第6話 伯爵家滅亡
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ザルツベルグ帝国 ホライズン 伯爵家
「痛いよパパ!ボクのカタキを取ってよ!」と号泣する次男。「儂の息子をこんな目に合わせた冒険者を探せ!そして殺せ!」と家宰に命じる。
「承知致しました。」
そう言って裏ギルドのとある1室に向かった。「ようセバス。如何したんだこんな所まで?」「うむ。実はな・・」
「なるほど。冒険者ギルドでの話は聞いてるぜ。相変わらずのバカ息子がバカをやらかして返り討ちに合ったと有名だぜ。」
「まあそんなところだろ。しかし伯爵がそれを許す事も無くてな。」
「かあーー!セバス。悪い事は言わねえ。うちじゃその仕事は引き受けれねえ。お坊ちゃんをやったヤツはマトモじゃねえぞ。どうしてもって言うなら伯爵の騎士団を使いな。」
セバスは帰り伯爵に相談する。「むう。裏稼業のくせに断ってきただと!」と怒り心頭だ。
実は裏ギルドが断ったのには理由がある。過去まともに金を払った事が一度も無いのが1つ。更に伯爵の依頼は面倒な事が多い。
そこにはマーサからの依頼があったのだ。「伯爵の依頼を断れ。後は帝都に伯爵謀反のウワサを流せ。」と言われていたのだった。
ハルトとノワールはマーサに匿われていた。騎士団や衛兵がハルト達を逮捕、拘束しようと探していると皇帝の命で「騎士団がホライズンで動いている理由を説明する為に出頭せよ。」
しかし伯爵家の人間は全員下痢で動けなかった。「領主、長男、次男は病気療養中につき出頭出来ません。」と返答する。
「ほう。病気療養中なのに騎士団は大勢動いているのか?」と更に怪しまれる。結局、帝都の近衛騎士団と内務卿が乗り込んで来て調べられる。
すると後ろ暗い事の1つや2つは貴族全員ある。洗いざらい調べられ「謀反の疑いあり。」と伯爵家は拘束されてしまうのだった。
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「もうこれで大丈夫だろ。」と笑うマーサ。「良いかい!むやみに権力者にケンカを売ったり買ったりするんじゃ無いよ。」とたしなめられる。
「本当にありがとうございました。」と俺とノワールは平伏した。
伯爵の次男とケンカをしてスッキリして宿に帰るとマーサさんの使いが来て「急ぎ来るようにと申し使っております。」
そう言われノワールと薬師ギルドに行くと闇ギルドのマスターも来ていた。「お前さんか?伯爵のバカ息子と揉めたのは?」と睨まれた。
頷くと「あの伯爵はしつこいぞ。面倒なヤツを相手にしたな。」とため息をつかれた。
「そこでだ。恐らくアンタの所に依頼が来るだろう。断んな。それと今から帝都で伯爵謀反のウワサを流すんだ。それが定着するまではアンタ達2人はここに居なさい。」とマーサが言う。
「それくらいはお安い御用だ。しかしいくら猜疑心の強い皇帝だと言ってもそんなウワサで動くかね?」と疑問を口にする闇ギルドのマスター。
「10中8,9動くね。帝都の近くで怪しい動きをしてるんだから。問題は出頭を命じられてホイホイ行かないように何か方法が無いかねえ。」と考え込む。
「あのー。私今日この葉っぱを手に入れました。」とノワールが下痢する薬草を見せた。「アハハ!これは良いね。出頭命令が来たらこれを食事に混ぜてやろう。」
「コイツを薬品にしよう。液体にして混ぜれば1週間は動けないだろうね。」と大笑いするマーサ。
「それなら金貨1枚は欲しい仕事だな。」「バカ言うな。1人も殺さないんだ。大銀貨1枚で良いだろ?」「そりゃあんまりだ!」
「分かりました。金貨1枚お支払いします。」と俺が支払うと「あんちゃん分かってるじゃ無いか!この仕事任せな!」こうして伯爵家はお取り潰しになった。
「金貨1枚をポーンと出すなんざ一体何者なんだい?」そう聞かれると困る。「まあ何者でも良いさ。ヒマだろ?調合でもしな。」
そう言われ練習のつもりで薬草や毒消し草を調合していく。最初は『粗悪品』と表示される物しか出来なかった。
徐々に『ノーマル』『良品』『上物』『極上品』が最後出来た時は嬉しかった。「普通はそんな簡単に出来る物じゃ無いんだがな。うちの調合師達が落ち込むだろ?」
「俺からすれば金貨1枚で伯爵家を滅ぼすマーサさんの方が凄いし恐ろしいと感じますよ。」
「そりゃ生きてる時間も違うし何よりあの伯爵は目障りだったってだけだよ。」と言って笑った。
「今回の事は反省しました。むやみにケンカを買っちゃダメだって・・俺はまだまだガキだったんだなと思いました。」
「もう終わった事だ。次に同じ事すんじゃ無いよ。わたしゃアンタ達の未来に期待してんだからね。」
「俺達の未来ですか?」
「そうさ。アンタ達は今の若い者と違って死に物狂いで頑張って来たんだろう。今、手に入れた力や金は綺麗事だけじゃないって想像つくよ。」と言って笑った。
(妖怪のような婆さんだな・・)と思っていると「それくらいは分かるさ。あと今、失礼な事も考えていただろ?」と凄まれ青くなるのだった。
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