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俺、実家の手伝いをする  作者: くろのわーる


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第7話

 意気揚々と城門を通り過ぎ、初めての城下町へと踏み出した。


 付き添いは専属メイドのマリアに護衛役の騎士が1名。

 城のみんなは俺の強さを知っているので護衛はあくまで形式みたいなものだ。


 城へと続く、中央通りは色々な店が建ち並び人々が行き交っている。


 今回の目的はあくまで簡単な市場調査とお金儲けのネタ探しだ。


 初めての城下町ということもあり、物珍しそうに右往左往しながら店先に並ぶ商品と値段を確認しながら気になる商品があれば店主に質問して確認していく。


 若干、子供らしからぬ質問なんかもしているがそんな俺の様子を見たメイドのマリアと護衛の騎士は勉強熱心な俺の姿を微笑ましく見守っていた。


 俺は武具屋に道具屋、雑貨屋などを見て回り、更に散策していると調味料などを取り扱っているお店を見つけた。


「こんにちは~」


「いらっしゃい、おお?ひょっとしてアーサー王子様ですよね?」


「(こやつ!俺の正体を見破るとは何者!?)」


 俺は驚愕し、思わず店主に聞き返す。


「ど、どうしてわかったんですか?」


「どうしてって、メイドと護衛の騎士を連れているからね」


「それだけで?」


「それだけで高貴な方とわかるし、何よりナイトレイ王国で高貴な方と言えばナイトレイ王家しかいないからな~」


「えっ!?」


 どういうことだろうと付き添いの二人を見ると二人とも不思議そうな顔をし、マリアが口を開く。


「ひょっとして、アーサー様はナイトレイ王国には貴族がいないことを知らないのですか?」


 なにそれっ!知らないよ!


「その顔を見るにどうやら知らないようですね」


 そんな俺を見かねてマリアが説明してくれた。


 元々、公爵家から独立して成り上がったナイトレイ王家。

 当然、ナイトレイ王国の領土は元公爵領であり、もとより公爵家が治めていた為、他の貴族家がいないのは道理であり、建国する際に賛同した貴族もおらず、他の貴族家と領土を統合していないので現在、貴族家はおろか上級階級といったものも皆無だそうだ。

 又、新しく貴族家を興そうにも国土に余裕がある訳でもなく、分け与えれる領土がないのも理由の一つだそうだ。


 その為、メイドならまだしも騎士を連れている人物となると自然と王家の人間となってしまう。


 どうりで今まで回ったお店の人達が親切丁寧に質問に答えてくれた訳だ。


 ちなみに王族の俺に対して妙にフレンドリーな態度なのは国王である父レオンが堅苦しい敬語を嫌い、民にも気軽に声を掛けてくれるその人柄を皆知っているので王家に対して大変親しみがある為だそうだ。


 謎が解けたところで本題へ移る。


「すいません。今日は購入じゃなくて、ちょっと話しを聞きたくて寄らせてもらいました」


「ああ、構わないよ」


 店主の了解を得て、商品を物色する。


 塩、砂糖にハーブのような物が数種類と扱われている調味料の種類は少なくてどれも基本的に値段がバカ高い。


 生活していく上で欠かせない塩でさえ、100gで大銀貨1枚もする。

 砂糖に至っては100gで金貨1枚もする。


 一般的な家庭で4人家族が1ヶ月過ごすのに金貨3枚が必要だとこれまでに教えて貰った。

 単純に金貨3枚が日本円で30万円に相当するとした場合、大銀貨は10枚で金貨1枚の価値がある為、塩100gの値段は1万円になる。


「(これは金の匂いがする)」


 俺の欲望センサーに強く反応した為、ここは無知な振りをしてあざとく情報を聞き出すことにした。



◇◇◇



 俺の迫真の演技もあり、しっかりと聞きたい情報を引き出すことに成功した。

 まあ、実際は王家の威光や父達の日頃の行いのおかげなのだが・・・


 まとめると塩の生産地は南に広がる連合諸国。

連合諸国にとって塩は特産品でまた生産自体も独占状態に近いらしく必需品ということもあって値段も相手の言いなりだそうだ。


 ナイトレイ王国は内陸部にある為、海が遠く塩を手に入れるには輸入に頼ざる負えず距離もそこそこある為、自然と輸送費でさらに高くなかってしまうらしい。


 砂糖は原材料となる植物が獣王国のさらに東の国にしかなく、塩と同様の理由でバカ高いらしい。


 ここまで話しを聞いてお金儲けの道筋が見えてきた気がする。


 俺はチートで調味料王になる!


 店主にお礼を言って、次なる目的地へと向かう。

 向かっている場所は青果店だ。

あわよくば、ここで砂糖の原料になりそうな果物を探そうと思っている。


 青果店に着き、ここでも店主のおばちゃんに暖かい目で見守られながら商品を物色していくと地球のりんごにそっくりな果物を見つけた。


 気になったので聞いてみる。


「すいません。この果物はなんていう名前ですか?」


「それかい?それはリーゴの実と言ってナイトレイ領では昔から多く栽培されている果物だよ」


「(リーゴの実。名前まで似ているな)」


 名前までりんごに似ていたので味の方も気になってくる。


「お姉さん、リーゴの実が欲しいんですがおいくらですか?」


「お姉さんだなんて!嬉しいわ!もう好きなだけ持っていってよ!」


 俺の処世術にまんまと引っかかっている。なんてチョロいんだ。


 俺は一つ手に取り、齧り付く。


「(こ、これはっ!?)」


 リーゴの実は俺の想像以上の甘さでりんごとは違う味わいだった。

そして、知っている味でもあった。


「(これ、家の食事にデザートとして何回か出てきたな)」


 そんなことを思っているとおばちゃん改め、お姉さんがいろいろと教えてくれる。


「リーゴの実はナイトレイ王国の隠れた特産品なのよ」


「ん?隠れた?」


「(なぜに隠すんだ?)」


「リーゴの味は最高なんだけどすぐに傷んじゃって日持ちしないから他国へ出荷出来ないのよ。だからナイトレイ王国でしか食べられない特産品よ」


「へぇ~、そうなんですか」


 なるほど。ナイトレイ王国内では有名だが他国ではあまり知られていないのかな。


「ほんと残念よね。農家には腐って捨てるほどあるらしいのにもったいないわね」


 そのお姉さんの言葉は俺の脳内を駆け巡り、そして閃く。


「お姉さん」


「はいはい」


「リーゴの実を100個ほどください」


 俺の発言に皆、少し驚いたようだが気せず、空間魔法で収納し代金を渡した。


 購入したリーゴの実で思い付いた事を早く試したいのでマリア達にお城に戻る旨を伝えて歩き出した。


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