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俺、実家の手伝いをする  作者: くろのわーる


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第8話

 予定外の早い帰宅に対してにわかに城の中が慌ただしくなるが俺はそんな事、気にもかけず、城に着くなりコック長の許可を貰い、厨房の一部を借りて早速、実験を開始する。


 気合いを入れる為、腕捲くりをし、机の上に買ったばかりのリーゴの実を空間収納から全て取り出す。


 皆、今から何が始まるのか気になるようで俺付きのマリアはともかくコック長や見習いコック達、それに城に着いたことで護衛の任を解かれたはずの騎士も不思議そうな眼差しで見つめている。


 ギャラリーの期待を裏切らないようにしないとなと誰にも気付かれないように気合いを入れる。


 全部で100個買った内の10個を別にして先ずは試す。


 おもむろにリーゴの実の上に手をかざしてイメージする。イメージするのは前世の日本で良く見た真っ白な砂糖。


 イメージが固まった所で錬金術を発動する。


 俺の錬金術に合わせてリーゴの実10個を円形に囲むように淡い光が包み込んでゆく。

 光は弱い光から徐々に強い光へと変わっていき、一際強く輝くと消えていった。


 そこに残された物は俺がイメージした通りの真っ白に輝く粒。


 周りで見ていたギャラリーから「おぉ!」と小さな驚きの声が上がるが俺は無視をしてその粒を指先で一掴みすると口へと運ぶ。


「(甘いっ!)」


 この世界では滅多に口にすることの出来ない雑味や香りのない純粋な甘さが口の中へと広がっていった。


 俺が満足そうに頷いているとマリアが何をしたのか気になるらしく話かけてくる。


「アーサー様、その白い粉は何なんですか?」


 白い粉なんて言うから思わず、『これはコ〇インだ!』と言ってみたくなる衝動に少しだけ駆られるが普通に答えることにする。


「これは砂糖だよ」


「えっ!?」


 マリアが驚くと同時にコック長の目が光った。


「アーサー様、もしよろしければ私にも味見をさせて頂けませんか?」


 やはり料理を仕事としているコック長としては試さずにはいられないのだろう。


「勿論、構いませんよ」


 俺が許可を出すなり、臆することなく砂糖を摘み、口に含み舌の上で味わうようして目を閉じている。


 口の中の砂糖が溶けてなくなるやコック長がゆっくりと目を開き、静かに語り始めた。


「これは市販されている砂糖と違い余計な雑味がなく、料理に使っても食材の邪魔をしない実に良い砂糖ですな」


 お褒めの言葉を頂いた。


「コック長、この砂糖は売り物になるかな?」


 俺の今回の目的はこの砂糖を販売して儲けることにある。


「味が素晴らしいので売れるとは思いますが砂糖自体、高級品ですので市場の価格と同じ値段では大量に売り捌くのは難しいかと・・・」


 コック長は核心を突き付つ難しそうな顔をする。


 俺自身、現在市場で取引されている値段ではあまり売れないと思っているので値段を下げて売るつもりだ。


 今回のように錬金術を使えば、ほとんど費用がかからないので値段を半額に下げたところで儲けが出るはずだし。


 リーゴの実10個でおよそ300円だった。錬金術を使い10個のリーゴから目分量でだいたい100gの砂糖を作り出すことが出来た。


 市場での価格は100gで金貨1枚、およそ10万円にあたいする。かなりな原価率だ。


 コック長の言葉に相づちを打ちながら次の作業へと移る。


 包丁を借りていくつかリーゴの実を薄めにスライスしていく。


 そして、先程と同じように手をかざしてイメージする。

 次にイメージするのはフリーズドライしたスライスリーゴ。


 これはリーゴの実が日保ちしないと聞いて思い付いたアイディアだ。これが成功すれば迷宮探索や旅のお供として保存食(干し肉や硬パン)ばかりで味気ない食事に甘味という彩りを与え、また他国に乾燥リーゴを輸出して外貨獲得の為の輸出品にもなるはずだ。


 作業台の上の光がおさまるとそこには水分がなくなり2回りほど小さくなったイメージ通りなスライスリーゴが現れた。


 それを一つ取り、口の中へ放り込む。


 ポリポリと音を響かせ味わってゆく。味はリーゴの実、そのままの甘さと微かな酸味がほどよく広がり、本来の味を損ねていない。

 俺は成功を確信し、みんなにも試食してもらう。


 それぞれが味見をして感想を述べてくれる。


「見た目はイマイチですが食感が少し癖になりますね」


「確かに・・・でも私はやっぱり、生のリーゴの実の方がジューシーで好きですね」


 騎士に続き、マリアが味について感想を述べたが俺の真の狙いに気付いてないことを確認すると心の中でほくそ笑む。


「いや、この乾燥リーゴの真価は味ではなく、日保ちさせることにあるのではないですか?アーサー様」


 まさか俺の真意に気付くとは流石はコック長。


「ふっふっふ、コック長、その通りです。」


「やはりそうでしたか」


「どういうことですか?アーサー様」


 まだ、わかっていないマリアや他の人達に向け、簡単に俺の考えていた計画を説明した。


 皆、俺の考えに感心しているがとにかく次なる行動を起こす必要があるため、俺の説明を聞き、感心しているマリアにレイナート兄様にアポを取るように指示する。


 実はここからが本当の戦いだ。


 今回の砂糖と乾燥スライスリーゴを兄上にプレゼンして事業化することが目的だ。

 だって俺のお小遣いではリーゴを大量に買い付けるにも全然足りないし、手伝ってくれる人手もいないからね。


 最後は頼りになる身内にすがるのだ。


 これが上手くいけば、この砂糖と乾燥リーゴでナイトレイ王国の懐は潤い。

 ついでに俺のお小遣いもアップだ!ヒャッホー!





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