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王子様と運命のガラスの靴

作者: かむきり

 ある日、とある国の王子様はお忍びで城下町にやって来ました。家来にも、王様にも内緒の冒険です。

 「ずいぶん色々な品があるのだな。おい、これはなんだ。」

 王子様は通りがかったお店にいたおばあさんに声をかけました。ずいぶんと偉そうなたいどでしたが、おばあさんはにっこり笑って答えました。

 「ああ、これはガラスの靴ですよ。ほら、綺麗でしょう。」

「ガラスの靴?そんな靴を履いては、足が数歩ともたずにズタボロになるだろう。」

王子様は現実主義者でした。

「いやですよ。王子様。そんな夢のないことを言ってはいけませんよ。」

王子様はとてもとてもおどろきました。おばあさんは、王子様が王子様だと言い当てたのです。

王子様は名乗っていないのに!

 王子様がおどろいて何も言えないでいると、おばあさんはにっこり笑ってこう言いました。

「なあに。わたくしは魔法が使えるのです。あなたが王子様だということも、魔法でわかったのです。」

「うそだろう。」

王子様はそう言いましたが、信じないわけにはいかなくなりました。

おばあさんがお店の品物を魔法でうかせてみせたり、王子様しか知らない秘密を知っていたりしたのです。

 「実は、このガラスの靴にも魔法がかけてあってね。持ち主の運命の相手がみつかると、その相手のところにとんでいって、つれて帰ってきてくれるんです。」

王子様にとって、それはたいへん素敵なことでした。

王子様は18さいになったら王様の決めたお姫様と結婚しなければなりません。

だから、王様の決めたお姫様ではない、運命の相手とむすばれることはとてもすばらしいことに思えたのです。

「いかが?」おばあさんが言いました。

もう王子様の答えは決まっています。


ガラスの靴を買ってから、王子様は毎日靴を眺めて暮らしました。

「ああ、ぼくの運命の人はどこにいるんだろう。」

王子様の現実主義はすっかりどこかへ行ってしまいました。

そうしてため息ばかりついている王子様をみて、じいやはとても心配になりました。

じいやは、王子様が毎日ガラスの靴をみてばかりで勉強も食事もしなくなっていくのがとても心配でした。

あんまり心配で、じいやはとうとうガラスの靴を捨ててしまいました。

王子様はとても悲しんで、部屋から出なくなってしまいました。


 数年後、引きこもりの王子様に業を煮やした王様は、花嫁さがしの舞踏会を決行することにしました。

王様の命令には、いかに王子様といえどもさからえません。

王子様はしぶしぶ立派な服を着て、髪をととのえて舞踏会に出席しました。

お城には世界各地からすてきなお姫様が集まっていました。どのお姫様も、王子様の花嫁になるのはわたしだと、目をぎらぎらさせていました。

「王子様、王子様がお部屋から出てこられて、じいは嬉しゅうございます。」

じいやは王子様が部屋から出てきて、とても嬉しそうでした。

王子様は、ガラスの靴を捨てられたことをまだ根に持っていたので、じいやを無視しました。

「ああ、ぼくの運命のひとは、どこにいるんだろう。」

そう言って王子様は我先にとせまってくるお姫様やご令嬢を押しのけ、舞踏会から逃げだそうとしました。

 すると、そのときお城の扉がひらきました。美しい巻き毛の金髪を高く結いあげ、長いまつげにふちどられた青い目に、大理石のようになめらかな肌、はなやかなドレス、この世のどんな女性もかなわないようなすてきなお姫様が、そこにいました。

みんなそのお姫様にすっかり夢中になってしまいました。もちろん、王子様もです。

とってもすてきなお姫様。王子様は、一目で恋におちました。そして王子様はきづいたのです。

そのお姫様がはいているのは、あのガラスの靴だったのです。

 なんということでしょう。あの魔法のガラスの靴が、王子様の運命のひとをつれて帰ってきたのです。

あの魔法使いのおばあさんの言うとおりになりました。

王子様はいてもたってもいられなくなり、お姫様にかけよって言いました。

「美しいお姫様、どうかぼくと踊ってください。」

「はい、喜んで。」

鈴を転がしたような、耳にここちよい声でした。


 美しいお姫様は、名前を教えてくれませんでしたが、ほかのお姫様たちにオレンジをとってあげる優しいところがありました。

王子様はそんなお姫様と踊ったりおしゃべりするのがとても楽しくて、時間がたつのを忘れてしまうほどでした。

 お姫様も同じように時間を忘れてしまったようで、12時の鐘が鳴ると、あわてて帰ってしまいました。

お姫様はとても急いでいたのでしょう。階段にガラスの靴を片方おとしていきました。

 王子様はガラスの靴を拾い上げ、こう決心しました。

「彼女こそ、私の運命の人だ。必ず彼女をぼくの花嫁にする。」


 王子様はみずからあのお姫様を探しに行くことにしました。

まずは自分の国をすみずみまで探そうと考えた王子様は、国中におふれをだしました。

 そして、たくさんの家来をつれて、国中の娘にガラスの靴をはかせてみました。

もしもあの運命のお姫様なら、ガラスの靴がぴったりなはずです。

王子様は国を西から東へ、北から南へ、百姓の娘から貴族のお姫様まで、ガラスの靴をはかせにいきました。


 何日もかけて国中の娘にガラスの靴をはかせましたが、どの娘も靴がぴったり合いません。

 そこで、王子様は王様にお願いして世界中の娘にガラスの靴をはかせました。

もうこの世には、あのお姫様をのぞいてガラスの靴をはいていない娘はいなくなりました。

 

 王子はすっかり落ち込んでしまって、また部屋にひきこもってしまいました。

 じいやはたいそう王子様を心配して、こう言いました。

「王子様、運命のガラスの靴におねがいしてみてはどうですか?きっと、そのお姫様を見つけてくださいます。」


 そうです。どうして思いつかなかったのでしょう。ガラスの靴は魔法の靴なのです。

王子様はすぐにガラスの靴におねがいをしました。

「どうか、あのお姫様にもう一度会わせてください。」


 すると、ガラスの靴がかがやき、窓の外に飛んでいってしまいました。

 王子様はじいやをお供にガラスの靴をおいかけました。


 ガラスの靴をおいかけていくと、一度来たことがあるお屋敷につきました。

このお屋敷の娘たちは、どの娘よりも必死になって靴をはこうとしていました。

王子様が止めなければ、きっとかかとを切り落としてでもはこうとしたことでしょう。

 そういえば、お屋敷の娘たちは、なにかかくしているようでした。

 

 「こんばんは。ガラスの靴をはける娘はいないだろうか。」

 「まあ、王子様!ええ、今すぐに娘たちをよんでまいります。」

お屋敷の主人が娘たちをよんできましたが、そこにあのお姫様はいませんでした。

 すると、ガラスの靴がまたかがやき、屋根裏部屋へ飛んでいきました。

あせって止めようとするお屋敷のひとびとを押しのけて、王子様は屋根裏部屋に行きました。


 屋根裏部屋のドアを開けると、そこにはとても美しい娘がいました。

服も髪もボロボロで、顔も汚れていましたが、王子様にはあのお姫様と同じくらい美しく見えました。

娘の手にはあのガラスの靴が、一足そろってかがやいていました。

 「お嬢さん、ガラスの靴をはいてくれますか?」

 「はい。喜んで。」

 ガラスの靴は、娘の足にぴったりでした。


 こうして王子様は魔法のガラスの靴のおかげで、運命のお姫様、シンデレラと結婚することができたのです。

 じいやも王子様と仲直りができて、とてもうれしそうです。


 そうして、王子様とシンデレラはいつまでも、いつまでも幸せにくらしたのでした。


おしまい



 






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