第六話 Surgeon and pharmacist
緑間と清野が死んだ。
生存者は残り六人。もう、嫌になってきていた。
そろそろ、こんな殺し合いを終わらせないと。
「天夜、そろそろこんな殺し合い、協力して終わらせようぜ?
だから、他の人の所に行ってくれ」
「そうだね。僕に任せてよ。
必ず君達だけでも、生きて帰す。
じゃあ、僕は他の人と話してくるよ」
「ああ」
天夜は駆け出した。
天夜を自分から、他の所に行かせるように誘導したのにはわけがある。
先程まで、俺と天夜は協力して捜査をしていたが、新月や緑間だけが裏切り者に殺されるのとは別の死に方をしていた。
そしてその時、必ず天夜はその人物の近くにいた。
もしかしたら天夜が、新月と緑間を殺した奴なのかも知れないという疑いが、どうしても自分の中で消えない。
そして俺の予想が正しければ、次に天夜と話していた人物は、タイムリミット後に死体となっているだろう。
まず俺は、緑間の検死を開始した。
「あれ?」
開かれた口をよく確認してみると、明らかに人間の口内で無いことがはっきり分かった。
試しに、新月が凶器を燃やしていたライターを近づけてみる。
すると、ろうそくのようにドロドロとした液体に変わり、緑間の顔が溶けていく。いや、ようにではない。これは、蝋人形だったのだ。緑間そっくりの。
つまり、緑間は生きている。本物の死体を隠されたという可能性もあるが。
「藍田さーん!」
緑間じゃない女の声。
白いブラウスの上に白衣を纏い、タイトスカートの女性。
「どうした? 百原」
彼女の名前は百原流歌。確か化学が得意な大学生と聞いた。
「さっき、天夜さんとも会ってきた所です! 少し藍田さんとも話したいなと思いまして!」
「お、おうそうか」
天夜と話したのに平気? 俺の疑いは間違いだったのか?
裏切り者が俺達に天夜を疑わせる為に仕組んだ罠か?
「で、藍田さん。外科で使う薬品の話してくださいよ!」
タイムリミット直前まで、百原と薬品について話をした。
「そろそろ、タイムリミットだな」
「そう、ですね・・・・・・」
俺が座ると、百原が。俺に寄りかかった。
「ど、どうした? 百原」
「やっぱり、怖いですよね。私、死にたくないですよ・・・・・・」
このデスゲームで、俺も最初は死ぬのは怖かったし、他の人が死んだという現実を受け入れるのを、本能が拒否していた。
だけど進むにつれて、恐怖心も薄れ、ただこんなことをする《裏切り者》を捕まえたいとしか考えられなくなった。
まだ慣れていない人間もいる。そんなこと、考えもしなかった。
「大丈夫。お前は、俺が守るさ」
人に対して、こんなことを言ったのは初めてだ。具体的な方法などは何も思いついていないが、それはこれから考える。
「藍田さん!」
「も、百原ッ!」
「はい?」
「胸が腕にあたっ、あたっ!」
「ひゃぁ! 私てっきり・・・・・・」
はぁ、はぁ。
胸が腕から離れた所で、タイムリミットが来た。
催眠ガスが放射され、俺達は意識を失った。
◇◇◇
あの夢。
あの少女。
だが今日は違う所があった。
全ての口パクが見える。
全て繋げてみた。
『あなたは、わたしのしんゆう』
どういうことだろうか。俺の記憶に、こんな少女はいない。
どこかで偶然見た少女だとしても、親友だとするならば俺の記憶になければおかしい。
お前は、一体誰なんだ?
夢はそこで途切れる。
◇◇◇
目が覚めた。
隣を見ると。
「ッ!」
吐血しながら倒れる、無傷の百原がいた。
「百原・・・・・・」
松野心夜です。久しぶりです!
汝は裏切り者なりや?2、久しぶりの投稿でございます。
最近、オーバークロックは裏切り者なりや?な日常というコラボ小説で、1キャラを久しぶりに書かせていただきました。
2の投稿が遅れてしまい、申し訳ありません。
次回は、藍田が遂に動きます。お楽しみに!