第9話 ハルゼイ編9
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ザルツベルグ帝国 ハルゼイ
遂に敵本隊が出陣したと連絡が入った。俺は橋に精製した臭水をたっぷり撒いた。そして戻ると「今回騒ぐなよ!本当に怒られるじゃ済まないんだからな。」
フォックスとモンローにチクチクとナイフを当てられ「痛い!痛いよ!」と大げさに叫ぶ。「ランボウ。その程度が痛いなら戦場に要らん。帰れ。煩いんだ。」
「ち、違うんです!」と叫ぶ。「だから俺の言う事が聞けないだろ!帰れ!」「ランボウ。これから一言も喋っちゃダメ。言いたい事は紙に書くのよ。良い?」
「分かりました!ノワールさん!」と叫ぶ。「ノワール。甘やかすんじゃない。紙に書けと言われすぐ口を開くやつは要らん。とにかくうるさいんだ。」
「1つ良い方法があるわよ。」とオスカルが言う。「何だオスカル?」「必要な時まで寝させて置けば良いわ。スリープで眠らせて縛っておくの。目を覚ましたらまた寝させるの。」
「オスカルに任せるよ。」「うん。任せて。」こうしてランボウは3日3晩寝続けるのだった。
俺はこの間に霧を発生させた。翌朝はかなり濃霧になってしまったが俺は心眼で見えるので問題無い。敵は総数1万8千という数だった。
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ナン王国 ハルゼイ前
「なぜこんなぬかるんで歩き難いんだ?」文句を言ってるのは総大将のルードヴィッヒ侯爵だった。馬に乗って文句言うなと周囲は思っていた。8000人を率いて登場だ。
右翼に陣を構えてるのはボン伯爵4000人の部隊。左翼に陣を構えているのはベルリン伯爵の4000人の部隊。
そして前衛にラオ〇に似た巨体で強面が売りのトール子爵2000人の部隊だった。
早速ルードヴィッヒ侯爵の本陣で作戦会議が開かれる。各陣営の参謀や司令官、指揮官が集まって来て居る。
貴族は事実上、お飾りなのだがしゃしゃり出たがるタイプと丸投げするタイプが多いがルードヴィッヒ侯爵は前者だった。
「えー、コホン。アー諸君ご苦労。私が集めた情報によると敵の総数は1200~1300。町の住民もかなり逃げ出しているという事だ。所謂『敵では無い』状況だ。無論、油断は禁物だぞ。」
そう言ってる割に楽勝だと思っているのだろう。確かに町から人の気配が無い。ルードヴィッヒ侯爵の頬が緩むのも無理からぬ事かもしれない。
「今回は陛下直々のお言葉だからお主が先陣だ。よもや・・コホン。まあ良い。お主の器量を見せて貰おう。」トールに向かって言う。
ルードヴィッヒ侯爵の言葉には訳がある。2年前に南方の国と戦った時トールは初陣だった。その時に首の辺りがチクチクとして全身から汗が流れだす。
(イヤな予感がする。)兵500を率いていたが戦場を離れたのだ。もちろん無断で。その時は敵2万でこちらは4万。野戦だったので誰もが勝てると信じていた。
しかし結果は惨敗だった。後背を突かれ挟み撃ちにされたのだった。4万の兵で生きて戻ったのは僅か6000人。無傷なのはトール以下500人だけだ。
トールは謹慎させられた。父である子爵は方々から責められた。「なんとまあ。図体だけは大きいのに。不憫な息子さんですわね。」
「顔は誰よりも強そうだが優しい気性なんだろうな。」さすが貴族達だ。柔らかくディスってきた。父は心労が祟り今年の春、永眠しトールが家督を継いだ。
しかし今までの鬱憤を晴らすかのように近所で暴れ、スラムで揉め荒くれ者やならず者とよく揉めていた。
ついたあだ名は『張子の虎』「あれがウワサの・・」「ええ。敵前逃亡して近所で弱い者イジメしているそうよ。」「子爵様もあの世でお嘆きであろう。」ヒソヒソ嘲笑されていた。
そして今回、国王直々の招集だった。「トールよ。国内を荒らすな。暴れたいなら敵を討て!分かったか?さもなくば次は無い。お主が先陣じゃ!」
国王は体のいい厄介払いを選んだ。町を落とせばそれで良い。しかし死んでもさほど困らない。今や荒くれ者より質が悪いからだ。
橋1本の攻めなのに中央、右翼、左翼と別れているのは・・「トールの臆病者がまた逃げ出すやもしれん。その時はその方らで討て!」と陛下から命じられていた。
会議中、トールが首を押え大量の汗を流しているのをルードヴィッヒ侯爵、ボン伯爵、ベルリン伯爵は見逃さなかった。
他の司令官、指揮官も同様だ。(これがウワサにきく臆病風だな。兵に矢をつがえさせ槍を構えておけと命じろ。)小声で命じる。
トールはトールで(俺のカン、本能が危険だと伝えて来ている。それは敵なのか?それとも後ろにいるこいつらか?敵は1300。後ろの味方のフリをしてるヤツラだな。)と決めつけた。
トールの兵2000だがまともな兵はいない。奴隷ばかりを押し付けられた。大半が亜人だ。トールの私兵は「置いていくように。」と陛下に命じられた。
(やはりそうか。俺に向け矢を射る準備をしてやがる。)ナン王国軍は双方勘違いの中、濃霧が晴れるのを待たず「先陣トール!出撃せよ!」と号令が下った。
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