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第二十三話「巨悪」

 その老人は、とあるビルの最上階に鎮座していた。


 腕には何本もの点滴が繋がれ、首には大きなカテーテルが挿入され、鼻から小さな管で酸素を流し込まれながら、微動だにせず静かに座っていた。


 それが、私達の倒すべき巨悪のその正体だった。


















 兵隊を集める、そう言った安西女史の言葉通り。徹夜だった私達が床につき、昼過ぎに目覚めた頃にはアジトに沢山の人間が集まってきていた。部屋を見渡せば、ざっと十数人は居るだろう。


 その中には、佐藤教諭も混じっていた。授業あるだろうのに、急に学校抜けて大丈夫だろうか。


「能力者勢揃い、って奴だな。俺もここにいる先輩方の半分くらいしか顔知らねぇ」

「こんなに居るのか。能力者ってもっと希少だと思ってたぜ」

「……でも、これでも向こうの方が数が多いわ。私が洗脳してる能力者を合わせてもね」


 こんなに居るのか、と言うナオヤさんの感想には同意だ。私もこんなにゾロゾロ集まるとは思っていなかった。


 でも、よく考えたら一学年に能力者が2人と考えれば、これくらい居ても不思議じゃないよな。


「あ、マイ先輩にフミちゃんだ」

「おお、アイツらも来たか」


 そして遠目に、よく見知った金髪の美少女風男性と眼鏡の文学少女を見かけた。タク先輩が声を張り上げ、私が小さく手を振って呼んであげる。


「タク、こんにちは。……で、何事ですのこれ。いきなり安西さんから『決戦じゃ、者共集え』と来たから出向いたのですが」

「……と言うか、何故お前が此処にいる。弓須さんから離れなさい」


 マイ先輩は困惑した表情を浮かべ、フミちゃんは敵意ビンビンにナオヤさんを睨み付けていた。そーいや、彼女達からしたら昨日捕まえた直後だっけ?


 まだ敵って意識が強いんだろうか。


「それに、どうして泉さんが此処にいますの?」

「ご、ご機嫌よう。事情は後で、は、話しますわ」

「マイのお嬢様口調に合わせなくて良いぞミサちゃん。そいつ、キャラ作ってるだけだから」


 マイ先輩に緊張してか、ミサさんまでお嬢様口調が移ってしまっていた。やっぱり、まだ苦手意識有るのかな。洗脳中とはいえ、彼氏取られたり誘惑されたり散々だったからな。


「で? お前はきちんと削ぎ落とされたの?」


 一方因縁をつけるかのごとく、フミちゃんはナオヤさんを睨み付け股間の有無を尋ねた。女の子がそんなこと言っちゃいけません。


「必死でチン●乞いしたら、何とか許してもらえたぜ」

「は?」


 ああ、あれは信じられないほど見苦しい光景だった。……じゃ、なくてフミちゃんを宥めないと。このままじゃこの場で削ぎ落としそうだ。


「どーどー。フミちゃん、私はもう怒ってないから」

「でも! コイツが居なきゃ……」

「分かってる分かってる、全部説明があるよ。今は落ち着いて、ね」


 ちょっと興奮気味のフミちゃんを落ち着けるため、私は背後からゆっくり彼女を抱き締めた。ふぇ、と間抜けな声がフミちゃんから零れる。


 記憶戻ってることも、話してあげないとね。


「そこの、ナオヤさんって言うんだけどね。彼にもやむにやまれぬ事情があったんだよ。今は味方だから、怒らずに話聞いてあげて?」

「……え、はぁ。ゆ、弓須さん?」

「大丈夫、大丈夫だから。私のために怒ってくれて、ありがとう」


 そのまま数秒ほどフミちゃんを抱きしめてやると、何時しか彼女は頬を染めおとなしくなった。よし、説得成功。


「タク? なんかマリキューちゃんのキャラ壊れてません? あんな感じの優しい笑顔出来ましたっけ?」

「気持ち悪いよな、アレ。でもあれが素らしいぞ」


 先輩方、空気の読めない発言は止めてくれ。そんなに今の私は気持ち悪いだろうか。ちょっと傷つくんだが。


「……はぁ。フミちゃん、ちょっと目を瞑ってて」

「はい? え、ちょ、え?」

「すぐ分かるよ。ほら、こっち見て。抵抗しないでね」

「え? え?」


 まぁ、良いや。取り合えず先輩方に文句を言うより、フミちゃんに状況を説明するのが先だ。記憶を回収したら彼女も今の私の状況を理解するだろう。


 思い出すのもおぞましい、悪夢のような記憶だけれど。そんな嫌な経験を、親友に預けっぱなしと言うのも良くない。


 今の私はもう記憶が戻ってるんだ。だからもう、フミちゃんに記憶を預かってもらう必要は無い。


「お、早速やるのか」

「……キマシタワー?」

「あの娘、妙にキス上手いのよね……。川瀬さん、のぼせなきゃ良いけど」


 ミサさんがちょっと困ったような笑みを浮かべた。そりゃまぁ忌々しいけど、男性経験豊富なもんで。


「────っ!?!?」

「んー……」


 私はタク先輩のモノだろうスマホのシャッター音を小耳に挟みながら、フミちゃんが気を失うまでじっくりねっとり接吻した。


 何撮ってんだタク先輩このやろう。後で送ってください。
















「……」


 そして私達は、安西さんに促され皆の前で今日の夜に起こった悲しい事件の顛末を話した。


 私が洗脳されていたこと。タク先輩も先輩され、絶体絶命だったこと。ナオヤさんが愛を叫んだ事。私が能力無効に目覚めました事。


 それを聞いた反応は、人によりまちまちだった。


「……では、マリキューちゃんは私の『僕』モードを見ちゃった訳ですのね」

「ええ。信じられない美形で、ちょっとびっくりしました」

「私のあの状態を見てその反応であれば、能力無効は本物でしょう。普通は『僕』の事以外何も考えられなくなります」


 マイ先輩は納得したようにウンウン頷いている。洗脳下の泉先輩の正気が揺らいでいたし、それは事実なのだろう。でもなんかナルシストっぽい。


「俺、そんな死に方したのか。────馬鹿だな、妹に火を放つ兄があるか。そんな男ならなぶり殺しにされて正解だ」

「……だってそれは、兄さんは悪く……」

「ミサ、許してくれ! お前の玉の様な肌を傷付けた馬鹿な俺を! 苦しんでいる妹に気付けず襲いかかった俺を!」

「わっわっ、抱きついてくんな!」


 そして、ブラコンシスコン兄妹はイチャイチャし始めた。そのままどうぞお幸せに。


「……」


 最後にフミちゃんは、キスの後目覚めてからから無言で私に抱きついたまま離れなくなった。彼女も色々言いたいことは有りそうだが、何かを喋ろうとする度に滝のように涙を溢して喋れなくなってる。もうちょっと落ち着くまで待ってあげよう。


「と、言う訳なのだ先輩諸兄! 今日お集まり頂いた理由がお分かり戴けただろうか!?」


 安西女史が声を張り上げ、場が静まり返った。


「今聞いた通り! 我々がずっと苦渋を飲まされてきたあの社会の癌どもに、ようやく正面から対抗しうる日が来た! この若き新鋭たちの活躍を無駄にするべきではないと考える!」

「安西! 肝心のお前の見立てはどうなんだよ!」

「悪くはない! だが、よく見えないのが本音!」


 何の話だ? と思って首を捻っていたら、タクさんがこっそり耳打ちしてくれた。安西女史は未来が見える系の人らしい。


 成る程。前にタク先輩が未来予知能力者が天敵って言ってたのは、この人の事か。予知能力者に詳しいと思った。


「駄目ならやり直せば良い! 上手くやれば、積年の問題の殆どが解決する! 勇気を出すべきだと、私は考えた! 先輩諸兄も、奴等に飲まされた煮え湯の味をまだ覚えているでしょう!」

「勿論だ!」

「ならば、行きましょう! 私だって、最愛の夫を奪われた身! 決して奴等を許しはしない!」

「おお!」


 安西女史の演説で、集まった能力者たちが士気高揚している。安西さん、若いのにリーダー的存在になってるのね。


 と言うか安西さん、結婚してたの? まだ高校卒業して数年なんじゃ……。旦那さんを奪われたのか。それは、さぞ悔しかっただろうに。


「……いや、唯一良い感じの関係だった男友達が洗脳されただけですわ。安西さん、ガッツキ過ぎて異性にモテないので」

「あの二人、付き合ってすら無かった筈だ。安西さんの中で勝手に旦那に昇格してるのが全く笑えん」


 ……安西さん、アンタ。


「場所と敵の情報は、配布したメールの通り! では行きましょう、我等の大切なものを取り返しに!」

「おお、やるぞお前ら!」

「強い一体感を感じる……なんだろう、風、吹いてきている」


 こうして。かつてない大規模な対ヤクザ作戦が実行に移された。意気揚々と小グループに別れた私達は、さりげなくヤクザ本拠地に再度集まり、時間を決めて一斉に襲撃する。奇襲を察知されないための作戦らしい。


 と、言っても、私は最後尾なんだけれど。戦闘能力は全くないし、最年少組の一人だし。


 私の仕事は主に洗脳解除だけ。楽なもんである。
















 それは高級オフィス街の一角、ヤクザの事務所の偽装として立ち上げられた小企業。そここそ、ミサさんの情報によれば彼らか『ボス』と崇める存在が指示を出す所だ。


 ビルの1つの階をまるごと買い占めたというその企業は、その事業内容も何もかも不透明。だが、確かに上場しており利益も確かに出ていると言う。


 『怪しい』を絵にかいた企業である。


「で? こっからどうするんです?」

「まずボスを押さえて洗脳する。んで、配下の洗脳能力者をみんな此方側に寝返らせる」

「向こうには、洗脳能力者を束ねる洗脳能力者が居る筈だ。つまりミサを洗脳した能力者だな。ソイツさえ何とか出来れば私達の勝ちって訳よ」


 そう、敵の弱点もそこである。一人一人が自由意思で繋がっている私達と異なり、ヤクザは大半が洗脳により支配されているらしい。だから、能力者を束ねる洗脳能力者を押さえれば一網打尽なのだ。


 最も。今まではその詳しい情報が無かったから、行動に移せなかったのだが。


「ミサさんの配下の能力者は?」

「うん、集めたよ。能力持ってない子も、念のため呼んでる」

「……てことは、ヒロシもですか? その、ヒロシには危ないことさせないでくださいね」

「分かってるわ。集めただけで、戦力として使う気はないから。雑用担当よ、この襲撃が終わったら解放するわ」


 ミサさんが目配せした方向に、カナと二人、ファーストフードで食事しているヒロシが目に映った。パっと見、デートしているようにしか見えない。


 ……ヒロシの意思では無いんだろうけど、浮気現場目撃したみたいでモヤモヤするなぁ。















「取り戻すぞ、私達の大切な人を!」


 午後五時。奇襲部隊の第一陣が、同時にビルに突撃した。


 一般人を巻き込む訳にはいかないので、最初はスーツを着てる大人組がさも仕事をしているかのように侵入する手筈だ。


「大人組が制圧してから、俺達も参戦する。心の準備しとけ」


 襲撃部隊として後方に配置された私達奇特部は、タク先輩をリーダーとした四人小隊だ。予備戦力として位置付けられているが、ぶっちゃけ戦闘は危ないから大人に任せなさいって話である。


 制圧した後から悠々乗り込んで、私が被害者の救済を行う形だ。


「……やっぱり、マリがキスする必要なんて無くない? だって本当に洗脳されてるかどうか分からないわ。罪を逃れたいから、マリにキスして欲しいから、洗脳されたフリするかもしれない」

「後者はあんまり居ないんじゃないかなぁ? 後、それは大丈夫だよ。私、能力を破った時は分かるから」

「そうなの?」

「破ったら、もの凄くうるさいの。キィィン、みたいな不協和音が鳴り響く」


 そう、思い起こせば不協和音が耳をつんざく時は能力を破った時だけだった。時間逆行の時とか、幻覚を見抜いた時とか。


 洗脳されてない人にキスしても、音はしないから分かる筈。


「へぇ、便利だなお前の能力。……そう言うのが良かったなぁ、俺も」

「隣の芝はなんとやら、ですわよ。あんまり他人の能力を羨むものではありませんわ」

「あー、ゴメン」


 ばつが悪そうに、タク先輩は謝った。能力って、その人のトラウマそのものだったりするからね。


 私の場合はあんまり気にならないけど。


「それに。その、あんまりキスとかは他人とすべきでは……」

「ははは、今更だよフミちゃん」


 親友は若干貞操観念が堅いらしい。ろくに他人と付き合ってないから当然だろうか。高校生にもなってキスを躊躇うのは少しお子様過ぎるよ。


 今度、濃密な(キス)をお見舞いして性倫理観を矯正してあげようかな。


「……? 何か、寒気が」

「ふふ、どうしたのフミちゃん」


 悪戯な笑みを浮かべる私を、フミちゃんは困惑した目で見ていた。うーん、可愛い。











「よし。制圧が終わったらしい、乗り込むぞ」

「はい」


 その知らせは、程なくしてやってきた。乱戦になればタク先輩やマイ先輩も参戦する予定だったが、思った以上に敵の抵抗がなかったそうな。


 時間逆行能力のおかげでほぼ完全な不意打ちである。敵もきっと、対応しきれなかったのだろう。




 オフィス街に堂々と佇むそのビルの13階。その最奥にある閉ざされた個室の中に、老人は居た。


 白髪は抜け落ち、目は窪み、息も荒く。首筋や両腕に無数の点滴が繋がれたその老翁は、部屋に押し入った私達を興味が無さそうに眺めていた。


 周囲にズラリ、と目が死んで微動だにしない人を並べ。その老人は、1人静かに君臨していた。


「こいつが、ボス……?」

「間違いない、写真の通り。指定広域暴力団組長、泉源次だ」


 この弱り果てた爺こそ、私達を苦しめたヤクザのトップ。そう聞くと、確かに何か悪そうな顔をしているように見えてくる。悪役面と言う感じだ。


 彼は何かを喋ろうとしたのだろう、突然にこひゅー、こひゅーと彼は苦し気にむせこんだ。彼のすぐ近くに座っていた1人が、すぐさま酸素マスクを老翁につける。


 控えめに言って私達がたどり着いたそのラスボスは、瀕死と言った様子だった。


「これ。俺達が奇襲かけなくても、数ヶ月で寿命迎えたんじゃね?」

「……いや、数日持たんだろう。この老人は、もう末期だと思う」


 タク先輩の言うとおり。目の前に座っている老人には、既にはっきり死相が見えている。


 この老人は、もう長く持つまい。何のために襲撃をしたのか、馬鹿らしくなってくる。


「……か」

「あん? 爺さん、何か言ったか?」


 酸素マスクに頼りながら、その翁は私達に何かを言った。その言葉を聞き取るべく、タク先輩が老人に詰め寄る。


 絵面的には、瀕死の老人にチンピラが詰め寄っている形だ。タク先輩がなんか悪者っぽいが、悪役は死にかけな老人の側である。


「……来たか」

「あー。そーだぜ、来たぜ。アンタの悪事もここまでだ、って言いにな」


 ボソボソ、とかろうじて聞き取れる声量で老人は呟いた。まだ、ボケてはいないらしい。


 こんな成りではあるが、ミサさんを長期間洗脳し、ナオヤさんを殺しかけた極悪組織のボスである。死ぬ前に、反省させてやらないと。


 人の命は、心は、玩具にして良いものではない。能力者になってしまったからといって、絶望して好き勝手して良い訳ではない。


 私は、この男のした事を許すつもりはない。









「────やっと。わしを殺しに、来たか」


 その老人は、やがてそう呟いた。はっきりと、聞き取れる声量で。


「やっと、解放されるのか────」


 呆気に取られ、その老翁を見つめると。彼は乾ききったその眼から、静かな涙の滴を溢し。


「何だ。何泣いてんだこの爺!」

「なが、かった。長かったなぁ」


 そして静かに、頭を垂れた。まるで、早く殺してくれと言わんが如く。その、予想外の反応にタク先輩だけでなく、その場にいた全員が固まる。


「なんだよそれ。何だよお前! 自殺志願者か? もう十分生きたから、とっとと殺してくれってか!?」

「……は。は、は、は。お前は、アレじゃろ。能力者、じゃろ」

「そーだよ。お前に散々苦しめられて、それでもヤクザなんかに墜ちなかった能力者だよ!」

「はは、は、は……。なら、次は、お前かの。頑張、れ……。応援、してやるぞ」

「何を、言ってんだ? 結局、ボケてんのかお前」


 老人の発言は、主語も目的語なく要領を得ない。死の間際で、思考が纏まらなくなっているのかもしれない。真面目に話を聞く必要は無さそうだ。


 ……正気じゃないなら、反省も促せない。この老人は、人を食い物にするだけしておいて、幸せなまま死に逃げる。私の胸中は複雑だった。


 だが。



「若い、の。お前、好きな女は居るか?」

「あん? 居ねぇよ、まだ」

「そ、か。それ、わしの、すぐ後ろ。居るじゃろ、婆さんが」

「……居るな」

「わし、の、最愛の人。どうじゃ、美し、かろ?」


 ふぉふぉ、と潜もった声で笑う瀕死の老人。その後ろには、成る程、目に光のない老婆が車椅子に乗って座っていた。


 最愛の人、か。こいつ、恋人すら洗脳しているのか。いや、あるいは洗脳して恋人にしたのかもしれない。


 吐き気がする。この邪悪な老人を、ぶん殴りたい衝動に駆られる。


「……で? 何が言いたい」


 タク先輩も同じ気持ちらしい。低く不機嫌そうな声で、彼はその翁を睨み付けた。


 この老人に、手を下すまでもない。むしろわざわざ殺したりしたら、無駄に殺人の罪に問われるだけ。それをきっと、この老人は分かっているのだ。


 だから、こんな挑発を────


「少年。……守りたい者は、居るかの?」

「いっぱい居るよ。そんで、いっぱい守ってきたよ」

「わしも、だ」


 その時。老人が、小さく血を吐いた。タク先輩が一歩下がり、地面にボトリと血だまりが広がる。


「老婆心、という奴じゃ。聞かせ、ておこう」


 その、吐き出した血を拭うこともせず。老人は静かに、何かを語り始めた。


 この場の誰でもなく、タク先輩1人に向けて。


「洗脳する気かもしれませんわ、タク、耳を塞ぎましょう」

「いや、マリキューが居るから大丈夫だ。……聞いてやろうじゃねぇの、この糞爺の遺言を」


 マイ先輩の忠告も聞かず、タク先輩は老人の言葉に耳を傾ける。えー、キスするの私なんだけど。まぁ良いか。


「のう、少年。わしは、作りたかったんだ」

「……何を?」

「……食うに困り、盗みを働き、……やがて、捕まり撲殺される事もなく。能力なんぞに目覚めても、普通の人間の如く暮らせる為の、能力者の組織を。能力者が、笑顔で生きていける互助組織を!」


 ぐ、と老人の拳に力が入る。老人の心拍を記録するモニターが、ピーピーと成り始める。


「能力なんてもんに目覚めて、絶望の縁に立った彼女を、救える組織を。作りたかった……」


 何処かで聞いたことのある話を、のたまって。そして老人は、静かに語り始めた。


 罪と悪にまみれた己の半生を。
















 戦後。


 この老人が生まれたのは、四方八方が焼け野原となり、戦争の爪痕が色濃く残るそんな時代だった。


 彼は生まれもって、能力に目覚めていた訳ではない。ありふれた家庭の六人兄妹の真ん中に埋まれ、ゲンジと言うありふれた名前を与えられ、何処にでもいる平凡な少年として幼少期を過ごした。


「ねぇ」


 彼の家は裕福とは言えなかった。闇市で盗品の横流しをして生計を立て、時には捕まって散々に打ち据えられて。彼は生きるために必死に、ありとあらゆる手段を使ってきた。


 時代が、彼の道徳倫理を奪ったのかもしれない。彼は、他人とは生きるために利用するものだと思い込んでいた。そして、それはこの時代に生きる人間にとって珍しいことでない。


「少年。お姉さんが良いことしてあげるからさ」


 そして、彼が色を知る年頃になると。女という生き物は生きるために、体を使って金をせびってくる事を学んだ。


 調子にのって大枚をはたいて、安い女を買って後悔した事もある。そんな彼がある日、夜道で若い女性に出会った。


「良いことした後、幸せな気分絶頂のあたしをさ」


 その女性は美人だった。今まで抱いてきたどんな女より、色っぽくて美しかった。むんむんとした色気に負け、自分の財布の中身を確認しようとした男は、


「────殺しておくれよ」


 その女が、死を求めてさ迷っていた事を知った。











 そいつはチヨ、と名乗った。


「あたしはね、幸運なのさ。生まれもっての、絶対的幸運の持ち主」

「良かったじゃねぇか」

「そう思うかい?」


 そんなとんでもない事を頼まれたら、勃つものも勃たない。男は何とか普通に抱けはしないかと、女と話を続けることにした。


「あたしさ。空襲から逃げ遅れても、爆撃に巻き込まれなかったの」

「ついてるな」

「巻き込まれたのは、私のお母さんだけだったよ」

「ほーん」


 この時代、孤児は珍しくもなんともない。空襲で一家まるごと焼け死んだ、なんてのはよく聞く話だ。家族に不幸があったのは同情出来るが、だからと言って死を求める気持ちが分からない。


「こないだ米兵に襲われてさ。裸にされたからひっぱたいて逃げ出そうとしたら、殺されかけたよ」

「そうか。生き延びれてよかったな」

「ええ。撃ち殺されたのは、姉と妹だけだった」


 米兵も酷いことをする。敗戦国の国民の末路なんそこんなものか。大人どもはなんで戦争なんぞおっぱじめやがったんだ。


 お前らが負けなきゃ、俺はもっと楽に生きることが出来たのに。


「昨日は追い剥ぎに遭ったの」

「なんでぇ、お前服着てるじゃねぇか」

「ええ。兄が抵抗してくれて、あたしが逃げる代わりに殺されたから」


 成る程ね、昨日兄を失ったって訳か。こいつが今1人で居ることを考えると、最後の家族だったのか?


「あたしの大切な人はね。あたしが死にそうになると、代わりに死んじゃうんだよ」

「馬鹿言え、そいつらが死んだのはそいつらの運命だ。お前の代わりになんてなるものかい」

「なるの。そう言う、ものなんだよ」

「あー。お前さん、気狂いかい?」

「そうかもしれないわね」


 そう言って、女は悲しそうに笑った。


「だから、殺してよ。殺した後も、身体はあんたの好きにして良い」

「死んだ女に欲情するかい! まったく見てくれは良いのに、勿体ねぇ女だ」


 その美しい笑顔に、後ろ髪を引かれつつも。男はチヨを抱かず、静かにその場を後にした。


 気狂い女に関わると、ろくなことにはならいと思ったから。








 その、次の日。


「火事だ!! みな、手伝え!」

「はようバケツを持て! 列にならんで隣に回せ!」


 男の寝床のすぐ近所にある民宿が、炎に包まれていた。自分の住まいまで燃えたら堪らない、男も慌ててバケツリレーに参加する。


「桑原桑原、火の不始末だとよ」

「焼死体がもう2つも出て来てるってさ」


 迷惑な話だ。マリファナの不始末かヤク中が火の扱いを誤ったかは知らないが、ろくに水源もないこんな貧民街で火事なんて起こされたら堪らない。


 焼死体を踏みつけてやろうかと、消火した後の家屋に入り込んだ男が見たものは。


「……待て。コイツ、生きとるぞ」

「気を失ってるだけだ」


 昨日の女が、焼け残った畳の上で火傷1つ負わずにスヤスヤと寝ている姿だった。


 奇跡的に火が及ばなかった部屋のその一角に倒れ込んだその女は、煙を吸って気を失っただけらしい。人工呼吸をしてやれば、まもなくソイツは息を吹き返してしまった。


『私はね、幸運なのさ』


 昨日聞いた女の与太話が、頭の中で反芻される。


『生まれもっての、絶対的幸運の持ち主』


 その通り。確かに、その女は幸運だった。異常、と頭につけても良いくらいに。大火事の中、女の周囲だけ奇麗に焼け残るってのはどれほどの確率なのだろうか。


 そして男はその女の知り合いだと名乗り、女を自分の家に連れて帰った。












「何だ君、あたしを引き取ってくれたのか」


 チヨは目を覚ますと、男を見て軽く笑った。


「あたしが寝ている間に、助平な事でもしたのかな」

「お前の頭の中はそればっかりか」


 はぁ、と男は溜め息をつく。男がその女を引き取ったのは、ただ理由を聞きたかったからだけだ。


 何でお前が焼けた家から出てきたのか。何でお前だけ、火傷1つ負わなかったのか。


「ああ。あたしは、そー言う人間なんだよ」


 女は、何でもないことのようにそう言った。


「男に囲まれて家に連れ込まれ、襲われそうになった。そしたらたまたま家に火がついて、みんな気を失って焼け死んじゃった。それだけ」

「……幸運だとかなんとか言ってたよなお前、それは何だよ」

「いや、あたし幸運でしょ?」


 何が分からないのさ。そう、女の顔には書いてあった。


「あたしの不幸はみんな、近くのあたしを好いた誰かに行っちゃうの。だから、私は超幸運」

「馬鹿な」

「あたしが望まない限り、私はきっと死なないんだよ。だから言ったのさ」

「……」

「あたしを殺しておくれよ、ってね」


 そして男は、チヨの話を聞いて能力者と言う存在を知った。


 理解を超えた何かを持ってる、超常の存在を知った。

















「最初は、利用するつもりで、チヨに近付いた」

「……」

「わしは、チヨを使えば何か凄いことが出来る。……そんな妄想に取りつかれていた」


 ちらり、と老翁は背後で動かぬ老婆を見やる。目に光の無いその老婆は、何も反応を見せない。


「いつからじゃったろうなぁ」


 呟くように。その爺は、話を続けた。


「利用してやろうと、散々世話してやってるうちに、気付いたら、わしはチヨに惚れとった……」

















 男は、甲斐甲斐しく女の世話を続けた。身体を欲するでもなく、ただそれが当然であるかのように。


「なぁゲンジ。いつになったらあたしを殺してくれるんだい?」

「馬鹿言え。お前にいくら手間隙かけてやったと思ってる。返してから死ね」

「頼んだ訳じゃないわさ」


 一方でチヨも、その男の元から離れなかった。家族も何もかも失った女は、ただ殺してもらえることを期待してその男に付き従った。


「今日の飯は何だ」

「昨日アンタが盗ってきた大根の漬物」

「それだけか」

「それだけよ」


 端から見れば、夫婦にしか見えない。と言うか近場に住む貧民達は、彼らを夫婦として扱っていた。


 男が娼婦を養うなんてのは、珍しい話でもなんでもないからだ。


「あのさ。一応聞いとくけど、ゲンジあたしに惚れちゃいないよな?」

「何でこんな穀潰しに惚れなきゃならん」

「なら良いよ」


 だが、男は頑としてそれを認めなかった。男はチヨを利用するためだけに手元に置いているつもりだった。自分の心すら騙して、男はチヨと共に有り続けた。










 ────やがて、一発の銃弾が男を射抜くまで。




 ある日、村に熊が出て人が襲われる事件が発生した。


 すぐさまマタギが呼び出され、山狩りが始まった。男も村の人間として当然山狩りに参加していた。


 だがその最中、チヨを残してきた村から悲鳴が聞こえる。


 なんと熊は、山に帰っておらず再び村を襲ったのだ。慌てて引き返した男は、チヨが熊に襲われかかっているのを見た。


 男は、駆け出した。


「チヨから離れろ、熊公!!」


 理由も糞もない。ただ、チヨを守るため無意識に走っていた。熊の目の前に立って威嚇し、チヨから熊を遠ざけようとした。


「今や、撃てぇ────」


 いきなり乱入した男を警戒して熊が硬直した今が好機、そう判断した仲間たちは銃撃を始めた。


 男はそんな中、熊目掛けて一斉に撃ち始めたマタギの中にチヨに当たりそうな銃口に気付いてしまい。咄嗟に身体で、男はチヨを覆った。


「熊を仕留めたぞ!!」

「阿呆!! 人に当たっとるけ!」


 チヨを庇い猟銃に撃たれ腹から血が噴き出しているその時、初めて男は気付いた。自分が彼女を好いていたことに。


「……チヨ、生きとるか」

「生きとるに決まっとる、あたしは幸運だから」


 意識は遠退き、クラクラと血が足りなくなる。その迫り来る死の気配の中で、男は目にした。


「嘘つき。あたしのこと、好いとらんと言うとった癖に」


 ポロポロと涙を溢す、大好きな女の顔を。


「やっぱり、お前もあたしを好いとったんね。いつもこうだ。あたしを好いた人は、いつもいつも────」


 そして女は、大声で哭き始める。まるで男を怨むかのように。


「だから殺してくれと、言うたのに────」


 いや、むしろ。駄々をこねる子供のように。

 












 その時、男は思った。自分の命が助かりたい、なんて自己中心的な願いではない。


 ────可哀想なこの女を笑顔にしてやりたいと。男は、そう強く願った。


「どけ、チヨちゃん。コイツ、医の爺のとこに運ぶぞ!」

「女庇って銃弾受けるたぁ見上げた男だ! 殺すな、殺すな」

「誰か先に行って、医の爺に知らせぇ!」


 そんな、村人の献身が通じたのかは定かではない。男は数日間に渡り死の縁をさ迷った後、無事に生き延びた。


「ゲンジ、お前が捕まえた女は薄情じゃ。手紙一つ置いて、どこぞに蒸発しよったぞ」


 だがしかし。生き永らえたその男が最初に目にしたものは、チヨではなく1枚の手紙だった。


『あたしもアンタのこと、好いとうよ』


 それは愛した女からの、別れの手紙だった。


『だから、もう会うこともなかろう。探さんでね』


 チヨは、こうして男の前から姿を消した。自分の身代わりに男が死ぬことを嫌ったのである。以後数年間、男はずっとチヨを探し続ける事となった。














「……で。その時から、不思議なことにのぅ。わしにも能力が宿っとった。能力ってのは、強い感情から生まれるものかも知れんの」

「それは……」

「わしは、……他人の性格を、好きに弄れるようになっていた。笑ってほしい相手に、笑って貰える能力じゃ」

「それって、ミサさんが掛けられてた」

「彼女の様な異能に目覚めたのだ。コレで大手を振って、彼女に会えると思うたんじゃ。わしは自らの異能を駆使して、チヨを探し回った」












 男は、能力を使って他人を最大限に利用した。他人を自分にとって都合が良い性格にして操り、チヨの情報を集めて回った。数年後、男がチヨを見つけ出すまで。


 男は気付いていた。性格操作は、他人を殺すに等しい行為だと。今まで積み上げてきた倫理観や行動指針を丸ごと強引に書き換えるこの能力は、人を殺して作り変えているのと同義だと。


 だが、彼にとってそんなことはどうでも良かった。ただ、男はチヨに再会したかった。




 数年後。男と再会した彼女は、疲弊しきっていた。


 寂れた河原の一角で、身体を売って日銭を稼いでいた彼女は。目に生気も無く、生きるのに疲れ果てていた。


「……チヨ、か」

「ああ。見つかっちゃったか」


 女の瞳は濁っており。ボロボロの小汚い服を着て、下半身を丸出しに雑魚寝していた。頬はやせこけ、髪も短く切り落とされていた。


「探したぞ、来い」

「いかん」

「良いから、来い」

「いやだ」


 その、あんまりにみすぼらしい彼女の姿に耐えかね、ゲンジは彼女に自分の服を被せ連れ出そうとした。だが、ガンとして彼女は動く気配を見せなかった。


「お前は、運よく生き延びたんだ。もう、私に関わるな」

「うるさい。俺はお前を利用するだけだ」

「やめてくれ。もう、失いとうない。私が心から好いたゲンジだけは、死んで欲しゅうない」


 その表情は、絶望だ。生きることに何の希望も見出していない表情だ。


「なぁゲンジ。生きるって事は、何なんやろうね」

「……そんなもん、坊さんに聞け。俺は知らん」

「お前から離れてから、3人死んだ。私を庇って、私の代わりに、3人死んだ」

「ソイツらの運が悪かったんじゃ」

「……私が自殺しようとしても、私の代わりに大事な人が死ぬ。もう、自殺すら出来ん」


 女は、深い絶望の淵にいた。彼女は、死ぬことすら許されないのだ。


「初めて会った頃のお前は、私の事を間違いなくただのモノだと思ってた。その頃のお前なら、きっと私を殺せてた。なぁゲンジ」


 そんな彼女の望みはただ一つ。


「何であたしを殺してくれなかったん?」


 自らの、死だった。



















「……でもなぁ」


 何かを懐かしむかのように。老翁は、そこで話を区切って笑った。


「チヨはの、その後笑ったんじゃ」

「……そんな状況で、なぜ?」

「笑わせたからじゃよ」


 老翁の瞳が、狂気に染まり。得意げに、自慢するかの如く、老人は話し続けた。


「他人が死ぬのが嬉しくて仕方がないと。そう、性格をねじ曲げてやったんじゃ」








 それは、男が初めて見た、彼女の満面の笑みだった。


「そうか。別に気にしなくてよかったんだ。あたしはあたしの心配だけしとけばよかったんだね!」


 初めてあった時から、一度も見たことの無い。彼女の満面の、心からの笑みだった。


「なぁゲンジ、お前についていって良いか? お前は私を好いているだろ?」

「……」

「なら、お前の近くにいた方が安心だ」


 ────男は気付いていた。性格操作は、他人を殺すに等しい行為だと。今まで積み上げてきた倫理観や行動指針を丸ごと強引に書き換えるこの能力は、人を殺して作り変えているのと同義だと。


「なぁゲンジ。これからも、ずっと一緒に居ような!」


 だとしても。







「笑ってくれたんじゃ」


 ポロリ、と爺は涙をこぼす。


「何を犠牲にしてでも、笑顔にしたかったその女が。わしの能力で、笑ってくれたんじゃ」






 以後。男は、彼女を守るための組織を作りあげることを決意する。自分が彼女の能力で死んだ後も、彼女を幸せなままにするために。


 その途中で、男は異能を持つ人間が自分たちの他にもたくさん存在する事を知った。そして、そのすべてが不幸のどん底にあることをも知った。


「最初は彼女を守るため。次に、哀れな能力者を救うため」


 男は、自らの強力な洗脳能力を用いて能力者に笑顔を配っていった。最愛の人にした事と、全く同じ方法で。


 人格を弄れば、能力者は皆が幸せそうに笑った。不幸のどん底にあるはずの彼らを、疑似的に幸せにし続けた。


「能力者を救う手段は、洗脳か死だ」


 洗脳がきかぬ者。洗脳したとして、危険すぎて管理できない者。そういった能力者は、迷わず殺した。


 その全ては、チヨの笑顔を守るため。一人でも多くの能力者を、笑顔にするため。


「正気じゃなくなれば、能力者は幸せなんだ。笑顔になれるんだ」


 彼は、自らの最愛の人のみならず。いつしか能力者そのものをも、大事にするようになっていった。彼自身も能力者であり、仲間意識を持っていたからかもしれない。


 不幸に苦しむ能力者を救うため。彼は、能力者を集め続けた。


「正気を保つのは、わし一人で良い。他の法力者はみんな、夢を見ているかのように幸せに過ごせ」


 それは、自己献身と言えるのかもしれない。


 その男は自らが死ぬまでずっと、他の能力者の為を想い、最愛の人を隣に置いて組織を拡大し続けた。ただ一人、正気を保ったまま。


「チヨ。もうすぐ、わしは死ぬ」

「……」

「この前仲間にした、運命操作系の男が居たじゃろ。あの男を呼んで来てくれ」


 そして、年齢も80近くなり。自らの死期を悟った老人は、配下の能力者に呪いをかけさせた。




「わしを殺した人間が。次の世代の能力者を統べる存在となるように」


 老翁が死んだら、残されたチヨや能力者たちの洗脳が解けるかもしれない。そうなれば、今まで老翁が守り抜いて来た笑顔が崩れ去ってしまう。


 老翁は、跡取りを欲したのだ。


「わしが死んだ時、最も近くにいた能力者が、次の世代のわしとなる」


 配下の能力者に、そう運命をねじ伏せさせて。老翁はゆっくりと、やがて来るだろう襲撃者を心待ちにした。


 能力者の笑顔を、守るため。不幸な能力者を救済するため。


「これで、わしの仕事は終わり。やっと、解放される」


 そして老人は心待ちにしていた。自分を殺す者を。自分の重責を継ぐ者を。


「これでやっと、謝れる」


 そして、彼が死んだらまず最初にする事はただ一つ。


「……チヨ。お前の心を捻じ曲げて、すまんかった」


 ────それは洗脳(ころ)してしまった最愛の人への謝罪。

次回、最終話。

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