第二話 Present, past, future
ゲームが開始されて数分。誰もが全員を疑っているこの状況で、遂に声を上げる者が現れた。
「皆さん、聞いて下さい!!」
大声で皆に呼びかける十七、八くらいの坊主頭の少年は、まるで熱血主人公のようだ。
「俺は新月雅彦です!! 皆さんに提案があります!!」
「お、何だ? 何だ?」
悠々とした青年が呟いた。
「裏切り者はタイムリミットで眠っている間に襲うのならば、襲えない状況を作ればいいんです!! その為に、皆様に協力してほしいことがあります!!
持ち物検査ですッ!!」
持ち物検査? 何故するのかを、俺は訪ねる。
「新月、持ち物検査をする意味を教えてくれないか?」
「良い質問です藍田さん!! 理由は、疑われる可能性のある持ち物の処分です!!」
なるほど。いや、待て。
ということは・・・・・・。
それに気付く前に、持ち物検査が始まった。
武器などは勿論没収だし、替えの服なども返り血を受けた後、着替えられる可能性があるとして回収されて燃やされた。
「では、藍田さん!!」
大声の検査官が持ち物を調べていく。
「ん!? これ全部凶器じゃないですか!?」
「いや、それ手術道
「ファイヤー!!」
あああああ!!
上司に怒られるうううううう・・・・・・。
「大丈夫です!! 藍田さんの手を煩わせないようにしますので!!」
「いや上司に怒ら
「よし!! これで終わりましたね!!」
人の話を聞けええええええ!!
色々言いたいことがあるが、持ち物検査が終わった。
俺はそれから、色んな人に話しかけた。
やっぱり、皆俺と同じでここに来るまでの経緯を知らないようだ。
「やっぱり、知ってる奴はいないか」
「まあそれを知っていたら脱出出来る筈だからね。当然だよ」
天夜はなんで余裕なのだろうか。
「あ、藍田君。そろそろタイムリミットだよ?」
腕時計を見ながら、天夜が呟く。
もうすぐ、タイムリミット。
だけど、全員から武器は奪った。ゲームの事なんて考えなくて良い。
俺達がここで脱出出来ればそれで良い。
催眠ガスが部屋中に撒き散らされると同時に、俺は眼を閉じた。
・・・・・・・。
◇◇◇
俺の前に、俺と同い年の少女――いや女性がいた。
服装を見るに、俺と同じ研修医、だと思う。
だがその女性は、俺がゲーム開始前に見た夢に出てきた血まみれの少女に酷似していた。
童顔だったからだろうか。恐らくさっきの夢では私服だったから、少女と間違えたのだ。
風が吹き。俺の視界を木の葉が遮る。
童顔の女性研修医は、黒を基調としたセーラー服に。
それだけじゃない。
俺の服装も、黒を基調とした詰襟に変わっていた。
真っ黒だった背景が、ボロボロの教室に変わる。
間違いなく、俺が高校時代に青春を過ごした教室。
だけど、目の前の少女が誰なのか分からない。俺の記憶にも彼女は存在しない。
俺は彼女どころか、女友達――いや友達はいなかった筈だから。
俺が言えたのは、この一言だけだ。
「お前は、誰だ?」
少女は微笑みながら何かを呟いていたが、俺の耳には届かない。
口パクから推測しようと努力するが、雲のような白い空気が少女の口を隠して見えない。
何とか分かったのは、『わ』と『ゆ』だけだった。
もう一度問いかけようとするが、空間が白く染まり、やがて自分ごとその光にのまれて消える。
◇◇◇
眼が覚めた。
死人は出ていない筈、そんな確信を持って、安心して起き上がり、皆より先に辺りを見回す。
――これで大丈夫、な筈だよな。
しかし。
俺は見てしまったのだ。
自己紹介で英語をよく使用していた女性――名前、片間直美が背中をナイフで突き刺されて死亡していたところを。
誰が、こんなことをしたんだ・・・・・・。
◇◇◇
とある部屋。
暗い空間に二人の人間がいた。
一人は顔を隠した男性。もう一人は齢十一だと言うのに、その幼さに似合わない表情を見せる少女。
男性がボイスチェンジャーを通した声で、少女の方を向かずに言う。
「どうだ? 楽しいかい? 小日奈」
小日奈と呼ばれた少女は顔色一つ変えず、男に言う。
「まだつまらないです。まだ一人殺されただけに過ぎませんよ、マスター」
マスターと呼ばれた男は、仮面の下でニヤリと笑ってみせた。
もう少しすれば、アレも届く。
それを楽しみに、男はニヤリとしたのだ。
少女はその逆。何の表情も浮かべない。
この二人が、このゲームのマスターだ。
松野心夜です。お久しぶりです。
自己紹介なんですが、最初は全部載せる予定でしたが、あまりにもグダグダになってしまうのでカットしました。すみません。
代わりに登場人物紹介欄に載せましたので、そちらを併せてご覧いただければ幸いです。
1があまりにも分かり辛い展開だと言うお言葉をいただいたので、2は1以上に良い物語を書き、なおかつ1を読みたくない人用に2のみでも分かる仕様にしています。
おつきあいいただければ幸いです。