第五話 A person moved by desire
「新月ッ! 天夜ッ!」
「・・・・・・・藍田君。新月君も殺されていたよ」
新月の死体の状況は、今までとは少し違った。
こちらは尖った石を頭に突き刺されて死亡している。
「待てよ・・・・・・」
もし《裏切り者》の、タイムリミットに一人しか殺さない、というルールが黒幕の嘘だったとしても、いきなり殺害方法を変えるのはどう考えてもおかしい。
となると、この犯行は《裏切り者》以外の誰かが・・・・・・。
怪しいのはタイムリミット前に新月と話していた天夜、卑屈な青年の武田幽斗、そして臆病少女の青葉美空の三人だ。
でも彼を殺した動機は何なのだろうか。
《裏切り者》以外に人を殺すような動機を持つ者などこの中には――。
いや、違う。
GMは言っていた。
『《裏切り者》が殺された時生き残ったプレイヤーが一人だった場合、特別賞金として一億円が与えられる』と。
つまり新月を殺した奴は、一億が狙いなのか?
バカ野郎がッ!
黒幕が殺し合いをさせる為に用意した嘘かも知れないのに、この中にいるバカはそれを信じ込んだわけだ。
《裏切り者》は黒幕のせいだ。仕方ない。
だがたかが金の為に人殺しをするような奴を、俺は許しておけない。
探し出さなくては。
それから十数分後。
どこかに行っていた天夜が俺の所に掛けてきた。
「天夜、どこに行ってたんだ?」
「ちょっと緑間さんと話しに」
「お前はコミュ力高いなあ」
「藍田君が低すぎるだけだと思うよ?」
「地味に刺さること言うなよ・・・・・・」
「それより、金目当てで殺し始めるプレイヤーが現れたらしいね」
「ああ。怪しい奴を捕まえないとな」
天夜は違いそうだな。別の疑わしい人物に声を掛けてみるか。
「なあ、武田」
卑屈な青年・武田幽斗はけだるそうな目で俺を見る。
「嫌われ者の俺に何の用だ?」
「お前、新月を殺したりしてないよな?」
「あー、賞金ルールで殺したんじゃないかって事?
ないない。どうせ俺はここで死ぬんだから、やらない」
このネガティブ・・・・・・相手にするのめんどくせえ。
「あー、分かった」
次は青葉かな。
「青葉!」
「はっ、はいー! 何でしょう?」
青葉美空はビクビクしながら俺を見る。
「新月を殺してないよな?」
「ひっ、ひいいいい! そんなこと私に出来ませえええええん!!」
や、優しく聞いたつもりなのに泣かせてしまった。
「あ、藍田君。時間が」
「ああ。青葉、不安なら一緒にいようか?」
「ふぇ?」と言って青葉は泣き止む。
「いいんですか!? 藍田さんありがとうございますうううう!」
こ、今度はうれし泣きか・・・・・・。
女の子って分からん。
そんなことを考えている内に、ガスが放射された。
意識は無くなっていき、視界はブラックアウトする。
◇◇◇
あの少女。
今回の口パクで分かった言葉は、『あ』と『し』。
◇◇◇
悠々としていた青年・清野孝が、今回の犠牲者だった。
《裏切り者》に殺された時と同じ状態で死体が発見された。
そして、もう一人犠牲者はもう一人いたのだ。
「あ、藍田君ッ!」
天夜も慌てた顔で俺に言う。
天夜について行くと、そこには。
首に締め付けられた痕。緑の瞳の瞳孔は開いており、口は苦しそうに開いている。
紛れもない、緑間の死体だ。
松野心夜です! 久しぶりの投稿です。
汝は裏切り者なりや?2。今回はメインヒロインの緑間がまさかの死亡です。
テストが終わらなかった故に、投稿が遅れました。誠にすみません。