第10話 ハーメルン帝国が始動
よろしくお願いいたします。
ハーメルン帝国 リジャプール王国国境 初夏
日本でいえば6月くらいであろう。「兄さん!あの山を越えたら敵が待ち構えてる可能性があるんだから気を付けてよ!」「うるせえな。矢を射られたくらいで俺が死ぬかよ!」
この会話をしているのが第8軍団将軍のダンと軍師で弟のベルグだ。(そろそろ敵に気付かれても良いのに全く気配を感じねえ。)斥候を出したがまだ誰も戻って来なかった。
兄のダンは5感で戦うタイプ。弟は理詰めで戦う正反対なのだが仲は良かった。「おい!斥候は出したのか?」「昨日から出しておりますが未だ誰も戻りません。」側近が答えた。
「様子が分からねえじゃ攻めようがねえぜ。」ダン将軍が呟く。
「兄さん!焦りは禁物です!各部隊から5人ずつ選抜して斥候を出すのです。我々はここで待機します。」
「しかし暑いな。虫もウジャウジャ居やがる。」不満タラタラな将軍だった。(ここで戦果を上げ、陛下に認められたい気持ちは分かるよ兄さん。でも焦っちゃダメだ。)
ハーメルン帝国とリジャプール王国に国交は無い。商人達もほとんど往来が無い。道案内も無い状況だと困るのだ。
翌朝、「待っておれん!出立だ!」ダン将軍が5万の兵に号令を掛けた。
仕方なく獣道らしき道を辿る。既に草が生い茂り道なき道を進む。しかしこれがハルト達の仕掛けておいた罠の第一歩だった。
(おい。敵は痺れを切らせ上がって来たぞ。)(撤収するぞ。)リジャプールのゲリラ部隊が斥候を始末していたのだ。
小山の頂上付近で軍部から渡された地図を見る。作られたのはもう何十年も前だろう。道の傍に巨石や巨木と書かれているが見渡す限り緑だけだ。
(道すらねえよ。こんな地図アテになるのか?)ダン将軍が悩みながら見ていると「僕もその地図見たけど作られたのは随分と昔だろうね。」とベルグもため息をつき言った。
「地図がアテにならないから攻めれませんでしたと陛下に報告出来るならそうしたいもんだ。」弟を慰めるように言った。
そして神童と呼ばれ天才と言われたベルグでさえハルトの罠を見破れなかった。そのまま獣道っぽい道を進んでしまった。
最初の罠はゴブリンのコロニーの下を通過する。前や左右、後ろは警戒しても崖の上までは気付きにくい。
隊列が半分は通過した時だった。「グギャ!」「ウギャ!」と歓声が上がり攻撃を受ける。「ちっ!リジャプールのやつらめ!山狩りくらいしろよ!」ダン将軍が毒づくも状況は変わらない。
「たかがゴブリンだ。冷静に対処しろ!」言われる方は冷静ではいられなかった。狭い道で応戦しなければならない。
四方八方から襲われ一部ではパニックに陥る。「いても精々2000匹程度だ。1人が1匹倒せばおつりが来るぞ。」
そう言っても狙われるのは最後方の食料馬車が集中して狙われた。匂いで分かるのかもしれない。助けに行きたくても中々行けないのだ。
2時間は戦っていたであろう。500人は負傷し300人亡くなってしまった。そして食料の1部も奪われてしまった。
5万の兵で犠牲は1000人以下なら少ないと思われるかもしれないが意外とダメージが大きい。ましてや敵との戦いならともかく魔物相手だ。
ゴブリンのコロニー付近を抜け出した所で野営の準備をする。2時間交代で立哨を交代する事になったが魔物や狼から時々襲われほとんどの兵が寝不足で朝を迎える。
「よし!出発だ!」
ダン将軍が明るく言うが全体的に寝不足なのと、また魔物の襲撃があるかもしれない不安が彼らを暗くさせた。
その不安が的中する。「オークだ!」次はオークの集落にぶち当たる。オークも必死だ。エサが大量にやって来たのだから。
前方の部隊がオークと戦っていると後方はコボルトに襲われる。「矢を撃て!」「応戦しろ!」「これじゃあ俺達が山狩りしてやってるようなもんだろ?」
「文句言うな。前はオーク。後ろはコボルトが居るんだ!戦え!」「ちきしょう!何だって俺達がこんな目に合うんだ!」「切れ!切り刻め!」「おー!」
ここでも2時間は奮戦させられる。敵と1人も戦わず死傷者が5000人を超えた。兵糧も半分近く奪われた。死者は1500人くらい。怪我人は4000人近い人数だ。
(このまま進むと2000人は死ぬだろう。)そう思ったベルグは「兄さん!撤退しよう。」と言う。「バカを言うな!まだ敵の拠点すら見て無いんだぞ!」
「落ち着いて兄さん。食糧は半分。負傷者は多数。地図はいい加減だ。いつ敵の拠点に辿り着けるか分からない状況だよ。それにこれから戻るにしてもまだ魔物の襲撃はあるだろうね。」
「陛下のお怒りは我らで受けよう。ただし地図屋も道連れにしてやる!」そう決意する。
「撤収!」
「よし!食い物食ったら怪我人を最優先で空いたスペースに乗せろ!」「怪我人は馬車に乗せて!食料は最悪捨てて構わない!」
ベルグが指示を出すと兵士は感激する。怪我人を乗せた馬車と護衛の騎士を先行させた。こうして何とか帝都に戻った。
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