第2話 ノワールと脱走
よろしくお願いいたします。
ザルツベルグ帝国 帝都 地下組織闘技場
「はっはっは!見ろよ!奴隷と亜人だぜ!」「お似合いだな!」「おいおいシロ!もっとしっかり腰を振れよ!それじゃ亜人も人間も満足させられねえぞ!」と嘲笑される。
(ガマンしてくれ。)と黒エルフに小声で言うと理解したのか頷いた。俺は戦いの時は首輪と足の鎖は外されているが彼女は付けられたままだった。
やっと見世物ショーが終わると「よくやったシロ!この後もう一働きして貰うぞ。お前のお陰で娼館も男娼も大忙しだ!」と上機嫌な親分だ。
ルチアーノ一家に勝ったという事もあり看守も気に入った奴隷たちと酒を飲み戯れていた。俺は3人の看守に連れられ別室で水浴びをさせられていた。何処からか話声が聞こえる。
親分が「シロはそんなに働かせる訳にはいきません。侯爵夫人の頼みですからこうして聞いてる訳です。」「あら?そんな事言ってちゃっかり金貨50枚も提示してるじゃない。」と文句を言う。
「今やシロは奥方様から大人気ですので安くはありませんよ。」「分かったわよ・・仕方ないわね。」と言って支払ったようだ。
「じゃあいつもの部屋に連れて来て。」「畏まりました。」と言って案内したようだ。俺を見張っている3人の看守が「シロ良かったな。役得だな。」と酔っているせいか上機嫌で言う。
「ほれ!侯爵夫人がお待ちかねだぞ!」と急かす。「その前にトイレに行きたいのですが?」「なんだ?仕方ねえな。お前付いて行ってやれ。」と1人に命じた。
トイレに一緒に入った瞬間、ソイツの剣を抜き口を押え殺した。「おい!まだか?大してんのか?」と2人が笑いながら聞いてくる。
「おい!返事しろ!」と2人が入って来た。「グォ!」と短く叫んだ。剣が腹に突き刺さるともう1人が腰を抜かし叫ぼうとしたがすかさず殺し3人トイレに押し込んだ。
これで暫く気付かれずに済む。そのまま侯爵夫人のいる部屋に向かうと親分と侯爵夫人がいた。「おい?見張りはどうした?」と聞くが切り付ける。
「ウギャー!」とデカい声で叫ぶがこの部屋は結界が張ってあるらしく誰が大声を上げても外部に聞こえない。
侯爵夫人にも死んでもらい2人全裸でベッドに寝て貰った。衣服と金目の物を回収して親分のカギを回収して親分の部屋に行く。
でかめのカバン3つに金目の物と金、毛布、食料、武器を回収し衣服も着替え靴も履き替える。親分が死んだので隷属の首輪は全員外れるはずだ。
逃げる途中に看守に出会うが1人ずつなら問題無く殺せた。酒を飲んでいるから猶更だ。何人かの奴隷をついでに解放していく。
その中に黒エルフもいた。足枷の鎖を外してやり「逃げろ!」と短く告げる。「何処に逃げると言うの?」と聞かれると「分からんがここを離れたいだろ?」
そう告げると「私に任せて。」と言って馬を調達してきた。「門から出れないから壁の崩れた所から逃げるわよ。乗って!」と言われるが馬に乗った事が無い。
「悪い。馬に乗った事が無いんだ。」と言うと少し前にずれ「私の後ろに乗って。」と手を差し伸べられる。
「何でそんな大きなカバンなんか持って来たの?」「後々役に立つはずだ。」「揉めてる場合じゃないわね。さっさと逃げましょう!」と言って上手に馬を操った。
「大丈夫よ。私は夜目が利くから。」と言って真っ暗な夜道を駆けて行った。夜が明ける頃には川の畔に到着した。「此処まで来れば一安心だわ。少し休みましょう。」
川で水浴びをしようとすると「今更恥ずかしがっても仕方ないわ。」と言ってお互い全部を脱いだ。「洗ってあげる。」と甲斐甲斐しく世話を焼く。
「なあ?そう言えば名前は何だ?」「ノワールよ。私の旦那様の名前は?」「ちょっと待て。名前はシロだが旦那様って何だ?」と言うと拗ねた。
「私の初めてを強引に奪っておいて知らない顔?しかも衆人環視の中で・・」と怒った口調で言う。「あの場合はどうしようもないだろ?」と焦って言う。
「それで?私を捨てる気だった?」と言われ考え込む。「ノワールだって成り行き上仕方なしで俺に惚れてた訳でも無いじゃん?」「うっ・・まあそう言われるとそうだけど・・」
「でもまあ俺も家族居ないも同然だしノワール可愛いから一緒にいてくれたら助かるけどな。」と笑顔で言うと「ウンウン!可愛い私が好きなのよね?」と笑顔で聞く。
「そうだな。好きだ。」と言うと真っ赤になった。「じゃあ私は奥さんね!」と言って喜ぶ。「とりあえずは今はここで仮眠しましょう。」と言って結界のようなものを張った。
カバンに毛布のような物があったので取り出す。「一緒に寝よう。」と抱き着いて来た。包まって寝るとノワールの柔らかさが心地良かった。
久しぶりに夢を見た。それはこの世界では無い夢だった。(起きなさい遥人。そろそろ目覚ましで起きてよね。)と言われたのだった。
「どうしたの?怖い夢を見たの?それとも悲しい夢?」と聞くノワール。「どうやら俺は転生者だったようだ。」と告げると「渡来人だったのね。だからあんな強いんだ。」と感心された。
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