第16話 ハルゼイ編16
よろしくお願いいたします。
ナン王国 王都
「何ですってー!宰相!もう1度言ってみなさい!」
「は、はい・・ですから敗れたと。」
大軍1万8千の軍勢が僅か1300人の守備兵に敗れるなど王国の過去においても例がない。青筋を立てて怒っている妙齢の女性は『影の女帝』と言われている5男の母でもあるゴネータ夫人だ。
「しかもほぼ捕らえられたって!戦場で寝ていたの?誰か何とか言いなさいよ!これじゃああの子が浮かばれないじゃない!」遂には号泣し始める。
「いい?帝国が賠償金なんて言ってもビタ一文だって払う気なんか無いわ!良いわねアナタ!」王に向かってこう宣言して出て行った。
早速、新たな息子の敵討ちの手段を模索しているようだった。父やごますり貴族を集めて何やらろくでも無い企みに講じていた。
この母にしてこの子アリを地で行く母子だったのだ。王位継承権も5位だったのを貴族達を父に纏めさせて次期国王候補までになっていた。
国王は気が気で無かった。5男の周囲にいるのは荒くれ者、無法者、チンピラといった言葉がとてもよくお似合いの人達だったからだ。貴族の取り巻きもロクなのがいなかった。
貴族の中でもロクデナシとつるんでいた5男だが、ある日冒険者から「所詮は井の中の蛙だろ?多少魔法が使えるって他国じゃ通用しねえよ。」と言われ挑発に乗り冒険者になると言って家を飛び出した。
正直な気持ちを言えば正直ホッとしている国王だ。「そのうち帝国から何か言って来るだろう。それまでは放っておこう。」
「分かりました。」宰相は静かに下がって行った。
憔悴している王に多少同情をするが国政を預かる立場としてこの難局を何とかせねばと決意する宰相だった。
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俺は宴会準備をする、近場の山でオーク狩りをしていた。ノワール、デューク、ランボウと一緒だ。
ノワールと俺は山菜やキノコなどを見つけ採取していた。(ショウガがある!)紛れもなく生姜と表示されていた。
町に戻りおろし器を探すと陶器屋さんにあった。「ハルト!これなら良いぜ!」と店のおっちゃんがお勧めしてくれた。
20個ほど買って帰った。亜人の女性で調理、料理スキルを持ってる人達にオーク肉を生姜、ミリン、砂糖、ショウユ、玉ねぎを切って巨大な樽に漬け込んで貰う。
その間にノワールとオスカルとで16000人をチェックしていく。すると3人の目で見てダメなヤツが7人居た。
しかも5男の友人で指揮官や参謀をしてるのが驚きだ。7人ともどうやら大貴族の息子で婦女暴行の常習犯のようだ。
「クズだわ。」「クズですわね。」急いで隔離して閉じ込めておいた。こんなの自由にしたら俺がロバートやマーガレットに怒られるぜ。
他にも窃盗常習犯やストーカー、チカンなど13人を隔離した。(これでまあ一安心だな。)
そして20人と貴族以外、町の人も広場に集まる。「この広場が超満員になるって初めてだな。」「儂も70になるが知らんの。」「賑やかで良いわね。」
町の人が喜ぶ中でロバート皇太子が挨拶をする。
「皆さんこんばんわ!ナン王国の兵士諸君。今日より解放しますが町の中なら自由に行動して貰って結構です。逃げても良いですが国境砦は我々が抑えました。逃亡者になるなら覚悟して下さい。」
「マジかよ。」「じゃあ山越え?」「俺はここで良い。逃げる意味がねえ。」「そうだよ。あんな国に戻っても良い事ねえ。」16000人がザワザワしていた。
「今日はお腹も空いているでしょう。町の人やうちの兵と親睦を深め酒も食べ物もみんな同じ物ですから安心して食べて下さい。今日は風呂も開放してます。どうぞ入って下さい。」
「ええ!?風呂入れるの?」「入りたいわ!」「貴族だけよね?私達も入って良いの?」16000人のうち1000人が女性だった。
「亜人の方々。安心して下さい。ここは差別する人を許しません。もし嫌がらせを受けたらすぐ彼に言って下さい。」トールことベオウルフが周囲を見渡す。
「スタートです!皆さんお好きな場所に行って下さい!」
俺とノワールと『炊き出し食事部隊』は先に飯を食い鉄板で生姜焼きを準備していた。「美女にお酒を注いでもらう方が嬉しいでしょ?」『南の妖精』『薔薇の美女』が注いでいた。
騎士団は警備を担当。ロバートとマーガレットは気さくに町の人達やナン王国の兵士と会話して人気を博していた。
生姜焼きは大人気だった。「これウメーぜ。」「酒に合うなあ!」と次々出て行った。1時間もすると落ち着いて来た。
すると俺の後ろで「グゥー」とお腹が鳴る音が聞こえる。亜人の小さな子供だった。「おいで。食べて良いよ。」笑顔で告げると嬉しそうに寄って来て俺の隣に来て一生懸命食べた。
急にピタっと止まると「ママ・・お腹空いてる・・病気。」と呟く。子供を背負い「ママは何処だ?」「あっち。」と指した。
今日探検した反対の山の奥に廃墟があった。どうやらそこに居るらしい。かび臭いボロボロの中に倒れていた。「おい!大丈夫か?」ポーションを飲ませる。
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