尻もちをつく
三嶋「(歩きながら)そんなもんか?どこぞの阿呆が呼
んだ応援か知らんが」
賀陽魅「(顔を上げ)ぐっ!」
三嶋「(立ち止まって斧を構え)それだけ弱いと誰も守
れんぞ」
賀陽魅「(眉が動き)聞き捨てならんな」
賀陽魅「(立ち上がり)俺は、お前より、大切なものを
想う・・・」
賀陽魅「(胸を叩き)ここは強え!!」
三嶋「・・・なら」
斧の炎が勢いを増す
三嶋「お前のそこの炎と俺のここの炎、どっちが強え
か」
三嶋「(斧を賀陽魅に向け)試してやる」
賀陽魅「(片手で剣を持ち)・・・この轟音に覆われ
ろ、この光に飲み込まれろ、ギャロル・ビレッ
ト!」
剣が虹色に光っている
三嶋「(炎の防具を纏い)全て燃やし尽くせ、全が無に
還るまで、メガティア・オーグ!」
賀陽魅、剣先を三嶋に向け、風を纏いながら突撃し、三嶋は斧を地面に叩きつけ、溶解していく
賀陽魅「覚悟ォ!!」
三嶋「フン」
賀陽魅、地面が大爆発を起こし、それに巻き込まれる
○同・住宅街(夜)
地面が一瞬膨れる
男A「なんだ!?」
○同・旧地下鉄(夜)
沙良、優花里を抱え、歩いていると度々天井が揺れている
沙良「どっちが味方か分からへんわ」
優花里「ん、あれ・・・?」
沙良「起きたか、という事は緋炉鬼は勝ったんやな」
優花里「ヒロは?」
沙良「大丈夫、勝ったで」
優花里「そう・・・良かった」
○同・橋(夜)
三嶋、歩いている
賀陽魅「(ほふく前進しながら)くっ!この、俺が!」
三嶋、斧を賀陽魅の顔の横に叩きつける
賀陽魅「(仰向けになり)・・・殺せ、どうせ俺は死
ぬ」
三嶋「1つ気になる、敵であるお前が守りたいものって
なんだ?お前がそんなに熱を上げる相手がこの町に
いて、守る為に俺に戦いを挑んだ」
賀陽魅「どうでもいいだろ。守りたいと思うのに、理
由なんていらねえんだよ」
三嶋「・・・行け」
三嶋「(斧を肩に持ち上げ)お前が大切な人を想ってれ
ば、その人もお前の事を想っているだろ」
賀陽魅「・・・」
賀陽魅、歩いていく
三嶋「・・・ん?」
○同・河原(夜)
骸霊の群れ、騒いでいる
佐久間恋夜(17) 「(骸霊の群れを眺めながら)・・・最
後までヒトとして決着はつかなかったが、バケモン
として決着つけようぜ、透」
三嶋「代わりと言っちゃなんだが・・・火のバケモン
が相手してやろうか?」
暗転
○同・ビル群(夜)
三嶋、着地し歩き出す
優花里「(走ってきて)ヒロ!」
三嶋「ああ」
優花里「(立ち止まり)大丈夫?」
三嶋「ああ、平気だ」
優花里「賀陽魅は?」
三嶋「逃がした」
優花里「え?なんで?」
三嶋「あいつは、敵だと思ってたが、悪い奴じゃな
い」
優花里「また襲ってきたらどうするの?」
三嶋「その時は、今度こそ殺す」
優花里「・・・分かった」
三嶋「ああ」
三嶋「(歩き出し)・・・腹減ったな、何か食いに行く
か?」
優花里「うん、もう遅いし」
○同・焼肉屋(夜)
海生「それで私なんだ」
三嶋「(肉を食いながら)前奢ってくれるって言ってた
から」
海生「緋炉鬼君は分かるんだけど、優花里ちゃんもめ
っちゃ食うわね」
三嶋・優花里「え?」
皿が積み上がっている
三嶋「さっきまで戦ってたから」
優花里「身長伸ばしたいから」
海生「(優花里を見ながら)・・・」
優花里「ん?どうしたの?」
海生「優花里ちゃんって、背のわりに胸大きいわよ
ね」
優花里「そ、そうかな?」
海生「(机に突っ伏し)私なんてさ、全然大きくならな
くてさ、そうちゃんにバカにされてさ、周りの人は
大きいのにさ!やっぱり男は、胸が大きい子の方が
いいんだ〜!!」
優花里M「いや、身長にいく栄養が胸にいっただけな
んだけど」
三嶋「大丈夫だろ」
海生「(顔を上げ)え?」
三嶋「胸の大きさなんて、体に電気が流れたぐらい好
きなら気にしねえだろ」
海生「そ、そうなの?」
三嶋「俺は、電気走らなかったけど気にしなかった
ぞ」
優花里「なによそれ」
三嶋「なら、こうしよう。蒼海がお前より胸の大きい
優花里に告白されたとしよう。蒼海は了承すると思
うか?」
海生「うん、すると思う」
三嶋「おいおい、さっき言ったろ?体に電気が流れた
ぐらい好きなら気にしねえって」
海生「・・・」
三嶋「そう。胸の大小なんざよりもっと魅力的な部分
があったから、お前にくっついてるんだ」
優花里「胸なんて気にしないでいいと思うよ、大きす
ぎても不憫だから」
三嶋「今自分の胸デカイって認めたな」
優花里「だってデカいんだもん、足が見えない時があ
るんだよ!?」
三嶋「やめてやれ、海生が泣きそうだぞ」
海生「(目を擦りながら)どうせ私は足が見える女です
よ」
優花里「(アタフタしながら)あ〜、ごめん!」
海生「(ハンカチで涙を拭き取り)フフ、ありがとう。
私、心配しすぎてたかも」
優花里「うん!いつでも相談していいよ!」
三嶋「メシと引き換えにな」
携帯が鳴っている
海生「(電話に出て)はい?」
中田の声「(大声で)テメー!どこほっつき歩いてん
だ!?」
海生「言ってたじゃん、焼肉行ってくるって!」
中田の声「誰とだ!?男か!?」
海生「緋炉鬼君と優花里ちゃんだよ!」
中田の声「緋炉鬼だ〜?なんでそいつがいんだ〜?メ
シで俺を売った男がよ〜」
海生「奢ってあげるっていう約束したの覚えてない
の?」
中田の声「あ!?そんなこともあったな!いいから帰
ってこい!じゃねえと、乗り込むぞ〜」
海生「もうやめてよ!親じゃあるまいし!」
中田の声「家族だろうが!!愛情を与えて与えられ
る、それが家族だろうが!!!」
海生「・・・え?」
中田の声「勘違いすんなよ!?「家族」としてだから
な!決して、その、す、好きとか、そ、そんなんじ
ゃねえからな!」
机に涙が落ちる
中田の声「わ、分かったら、早く帰ってこい!」
海生「(涙を流しながら)うん、うん、もう、帰る」
優花里、箸を止め海生を見ているが三嶋は一心不乱にご飯を口にかきこんでいる
○同・住宅街(夜)
海生、手を振っている
優花里、手を振っている
優花里「(振り返って歩き出し)蒼海君って意外とスト
レートに言えるんだ」
三嶋「言えねえ奴は腰抜けだ」
優花里「なら、言ってみて、私の目を見て」
三嶋「(優花里を見て)・・・」
優花里「(頬を赤らめ)ふ、ふん。言えないじゃん」
優花里、歩き出す
三嶋「優花里」
優花里「(振り向いて)うん?」
三嶋、優花里を抱きしめる
優花里「ヒロ?」
三嶋「お前が血を流す所を見たくない、お前の苦しい
顔を見たくない」
三嶋「(優花里の目を見て)お前が、大事だ。家族では
なく、恋人として。これ以上、俺を苦しめないでく
れ」
優花里「・・・うん」
透・天童一葉(17)、角から見ている
一葉「(手で顔を覆って)かっこいい〜!!」
透「見たいの?見たくないの?」
○エンディング
見ていただきありがとうございました!